バック・トゥ・ザ・アートネイチャー ライアン・ジョンソン 『LOOPER/ルーパー』
年明け早々、またずいぶんヘンテコな映画を観てしまいました。若手で人気上昇中のジョセフ・ゴードン・レビットが、あのダイ・ハードにダイ変身!? 『ルーパー』、ご紹介します。
貧富の差が進み、世相が荒廃したアメリカ。そこでは「ルーパー」と呼ばれる奇妙な殺し屋たちが暗躍していた。彼らの仕事は未来から送られてきたターゲットを射殺し、死体を始末することだった。
ルーパーの1人ジョセフは麻薬とパーティーでうさを晴らしながら、組織の指示のもと仕事をこなす日々を送っていた。だがある日彼の元に送られてきたのは数十年後の自分だった・・・
この「ルーパー」が仕事をしている映像がなかなかに奇妙であります。サトウキビ畑をバックにブルーシートが敷かれていて、そこに手足を縛られた人間がパッと突然現れます。間髪入れず離れたところから銃弾をお見舞いするルーパー。「未来では死体を始末することがほぼ不可能」ということでこんな職業が生まれてしまったそうです。こういっちゃなんだけど、わたしにだって出来そうなごくシンプルな作業。
ただ、幾ら簡単な上に高額な報酬をもらえるとしても、人の命をポンポン奪うような仕事はやっぱりイヤですよねえ。だから予告編を観たときには「この主人公、到底好きになれないなあ」と思ったものでした。
ところがジョセフに親に捨てられてストリート・チルドレンとして暮らしていたという過去があったり、平気なフリをしていても精神的に参りつつある様子などを観ていると段々情が移ってきます。この辺は脚本の力か、単にわたしが情にほだされやすいということなのか。
あともう一つ特に奇妙だったのが、現在のジョセフが未来のジョセフをけっこう必死になって殺そうとすること。失敗したら現時点で相当むごたらしい目にあわされることがわかっているので、それもまあわからないではないんですが、幾ら未来のとはいえ自分自身ですからねえ。そんなに割り切れるものだろうか・・・とは思いました。
以下は後半・結末についてネタバレしていきますのでご了承ください。
前半はそんな風に奇妙な風味や超展開を混ぜつつ、一応はスピーディーなエンターテイメントとして進んでいきます。ところが後半ジョセフがとある母子とめぐり会ってから、お話は突然まったり展開になっていきます。
母として生きようとする女性と過ごしていくうちに、彼女らを守ってやりたいと願い始めるジョセフ。自分がかつて母に捨てられた身であるがゆえに・・・ そして未来のジョセフもまた、伴侶が殺されてしまうという運命を変えるために過去の世界で奔走します。
「自分のためだけに生きる人生はむなしくはないか」「なぜこの世にはこんなにも理不尽な悲劇が多いのか」「将来極悪人となるとわかっていたら、子供とはいえ殺さなければいけないのか」
タイムトラベルや超能力といったトンデモな要素と共に、そういう深刻な問いかけを投げかけてくるスタイルは、あの人に似ていると思いました。そう、ハリウッドきっての個性派インド人監督、ナイト・M・シャマランです。シャマランっぽい力技なオチもありましたしね。
監督のライアン・ジョンソン氏はこれまで『ブリック』『ブラザーズ・ブルーム』といった二本の犯罪映画をてがけております。前者が製作費の五倍儲けたのに対し、後者は儲けが製作費の四分の一・・・ 菊池凛子が出ているにも関わらず日本未公開(DVDスルー)なのはそのためか。
しかしまあこの『ルーパー』では六倍以上の売り上げをたたき出し、評者達の支持も高いので見事に息を吹き返したというところでしょうか。
「ただ母に髪をなでてもらいたかった」という思いをひきずり、少年のまま大人になってしまったジョセフ。その願いはラストに思わぬ形で実現します。そう考えるとある意味これもハッピーエンドなのかも・・・ そう自分に言い聞かせつつ劇場を出ました。
というわけで『ルーパー』は現在全国の劇場で上映中。初登場5位くらいだったのであと二三週しかやってないかも・・・
いま1人の主演であるブルース・ウィリスは今年日本で5本の新作が公開予定(うち4本がアクションもの)。ハゲてなお意気盛んだな~と頼もしく思う次第であります。
Comments
こんばんは!(*^^*)
発想は面白かったですが、超能力がからむ設定が唐突すぎて
なんだか不思議な作品でしたね〜。
私には、あの自己犠牲のラストはちょっと感動できませんでした。
一番印象に残ったのは、5歳の子役の目力かも・・・(笑)
Posted by: ルナ | January 25, 2013 12:45 AM
伍一くん☆ルーパー違いです。
途中からそっちの方向に行くの?ってかんじになって、戸惑っちゃいました。
というより、ジョセフ・ゴードンのぶっとく描かれた眉毛が気になって気になって、物語に集中できなかったです(爆)
Posted by: ノルウェーまだ~む | January 25, 2013 11:23 PM
>ルナさん
まあいろいろ強引なところもありましたねw ただあのラストシーンは切なくもあるもののわたしは割りと好きです。ああいうオチじゃなかったらさくっとこの映画のこと忘れてしまったかも
子役さんはもっとかわいい子を使えばいいのに・・・と思ったら途中から納得がいきましたw
Posted by: SGA屋伍一 | January 26, 2013 10:19 PM
>ノルウェーまだ~むさん
♪アイアイアイ ぼくはウーパールーパー UFOからやってきたんだ(そんな歌がブーム時あった)
眉毛が気になって集中できなかったって・・・ そんなに眉毛って重要ですか!?
まあたしかにノーメイクで眉毛のないマイマザーの顔ははんぱなくおっかないですけど
Posted by: SGA屋伍一 | January 26, 2013 10:32 PM
そうそう、ブルース様祭り、始まるよー♪
今回のブルースかっこ良かった。
シャマランはいつもフィラデルフィアで撮影の独特な暗さがあるから似てるとは思わないけど
あの展開は意外で私は好きだな〜☆
あ、「きいろいゾウ」結局観てくれるのかな。
だとしたら感想楽しみ。楽しめるかなぁ。
Posted by: mig | February 01, 2013 10:29 AM
>mig ちゃん
明日から『ファイヤー・ウィズ・ファイヤー』というのも始まるみたいだね。上映館えらい少ないけど
シャマランを思い出したのは最後にブルースが○○でしまったからかもしれない。あと後半がずっと畑が舞台で『サイン』を思い出したりして
『きいろいゾウ』は時間ができたので明日初日に観にいくよん
Posted by: SGA屋伍一 | February 02, 2013 12:38 AM
超常的な設定に驚きの結末など、材料だけで見れば確かにシャマラン監督の要素が盛り込まれていますねコレwそういう意味ではシャマラン監督作としても観たかった部分が無きにしも非ず。・・ただ欲を言っちゃえば自分はもうちょっとこう・・『未来感』のようなものも欲しかったですねぇ。ときめくはずだったタイムマシン装置もなんかボロいガンツ玉みたいで『う~ん・・--;』と個人的期待値を下回ってしまったのも正直なトコだったので(汗
でもあの結末は悲壮感もありますけど、自分も好きですね。自己犠牲は相変わらず仮面ライダーブレイドも思い出しちゃいますわ~w
Posted by: メビウス | February 08, 2013 08:50 PM
>メビウスさん
お返しサンクスです。シャマランラン~シャマランラン~
実はツイッターの方で「シャマランに似てる」と書いたらこぞって「全然似てないよ」と言われましたw
未来感・・・はあんまりなかったですねえ。先日深夜に放送してた『トゥモローワールド』ほどではないにせよ、ただただ退廃してたという感じで。宙に浮くバイクが申し訳程度に出てはきましたが・・・
近日公開予定の『ジャッジドレッド』もなんだかモロそんな感じです
それにしてもメビウスさんも『剣(ブレイド)』好きですねえ! 自分も好きですけど! もうかれこれ9年前の作品か・・・
Posted by: SGA屋伍一 | February 09, 2013 11:42 PM