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February 16, 2013

仲良きことは難しきかな 西加奈子・廣木隆一 『きいろいゾウ』

1これまで度々奇妙な縁で追いかけてきた自主映画作家の片岡翔氏。その片岡氏が脚本を手がけた作品が、全国規模で公開されるというので張り切って観て来ました。西加奈子先生の小説を原作とした『きいろいゾウ』、ご紹介します。

小説家のムコとその妻のツマは、結婚してまもなく田舎の古い家に越して来る。子供のようなツマは時々感情をもてあまして落ち込んだりするが、優しい夫と穏やかな日々を送っていた。隣の老人アレチさんや、登校拒否の小学生の大地君らも、夫婦の暮らしに笑顔をそえる。だがムコの哀しい過去が徐々に明らかになるにつれ、二人の間にぎこちない空気が生じ始める。

ムコ氏をツマ嬢も、とても繊細というか、「弱い」人たち。ツマは幼いときの病気が原因なのか、本当に子供がそのまま大きくなったような女性。ムコ氏はとても慕っていた叔母の悲劇的な死がショックで、人の死に接すると深く動揺します。しかし弱いからといって、それは悪いことではありません。むしろ強くて無神経でいたずらに人を傷つけるような連中の方がよほどやっかいな存在といえます。すべての田舎がそうではないだろうけど、幸い舞台となる場所は弱い二人にとってうってつけの暖かく優しい土地でした。またムコとツマも一方的に与えられるだけでなく、悩める大地君や田舎の老人たちに元気をわけていきます。しかし人生、時には哀しさと向かい合わなければならないこともあります。そしてその哀しみが二人の間に溝を作っていきます。

お互い愛し合ってはいても、コミュニケーションというのは難しいもの。まして出会ってろくに話す間もなく結婚したムコとツマはお互いの間に知らないことがたくさんあります。デリカシーのないわたしからすれば「普通に打ち明けりゃいーじゃねーか」などと思うわけですが、きっと「話したら相手を失ってしまうのでは」と思うとそう簡単にはいかないものなのでしょうね。そういや自分は「何が何でもこの人だけは失いたくない」という経験をしたことがないな。ふうううう ともかくそうやって試練を乗り越えていくことで絆というのは深まっていくものなのでしょう。

このあと映画と原作はどのくらい違うのかと思って小説の方も読んでみました。主な流れはほとんど一緒でしたが、小説の方は文庫で約500ページとなかなかのボリュームなので、細かいエピソードが幾つか省略されております。で、小説はムコとツマが交互に一人称で語っていく構成なので、特にツマの方は映画と違ってえらい饒舌な印象を受けます。ですからその分映画よりも、彼女が何を思っていたのかわかりやすく伝わってきます。しかし映画は映画で登場人物が何を思って行動してるのか考えなが見ると、とても楽しめると思います。それこそ男女間のコミュニケーションの参考にもなるでしょう(笑)
あとわたしこれは映画ならではだなあ、と感じたのが、時折挿入されるツマが愛読してた絵本のパート。スクリーンいっぱいにこういう水彩っぽい絵が動く映画というのはあまりないと思うんですよね。そしてただ個性的なだけではなく、作品にマッチした温かみを胸に残していってくれました。

偶然なのかそういう資質を買われたからなのか、これまでの片岡氏の世界といろいろ通じるものがあったのも楽しかったです。屈託のない、でもそれなりに色々悩みの多い子供たちの描き方とか、残酷さと優しさが入り混じったムードなどね。これからもさらなる活躍を期待しております。

20130215_220846『きいろいゾウ』は現在全国の劇場で公開中です。書き忘れてましたが主演が宮崎あおいさんと向井理君。二人のファンはもちろん、動物好きにもおすすめです。


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Comments

伍一くん☆
出会ってすぐに結婚した二人には、ムコのように過去が無くとも必ず訪れる大きな山でしょうねぇ。
知り合って何年もしてから結婚しても、やっぱり知らなかった現実とか、言えなかったこととか、言う必要ないと思っていた大切な事とか・・・・絶対ありますからね。
それらに折り合いをつけて、互いに諦めながら、認めながら成長していくのが夫婦ってものですわ。
時期的にぴったり、翔さんらしい繊細な夫婦入門編ってかんじもしました。

Posted by: ノルウェーまだ~む | February 17, 2013 at 11:45 PM

>ノルウェーまだ~むさん

円満な夫婦生活を送られているまだ~むがおっしゃると説得力があります・・・
赤の他人が一緒になるわけだし、お互い失敗や欠点もあるだろうし、そこを包容していかないととても続かないのでしょうね。わたし独身ですが・・・
あおいちゃんの方は先日悲しいお別れがありましたが、その分演技というか人間的な深みが増したように思いました

Posted by: SGA屋伍一 | February 18, 2013 at 11:04 PM

SGAさんこんばんわ♪

自分は片岡翔さんの作品は一度も観た事がないのですが、それでも脚本を担当されたという本作では片田舎が舞台と言うこともあってか、ツマムコ含め登場人物の人柄とか温かさが全面に出てて、微笑ましかったり意外にププッと笑えたりしたりもできたので、この雰囲気みたいなものは自分も結構好きになれましたね。
まあでも自分も同じ独身者ですから、ツマとムコの夫婦間のやり取りにちょっと共感を抱けない部分もありはしたのですけど、すれ違いや誤解から生じるコミュニケーションの難しさみたいなものは男女間夫婦間じゃなくても起こり得る事でしょうから、やはり相手を理解し尊重するのも大事なことの1つだなと思いましたねぇ(事実今日仕事場で先輩とめっちゃケンカしてコミュニケーション不能に・・--;)

Posted by: メビウス | February 20, 2013 at 09:39 PM

伍一っちゃん レビュー待っとったよ!笑
ありがとねー。

>「普通に打ち明けりゃいーじゃねーか」

しかしそんな簡単にいかないから
ない姉ちゃんのことがトラウマになって
その後ずっと、、、

途中の挿絵は、原作者の西さんの絵だからこそよかったねshine

Posted by: mig | February 20, 2013 at 11:32 PM

>メビウスさん

こんばんはー
片岡氏の作品は自主映画の映画祭などでかかることがほとんどですからね・・・ 出身地の札幌などで度々特集上映もあったようですが、やっぱりメビウスさんんのところからも遠いですかね? 札幌・・・
序盤の方はけっこうおかしなシーンありましたね。豆腐にミロかけたり、キン肉マンについて真剣に説明したりw

それにしてもメビウスさんが職場でケンカってすっごい意外ですよ・・・ ブログなどでもいつも至極温厚で、しょぼい作品に対しても絶対に暴言吐いたりしないのに・・・ きっとその先輩がよほどの問題児なのだろうな・・・

Posted by: SGA屋伍一 | February 21, 2013 at 10:47 PM

>migちゃん

お待たせー やっと書いたよ(笑)

>>「普通に打ち明けりゃいーじゃねーか」

まあこういう感じだからいつももてないわけだ(^^;
ない姉ちゃんにそっくりだったという緒川たまきさんは一時期けっこう好きだったなー

西さんの絵、よかったね。NHKの『みんなのうた』によくああいうタッチのアニメがあったっけ

Posted by: SGA屋伍一 | February 21, 2013 at 10:56 PM

こんばんは!(*^^*)
私も西さんのイラスト、とても暖かさが感じられて
すごく良かったと思いました。
こういう作品を見ると、田舎の生活もステキだな〜って
単純に思ちゃいますが、実際に暮らすと
それなりに大変なんでしょうね〜。

Posted by: ルナ | March 05, 2013 at 12:20 AM

>ルナさん

そういえば小説家メインで挿絵も本人が描いてる例ってあんまり聞きませんね。わたしが知らないだけかな?
田舎の生活はですね、まず虫との戦いです(笑) あと近所にコンビニがないので夜中に調味料を切らすと困るとかね・・・
まあそういう夢のないことを言うのはやめます(←書いてる)

Posted by: SGA屋伍一 | March 05, 2013 at 10:07 PM

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