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June 27, 2013

まぶたの父と松林 デレク・シアンフランス 『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』

Pbp1a「天は二物を与えず」とはいいますが、最近イケメンかつ演技力もあるということで人気を博しているのが(むかつくなあああ!)ライアン・ゴズリングとブラッドリー・クーパー。本日はその二人が共演した、骨太かつ叙情性ある人間ドラマを紹介します。『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』、まずはあらすじから。

サーカスと共に町から町を渡り歩く曲芸ライダー・ルーク。彼は久しぶりに訪れたNY州スケネクタディで、かつて一夜を共にした女性・ロミーナが自分の子供を産んでいたことを知る。彼女と子供のために生きることを決意したルークはサーカスをやめてスケネクタディに留まるが、すでに新しい恋人がいるロミーナはそれを歓迎しなかった。どうしたら自分は「父」として認められるのか… 悩んだルークは大金を得るために銀行強盗に手を染める。

序盤のストーリーはこんなところですが、この映画全体的に三部構成となっております。1部はルークが、二部は彼と対峙することになる警官が、三部はルークの子供がお話をひっぱっていきます。ただ作品中もっとも強烈な輝きを放っているのはゴズリング演じるルーク。寡黙で謎めいていて、運転技術は半端ないところなどは昨年の『ドライヴ』に登場した「ドライヴァー」と似ています。
ただゴズリングが「『ドライヴ』はファンタジーなのに比べ、『プレイス~』は地に足の着いた作品」と述べているように、ルークはドライヴァーほど無敵ではないし、超然ともしていません。失敗もしますし、思うようにことが運ばないと激しく苛立ちます。そしてドライヴァーが母子のために無私の愛を示したのに、ルークは「自分のことを愛して欲しい」という思いがあります。そんな彼の激しい気性と切ない愛情が悲劇へとつながっていきます。

恐らく行く先々の町で女をとっかえひっかえしてたであろう「ハンサム」ルークが、家庭的なパパになろうと決意するあたりはいささか唐突に感じられました。ただまあ、彼は彼で旅の生活にむなしさを感じていて、ずっと自分の留まれる場所を探していたのかもしれません。そんなところへ自分の息子の存在を知り、「ここだ!」と思い定めてしまったのでしょう。『俺たちに明日はない』『ヒート』『ザ・タウン』など、銀行強盗映画の主人公は「どこか遠くへ行きたいなあ」と願っていることが多いですが、逆に「ここにいたいねん」と思っている例は珍しいですね。

そんな風にルークがスケネクタディに居ついてしまったことが、何人かの運命を大きく変えていきます。そのうちの1人がブラッドリー・クーパー演じるクロス。ルークの息子のジェイソンもそうです。面白いことに彼ら3人はそれぞれほんのちょっとずつしか顔を合わせていないのに、その出会いが互いの人生にとって大きな転機となります。実にドラマチックでありますが、狭い町の中で強烈な個性が暴れまわってると、そういうことも現実にあるんじゃないか…という気がしてきます。
スケネクタディというのはモホーク族の言葉でまさに「松林の向こう」という意味なんだそうです。これは松林の中のある窪みに他所から水流が流れ込んで、ひとしきりぐるぐると淀みを作ったのちに、出口を見つけてまた新たな場所へ流れていく・・・ そんなお話なのかもしれません。すいません、なに言ってんだかよくわかんないですね!

親子二代に渡る因縁話ということでは、スティーブン・ハンターの『ダーティ・ホワイト・ボーイズ』と『ブラック・ライト』を思い出したりしました。それぞれ第一作『極第射程』が映画化された「ボブ・リー・スワガー・シリーズ」の番外編・第2作にあたります(むかしこんなレビューを書いたこともありました)。『プレイス~』と同じく、親というのはたとえこの世を去ったとしても、子供の歩む道に大きく関わってくるものなのだなあ・・・ということをしみじみ感じさせる二作(まあみんなフィクションですけど…)。『プレイス~』のムードが気に入った方に強く推奨いたします。まだ普通に入手できるといいのですが(扶桑社ミステリー文庫刊)。

Pbp2『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』は残念ながら東北・九州を除いてぼちぼち公開が終了。わたしが観た小田原でも明日までです(言うのがおせーよ)。そ、そのうちDVDが出るかと…
四輪、二輪と来たゴズリング君。恐らく次は一輪車の達人の役だと思います。


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June 25, 2013

カントク故郷に帰る 原恵一 『はじまりのみち』

20070921『アイアンマン3』と並んで、今年上半期最も楽しみにしていた作品。『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』や『カラフル』で高い評価を得ているアニメ作家・原恵一氏が初めて挑んだ実写映画『はじまりのみち』、ご紹介します。

太平洋戦争末期、映画監督・木下恵介は、彼が撮った『陸軍』という作品が戦意高揚に水を差すという理由で軍からにらまれ、仕事をほされてしまう。憤った木下は映画会社に辞表を提出。故郷の遠州に戻り、病気の母の介護に専念する。しかしその地も空襲の危険が高くなり、木下家はそろって疎開することに。病気の母にはバスはきついと、恵介はリヤカーで運ぶことを主張する。

言うまでもありませんが木下恵介氏は実在の人物で、数多くの名作を世に残しております。『二十四の瞳』『楢山節考』『喜びも悲しみも幾歳月』… 恥ずかしながらほとんど観たことないのですが映画ファンならずともそのタイトルは聞いたことがあるのではないでしょうか。
このリヤカーでお母さんを運んで峠を越えた、という話も実話だそうです。

主な登場人物はこの木下監督とお母さんと、ユースケ・サンタマリア演じる恵介の兄。そして単なる脇役かと思いきやこの映画の肝とも言える名も無き便利屋の青年(演じるは濱田岳)の四人であります。
荷物運びのために雇われたこの青年は何かと不平が多く、恵介をイライラさせます(その恵介くんも必要以上にカリカリしているところがあり、観ているこちらまで渋い面になってきます)。
しかし映画を観ることで便利屋くんと道中を共にしているうちに、我々は次第に彼に深い親しみを抱きはじめます。
例えばお昼の休憩時、戦時下ゆえに食べられなくなってしまったカレーやビールを彼がいかにも美味しそうに「食べるフリ」をするシーンがあるのですが、その演技があまりに真に迫っていて、普通にそれらが食べられるわたしたちですら胃袋を鷲づかみにされる感覚を覚えます。

そしてくだらないことばっかり言ってた彼がふとした時につぶやいたある言葉をきっかけに、挫折のどん底にいた恵介は再起のきっかけをつかみます。
原監督はこういう「偉大なる凡人」を描くのが上手なんですよね。ぱっと見どこにでもいるような平々凡々な風貌で欠点も多々あるのに、いざという時主人公の支えになったり救いの手を差し伸べてくれるような存在。『クレヨンしんちゃん 戦国合戦』の又兵衛や『河童のクウ』のお父さん。『カラフル』の早乙女くんやお父さん。そしてヒロシです。
これまでも濱田君は伊坂幸太郎×中村義洋作品などで「いい俳優だなあ」とは思っていましたが、ここまで彼に号泣させられるとは思ってもみませんでした。主演の加瀬亮氏には申し訳ないけれど、彼よりもお母さんよりも濱田くん演じる名も無き便利屋くんがもっとも光り輝いていたように思えてなりません。

話変わって。原監督はこの作品においてかなり大胆な木下作品の引用をしております。普通の監督ならここまではやらないだろう…というくらい劇中に木下映画の映像が流れます。
この映画は決して欠点のない映画ではありません。音楽はちょっとくどく感じる箇所もあるし、先に述べたように人のふんどしで相撲を取っているようなところもなきにしもあらずです。
しかし誰のふんどしであろうと相撲を取っているのは当人であり、そして実に堂々たる取り組みを見せていただきました。今後原監督がアニメに戻ろうと実写を続けようと、彼の作品を追いかけていきたいです。

先日ちょうどテレビで木下作品にして日本初のカラー映画、『カルメン故郷に帰る』を観る機会がありました。これがしんみりするところもあるものの、実にヘンテコな作品でして。映画と実際の木下監督はイコールではないということは承知してますけど、あんなずっと仏頂面だった青年がこんな素っ頓狂な作品を…と思うとなんだか無性におかしかったのでした。

Usa3_2_thumbというわけで期待に十分こたえてくれた『はじまりのみち』ですが、かなりお客さんが入ってないようです・・・ どうして『パラノーマン』といいわたしの猛プッシュする映画はこけるんだろう。恐らく上映期間ももうあまり長くないと思うので、少しでも興味をもたれた方はぜひごらんください!


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June 18, 2013

猫と心臓と死神 ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2013 『吾輩は木村の猫である』『心臓の弱い男』『死神失格』ほか

Ssff1毎年5月・6月に開催されている短編映画の祭典「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア」。昨年は行けませんでしたが今年は横浜はブリリアショートシアターという短編映画専門館まで行って、「アジア インターナショナル&ジャパン」部門のCプログラムを観てきました。もうイベントも終わってしまったのですがcoldsweats01、感想まいります。

まずはお目当てだった片岡翔監督の
☆『吾輩は木村の猫である』
男の浮気がばれ、家を出て行ってしまう女。女が飼っていた猫「グレ」は男の元に残されてしまうのだが…

「吾輩は猫である。名前は一応ある」というとこでしょうか。友達のとこにも同じ名前の猫がいます。やさぐれているからではなく、体色がグレーだからです。
今回は正直感想を書くのが難しい(笑)
以前から犬をテーマにした名作映画というのはいろいろあります。それに対して猫をテーマにした名作というのはあまり聞きません(『ハリーとトント』くらい?)。それは恐らく犬が人の言うことをよく聞いて芸も達者なのに対し、猫は気まぐれでろくに芸もしないからでは。ま、最近はCGという便利な手法もあってちょっとは猫の出番も目だってきましたが。
そんなわけで片岡監督がどうやって猫を撮るのか興味津々で観賞に臨みましたが、「なるほど。そう来ましたかwww」と。
猫ってわたしたちには無関心なようでいて、けっこう人の顔や感情を見抜いていたりもするんですよね。そんな猫の繊細な心情がじんわりと伝わってくる作品でした。
タイトルは夏目漱石の名作から取られたのでしょうけど、「女にひどい仕打ちをした主人公」と「その女が飼っていた猫」という筋立てはポーの『黒猫』を思い出しました。こちらはあんなに怖い話ではありませんが
カメラマンさんのがんばりも印象に残る1本。舞台挨拶の監督のお話によると腰がだいぶきつかったということ。くれグレもお大事にしてほしいものです。


☆『私の街』
イランの女性監督ティナ・パクラバンさんの作品。アジア インターナショナル部門 優秀賞 と東京都知事賞はこの作品が受賞したようです。
電話ボックスが立ち並ぶ中東の荒れ果てた広場。人々が受話器にむかって懸命にがなりたてる中、背後では轟音が響き・・・

猫と日常の作品でのんびりしたあとにいきなりハンマーで殴られるような構成でした。今プログラム中8分と最短でしたが、その短さがかえってインパクトを増しているような。
血や人体損壊のシーンこそないものの、きっちり映像でもって戦争の残酷さを訴えた1本。


☆『心臓の弱い男』
また日常?に戻って。新鋭橘剛史監督によるコメディ。
異様なまでに心臓が弱い一人の青年。かわいい女の子を見ただけでも危篤状態に陥ってしまうため、ほぼ老人しかいないド田舎に越してくるのだが…
青年のつけているペースメーカーの音声と、最後のセリフ以外ほとんど言葉のない映画。ピュアな恋愛描写とあいまってチャップリンやキートンの名作を思い出させます。
なぜそういった無言劇にこだわったのか。最後の一言を際立たせたいというのもあると思いますが、監督ご自身の言葉によると「世界の言葉の通じない人々にもわかってほしいから」とのこと。なるほど。
「初めて自分の作品が映画館でかかって嬉しい」という監督さんがめっちゃキラキラしててまぶしかったです。あとぽわーっとした感じのメインヒロインさんもかわゆうございました。


☆『モン族の姉妹』
今度はベトナムの作品。外国人の観光客のガイドをしている姉妹が主人公。初めて仕事に出る妹は、お客である白人の青年に喜んでもらおうと一生懸命気を利かせるが・・・
切ない系のお話が三作続いたあとに、「お、ようやく心がほっこりするような作品が」と思ったのもつかの間。おはなしはこっちが「あー そういう方に行かなきゃいいなあ」という方向へゆるゆると進んで行きます。
んー もー なんつーか。生きていくのは大変ですねgawk ただいたいけな女の子に弱みつけこむような男にはなりたくないものです。ほい(感想がまとまりません)


☆『死神失格』
最後を飾るのは先の沖縄国際映画祭でも上映された特別招待作品。
いままさに患者が腹を切られている手術室で、突如として異変が起きる。患者とその妻、医師とその助手が戸惑う中、いきなり現れたヘンテコな男は言った。「わたしは死神です。申し訳ありませんが皆さんのうちでどなたか1人亡くなる方を選んでいただきたいのですが…」
こう書くとちょっとホラーっぽいですが、死神役がくどいメイクのなだぎ武さんなので笑えることはあっても怖いということはまったくありません。
製作に吉本新喜劇が関わっており、出演者も田中要次氏、中越典子さんといったテレビでおなじみの面々なので、先の四本にくらべると商業的な印象が強い1本。さすがその筋のプロが作ってるだけあって、「なんとか笑わせてやるでー!」という気迫に満ちています。特になだぎ武さん演ずる気弱な死神が「申しわけありませんでしたーーーッ!!」と渾身の土下座を見せるシーンは思い出すとじわじわじわじわ来ます。
短い時間の中で二転三転して観客をひっぱっていく脚本も見事でした。

Ssff2ちなみに2010年に観たプログラムの記事はコチラ。2011年に観たプログラムの記事はコチラ。時の経つのは早いものです。来年もまた観られるといいな…
携わられたスタッフのみなさん、どうもお疲れ様でした~

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June 14, 2013

恐怖! 動く人形! サム・フェル クリス・バトラー 『パラノーマン ブライス・ホローの謎』

Prnma1本日は人形アニメの傑作『パラノーマン・ブライスホローの謎』をご紹介いたします。昨年から「あの『コラライン』のスタッフがすごい人形アニメを作った!」という噂を聞いて「早く観てえ!」と切望していたのですが、ツイッターでの大好評と反比例するように興業は大不振。ほとんどの劇場が二週間で上映を打ち切ってしまいました。こりゃもう映画館で観られる機会はないか・・・とがっくりきていたところへ、静岡東部のシネプラザサントムーンさんが奇跡的にかけてくれることになり、狂喜した次第です。あんまり嬉しかったんで一日に立て続けに2回観てしまいましたcoldsweats01 それではあらすじをば。

アメリカの田舎町ブライスホローに住む少年ノーマンは、ごく普通の男の子。ホラーが大好きということと、「幽霊が見える」という能力を除いては。周囲はそんなノーマンを気持ち悪がり、敬遠したりからかったりするのだった。だがノーマンにもある日ニールという気のいい友達ができる。少しずつニールと打ち解けていくノーマン。そんな折、二人の前に疎遠になっていた叔父が現れ、町に「おおいなる災厄が迫っている」と警告する…

これだけ日常にアニメが氾濫していますと忘れがちですが、アニメとは本来ラテン語で「霊魂(anima)
」を意味する言葉です。要するにアニメってのは命のないものに命を与える作業なんですね。CGや絵アニメももちろんそうなんですけど、特にこの意味が一番しっくりするのは人形アニメのような気がします。無機物であるはずの人形がクリエイターたちの情熱によって生き生きと動き出す様は、いつ観ても魔法のようだなあ、と感じます。特にこの『パラノーマン』にかけられた労力と時間はものすごいものがあります。この公式サイトの「技術映像 特別編」というところを観て欲しいのですが、主人公ノーマンの顔の表情だけで31000個の部品が作られたとのこと。まさにクリエイターたちの命が注ぎ込まれたといっても過言ではありません。その甲斐あってかノーマン君も他のキャラクターもとても人形には見えないくらい生気に満ちていたのですが、そこまで表情に富んでいるとなんでかCGっぽく見えてしまったりしてcoldsweats01 まあそんなことは細かいことです。

ストーリーに関して。ノーマン君の設定は名作『シックスセンス』のハーレイ君を思い出させますが、ハーレイ君が周囲にそのことを語りたがらないのと対照的に、ノーマンはそのことを隠そうとはしません。そのために彼は周囲から孤立してしまうわけですが。
そんな設定からもわかるように若干ホラーっぽい要素も含んだお話です。『コラライン』やティム・バートン、シュヴァンクマイエルの諸作からもわかるように、ストップモーションアニメはどうもオカルトと相性がいいようです。
ただトラウマになりそうなくらいおっかない描写もあった『コラライン』と違って、『パラノーマン』はまったく怖い話ではありません。むしろゲラゲラ笑える映画です。例えばこの映画ではゾンビが出てくるのですが、「ゾンビだからといって○○○○とは限らない」なんてセリフがあったりします。いや・・・ それはもうゾンビとは言えないのでは・・・
しかしまあ、それもまた細かいことです。

とまあそんな感じで休む間もなくギャグが乱発されるんですが、クライマックスでは突然ドキッとするような残酷なエピソードが現れて呆然としてしまいました。そんな残酷な歴史を必死でリセットしようと奮闘するノーマンに、いつも間にか手に汗に握らされ、鼻水すすらされました。ストップモーションの技術もさることながら、こうしたエモーションの部分もおろそかにされていません。

Prnmn2というわけで1人でも多くの人に観て欲しい良作なのですが、すでに明日から上映するところがどこにもありません(涙)。ただ現在ドリパスにおいてぶっちぎりの1位を得票中。この分なら再上映も夢ではないかもしれません。がんばれ!

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June 11, 2013

インドの3馬鹿大将 ラージクマール・ヒラーニ 『きっと、うまくいく』

Ktumak3昨年の『ロボット』のヒット以来、またちょこまかと紹介されるようになったインド映画。『ロボット』『ラ・ワン』を堪能してしまった身としては「メカが出てこないとイマイチ物足りないよなー」なんて思っていたのですが、こちらはやけに評判がいいし、お誘いもあったので観てきました。『きっと、うまくいく』ご紹介します。

ファランはまさに旅行に出かけようとした時、同級生だった通称「消音銃」からの電話をうける。行方がわからなくなっていたやはり同級生のランチョーの居所がわかったというのだ。急いで旅行を取りやめ、空港に引き返すファラン。彼とランチョーとラジューは大学時代同じ部屋に住み、何をするのも一緒だった。高圧的な学長や上級生に皆が怯える中、毅然として異を唱えるランチョー。それでいて彼には親友のためには労を惜しまない情熱的な面もあった。ランチョーを兄弟のように思っていたファランとラジューは、「消音銃」と共に彼が住んでいるという町へ向かう。

この映画はこの三人が車で旅をする間に、大学時代の思い出がえんえんとカットバックされるという構成になっております。というか回想シーンの方が断然多いですね。
基本的には人情喜劇でありますが、大学が舞台ということもあってさりげなく「真の教育とは何か?」ということも語られたりします。さすがに以前に比べるとカースト制度の影響は薄くなってきてるようですが、その代わりインドの若者たちは競走重視の社会に悩まされているようです。男の子であればエンジニアに、女の子であれば医者になって高収入を得ることが幸福であり、教育はその職に就くための手段でしかない・・・という考えが現代のインドでは一般的なようで。そんな社会にランチョーは学ぶ喜び、楽しさを懸命に説きます。

この映画で特に印象に残ったのはそんなランチョーに敵対する二人の男でした。いわば悪役ですが、この悪役が非常にいきいきとしてるんですよね。
まず純粋に金と名誉欲のために大学へ行っている「消音銃」。彼はいい成績を取る為には他人を蹴落とすこともいとわない男ですが、その徹底した小物ぶりがなんだかすばらしい。そして幾らがんばってもランチョーにかなわないところがまた涙を誘います。まるでヤッターマンのドロンボー一味のような魅力を放つキャラクターでした。
もう1人の悪役は成績の低い生徒や反抗的な生徒をあの手この手でいじめぬく学長先生。こちらは魅力とかは全くございません。もう本当~~~にただただ憎らしい。しかしそんな極悪人(さすがに言いすぎか・・・)にも救いを用意し、ホロリと泣かせてくれる脚本にはさすがおしゃかさんの国だなあと暖かい気持ちになったのでした。

面白いのはインドの人たちって父親をけっこう重要視してるんだなあ、ということでした。ランチョーの二人の親友ファランとラジューは父親を喜ばせようとしたり、あるいは理解してもらうために一生懸命心を砕きます。日本ではどっちかというと「泣かせ」に用いられるのは母親であり、父親は男にとって乗り越えるべき壁みたいに描かれることの方が多いですよね。そういえば『ロボット』『ラ・ワン』も「父親」がストーリー上太い柱となっていた作品でした。

個人的にツボにはまったのはおじいちゃんやチンコをネタにしたギャグの数々ですね。特に男性には股間にズキュウウウンと来るシーンがあるのでぜひ体感していただきたいものです。あと冒頭で「メカが出ないと物足りない」と書きましたが、メカもそれなりに出番があったりして。

Ktuk1ちなみに上の画像の得体の知れないキャラクターは「ナン子ちゃん」と言います。最初に観た時はぎょっとしましたが、微妙好きとしてはなかなかそそられます。考案したのは元筋肉少女隊のミュージシャン大槻ケンヂ氏。わたくしが観た回では二人そろって登壇して映画に花を添えてくれました。オーケン氏はそれこそ学生時代ラジオ「オールナイトニッポン」などで楽しませてもらったので、生の姿が観られて嬉しかったな~
『きっと、うまくいく』は評判を呼んで大ヒットしてるようなので、まだ当分やってるかと思われます。上映劇場は公式サイトをチェックしてみてください(なげやり)


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June 05, 2013

ロシアより愛欲をこめて レフ・トルストイ ジョー・ライト 『アンナ・カレーニナ』

Akl1今からかれこれ20年くらい前でしょうか。『ウゴウゴルーガ』というえらいゲリラ的な幼児番組があったのを皆さん覚えてらっしゃるでしょうか。その『ウゴウゴ~』に「朝の文学」という一日一分一週五分で世界の名作を紹介する無茶なコーナーがありました。なんだかんだ言ってけっこう勉強になったのですが、その中で特に印象に残ってたのが文豪トルストイの名作『アンナ・カレーニナ』。「ひでえ話だ…」と思いました。その『アンナ』をノリにノッってるジョー・ライトが奇抜な演出で映画化したという。おっかなびっくり観て参りました。『アンナ・カレーニナ』、ご紹介します。

19世紀後半、帝政も末期に近づいたロシア。モスクワへ親族を訪ねにきたカレーニナ夫人(アンナ)は、若い将校のブロンスキーと知り合う。アンナの美しさに心を奪われたブロンスキーは、恥も外聞もなく彼女にアタックを試みる。初めこそ毅然とそれを退けていたアンナだったが、情熱的できらびやかなブロンスキーをいつしか自分も愛していることに気づいてしまう・・・

誰もが知っている(んだよね?)有名な文学作品。サイレントの時代からこれまで5回にもわたって映画化されてきました。
そこでジョー・ライト監督が「これまでと同じことをやったってしゃあねえ」と思ったのか。本作品はちょっと変わった試みがなされています。大筋のストーリーは原作とほぼ一緒なようですが、背景がよくある舞台の装置のように、場面転換の際にさーっと横に流れていったりします。さらに別に観客がいるわけでもないのに、舞台や劇場の上で役者さんが動いていたり。他にも現実ではまずありえないような演出がちょこまかと施されていました。
普通だったら噴出すかひいてしまうところですが、役者さんはコテコテの美形で背景もまた絢爛豪華なものですから、そうした現実離れした演出が不思議とマッチしておりました。それこそ少女マンガやオペラと映画を融合させたような印象を与えます。

ただ、ストーリーはそんなに奇抜でもなく、むしろよくある不倫話の王道といった感じがあります。今も昼メロなんかで「奥さん!」「いけません! あたしには夫が・・・」といった場面は珍しくありませんが、これ、世界文学の王道でもあるんですよね。『クレーブの奥方』『ボバリー夫人』『アドルフ』『チャタレー夫人の恋人』etc… そういった名作文学と昼メロとの間にはもちろん大きな違いがあるかとは思いますが、じゃあ具体的にどの辺が違うのか?と言われるとわたくしよくわかりません(^^; わかるのはそうですね、今も昔もやっぱり道ならぬ恋は人をひきつけるというか、心を燃え立たせるものがあるということですかね! 奥さん! あと恋愛物のヒロインというのはただの優しい人にはあんまりなびかず危険な香りのするイケメンにずんずんひかれていくもの。この辺も昔からまったく変わっていません。
そして道ならぬ恋というのは、大抵悲劇的な道をたどっていくもの。後半は二人が追い詰められていき、暗い話がえんえんと続いていく上に結末も知ってるもんで大概辛かったです。

アンナの恋人であるブロンスキーを演じるのはあのヘナチョコヒーロー、「キックアス」を演じていたアーロン・ジョンソン君。あの時はそれなりに野暮ったかったのに、今回は少女マンガから抜け出てきたような、宝塚の男役のようなキラッキラした美青年になっていました。こんなんでまたキックアスに戻れるのでしょうか? お兄さんはとても心配です。
対してアンナの夫であるさえないハゲ親父を演じているのはベテラン、ジュード・ロウ。恐らく十五年くらい前だったらブロンスキーを演じるのは彼だったかもしれません。しかし今回はあまりにも地味メイクが似合いすぎて最後までジュードさんだと気づきませんでした。
これはジュードさんじゃなく、お話の中のカレーニン夫さんに言えることですけど、いくら地位も財力もあるからといって、不釣合いなほどに若くて綺麗な嫁さんをもらうと、あとあと気苦労が絶えなくなる…ということなのかもしれません。
そういや若くて綺麗だったかは知りませんでしたが、トルストイも奥さんのことではずいぶん苦労したとか・・・ この辺も人類普遍のテーマのような気がします。

20070921拡張高い文学作品のレビューなのにずいぶん下世話な感じになっちゃったな。わたし一応「文芸学科」というとこ出てるんですけど・・・ まあいいや。
『アンナ・カレーニナ』は現在すでに上映終わっちゃったところもあり、これから始まるところもあり。この予告編を見ると「奇抜な演出」というのがどんな感じだかおわかりいただけるかと。


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June 03, 2013

ズバッと集結 ズバッと解散 金田治 『仮面ライダー×スーパー戦隊×宇宙刑事 スーパーヒーロー大戦Z』

Shtz1昨年春に全ライダーと全戦隊が集結した『スーパーヒーロー大戦』。その記憶もまだ新しいところですが、早くもまた彼らが再結集することになりました。しかも今度は全宇宙刑事も加わって…(たった三名だけど…)。『スーパーヒーロー大戦Z』、ご紹介します。

ファントムから人々を守るため、魔法を駆使して日々戦う仮面ライダーウィザード。そんなウィザード=操真晴人の前に宇宙の治安を守る刑事「ギャバン」が現れる。晴人の使う魔法が宇宙の摂理に乱れを生じさせ、様々な星で災害が起きていると主張するギャバンは、ウィザードに戦いを挑む。
同じ頃特命戦隊ゴーバスターズを「卒業」したイエローバスター=宇佐美ヨーコは、空から飛来した謎の球形のロボット「サイコロン」と出会う。サイコロンを可愛がるヨーコだったが、彼は巨大な悪の組織「スペースショッカー」から追われていた。サイコロンを守るためヨーコは再びイエローバスターに戻って戦うが・・・

さすがに最近は作りすぎじゃないかと思う東映の特撮ヒーロー映画。TVシリーズと並行して作ってるので当然時間もそんなにかけられず、出来も微妙なものが多いです。にも関わらず八割くらいの確率で観にいってしまうのはどうしてなんでしょうね… そんな自分も相当救いがたいと言わざるを得ません。

まあ今回観にいった理由は「体に染み付いた習慣」以外にも幾つかあります。まず昨年夏の『フォーゼ』の映画であまりにも不憫な扱いだったキョーダインが活躍するらしい、ということ。もうひとつはこれまたすっかり忘れられた感のある歴代メタルヒーローが復活する、という噂を聞いて。わたくしメタルヒーローが活躍してたころってちょうど特撮離れしてた時期だったんですけど、そういう滅多にないもんが見られるとなるとやっぱりはりきっちゃうんですよね。

で、結論から言うとこの二点のお楽しみは中々の肩透かしでした(笑)。キョーダインは確かに復活してたけどまたしてもあんまりな扱いでしたし、メタルヒーローたちに至っては登場シーン30秒もなかったのではないかと。着ぐるみが劣化してて長時間の撮影には耐えられないということだったんでしょうか。

しかし意外なことに?観ている間はそれなりに楽しめたから不思議です。正義のためと思って使ってた力がどっかで被害をもたらしていた・・・というのはなかなかに興味深いテーマでしたし(そんなに深くつっこまなかったですけどね)。組織に逆らって自分の目で信じたものをかばう、という二代目ギャバンの姿もなかなか微笑ましかったりで。
あと他の細かい嬉しかったポイントは、先のMOVIE大戦にも出てきた生ものっぽいイナズマンや、現在の朝ドラとあまりにもテンションの違う福士蒼汰君の声の演技など。宇宙刑事操る三大巨大メカのそろい踏みも心躍るものがありました。

例によってツッコミどころもたくさんあります。一番アレだったのは超科学を有してそうな宇宙警察の捜査がまるきっり見当違いだった…というとことか。「まあこれはスペースショッカーのミスリードが大変上手かった」&「現場から遠く離れての捜査には限界がある」ということで見過ごすことにいたしましょう。

Photoそんな一生懸命ほめてみた『スーパーヒーロー大戦Z』ですが、同時期に公開された『コナン』には完敗な結果に終わったようです。ここんとこの収益も『ディケイド』から徐々に落ちているとか。『剣』~『キバ』のぱっとしなかった時期に比べれば、それでもまだ十分羽振りがいいように思えますけど。
とはいえ東映さんもこのままではまずいと思っているのか、秋には大集合とはまた違った企画を考えている模様。その企画というのがどうやらあの『キ○イダー』らしいのですが… 果たして今のお子様にアレがどれほどうけるのだろうか? まあやってみないことにはわからんですよね(^^;
『スーパーヒーロー大戦Z』はまだ辛うじて全国の映画館で上映中。今週いっぱいかなー


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