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December 12, 2012

新・エヴァゲのQ太郎 庵野秀明 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』Aパート

Eva2
十数年前社会現象を巻き起こし、近年も劇場版シリーズが公開されている『新世紀エヴァンゲリオン』。その最新作がまた忘れた頃になってやってまいりました。『新劇場版ヱヴァンゲリオン:Q』、ご紹介します。今回はもうしょっぱなからネタバレ全開なのでこれから観ようという方は早く避難されください。ではカウントダウン。
10!
9!
8!
7!
6!
5!
4!
3!
2!
1!
Q!

エヴァンゲリオン初号機が「使徒」との激闘の果てに覚醒してから十四年。衛星軌道上に秘匿されていた初号機は、ミサトやアスカらの作戦により地上へと運ばれる。初号機と完全に融合していたパイロット碇シンジは、再び人としての姿を取り戻し息を吹き返すが、ミサトたちは喜び迎えるどころか「何もしないで」と厳しい態度を取る。
悲嘆にくれたシンジの前に、十四年前助けたはずの綾波がエヴァに乗って現れる。ミサトらに必要とされてないと感じ取ったシンジは、彼女が誘うままに父のいるネルフ本部へと向かうが・・・

一生懸命初心者にもわかるように書いたつもりでしたが、すいません、無理でした。大体鑑賞したわたしにしてからが冒頭ミサトたちが一体何と戦ってるのかわからず(というか使徒と戦ってるのかと思ってた)。ウィキペディアの記事を読んでからやっと理解した次第です。しかも進んでいくにつれストーリーはどんどん前衛的というか形而上学的になっていきます(^^;
そ、それでもわたしが「こうじゃないか」と思った範囲で無理やり感想を書いてみます・・・

これまで序・破と多少の差こそあれ、TV版とほぼ同じ流れで進んできた新劇場版『エヴァ』。しかし今回はTV版20話以降とはまったく異なる新規ストーリーとなっております。
大きく異なっているのはまず前作から14年が経っているということ。かつて「人類を守る」立場であったはずのネルフが人類を滅亡させてまでも「人類補完計画」を成し遂げようとしていること。そのゲンドウ率いるネルフと、人類を代表する組織「ヴィレ」が対立していること。そして決定的に「違うな」と感じたのはこれまで「(エヴァに)乗れ乗れ」と強いられてきたシンジ君が「絶対に乗るな!」と言われていたことです。

この作品の「エヴァに乗る」という行為は実際は何を表しているのか。わたしは「大人になること」「仕事をすること」「生計を立てること」そういった事柄なんじゃないかと思ってます。
で、「序」や「破」で何人かの女性達と交流するうちに、大人の責任にめざめ、「彼女らを助けてあげたい」気持ちからようやく本心でエヴァに乗る気になったシンジ君。なのに今回いきなり「もう乗らないで」と言われて甚だしくショックを受けます。そりゃそうだよね。

仕事をすること=作品を創ることがみんなや愛する人の幸せになることだと思ってたのに、そうではなかった・・・ 庵野監督にはそんな経験でもあったのでしょうか。思い当たるのは新劇場版エヴァの前に手がけた『キューティーハニー』が大赤字になって制作会社が倒産してしまったこととか。あるいは昨年の大震災にショックを受けて「アニメなんか作ってても何の役にも立たない」と感じたのか。安易にこの作品を震災と結び付けたくはないんですけど、宮崎御大も「庵野も震災から堂々巡りしている」とおっしゃってましたし、ジオフロントの底に山のように積み重なっていたエヴァのなきがらはどうして震災を連想させます。

そんな傷ついたシンジ君の癒しとなるのがようやく本格的に登場となった渚カヲルくん。レイが母親の象徴で、アスカが「他人としての女性」の象徴ならカヲル君は一体なんのメタファーなのか。旧TVシリーズではなんせ一話しか出てこなかったので謎は深まるばかりでしたが、今回の『Q』を観て彼は「趣味」「好きなこと」を擬人化した存在ではないかと思いました。あるいは気のおけない趣味・仕事仲間や、憧れていたアニメ界の先人・・・某富野監督や某宮崎監督などの集合体なのかも。それにしてはずいぶん美少年だなあという気もしますがw
そんな風に思ったのはカヲル君とシンジ君が触れ合うのが「音楽」を通じてだったから。こう言っちゃなんだけど音楽=趣味というのは別になくても生存していくのに支障はないものです。しかしそれを愛するものには多大な慰め、癒しになるわけで。そういえば前作・破で、生きていくのに欠かせない「ごはん」を通じてシンジ君と関わろうとした女子キャラたちは、今回は容赦なくシンジ君のハートをグサグサと傷つけていきます。

追い詰められたシンジ君が逃げ場を求めたカヲル君は、しかしオリジナル版と同じく優しく微笑んで去っていきます。傷ついて趣味の世界に逃避しようとしたけれど、やはり生きること、仕事をすること、そして誰かを傷つけることからは逃れられない・・・ということなんでしょうか。

序・破とせっかく上向きになってきたのに、ここにきてまた奈落に突き落とされてしまうシンジ君。しかしこの劇場版はまだ続きがありますし、何より『新約Zガンダム』に触発されて作られたものなら、先には明るい未来が待っていると信じたいところです。オリジナルの『Zガンダム』結末は、当時ストレスがたまっていた富野監督がファンや会社に向けて怨念をぶつけたような形になってしまいました。旧『エヴァ』劇場版もそれと似たところがあります。しかし時がたち富野監督は反省し、怨念を浄化させたものが『新約Z』の結末となっております。
そういえばオリジナルの『エヴァ』も元々は富野監督の『Vガンダム』に触発されて作られたものだったんだっけ・・・ 
Eva1


真っ暗な空の下アスカを殺しかけ、ブツ切りのように終わった旧劇場版と、優しいメロディをバックに青空の下同じ女性に支えられて歩く『Q』のENDは明らかに対照的です。その先に旧作よりも先のさらなる未来があると信じて完結編を待ちたいと思います。
・・・というわけでまた「Aパート」とつけてしまいましたが、最近鑑賞ストックを必死こいて消化しているわたしに書く余裕はあるのでしょうか(笑) ・・・がんばります。
ついでにこれまでのレビューリンクを。
『序』AパートBパート0パート
『破』AパートBパート0パート
お暇な方は読んだって・・・

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Comments

最近はちゃんと資料を用意してくださるブロガー
さんいるので助かりますが・・・・・・・・。
>すいません、無理でした
いや、これはSGAやんが責任を感じる事は無いよ。
概要認識して・・・・・・トコトン救い無い状況は
やはりオリジナル「Z」みたいなものを感じるなぁと・・・・・・。
多分俺見に行っても・・・・
「くそっ、何なんだよ!(イザークジュール)」
となっていた確率高い・・・・・・・。
>最近鑑賞ストックを必死こいて消化
最近、「宇宙戦艦ヤマト2199」の感想なんかも
ぼちぼち書いてます(カーコミュブログで。カミーユじゃねぇ:爆)

Posted by: まさとし@ | December 13, 2012 at 09:29 PM

おひさしぶりです。
今日観てきましたので、読みました。
いやあ、相変わらず
興味深い視点で参考になります。

評判が芳しくなかったので
期待しないで観たのですが、
ぼくは大変面白かったです。
ほとぼりが冷めたら
また観に行くかも知れません。

Posted by: かに | December 14, 2012 at 08:30 PM

SGAさんこんばんわ♪

自分は鑑賞するまでQの情報は殆ど持ち合わせていなかったのでてっきり破の続きかと思ったんですが、でもあの時間の飛び越え方は続きと捉えるには戸惑いのほうが大きかったですねぇ^^;故に2回ほど鑑賞してようやく落ち着いて事の次第を理解したと言った感じにっ。
でもホント、前作ではシンジも周りに流されず自分自身の我を通す男らしさも見えたイイ終わり方でもあったのに、ずんどこに落とされてしまってまた元の木阿弥・・・どころか最後の抜け殻状態はもっとひどくなってるような気もして、カミーユみたいな精神崩壊脱却に通じる明るい未来が本当にあるのかな~?と甚だ疑問に思えてしまう今日この頃です^^;(汗

Posted by: メビウス | December 14, 2012 at 09:05 PM

>まさとしさん

こんばんはー
見事にいちげんさんお断りな内容でした。それでもこんだけ盛り上がってるんだから大したもんです
とりあえず今回で落ちるところまで落ちた(シンジ君のメンタルがね)ので、完結編は上向きな内容になると思うんですが
新約Zは「明るい内容にする」といって結末差し替えただけのようになってしまったので、こちらではその反省をふまえ?しっかり真ん中あたりから路線変更してる気がします

Posted by: SGA屋伍一 | December 16, 2012 at 06:18 PM

>かにさん

ご覧になられましたか
お褒めいただいて恐縮ですが、今回は本当についていくのに必死でした(^^;
でも心惹かれずにいられないのは、やっぱり『エヴァ』という作品が自分の血肉になっちゃってるからなんでしょうね・・・
わたしももういっぺん観にいきたいのですがなかなか余裕がありません。フランケン・ウィニーやレ・ミゼラブルも観たいし
あとこちらでは年明けごろに『まどマギ』前後篇がやります

Posted by: SGA屋伍一 | December 16, 2012 at 06:23 PM

>メビウスさん

こんばんはー
前作ラストがすごいブツ切りのようにして終わったので、てっきり直後から始まると思ってたんですが、さすがはエヴァ。見事に想定のななめ上を行ってくれましたw もう二回目も行かれたんですね。いいなー

抜け殻のようになって立ち上がれなくなってしまったシンジ君は、旧劇場版の冒頭あたりを思い出しました。
もしかして完結編ではめっちゃ明るい別の主人公が大活躍して、その影でいつの間にかシンジ君が回復してる流れになるかもしれません←ZZガンダムかよ!

Posted by: SGA屋伍一 | December 16, 2012 at 06:34 PM

伍一くん☆
エヴァの話で盛り上がれて楽しかったです♪
「えう”ぁ屋」にも行けたし~☆

奈落の底に落とされたシンジが、次回作で見事に再生してくれないことには、一緒に落ちて行ってしまったねえねも再生できないですわ。
何しろシンクロ率400%なもので。

伍一くんの今までのエヴァレビューも面白かったよ。

Posted by: ノルウェーまだ~む | December 17, 2012 at 10:53 AM

>ノルウェーまだ~むさん

先日はどうも!
まだ~むがいなかったら「えヴぁ屋」は通り過ぎてたと思うので、教えてくださって感謝♪
わたしも今回はシンジくんに感情移入してしすぎてずーんずーんと落ち込みましたよ・・・ 年の近いねえねちゃんならともかく、もうじき不惑のわたしが十代の少年とシンクロしてちゃまずいですよねshock
過去レビューも読んでくださりありがとうございます。もう『序』からでさえ5年も経ってるのですね・・・

Posted by: SGA屋伍一 | December 17, 2012 at 09:39 PM

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