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January 08, 2013

ジャンバルジャンがんばるじゃん! ビクトル・ユーゴー トム・フーパー 『レ・ミゼラブル』

Photoビクトル・ユーゴーの不朽の名作が、近年ミュージカル化されてロングランを続けております。そのミュージカル版を、今度は『英国王のスピーチ』のトム・フーパーが映画化。『レ・ミゼラブル』紹介いたします。

いわゆる王政復古の時代のフランス。家族のためにパンひとつ盗んだ罪で、19年の徒刑を課されたジャン・バルジャンという男がいた。元囚人に対する世間の冷たい仕打ちからさらに罪を重ねたジャン・バルジャンだったが、自分をかばってくれた高徳の司教ミリエルの愛に触れ、まっとうに生きようと決意する。それから数年後、マドレーヌと名を変えたジャン・バルジャンは、貧しさと不幸ゆえ身も心もズタズタになったファンテーヌという女性と出会う。ファンテーヌを安心させるため、ジャン・バルジャンは彼女の娘コゼットを引き取る約束をするのだが・・・

日本では長らく『ああ無情』のタイトルで知られていた作品。わたしもその題の児童向け版を読んだことがあります。しかし最近ではミュージカルのヒットゆえか『レ・ミゼラブル』という原題の方が通りがいいようです。それ以前に描かれたみなもと太郎先生のコミック版(上のイラスト参照)もこっちの題でしたが。
長い間間違って覚えておりましたが、『Les Misérables 』とは「かわいそうな人々」「悲惨な人々」という意味なんだそうです。なるほど。かわいそうで涙ちょちょ切れる話の乱れ撃ちでございましたよ・・・

ちなみに原作は文庫本で普通4,5冊はあります。ジャン・バルジャンとは関係ない話とか当時の世相についてもえんえんと書かれているのでこのボリュームになってしまったみたいですが、それでもそんな大長編を三時間でどうやって納めてるのか、ずっと疑問に思っていました。で、観てみてなるほど、駆け足にはなっていましたがなかなか上手に山場だけ集めた「短縮版」となっておりました。
欧米の人々にとって『レ・ミゼラブル』の映像化、舞台化というのはこちらでいえば『忠臣蔵』に近いものがあるかもしれません。有名でみんな知ってる話なので、尺の問題もあるし細かいところはどんどんはしょる。その代わり肝心な場面はとことん盛り上げる・・・というあたり。ええ、とても見事な盛り上げっぷりでございました。観賞しながら「む・・・ 歌と音楽で強引に感動に持ち込もうとしてるな? ふっ! その手に乗るかよ!」なんて思っていたのですが、みごとに持っていかれましたね(笑) ジェット噴射のように鼻水がすっとんでしまいました。

たぶんこのお話の主人公はジャン・バルジャンとコゼットだけでなく、当時フランスに生きていた貧しい人々全てなのでしょうね。長い年月苦しめられてきた囚人たち、生活苦ゆえに身を売る娼婦たち、体制を打破しようと理想に燃える若者たち、飢えていても明るさを失わない浮浪児たち、どんな時でも強かさを失わない小悪党たち・・・ 時代も国もかけ離れていても、彼らがとても身近に感じられるのはなぜなんでしょう。そして貧しくても輝かんばかりの生気に満ち溢れているのも不思議であります。

ヒュー・ジャックマンのジャン・バルジャン、アマンダ・セイフリッドのコゼット、ラッセル・クロウのジャベール、どれも役にぴたっとはまった大熱演でございましたが、さらに印象に残ったのはアン・ハサウェイ演じるファンテーヌとサシャ・バロン・コーエン演じるテナルディエ。アン・ハサウェイはこれまで「コメディメインの女優」というイメージがありましたが、髪をばっさり切ってげっそり痩せた姿で熱唱するシーンなどは実に迫力がありました。
もう1人サシャ・バロンのテナルディエは原作の卑屈な人物とは若干趣が違いましたが、これはこれで役者の破天荒なキャラも手伝って痛快な悪役になっておりました。

あと大概ネタバレですが特に胸を打ったのはラストシーン。最初にも書きましたがストーリーはほぼ知ってたので意外性というのはほとんどなかったんですが、最後の最後であくまで原作にそいながら、なおかつ原作を飛び越えた光景を見せてくれました。このシーンもまた、「主人公は貧しき人々」ということをよく表していたと思います。

Photo_2『レ・ミゼラブル』は現在全国の劇場で上映中。現時点で洋画ではトップであります。名作の力ってやっぱりすごいですね。
そしてヒュー・ジャック・バルジャンはこのあとミュータント化してアメリカへ渡るという話。その秘められた物語は今年公開される『ウルヴァリン:サムライ』で語られるそうです。おお! オラやっぱりそっちのおヒューさんの方が楽しみだな!

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Comments

伍一くん☆
ラストのヒュー様はウルヴァリンのヒュー様かしら?
上の絵とはギャップのある写実性が素晴らしいわ☆
(リンカーンにも見えるけど・笑)
それにしても上の絵で「ああ無常」を描いてしまう漫画の先生って、すごい勇気!

伍一君も泣いた?
私も号泣したわ・・・

Posted by: ノルウェーまだ~む | January 09, 2013 10:39 AM

余談ですが、4年前に処分したまんが一冊が
そのままそっくり家に戻ってきました(笑)。
同封した記念シートも広告もそのまんま。

>みなもと太郎先生のコミック版
実はうちにもあったりするみなもと版(笑)。

TVCMはミュージカル版でおなじみのイラスト最後に出ていたので
正直「ああ、これ映画になるんか」という印象でしかないですね。
・・・・・・・・・・・・ミュージカルがおなじみ過ぎるから。

Posted by: まさとし@ | January 09, 2013 10:58 PM

>ノルウェーまだ~むさん

こんばんばるじゃん
そうです。おヒュー様のつもりで書きました。漫画版、もしご興味おありなら今度お貸ししますですよ・・・
男性キャラはみんなこんな感じですが、女性キャラは一昔前の少女マンガ風になってます
わたしは感極まると涙より鼻水の方が出るんです・・・(キタネエ)
往生しましたよw

Posted by: SGA屋伍一 | January 10, 2013 10:14 PM

>まさとし@さん

こんばんはです
漫画の話すごいですねえ。『ベルセルク』のベヘリットみたい(と言ってわかってもらえるだろうか)
そういやわたしみなもと版は潮版とブッキング版の二種を持ってるんですよ。持ってたはず・・・ 引越しの時のドサクサにまぎれてどっかにいってなければ・・・
ミュージカルもけっこうですけど、どっかでみなもと版でアニメ作ってくれませんかね

Posted by: SGA屋伍一 | January 10, 2013 10:18 PM

昔は「ああ無情」だったんですよね。
「岩窟王」と並んで、黒岩るいこう(漢字忘れた)氏なの名訳というか怪訳として有名なところです。

なぜこんな事を書くかというと、当時の翻訳本というのは、かなり怪しくよく解らないところはでっち上げていたそうで、みなもと先生が描かれたような、あの「ターヘル・アナトミア」のような訳し方を一部していたそうです。

黒岩氏の元々の翻訳本は、後の人が読むとかなり凄い(原文と違う)らしかったそうです。
この方は、フランス文学の翻訳の第一人者だったため、亡くなられるまで、びっくり仰天の翻訳本しか読めなかったそうです。(こちらの方が面白いという人もいたらしい)

同じ様な例が、円地文子さんの「源氏物語」の現代語訳。
出版社は瀬戸内寂聴さんに翻訳を依頼し、亡くなるのを待っていたそうです。

あとイタリアの古代史は、存命中の某女性の研究者が亡くなられる迄は、幻想推理の暗黒時代から抜けられないそうで、亡くなるのを待たれているそうです。

Posted by: サワ | January 14, 2013 12:10 AM

>サワさん

そう、黒岩涙香先生ですね。『モンテ・クリスト伯』を『岩窟王』という題にしたのもこの方ですし。wikiなど見ると他にも超邦題がいっぱい並んでます。戸田奈津子さんの字幕などかわいいものですねw まあ世界の名作をこうやって親しみやすく紹介した功績もあるんでしょうけど。

>某女性の研究者

ヤ○ザキ○リさんじゃないですよね(笑)
幻想推理といえばNHKの『アテルイ』というドラマ、平安時代の蝦夷の資料がほとんどないために「服装なんか想像っすよ、想像!」とえらく割り切っていました。それでいいのかなあと思ったり、それしかないかと思ったり

Posted by: SGA屋伍一 | January 14, 2013 09:36 PM

こんばんは~~

そうそう,児童文学としては「ああ無情」でしたね,懐かしい・・・
わたし,6年生の時の読書感想文はこの「ああ無情」を書いたっけ。
大人になって文庫本3、4冊の原作も読みましたが
修道院の起源とか浮浪児のエピソードとか
随所に挿入された膨大な脇道の薀蓄がかえって面白かったですね。
名作の持つ力恐るべしって本当ですね。
社会の底辺で惨めな思いをこれでもか~って味わっている人々の
どんなに理不尽に虐げられても失わない魂の美しさや輝きというものに
毎回心を打たれるんですよね・・・それに
ストーリー展開や人物設定が天才的に上手いですよね。この物語。
これからもいろんな機会で映像化してほしいです。

Posted by: なな | January 14, 2013 11:47 PM

>ななさん

ななさんも読んでおられましたか。わたしは小学一年生くらいだったかな。今思えばファンテーニュが転落する部分は上手にぼかしてあったような
そしてウンチク満載の原作もちゃんと読まれたとはおえらい・・・
宗教に関係なく感動する作品だと思うけど、とりわけクリスチャンであるななさんにはいろいろと感じ入る部分があるのでしょうね

底辺の人々を描いた名作といえばディケンズの『オリバー・ツイスト』などもありますが、あちらの映画は観た後なんかやるせな~い気分になりました。アレンジの仕方にもよるんでしょうけど、それに対して今回の『レ・ミゼラブル』は観賞後とてもさわやかな気分になりましたよ

Posted by: SGA屋伍一 | January 15, 2013 10:54 PM

わたしもウルヴァリンのヒュー様が楽しみ。
日本も出てくるけど日本語もそうとうでてくるとか。

やっちゃった映画になってなきゃいいけど、、、笑

レミゼはとくに思い入れもないからフツウに観ていたわ。
アンハサウェイは貧相な顔していないから
昔やったユマの方があっていたと思うけど、
さすがオーディションで勝ち抜いただけあって歌うまかったね。
で、最初の絵の帽子のおじさんは誰じゃ??

Posted by: mig | January 26, 2013 01:38 PM

>migちゃん

たしか『ウルヴァリン サムライ』の日本公開は秋ごろだったからもう少し先だね
富士山でロケしてたそうだからフジヤマをバックに壮絶なアクションが見られると思うよ。日本といえば富士山! わかりやすい!(笑)
わたしが気になったのはアンとアマンダがあんまり似てないことだった。ま、お父さん似だったということか・・・
最初のおじさんはだからみなもと太郎先生のマンガ版ジャン・バルジャンだよ。まあこの人の作品って主人公みんなこんな顔なんだけどね

Posted by: SGA屋伍一 | January 26, 2013 10:41 PM

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