進撃のジャイアントキリング ブライアン・シンガー 『ジャックと天空の巨人』
ティム・バートンの『アリス・イン・ワンダーランド』の成功を受けてか、アメコミのヒットシリーズを手がけた監督のファンタジー映画が二本続きました。一本は先日紹介したサム・ライミの『オズ 始まりの戦い』。そしてもう一本が本日紹介するブライアン・シンガーの『ジャックと天空の巨人』です。
昔々、たぶんイギリスで。かつて天空から凶暴な巨人が地上を襲いに来たことがあった。だが王と僧侶の知恵と勇気で巨人たちは空に送り返される。
それから長い年月が経ったある日、農夫のジャックは市場で何者かに追われてる僧侶から、馬と引き換えに「すごい力を秘めている」という豆をもらう。案の定養父から激怒され、しょぼくれるジャック。そんな彼の家にまたしてもワケありそうな客が雨宿りに来る。客は家の事情で城から逃げ出した王女だった。巨人の話が好きだったせいか意気投合するジャックと王女。そんな時床に落ちた例の豆に雨滴が当たり、豆はたちまち天に届くほどにつるを伸ばし始める。
・・・そしてラピュタ(違)に住む怪物どもとの一大バトルが始まるわけです。原作は言うまでもなく有名な童話『ジャックと豆の木』。予告を見ていて「『ジャックと豆の木』に巨人なんか出てきたかな?」と思ったのですが、ネットで調べてみたらちゃんと出てるみたいですね。なんせも~だいぶ昔に読んだ話なもんですから。
ただ今回の映画は『豆の木』だけでなく、もうひとつ英国で親しまれている『巨人退治のジャック』という童話もリミックスしているようです。これまたジャックという農夫と巨人が出てくる話だそうで・・・ まぎらわしいぜ! もう!
整理するとジャックが空で巨人から逃げる話が『ジャックと豆の木』。地上で巨人をぶち殺す話が『巨人退治のジャック』(二人のジャックは別人)。そんでこの二つを無理やり混ぜたのが今回の映画・・・と。
先の『オズ』は幼女にも安心して見せられるほのぼの穏やかなファンタジーでしたが、『ジャック』の方は原題に「Slayer」と入ってるくらいなのでバリバリ殺しがメインのお話です。
わたくし前にある記事で「『パイカリ』『タイタンの戦い』がヒットして『三銃士』『プリンス・オブ・ペルシャ』が微妙な結果になったのは、後者にグロ要素が乏しかったから」と書きました。その論が正しいとすればグロ要素満載のこの映画なんか大ヒットして当然なはずなんですが、これが日本はもとより本国でもメタメタの大赤字となってしまったようで。
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訂正。グロ要素さえあればヒットするってもんでもないようです(当たり前だ)。
でもグロ大好きな男児たちにとっては、なかなか面白い映画になっていたと思います。この映画の醍醐味は特に超能力ももたないボンクラ青年が、自分の十倍以上はある怪獣どもを倒していくところにあります。やっぱりちっこい者がでっかい者をぶったおすというのってなんとも言えないカタルシスがありますよね。マンガ『進撃の巨人』がヒットしてるのもその辺の理由によるものかと(わたしゃまだアニメ2話まで見ただけなんですけど)。
しかし常人が怪獣に立ち向かっていったら普通はぺしゃんこにされるのがオチです。では一体どうやって倒すのか? そこでものを言うのが昔話でおなじみの「とんち」ですw いやあ、ほんととんちも馬鹿になりませんね。一休さんや彦一どんのそれに比べるとずいぶんと殺伐したとんちでありましたが。
こういう「ちっこいもんがばかでかいもんを倒す話」、他に何があったかな・・・と考えてみたら和田慎二先生のマンガ『ピグマリオ』がありました。あと映画化もされた『GANTZ』にもよくあります。万が一怪獣や恐竜に襲われたときにうまく生き延びるために、この辺のマンガ。映画を研究しておくことをおすすめします。
まあわたしも正直言うと「しょせん『豆』の話でしょ」と小馬鹿にしておりましたが、けっこうこの豆描写がものすごくて。本当にこれほど豆ひとつでドキドキワクワクできる映画もそうないですよ! ビールに枝豆で観賞すれば一層味わい深いかもしれません。
『ジャックと天空の巨人』は大コケといってもまだ一応上映してますね。あと一週間くらいはやってそうです。
あとこの手のファンタジー映画ではジェレミー・レナー主演の『ヘンゼルとグレーテル』が今年1月に全米で公開されているのですが、日本での配給がなかなか難航しているようで。まあ今『ヘンゼルとグレーテル』を日本の子供たちが熱心に見たがるか言えばねえ。うーんうーん・・・
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