西欧ふしぎ発見 ラウル・ルイス 『ミステリーズ 運命のリスボン』
アカデミー賞関連映画が続々と公開されているこのごろ。この辺の作品は長尺のものが多いですよね。わたしはできれば映画は二時間ちょうどくらいが望ましいと思ってるんですが、先日沼津でかかっていたこの映画は上映時間なんと4時間半。普段なら「じゃあサイナラ」となってしまうところなんですが、面白そうだしたまたま時間も空いたので行って参りました。『ミステリーズ 運命のリスボン』ご紹介します。
19世紀ポルトガルはリスボン。生まれたころから教会で育った少年ジョアンは姓を持っていなかった。自分の出自について尋ねても育ての親であるディニス神父は何も教えてくれない。ある時ケンカをして気絶したジョアンは、夢うつつで枕元に一人の女性が立っていることに気づく。彼女こそはジョアンの母親だった。やがて彼は自分がなぜ親から引き離されて育てられたのか、その秘密を徐々に知ることになる。
みなさん、ポルトガルというと何を連想されるでしょうか。スペインの横にへばりついてる(失礼)とか、鉄砲伝来とか・・・ そんなもんでしょうか。一時は海運国としてはぶりが良かったものの、イギリスに追い抜かれてどんどん失速していったポルトガル。これはそんな時代のお話です。植民地がそれなりにあるせいか貴族たちは優雅な暮らしをしてるのですが、フランスなどの大国にくらべるとやや小ぢんまりしてる感じが出ておりました。
最初お話は先ほど述べたジョアン君を中心に進んでいきます。ところがやがてその中心はジョアンの母になり、さらにディニス神父になったり、はたまたディニス神父の父親になったり(!?)。四時間半という尺の余裕か、ストーリーの語り手が舞踏会のお相手のようにくるくる変わっていきます。さらにはポッと出てきた何気ないキャラクターがあとでかなりの重要人物になったりするので、まことに油断なりません。
そんな風に入れ替わり立ち代り登場するオシャレな男女たちは、奇妙な縁でむすばれていて、みなで複雑な網目をこしらえているかのようです。ただこの網はきれいな長方形になっているわけではなく、あらぬ方向へ広がったり途中で不自然に切れていたりもしますw
そんな迷宮じみた大作をこしらえたのはチリ出身のラウル・ルイス監督(一応原作となる小説があるとのことですが)。wikiの項目を見ると「1960年代から精力的に活動しているが、日本公開作は少ない」とありましたw
以下は結末に触れていますのでご注意ください。
実はこの映画、4時間半かけて「は!? 夢オチ!?」とも取れるようなシーンで終わってしまいます。一応全体的には楽しめたお話だったので頭に来たりはしませんでしたが、少々モヤモヤしたものを感じたのも確か。
ただあとでルイス監督がこの作品を撮ってほどなくして亡くなられたと知り、なんとなく腑に落ちた気がしました。もしかすると遠からぬ死を予感したルイス監督は自分の人生を振り返るとともに、「人の一生なんて夢見たいなもの・・・」と思われたのかもしれません。
いやいや、自分がこれまで映画館で観た中で、一番長い作品でした。強いて言うなら『チェ』二部作を一本の作品として見るなら同じくらいの長さになりますが、あれはやっぱり2回にわけて観ましたので。しかし世の中さらに上には上があります。5時間とか8時間とかいう作品もそれなりにあるようで・・・ いつかチャレンジしてみたいものです。なんてことはあんまり思いません。
『ミステリーズ 運命のリスボン』はもう大体上映が終わってしまったようで、あとは北海道、沖縄、静岡などで公開が予定されております。そして5月にはDVDが出るとのこと。エレガントな人間模様が好みという方にお勧めです。
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