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June 14, 2013

恐怖! 動く人形! サム・フェル クリス・バトラー 『パラノーマン ブライス・ホローの謎』

Prnma1本日は人形アニメの傑作『パラノーマン・ブライスホローの謎』をご紹介いたします。昨年から「あの『コラライン』のスタッフがすごい人形アニメを作った!」という噂を聞いて「早く観てえ!」と切望していたのですが、ツイッターでの大好評と反比例するように興業は大不振。ほとんどの劇場が二週間で上映を打ち切ってしまいました。こりゃもう映画館で観られる機会はないか・・・とがっくりきていたところへ、静岡東部のシネプラザサントムーンさんが奇跡的にかけてくれることになり、狂喜した次第です。あんまり嬉しかったんで一日に立て続けに2回観てしまいました それではあらすじをば。

アメリカの田舎町ブライスホローに住む少年ノーマンは、ごく普通の男の子。ホラーが大好きということと、「幽霊が見える」という能力を除いては。周囲はそんなノーマンを気持ち悪がり、敬遠したりからかったりするのだった。だがノーマンにもある日ニールという気のいい友達ができる。少しずつニールと打ち解けていくノーマン。そんな折、二人の前に疎遠になっていた叔父が現れ、町に「おおいなる災厄が迫っている」と警告する…

これだけ日常にアニメが氾濫していますと忘れがちですが、アニメとは本来ラテン語で「霊魂(anima)
」を意味する言葉です。要するにアニメってのは命のないものに命を与える作業なんですね。CGや絵アニメももちろんそうなんですけど、特にこの意味が一番しっくりするのは人形アニメのような気がします。無機物であるはずの人形がクリエイターたちの情熱によって生き生きと動き出す様は、いつ観ても魔法のようだなあ、と感じます。特にこの『パラノーマン』にかけられた労力と時間はものすごいものがあります。この公式サイトの「技術映像 特別編」というところを観て欲しいのですが、主人公ノーマンの顔の表情だけで31000個の部品が作られたとのこと。まさにクリエイターたちの命が注ぎ込まれたといっても過言ではありません。その甲斐あってかノーマン君も他のキャラクターもとても人形には見えないくらい生気に満ちていたのですが、そこまで表情に富んでいるとなんでかCGっぽく見えてしまったりして まあそんなことは細かいことです。

ストーリーに関して。ノーマン君の設定は名作『シックスセンス』のハーレイ君を思い出させますが、ハーレイ君が周囲にそのことを語りたがらないのと対照的に、ノーマンはそのことを隠そうとはしません。そのために彼は周囲から孤立してしまうわけですが。
そんな設定からもわかるように若干ホラーっぽい要素も含んだお話です。『コラライン』やティム・バートン、シュヴァンクマイエルの諸作からもわかるように、ストップモーションアニメはどうもオカルトと相性がいいようです。
ただトラウマになりそうなくらいおっかない描写もあった『コラライン』と違って、『パラノーマン』はまったく怖い話ではありません。むしろゲラゲラ笑える映画です。例えばこの映画ではゾンビが出てくるのですが、「ゾンビだからといって○○○○とは限らない」なんてセリフがあったりします。いや・・・ それはもうゾンビとは言えないのでは・・・
しかしまあ、それもまた細かいことです。

とまあそんな感じで休む間もなくギャグが乱発されるんですが、クライマックスでは突然ドキッとするような残酷なエピソードが現れて呆然としてしまいました。そんな残酷な歴史を必死でリセットしようと奮闘するノーマンに、いつも間にか手に汗に握らされ、鼻水すすらされました。ストップモーションの技術もさることながら、こうしたエモーションの部分もおろそかにされていません。

Prnmn2というわけで1人でも多くの人に観て欲しい良作なのですが、すでに明日から上映するところがどこにもありません(涙)。ただ現在ドリパスにおいてぶっちぎりの1位を得票中。この分なら再上映も夢ではないかもしれません。がんばれ!

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Comments

ここに、私がコメントしなくて・・・どこにするの!!!ってことで・・・(^^;)
それにしても2回も立て続けに観るなんて・・・ホントさすがですね〜。
今年の10本に入ちゃう感じですか?
技術的には、本当に素晴らしいものでしたが
正直私的には、ここまできてしまうと、ほとんどCGアニメみたいで
もう少し、人形らしさが残っていた方が、
暖かみを感じて好きなのにと思ったのですよー。
まあ、好みの問題ですけどね〜。
ただ、残念なことにあのキャラでは一般受けはしないでしょうね。
ゾンビなのに、なんか可哀想でしたねー。


Posted by: ルナ | July 03, 2013 12:04 AM

>ルナさん

おお! よくぞここにコメントくださいました! ありがとうございます! 本当にありがとうございます!(2回)
まあ正直言うとわたしももうちょっと人形人形したぎこちない映像の方が好みなんですけど、メイキングのスタッフのとんでもない労力にはやはり敬意を表さずにはいられないのでした

人形アニメって微グロなキャラが多いですよね(笑) ゾンビはおろか人間までヘンテコなヤツが多かったような。その点では昨年暮れの『フランケンウィニー』も同じでした
ゾンビ連中は確かにかわいそうでしたが、彼らのしでかしたことを考えると自業自得ですよねー それよりも魔女のお嬢ちゃんがあまりにもかわいそうで涙涙でございました

Posted by: SGA屋伍一 | July 03, 2013 09:29 PM

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「コララインとボタンの魔女」の 製作会社の作品なので、 ちょっと期待していたのですが、 すぐに上映が終わってしまいそうだったので、 仕事が忙しかったにもかかわらず 観に行きました。 案の定2週間くらいで 終わってしまいました。 300年前に魔女狩りが行われていた町、ブライス・ホロー。 ノーマンは、死者が見える特殊な能力を持った少年だった。 その能力のせいで、孤独な日々をおくっていたが ある日行方不明だったおじさんが現れ、魔女の呪いによって 町が滅ぼされる日が近づいてお... [Read More]

Tracked on July 03, 2013 12:06 AM

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