« 失われた時を留めて 松江哲明 『フラッシュバック・メモリーズ 3D』 | Main | 残りものには福があるか ウィリアム・ユーバンク 『地球、最後の男』 »

May 07, 2013

死霊の舞台裏 ドリュー・ゴダード 『キャビン』

Cabin1昨年ノルウェーまだ~むさんのお誘いで参加できた「したまちコメディ映画祭」。わたしが観たのは『レミントンとオカマゾンビの呪い』という作品でしたが(笑)、映画秘宝のプッシュでとりわけ注目を集めていたのが『キャビン・イン・ザ・ウッズ』という作品でした。あらすじを聞くとコテコテのホラーっぽいのですが、どうしてこれがコメディ映画祭に・・・と不思議に思ったものでした。その作品が『キャビン』という邦題で静岡東部でも上映されたので、先日おっかなびっくり観てきました。ご紹介いたします。

奥手のガリ勉ちゃんダナ。体育会系のカート。「いいひと」という言葉がよく似合うホールデン。お色気ムンムンのジュールス。ラリリで変人のマーティ。仲良し大学生の五人組は、メンバーの親戚が持っているという山奥の別荘へ旅行に出かける。途中気味の悪いオヤジに遭遇したものの、すぐに忘れて大自然の中はしゃいだりいちゃついたりする一行。しかし何かに導かれるように山荘の地下室に下りていった時から、彼らの周囲で恐ろしい現象が起こり始める・・・

はい。ここまで非常に気を使って説明してみました。これだけだと実によくあるホラー映画の導入部であります。ただこの映画わたしが観てみようと思ったもうひとつの理由は「とにかく意表をつかれる」という評判を聞いたから。以下少しずつ内容に踏み込んでいきますので、先入観なしで観たいという方はこの辺で避難してください。





そんな前知識で映画を観始めると、ファーストシーンからいきなり面食らいます。どこぞの研究所のようなところで「ゆうべ女房と・・・」みたいな会話を交わしている学者らしきおじいさん二人。ほんでこの施設には他にも研究者らしき人たちがわさわさいるんですが、彼らは先の若者たちを隠しカメラでずーーーっと観察してるんですね。一体彼らはなんでそんなことを? 映画でも作っているのか? ヴァーチャル実験でもやっているのか? しかもそんな実験が世界の各地で時を同じくして行われているようで・・・ 謎は深まるばかりでございます。

とりわけ印象に残ったのがこのじいさんたちのはしゃぎっぷりでございました。スクリーンの中で若者たちが生きるか死ぬかのピンチに面しているというのに、「やったー♪ いえーい♪」とそれこそファンがホラー映画を観ているかのようなリアクション。
人間ってそういう面がありますよね。遠くで悲劇が起きてるとそれなりにかわいそうに思うかもしれないけれど、自分と直接関係なければ野次馬根性で楽しんでさえいる。まあチキンとしては怖そうな場面になると、決まってのんきなおじいちゃんたちがアップになったりするので正直助かりました。
ただじいちゃんらが若者たちと全く無関係なのかといえばそんなことはなく。ヤング(死語)たちの予想外の行動が、いつしかゲーム感覚でいた観察者たちの安全を脅かし始めます。ひたすら観るだけの立場に慣れてしまうと、いつしか足元の危機すら実感できなくなってしまう・・・そんな教訓も得られそうです。

全体のからくりがわかってきてからもお話はさらに暴走を続けます。この辺はさすがに宣伝さんが「びっくりするから!」と見栄を切っただけのことはありました。えーっ こんなもんどうやって作ったんだろう・・・という疑問もわくのですが、これでもかという作り手のサービス精神には感服いたしました。
(こんな残酷なもの、楽しんじゃっていいのかなあ・・・ でもやっぱりホラー大好きなんだよね、オレ!) そんなスタッフの心の声が聞こえたような気がしましたw

Cavin2コテコテのホラーと見せかけて手の込んだパロディだった・・・という点では昨年の『タッカーとデイル』を思い出したりもしました。特に出だしなどは『キャビン』とまったく一緒なのであわせて観ると面白いと思います。
『キャビン』はこれからまだ幾つか地方都市を回っていくようです。変わった展開の映画が観たいという方に特におすすめ。ただパロディとはいってもそれなりに血もドバドバ出るんで、その辺は覚悟しといてください・・・


|

« 失われた時を留めて 松江哲明 『フラッシュバック・メモリーズ 3D』 | Main | 残りものには福があるか ウィリアム・ユーバンク 『地球、最後の男』 »

Comments

伍一くん☆
その節はどうも~

予想外の展開は楽しめた?予想外の更にその上をいくってかんじ、私はとっても面白かったわ。
コメディ?であってホラー、ホラーだけどコメディは「レミントン~」と同じなのかもね。

伍一くんはホラーダメなんだっけ?
そんなチキンとは知らなかった~~

Posted by: ノルウェーまだ~む | May 08, 2013 11:49 PM

>ノルウェーまだ~むさん

その節も先日もお世話になりましたー
わたしはネットで幾つかチョイバレにぶつかってしまったんですけどね(笑) 終盤のどっかんどっかんには本当に楽しませてもらいました
ところがこれが筋金入りのホラーファンにはあんまり評判よくないんですよね。ちゃんと怖がらせなきゃダメってことでしょうか

>そんなチキンとは知らなかった~~

はいはいチキンですよー フライドチキンも大好きです!

Posted by: SGA屋伍一 | May 10, 2013 10:26 PM

こんばんは~~♪
わ~い!久々に伍一さんのブログにお邪魔出来ました。

これ、面白かったね~。
いえいえ、私ホラーは苦手なんですよぉ。
でもあの謎のおじさんのおかげで楽しめました。滅茶苦茶セキュリティ甘かったですけど~大汗
日本ってどんな時も真面目に取り組んで優秀という位置づけなのかな~とかイロイロ面白かった。
けど、やっぱりゾンビは苦手・・・ゾンビにはやられたくないなぁ~。なら何がいいかって言われても思い浮かばないけど・・・

Posted by: マリー | May 29, 2013 08:37 PM

>マリーさん

こんばんはー!
最近さびれっぱなしの当ブログなので(^^;お越しいただいて大変嬉しいです
わたしもホラー苦手ですね。特に映画館で観てるとちびりそうになることもしばしば。そんなわけで和ませてくれたおじいちゃんや変人の彼には感謝感謝でございました
日本はほら、電化製品の品質とかで世界から定評があるじゃないですか。だから几帳面な印象があるんでしょうかね? 結局失敗してましたけど
ゾンビといえば先日観た映画では「ゾンビだって人を襲うとは限らない」というセリフがありました。いや・・・ それはすでにゾンビではないのでは・・・

Posted by: SGA屋伍一 | May 29, 2013 11:40 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 死霊の舞台裏 ドリュー・ゴダード 『キャビン』:

» 「キャビン イン ザ ウッド」コメディ映画祭?定番なのに斬新ホラー [ノルウェー暮らし・イン・原宿]
定番なのに、こんなにも斬新! ロンドン映画サイトでも、これほどB級っぽい映画が何故★4つなのかと、不思議に思って日本公開を心待ちにしていた1本。 お約束満載なのに新鮮な驚きの数々・・・・ ゾンビホラーなのに、下町コメディ映画祭でも『映画秘宝』のコーナーでチケットすぐに完売してしまうの納得! ホラー好き、特にゾンビ好きなら是非♪... [Read More]

Tracked on May 08, 2013 11:50 PM

» 『キャビン』 [pure breath★マリーの映画館]
            5人の若者、バカンス、山小屋                  その先は絶対に予想出来ない。定番を打ち破るマルチ・レイヤー・スリラー 『キャビン』 監督・脚本・・・ドリュー・ゴダード 出演・・・クリステン・コノリー、クリス・ヘム...... [Read More]

Tracked on May 28, 2013 09:23 PM

» キャビン [いやいやえん]
いろんなホラー映画のオマージュがそこかしこに…と思っていたらば怒涛の後半。 ホラー映画の定番、若者グループが襲われる…といったベタだと思われるような設定をあえて踏んだ上で、それをことごとくぶち壊していくといった展開。 要は、神へ生贄を捧げるために組織がシチュエーションを練って若者たちを殺そうとするという割と単純で大味な設定。登場人物の行動も単純だった。後半のモンスター大集合は、色々な作品へのオマージュのオンパレード。おバカ展開とわかっていつつも、テンションがあがっちまったい。 若者たち... [Read More]

Tracked on September 05, 2013 11:47 PM

« 失われた時を留めて 松江哲明 『フラッシュバック・メモリーズ 3D』 | Main | 残りものには福があるか ウィリアム・ユーバンク 『地球、最後の男』 »