新・マカロニ用心棒 クエンティン・タランティーノ 『ジャンゴ 繋がれざる者』
個性的な血みどろ映画で多くの熱心なファンを有するクエンティン・タランティーノ。その最新作は彼が初めて手がける西部劇。もちろん曲者のタランティーノのこと、普通の西部劇で収まるわけがなく・・・ ともかくご紹介しましょう。『ジャンゴ 繋がれざる者』です。
舞台は南北戦争に近い時代のアメリカ。無慈悲な商人に連れられて雪山を歩いていた奴隷ジャンゴは、突然現れた風変わりな賞金稼ぎシュルツの手によって自由を得る。標的の顔を知っているということでジャンゴを買い入れたシュルツだったが、腕っ節も射撃も達者なジャンゴにほれ込み、やがて彼に仕事のパートナーを任せるようになる。そしてどこかへ売り飛ばされたジャンゴの妻の救出まで買って出るのだが・・・
わたしもそんなに詳しいわけではないのですが、西部劇にも大きくわけてわりかし上品な「本家米国系」と、血みどろグジャグジャドロドロな「マカロニ系」とがあるようです。
「マカロニ系」とは60年代から70年代にかけてイタリアで作られた一連のウェスタンのこと。イーストウッドの出世作『荒野の用心棒』を初め、『続・荒野の用心棒』『続・夕陽のガンマン』『殺しが静かにやって来る』などの名作が作られました。マカロニ・ウェスタンの特色といえばなんといっても暴力描写が情け容赦ないこと(たまたま観た『荒野の1ドル銀貨』はそれほどでもなかったけど)。そういえば『カリギュラ』『ソドムの市』『食人族』もこのころのイタリア映画でしたっけ。どうして一昔前のイタリアってこう・・・ まあそれはともかく、この度の『ジャンゴ』はまさしくマカロニ・ウェスタンにオマージュを捧げた作品であります。そもそも「ジャンゴ」というのは『続・荒野の用心棒』初めマカロニ・ウェスタンで何度か用いられてきた主人公の名前だったりします。
そしてスイカがカチ割れたようにバシャッと四散する血しぶきも、明らかに本家アメリカン西部劇とは違うノリでありました。
しかし何から何まで旧作のコピーではなく、タランティーノ独自のアレンジも十分に利かせられています。まず目を引くのは当時奴隷だった黒人が主人公であるということ。このジャンゴの目を通して、当時アメリカでまかりとおっていたであろう残酷な奴隷への虐待がこれでもかというくらい語られます。
あと序盤はガンガンテンポよく進んでいくんですが、中盤になると彼お得意の長い会話シーンが多くなり、人によっては「ちょっとたるいなあ」と思われるかも。しかしまあこれが彼の個性といえば個性。ちょっとスイッチを切り替えて、イヤミタラタラのディカプリオの怪演ぶりを楽しみましょう。ディカプリオといえばこの映画のプレミアで来日したとき環境保護について熱く語っていたそうですが、そういうこと言うの役のイメージが崩れるんでやめてほしいと思いました。
そのディカプリオもよかったですが、わたしがとりわけ「面白え」と思ったのがジャンゴの師であり友ともなるシュルツ医師。もともと歯科医だったのに賞金稼ぎとなり、当時蔑まれていた黒人にさえも敬意をもって接するという実に興味深いキャラクター。彼を主人公にしたスピンオフを作ったら相当面白いものができると思うんですが。
たぶん作中で監督に一番近い存在がこのシュルツなんだと思います。ドンパチや黒人スターが大好きで、ひょうひょうとしていて、自分の欲望に忠実。というか、我慢が苦手w そんなところがよく似てます。
まあ米国とは無関係なわたしなんかは無邪気に楽しめるわけですが、こういう自国のもろ人種問題にふみこんでいる(そして表向きはエンターテイメントでもある)作品を観て、アメリカの皆さんはどんな気持ちになったのだろう・・・とそこが少し気になりました。今のところどっかの劇場で暴動が起きた、という話は聞いてませんが。
『ジャンゴ 繋がれざる者』は関東あたりではそろそろ終わりそうな雰囲気なんですが、東北や北陸、九州・四国ではこれから本格的に公開されるようです。
『ランゴ』『カウボーイ&エイリアン』と変り種が続く西部劇。さらに予想の斜め上をいくような新作を期待してます。
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マカロニウェスタンってトコが
なんともタラちゃんぽい作品です。
165分は、結構長いかな〜って
思っていたけど、そんなに長さは
感じませんでした。
南北戦争前のアメリカ南部。奴隷ジャンゴ(ジェイミー・フォックス)は、
賞金稼ぎのキング・シュルツ(クリストフ・ヴァルツ)の
手助けをする約束で自由の身となる。
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ストーリーは概略の通り。いつもの長尺のタラちゃん映画、ただし西部劇です。西部劇ってところであんまり見る気がしなかったんですけれど、ブロガーさんの評価が割りと高いのでみることにしました。
正統な西部劇ではないので、見やすかったと思います。タラ節も勿論ありで、いらない部分は思いっきり割愛するところが潔いと思います。グロ描写もありで、無駄に飛沫してます。
ジェイミー・フォックスとクリストフ・ヴァルツさんが主人公側で、ディカプリオとサミュエル奴隷頭が悪役って配役も面白いよね。
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好き嫌いが分かれる作品だと思う。でも私は好き。虐げられた運命にある者が、偶然と必然に翻弄されながら、己れの道を切り開いていく。それも又運命。逆襲に満ちた異色の西部劇、といったところか。
冒頭、鎖に繋がれて行軍するジャンゴ(ジェイミー・フォックス)のシーンから始まる。ジャンゴは奴隷として生涯を送る定めにあり、その時も奴隷主から別の奴隷主に転売されて行く所だった。ところが道中、キング・シュルツと名乗るドイツ人(クリストフ・ヴァルツ、この作品で第85回アカデミー賞助演男優賞を受賞)が現れ、ジャン... [Read More]
Tracked on January 16, 2014 02:19 PM
Comments
伍一くん☆こちらにも
「ジャンゴ~」面白かったねー
さすがタランティーノだったわ。
シュルツさんは本当に何処で見てもいい味を出しているよね。
スピンオフも色々話を膨らませられそう~♪
それにしても映画の内容はともかく、映画と関係ないことを宣伝に来て熱く語るのって、どうなんでしょう??
ほんと、そういうのガッカリしちゃうね。
Posted by: ノルウェーまだ~む | April 03, 2013 12:43 PM
>ノルウェーまだ~むさん
こちらにもありがとうございます。最近まだ~むに支えられてる当ブログであります(^^;
ぶっちゃけジャンゴよりもシュルツさんの方が俄然キャラ立ちしてますよね。この一作だけで終わらせてしまうのはあまりにも惜しいです
ところでシュルツと言えば思い出すのはスヌーピーの作者。もしかしてなにかつながりが・・・!?(ないない)
まあプリオ君は来てくれただけでよしとすべきかもしれません。これ、ネタとして書いたんで本気で不満たれてるわけじゃないんですよ(賛同してくれたのに申し訳ありません・・・m(_ _;)m
Posted by: SGA屋伍一 | April 04, 2013 10:43 PM
伍一☆
タラの作品はどれをみたかなー??
今回は本人の愛する西部劇をやっととれたけど
自己満足に終わらない所がやっぱりすごいなと。
そのレオの舞台挨拶みたんだけど
環境問題のことは公の場では語ってないよ☆
インタビュアーに語ったのだと思う。
エコに熱心だから仕方ないかもね〜
やっぱりヴァルツさんとサミュエルはタラお気に入りだからおいしいとこもってったね♪
Posted by: mig | April 08, 2013 11:03 AM
>migちゃん
こんばんばん。えらそうに書いてるけど実はタラさんの作品は未だに『イングロリアス・バスターズ』しか観てないというね・・・ 出演作なら『スキヤキ・ウェスタン ジャンゴ』もある
うん、エコに熱心なのは素晴らしいんだけどそのインタビューが観ている間もひっかかって、幾らヤなヤツを演じていても「でも本当は感心な人なんだよね~」という思いがぬぐえずw まあ京都太秦にも「悪役を演じる人ほど根は善人」ということわざ?があるらしいけど
ヴァルツさんはやっぱりタラさんが撮ると輝いてるね。『三銃士』『グリーンホーネット』ではこういう輝きはなかった・・・
Posted by: SGA屋伍一 | April 08, 2013 10:50 PM
マカロニウェスタンなのに、黒人とドイツ人の元歯科医ってトコが
なんともタラちゃんぽくって面白かったです。
特に、シュルツさんは良かったですよね〜。
私もシュルツさんが、歯科医から賞金稼ぎになったくだりの
スピンオフがぜひ見たいです!
あのユラユラの歯型の金庫の馬車も最高でした!
Posted by: ルナ | April 09, 2013 12:37 AM
>ルナさん
こちらにもお返しどうもー
製作はアメリカでヴァルツさん&ディカプリオはドイツ系、監督はイタリア&アイルランド系・・・ マカロニというか多国籍(無国籍?)ウェスタンでしたね
シュルツさんはきっと歯医者にむいてなかったんだと思います(笑) なんか彼に虫歯の治療してもらったらすごく痛そうな気がする・・・
そうそう、ツイッターで「スピンオフを作るならタイトルは『シュルツ 敗れざるハイシャ』で」とつぶやいたらそれなりにウケました
Posted by: SGA屋伍一 | April 09, 2013 11:15 PM