猫と心臓と死神 ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2013 『吾輩は木村の猫である』『心臓の弱い男』『死神失格』ほか
毎年5月・6月に開催されている短編映画の祭典「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア」。昨年は行けませんでしたが今年は横浜はブリリアショートシアターという短編映画専門館まで行って、「アジア インターナショナル&ジャパン」部門のCプログラムを観てきました。もうイベントも終わってしまったのですが
、感想まいります。
まずはお目当てだった片岡翔監督の
☆『吾輩は木村の猫である』
男の浮気がばれ、家を出て行ってしまう女。女が飼っていた猫「グレ」は男の元に残されてしまうのだが…
「吾輩は猫である。名前は一応ある」というとこでしょうか。友達のとこにも同じ名前の猫がいます。やさぐれているからではなく、体色がグレーだからです。
今回は正直感想を書くのが難しい(笑)
以前から犬をテーマにした名作映画というのはいろいろあります。それに対して猫をテーマにした名作というのはあまり聞きません(『ハリーとトント』くらい?)。それは恐らく犬が人の言うことをよく聞いて芸も達者なのに対し、猫は気まぐれでろくに芸もしないからでは。ま、最近はCGという便利な手法もあってちょっとは猫の出番も目だってきましたが。
そんなわけで片岡監督がどうやって猫を撮るのか興味津々で観賞に臨みましたが、「なるほど。そう来ましたかwww」と。
猫ってわたしたちには無関心なようでいて、けっこう人の顔や感情を見抜いていたりもするんですよね。そんな猫の繊細な心情がじんわりと伝わってくる作品でした。
タイトルは夏目漱石の名作から取られたのでしょうけど、「女にひどい仕打ちをした主人公」と「その女が飼っていた猫」という筋立てはポーの『黒猫』を思い出しました。こちらはあんなに怖い話ではありませんが
カメラマンさんのがんばりも印象に残る1本。舞台挨拶の監督のお話によると腰がだいぶきつかったということ。くれグレもお大事にしてほしいものです。
☆『私の街』
イランの女性監督ティナ・パクラバンさんの作品。アジア インターナショナル部門 優秀賞 と東京都知事賞はこの作品が受賞したようです。
電話ボックスが立ち並ぶ中東の荒れ果てた広場。人々が受話器にむかって懸命にがなりたてる中、背後では轟音が響き・・・
猫と日常の作品でのんびりしたあとにいきなりハンマーで殴られるような構成でした。今プログラム中8分と最短でしたが、その短さがかえってインパクトを増しているような。
血や人体損壊のシーンこそないものの、きっちり映像でもって戦争の残酷さを訴えた1本。
☆『心臓の弱い男』
また日常?に戻って。新鋭橘剛史監督によるコメディ。
異様なまでに心臓が弱い一人の青年。かわいい女の子を見ただけでも危篤状態に陥ってしまうため、ほぼ老人しかいないド田舎に越してくるのだが…
青年のつけているペースメーカーの音声と、最後のセリフ以外ほとんど言葉のない映画。ピュアな恋愛描写とあいまってチャップリンやキートンの名作を思い出させます。
なぜそういった無言劇にこだわったのか。最後の一言を際立たせたいというのもあると思いますが、監督ご自身の言葉によると「世界の言葉の通じない人々にもわかってほしいから」とのこと。なるほど。
「初めて自分の作品が映画館でかかって嬉しい」という監督さんがめっちゃキラキラしててまぶしかったです。あとぽわーっとした感じのメインヒロインさんもかわゆうございました。
☆『モン族の姉妹』
今度はベトナムの作品。外国人の観光客のガイドをしている姉妹が主人公。初めて仕事に出る妹は、お客である白人の青年に喜んでもらおうと一生懸命気を利かせるが・・・
切ない系のお話が三作続いたあとに、「お、ようやく心がほっこりするような作品が」と思ったのもつかの間。おはなしはこっちが「あー そういう方に行かなきゃいいなあ」という方向へゆるゆると進んで行きます。
んー もー なんつーか。生きていくのは大変ですね ただいたいけな女の子に弱みつけこむような男にはなりたくないものです。ほい(感想がまとまりません)
☆『死神失格』
最後を飾るのは先の沖縄国際映画祭でも上映された特別招待作品。
いままさに患者が腹を切られている手術室で、突如として異変が起きる。患者とその妻、医師とその助手が戸惑う中、いきなり現れたヘンテコな男は言った。「わたしは死神です。申し訳ありませんが皆さんのうちでどなたか1人亡くなる方を選んでいただきたいのですが…」
こう書くとちょっとホラーっぽいですが、死神役がくどいメイクのなだぎ武さんなので笑えることはあっても怖いということはまったくありません。
製作に吉本新喜劇が関わっており、出演者も田中要次氏、中越典子さんといったテレビでおなじみの面々なので、先の四本にくらべると商業的な印象が強い1本。さすがその筋のプロが作ってるだけあって、「なんとか笑わせてやるでー!」という気迫に満ちています。特になだぎ武さん演ずる気弱な死神が「申しわけありませんでしたーーーッ!!」と渾身の土下座を見せるシーンは思い出すとじわじわじわじわ来ます。
短い時間の中で二転三転して観客をひっぱっていく脚本も見事でした。
ちなみに2010年に観たプログラムの記事はコチラ。2011年に観たプログラムの記事はコチラ。時の経つのは早いものです。来年もまた観られるといいな…
携わられたスタッフのみなさん、どうもお疲れ様でした~
Comments
伍一くん☆
わー、ちゃんと書いていて偉いですねー
私は画像が手に入らなかったこともあり、ちょっとパスさせてもらっちゃいました。
翔さんのチャレンジ心いっぱいの作品ですが、監督がご挨拶の時に言っていらしたように、私もちょっと酔ってしまいました。うー
そんなわけで、その辺りもあって書くのが・・・
モン族の姉妹、ぐっときました。
のどかな風景の真逆の展開に、一生忘れられない作品になったかも。
Posted by: ノルウェーまだ~む | June 19, 2013 11:58 PM
>ノルウェーまだ~むさん
こんばんはです
や~、例によって観てから二週間以上も経っての記事になってしまいました
まだ~むもご覧になられたんですね。表参道(原宿?)の方は例によって大盛況だったようで。こちらは半分くらいの客入りだったかな
まだ~むはぐるぐるしちゃったようですが、猫好きには嬉しい作品でした
そして『モン族の姉妹』が気に入られたようで。そうですね。この作品は男より女性の方がいろいろ感じるところがあるのかも。貧しい地域の女の子は、いやでも早く大人になってしまうのでしょうね
Posted by: SGA屋伍一 | June 20, 2013 10:20 PM