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February 09, 2013

太平洋一人と一匹ぼっち デビッド・マギー アン・リー 『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』

Lop3ぼちぼちアカデミー賞が盛り上がってくる時期になってきました。その中の有力候補のひとつ『ライフ・オブ・パイ』、先日観てまいりましたのでご紹介します。

「驚異の物語」を探しているあるカナダ人の作家は、偶然知り合ったインドの男から、自分の甥こそがその信じられない物語の主人公だと聞かされる。その言葉を信じて男の甥「パイ」を探し当てた作家は、彼から若い日の体験談を聞く。
パイはインドで動物園を営む両親のもと育ったが、ある年事情でアメリカに動物たちともども引っ越すことになる。しかしその途上、船は難破。辛くも救命ボートにつかまり命を永らえたパイだったが、そのボートにはパイの父が「リチャード・パーカー」と名づけた一頭の虎も乗り込んでいたのだった・・・

回想形式で語られる物語ですので、そのあとパイが生き残ったことは明らかです。ではいったいどうして飢えた虎と同乗して食べられなかったのか? その疑問は映画を観ていくうちに徐々に明らかになっていく・・・のかな・・・ うふふふふ・・・
そういえばわたしの友人はこの映画の話を聞いて「本当にあった話なんだよね?」と言ってました。んなわけねーだろ。

以下は例によってネタバレしてますので観た方と「たぶん観ない」という方のみお進みください。





映画の終盤でパイは保険会社の人から「もっと現実的な説明を」と言われて、渋々こんな話をします。ボートにはコックと船員と母が乗り込んできた。コックが船員と母を殺したので、自分は逆上してコックを殺したのだと。
パイは「好きな方を信じろ」と言って物語を閉じます。
わたくし考えるにトラはパイの作り出した幻覚のようなものだったのでしょう。母の死と自分が人を殺したというショック、そして洋上にただ一人投げ出されたという過酷な環境から、パイは普通でない精神状態に追い込まれたのだと思います。そしていつからかコックを殺したのはトラで、自分はそのトラと共に漂流していると思い込んでしまったのでしょう。

あとここに評論家の町山さんがこんな解説を書いておられます。インドではもともとこんな風に動物になぞらえて教訓を語る昔話が数多くあるそうで。
その線から行きますとトラは作者の考える「神様」の象徴だったようにも思えます。時に厳しく試練を与えるものの、そうすることで信じる者を成長させ、救うという。そして人間は一方的に神に信頼を寄せるものの、そう簡単にその愛情にこたえてくれるものではないと。
ラストでトラが振り返らなかったのもそんな作者の神様観が反映されてるように思えました。本当に助けが必要なときはそれなりに力になってやるけれど、そうでなくなったらあとは自分の力でなんとかしろと、そういうことではないでしょうかね。
象徴的といえばパイが漂着する「人食いの島」にも何かしら意味がこめられている気がします。先の町山氏の解説を手がかりにするならば、やはり群集に流されるままに信仰を抱くのは危険であると言いたいのかな。洋上でトラと共同生活を送るというのも限りなく死と隣あわせな気がしますが(笑)、周囲に合わせて何も考えずに盲信するのではなく、自分で色々苦労して信仰を掴み取れと、そんなメッセージが込められている気がします。
無神論者が多い日本ではピンとこない話でしょうけど、無限に続く円周率の数列を眺めていると、わたしなどは「やはりこの世には神様がおられるのでは・・・」と思ったりします。

もうひとつ考えられる説は、これが『スパイダーマン』について何か暗示しているということです。「リチャード・パーカー」ってどっかで聞いた名だなあ、と思っていたら、これスパイダーマン=ピーター・パーカーの亡父の名前でした。つまりスパイダーマン略して「パイ」なんですよ。「だからどうした」と言われるとはっきり言ってどうもしないんですけど。ただ・・・ヒロインのメリー・ジェーンがふざけてピーターのことを「タイガー」と呼ぶのもこれもやっぱり偶然なんでしょうかねえ。

Lop『ライフ・オブ・パイ』は特に人気俳優が出ているわけでもないのですが愛ネコ派のハートをガッチリつかんだのか、現在それなりのヒットを飛ばしております。果たしてアカデミー賞にはどこまで食い込めるでしょうか。

イラストは酔っ払いながら描いたパイくん。あくまでイメージということで。


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Comments

観た人によって、感じる事がいろいろありそうな作品でしたね。
動物になぞらえて教訓を語る昔話は、
日本でも結構あるような気がしますが、
私は、トラはパイ本人のような気がしました。
トラとパイの死闘は、パイの心の葛藤だったのかな〜って
思いました。
内容も深かったですが、映像も素晴らしかったです。

Posted by: ルナ | February 11, 2013 01:11 AM

>ルナさん

こちらにもどうもー
日本ではこういうのどんなのがあるでしょうかね・・・ カチカチ山とか?
というか動物になぞらえて教訓を語る話では「イソップ童話」がありましたね

>私は、トラはパイ本人のような気がしました

劇中でも「トラは君だ」とはっきり言ってましたし。この辺はもう少しぼやかして語ったほうが良かったんじゃないかと思いました。映像では船が沈没していくシーンが一番印象に残ってます

Posted by: SGA屋伍一 | February 12, 2013 10:55 PM

伍一くん☆
うん、今回はどちらも上手ぅ~
酔っ払って描いたの?なら毎回そうしましょう(笑)

幻覚だったかどうかは別として、ベジタリアンの彼が生きる為に何をしてきたか、泣きながら魚に感謝する彼の姿が印象的だったわ。

Posted by: ノルウェーまだ~む | February 14, 2013 12:01 AM

おはよう〜
映像も素晴らしかったし、これは大画面で
3Dがオススメの作品だったね
漂流する迄が長く眠くなったけど
その後からは目が離せなかったわ〜
アカデミー賞は、映像関係のは制覇するだろうね!
作品賞はとらないと思うケド。

Posted by: mig | February 14, 2013 09:46 AM

>ノルウェーまだ~むさん

こんばんばん。お返しと賛辞ありがとうございます
酔えば酔うほどうまくなる?(『酔拳』より)
そして・・・いまも酔っ払いです・・・(ダメジャン)
まだ~むはやはり感性が豊かでお優しいですね。わたしはあのシーン見て「マグロ美味そうだなあ」くらいにしか思いませんでした・・・

Posted by: SGA屋伍一 | February 14, 2013 10:10 PM

>migちゃん

わたしも3Dで観たよ。海の底の深さがよく表現されてたと思う
パイの目の前で船がずずーんと沈んでいくシーンもすごかったな
アカデミー作品賞は他の作品が「我こそは最有力候補!」とがんがん宣伝してるのに対し、こちらは「有力候補(のひとつなんですよ)」と控えめに宣伝してるあたり、配給さんもわかってるんだと思うw

Posted by: SGA屋伍一 | February 14, 2013 10:29 PM

SGAさんこんばんわ♪こちらにもコメント有難うございました♪

終盤にパイが話した現実的な内容は悲劇的ではありますけど、トラ話の方と照らし合わせれば信憑性は高いんですよねぇ。それを聞いたら自分もトラの方はやはり妄想の類なのではと否定できなくもなっちゃいましたし・・^^;でも妄想系のオチみたいなものは大抵タネ明かしもしてくれて明確にしてくれますけど、本作は観た人それぞれの判断に委ねて敢えて曖昧にさせてるようでもありましたから、1つの結果じゃなく色んな観方として捉える事が出来るのは良いですね。ありえねー度は高いですけど、悲劇よりは自分も生への執着を感じさせるトラ話の方が好きでしたしね~^^


でもスパイーダーマン説ですかっ。その発想は無かった!!(笑)しかし思い当たる節を当てはめると意外にしっくり来てもいるからなんか恐ろしい・・。まあスパイディ説も色んな観方の1つとゆーことで^^;

Posted by: メビウス | February 22, 2013 09:27 PM

>メビウスさん

やっぱりどう考えても無理があるんですよね。トラと一緒に漂流してて食われなかったというのは。船が沈んでからリチャード・パーカーが次に登場するまでにも変な間がありましたし(船酔いでまいっていた・・・とも考えられますが) でも妄想にしてもなんにしてもデカニャンコがスクリーンいっぱいに映るのはたまんなかったです

スパイダーマン説、まちがいない!と思ってたんですが、上のノルウェーまだ~むさんの記事にちゃんとした名前の由来が書いてありましたw ははは・・・ そちらも読んでみることをおすすめします

Posted by: SGA屋伍一 | February 24, 2013 06:21 PM

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