小さな恋のノスタルジィ ウェス・アンダーソン 『ムーンライズ・キングダム』
これまた個性的な作風で知られるウェス・アンダーソン。そのアンダーソンがなぜかコテコテダイ・ハードのブルース・ウィリスと手を組んで、大人向けの子供映画をこしらえました。『ムーンライズ・キングダム』紹介します。
1960年代のニューイングランド。ボーイスカウトのキャンプから、隊きっての問題児サムが忽然と姿を消した。養われている家庭に不満を持つ彼は、運命の恋の相手・スージーと駆け落ちを決行したのだ。手に手を取り合って、険しい野山を乗り越えていく二人。そんな彼らをボーイスカウトの団長&メンバー、しょぼくれた警察署長、怒れるスージーの父親らが後を追う。
アンダーソンさんの作品はこれまで『ダージリン急行』『ファンタスティック・Mr.フォックス』と観てきましたが、今回はこれまで以上に「止め絵感」を強く感じました。カメラはスライドしていくんですけど、登場人物があんまり動きません。動いてもかなりゆっくりです。表情も固定してます。アクティブに動いてるのはビル・マーレイ演じるヒロインの父親くらい。しかしそうしたまったり感が映画にまるで一風変わった絵本のような効果を与えていました。
60年代を象徴するレトロな小道具・・・無線機、レコードプレーヤー、当時のファッション、乗り物etc・・・が一層絵本っぽさをかもし出していました。実際アンダーソンさんに絵本を作らせたらけっこう面白いものができるんじゃないかな?と思います。
あえて年代を現代でなく60年代に設定したのはどういう意味があるのでしょう。わたしは単なる監督の趣味だと考えてましたが、あるインタビューによると「人々がイノセンスを保っていた最後の年代だから」ということなんだそうです。そういうもんだったんですかね?
それはともかく主人公のサム君とスージーちゃんは子供だから、ということもあるでしょうが、確かにイノセンスを形にしたようなキャラクターです。一度決めたら迷わない。どんな妨害があろうとずんずん前に進んでいきます。
そんなサム君の姿がなんとなくアンダーソン監督の姿勢と重なります。確かに風変わりではあるけれど、彼は自分の趣味にどこまでも忠実で、周囲の流れを気にすることなくマイペースで映画作りに邁進しております。
そしてサム君の純粋さがいつの間にか多くの人々をひきつけていくように、ウェスさんの作品にも本当に熱心なファンが数多くいます。まあ中にはこの映画に出てくるいじめっ子のように、どうしてもソリが合わない、という人もいるでしょうがw
とりわけインパクトがあったのはやはりカーラ・ヘイワードちゃん演じるスージーですね。子供なのにくっきりメイクしてて最初から最後まで仏頂面。どちらかといえばホラー映画の方がしっくり来るキャラクターのような気もしますが、全体的にほのぼのしたこの作品の絶妙なアクセントになっていました。バイオレンスな作品に多く出てるブルース・ウィリスやエドワード・ノートンがいい感じにしょぼくれてたのもなんか面白かったです。
『ムーンライズ・キングダム』は現在全国の一部の映画館でぼちぼちと上映中。子供のころ図書館に入り浸るのが好きだった人におすすめ。
Comments
伍一くん☆
これは上手!男の子の絵、よく似ているね。
ほのぼの系の映画で、伍一くんが好きそう・・・
私はDVDで観ようかな☆
Posted by: ノルウェーまだ~む | March 08, 2013 11:51 AM
>ノルウェーまだ~むさん
誉めてくださってありがとうございます。この男の子、知り合いのお子さんに本当にそっくりで、写真を無断アップして「こんなにそっくり!」と証明したいレベルでしたw
まだ~むはあまり興味むかないようですね(というかお忙しいのかな?)。趣味の世界ではありますがまだ~むもきっと気に入られると思いますよ
Posted by: SGA屋伍一 | March 08, 2013 11:04 PM
観たのねー、
翔とかゴイチはウェス作品好きなのわかるけど
まだーむはあまり向かない気がする
笑
私は今回のはまぁまぁ。
天才マックスの世界とか、ロイヤルテネンバウムズ
絶対好きそうだから観て。
その二つはオススメ
Posted by: mig | March 09, 2013 08:55 AM
>migちゃん
む。まだ~むは絵本風は苦手なのかしら・・・
わたしはウェス作品そんなに観てなくて上にあげた中では『ダージリン急行』が一番良かったかなあ。狐父さんやこの作品も良かったけどね
天才マックスとロイヤル天然も気になってるんだけど、特に興味あるのが『ライフアクアティック』という潜水艦の話。ただこれ、あんまり評判よくないね
Posted by: SGA屋伍一 | March 09, 2013 09:37 PM