魔女っ子地獄変 新房昭之 『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [前編] 始まりの物語』
皆さんご存知だと思いますが、わたしはオタクです。しかしオタクだからといってアニメは全部好きというわけではなく、いわゆる萌えキャラとか魔女っ子ものは興味の対象外だったりします。そんなわたしでもちょっと気になる魔女っ子アニメがありました。そのタイトルは『魔法少女まどか☆マギカ』。深夜でたった13話しか放送されなかったにも関わらず一大ムーブメントを巻き起こし、ウソかホントか最終回放映時にはネタバレを嫌がった視聴者が数多くいたためにネットが過疎ったという伝説までできました。
それでも手が出なかったわたしですが、近所の映画館で総集編二部作が上映されると聞いて思い切って観てきました。それではあらすじを紹介します。
見滝原市に住む平凡な中学生まどかは、これといってとりえのない自分を物足りなく感じながらも親友のさやか、仁美と楽しい日々を送っていた。ある日まどかはさやかと学校から帰る途中、「ぼくを助けて」という声を耳にする。声のするほうへ向かうとそこには「きゅうベエ」と名乗る見たことのない生き物が怪我をしていた。きゅうベエが言うにはこの町には「魔女」という不幸をもたらす存在が暗躍しているのだと言う。まどかはきゅうベエに町の平和を守る守護天使「魔法少女」になってくれと頼まれる。魔法少女になればどんな望みでもひとつだけかなえることができるときゅうベエは言うが・・・
ま、ここまではよくある話ですよね。この時点で目を引くのは背景美術でございます。まずまどかたちが憩う建物がどれも特徴的で、なおかつリアル。これはあとで知りましたがどれも世界のどこかにある有名な建物のデザインを流用しているのだそうです。そしてまどかたちが足を踏み入れる「魔女の世界」がこれまた独特。切り絵のような影絵のような見慣れた日本アニメとはまた違った質感で観る者に迫ってきます。シュヴァンクマイエルを始めとするチェコアニメのシュールな世界は日本アニメとどうにも相容れないものだと思っていましたが、こんな風に融合させる方法があるとは・・・と感心いたしました。
で、ここからはちょっとビックリするような展開の乱れ撃ちなんでできたらご自分の目で確かめてほしいのですよ。近くで上映予定のある方は映画館に行ってみるもよし、レンタルでDVDを借りてもよし。
それでも「うーん」という方とすでに観た方のみ以下をお読みください。
ともかく見習いということで、先輩の魔法少女マミと魔女退治に同行することになったまどかとさやか。何度かその活躍を見守っているうちに、まどかは「魔法少女になりたい」と願うようになります。ところが彼女がその意志を固めた矢先、マミは戦いの最中魔女に頭からバクバクと食われてしまいます。
ここでちょっとひきます(笑)。
自分たちにはこんなの無理だと怯えまくる二人(そりゃそうだ)。しかしタイミングの悪いことに(いいことに?)その直後、さやかにはなにがなんでもかなえたい望みが出来てしまいます。それは将来をヴァイオリニストとして嘱望されながらも、再起不能になってしまった幼馴染の少年・恭介の怪我をなおすこと・・・
というわけで結局さやかも魔法少女になってしまうのですが、この契約にはさらに恐ろしい秘密が二重三重に隠されていたのでした。さらに願いがかなったのもつかの間、恭介に自分の思いが届かないことを知ったさやかは精神的にどんどん追い詰められていきます。
純粋に相手に幸せになってほしいという、それだけを願っていたはずだったのに、心の底にあった「自分も報われたい」というささやかな望み。それに気づいたとき少女は底知れない暗黒に飲み込まれていきます。
親友のそんな姿を見てまどかが何か活躍するのかといえば、これが基本的に何もできずに泣いているだけ。いい加減ネタバレしてしまいますと『魔法少女まどか』というタイトルなのに結局前編ではまどかは魔法少女にはなりません(笑) なんとも型破りなアニメです。
型破りといえば魔法少女のマスコット的キャラであるきゅうベエも恐ろしく型破りです。かわいい外見とは裏腹に、実は少女たちをだまくらかして自分達の種族の食い物にすることしか考えてません。しかもそれを全然悪いこととは思ってないという・・・ アニメにもこれまで様々な悪役が登場しましたが、これほどまでに理解を超えた悪役はまれでしょう。というかそもそも悪役なのかどうか?
劇場版『魔法少女まどか☆マギカ』前編はすでにだいぶ観られるとこが限られてますが、可能な方はぜひご覧になって、この絶望感にうちのめされてください。
果たしてその絶望の先に希望はあるのか。後編の感想も近々書きますです。
Comments
このレビューもついにコレ取り上げるのか・・・・・・。
見て無いけどあちこちで
情報が出てるので大方詳細は判っております。
>頭からバクバク
これも当時は随分ネタが出た
「マミさんラストシューティング」
とか
可動フィギュアでもそのシーン再現可能とか・・・・・
もはやパロディー?
とりあえず、この作品のキモは何といっても
「ほむら」と「キュウべえ(以下QB)」の存在感でしょう。
この2人使って「スペースほむら(無論「スペース○ブ○」の
パロディー)」なるものまで出るぐらいですから(違
因みにQBは
「QB被害者対策弁護団」なるサークルから
彼の口癖である「契約」をテーマに法律相談本
出来る有様(これは面白い)。
QBにクーリングオフは適用できるのか?
Posted by: まさとし@ | February 06, 2013 11:22 PM
>まさとし@さん
ははは。わたしもまさか観るとは思いませんでしたよ・・・ このアニメは正直あまりまさとしさん向きじゃないかも
>頭からバクバク
たまたま友達が貸してくれた『さよなら絶望先生』にも出てました。もはやサブカル界のスタンダードなんでしょうね
「QB」っていうとわたしは短時間でカットしてくれる床屋さんを思い出すのですが(笑)、あくどい反面妙に律儀なところもあるんですよね。その辺が人気の秘密かもしれません
ほむらちゃんは後編ダラダラと泣かせてくれたキャラでしたが今回まったく言及してないことに気づきました(笑) というわけでおいおい書きます・・・
Posted by: SGA屋伍一 | February 07, 2013 10:54 PM
前篇のラストをかざる曲がなんかとても気持ち悪くて、魔法少女というキュートを微塵も感じさせないでステキでした。
Posted by: ふじき78 | February 14, 2013 01:24 AM
>ふじき78さん
あの歌はテレビ版のEDでもあったそうです。冒頭で流れるアイドルチックな歌と見事なまでに好対照ですよね。後編はあれがラストにかからなくて良かったですw
Posted by: SGA屋伍一 | February 14, 2013 10:16 PM
こちらにもお邪魔します。
結構長いブログ上のお付き合いになってるのでSGAさんもご存知かと思いますが、自分はオタクですwでもオタクだからといって全てのアニメを見てるわけではなく、むしろ今ではガンダムくらいしか胸を張って語れないのが現状で、まどかマギカもそんな多くの取りこぼしアニメの1つになっちゃっておりました。
結果世間より約1年遅れてようやく鑑賞したわけなのですが、今更ながらブームになったのを理解したって感じですね(笑
前半にあまり驚きとかが無かった分、巴マミがバクバクされたのを転機にして徐々に浮き出てくる暗黒面みたいなのがかなり凄かったですね。引いてしまう部分も確かにありましたけど、登場人物たちの可愛らしさとは裏腹なダークさと重厚感は良い意味で『ギャップ』も兼ねていたように思えたのでやはり見入ってしまいましたね。
あと個人的にはさやかと杏子が好きなキャラクターだったのですが、まさか魔女化してしまうなんて・・・--;ホント絶望に打ちのめされる前編ですね。その分後編は救いがあって欲しいのですけど・・・。
後日後編を鑑賞します。
Posted by: メビウス | September 04, 2013 10:38 PM
>メビウスさん
おお、メビウスさんもこのアニメ注目してくださってうれしいです。「魔法少女」ということで手が出ない人いっぱいいると思うんですよね。かつてのわたしがそうだったように。ちなみに最近「あー 見ておきゃよかったなー」と思ったのは『あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない』
過激にすればいいというもんではありませんが、このアニメは単に過激というだけでなく、作り手の真剣さ、訴えたいことがよく伝わってくるので評価しています。この残酷さについていけないという人もおられるでしょうが…
わたしも前半では特にさやかが思い入れの強いキャラクターです。後半もきついと思いますが、それを乗り越えたら大きな感動が待っていますのでどうぞお楽しみに
Posted by: SGA屋伍一 | September 07, 2013 10:02 PM