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December 20, 2012

ボンちゃん、故郷に帰る サム・メンデス 『007 スカイフォール』

Skf1昨年の今頃は『ミッション・インポッシブル:ゴースト・プロトコル』が話題を呼んでいましたが、今年は元祖スパイ王の新作がお目見えです。『カジノ・ロワイヤル』『慰めの報酬』に続いてダニエル・クレイグが主演を務める三作目『007 スカイフォール』ご紹介します。

NATOの潜入スパイのリストが何者かによって奪われるという事件が起きる。007=ジェームス・ボンドはあと一歩のところまで実行犯を追い詰めるが、上司Mの判断により放たれた弾丸を受けて水中に落下。行方不明となる。
結局実行犯を逃してしまったMI6は、情報漏えいにより数名のNATO局員を殺害される。さらには本部まで爆破されてしまうのだった。Mは絶体絶命の窮地に立たされる。その危機に、果たして007は戻ってくるのか・・・

まあ戻ってこなけりゃ話になりませんよね。今回は下にいくほどどんどんネタバレしていくのでどうぞご注意ください。
監督はくらーい人間ドラマをよく撮っているサム・メンデス氏。果たしてそんな彼にスパイアクションなんて作れるのかな?と危惧していましたが、どうしてどうして。彼の「地味さ」がいい方向に働いておりました。

『スカイフォール』のテーマを一言で表すなら、わたしは「信頼」という言葉のような気がしました。
まずひとつは自分の肉体への信頼。
記憶を失っていたためスパイとしてブランクがあったボンドは、自分の身体能力が衰えていることを認めざるをえなくなります。しかしそれでもがむしゃらに任務に挑んでいくボンド。自分の体が信じられなくなったら、一体他に何が信じられるんだといわんばかりに。こんなに見ていて危なっかしいボンドは初めてでした。しかし彼は自分の原点に立ち返ることによって、本来の力を取り戻していきます。

ふたつめは「技術」に対する信頼です。今回の敵シルヴァはネットとハイテクを駆使してボンドとMを追い詰めます。MI6のコンピューターもハックされてしまってあてになりません。それに対してボンドは自分の肉体と旧式の車、手作りの武器で立ち向かいます。まさにアナログとデジタルの戦い。これはいまや風前の灯であるフィルム撮影へのレクイエムなのか・・・さすがに考えすぎですかね。

そして最も重要なのがボンドとMとの信頼関係。二人にはゆるぎない共通の理念があるため、たとえどちらかの指示で死に追いやられたとしても潔くそれを受け入れることでしょう。そこには一片の甘えもない、実に男らしい信頼関係と言えます。
対して元MI6のスパイだったシルヴァは、Mに女、あるいは母親の姿を重ねてしまいます。そして「甘え」を拒絶されたことを激しく逆恨みします。Mを巡って激しく火花を散らすボンドとシルヴァ。こんなにもお色気要素の乏しい007が、かつてあったでしょうか。

それはともかくとして、初めてスクリーンで観た007がピアース・ブロスナンの『トゥモロー・ネヴァー・ダイ』であったわたしにとって、ジュディ・デンチ演じるMは実になじみ深い存在です。あれはたしか1998年の作品だったので、かれこれ14年もの付き合いになります。
007がブロスナンからクレイグに移行した時、ムードも多くの設定もガラリと変わりました。そんな中唯一引き継がれたのがデンチさんのMでありました。それほどまでにはまり役というか、存在感があったからでしょう。
しかし寄る年波のせいか、あるいはシリーズに新風を入れるためか、デンチさんは惜しくも今回で引退となりました。寂しい気もしますが、パラレルワールドのブロスナン・ボンドの世界ではきっといつまでも元気で現役でいることでしょう。そう考えて自分を慰めることといたします。

Skf2『007 スカイフォール』は世界でも日本でも公開されるやヒット街道を驀進中。少なくとも興業に関しては近年で最大の盛り上がりっぷりです。この分ではまだしばらく007のリアル路線は続いていくことでしょう。

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Comments

伍一くん☆
ディンチうまい!これは拍手もの~☆

私は長い間007シリーズから遠ざかって、ダニエルボンドで見始めたので、私はもう最初から馴染んでいたのだけど、確かにずっと見ている方には、ダニエルで違ったムードをかもし出しているのが新鮮だったのですね。
ダニエルボンドですっかり落ち着いてきたので、Mなど今まで旧作を繋いできてくれたメンバーは引退なのかな・・・

Posted by: ノルウェーまだ~む | December 22, 2012 at 03:47 PM

>ノルウェーまだ~むさん

久しぶりにほめられたw
わたしはショーン・コネリー&ロジャー・ムーアのボンドはテレビで何本か観ましたが、そんなに気合入れてたわけでもなかったのであんまし記憶にないですw
賛否両論あると思いますけど、マンネリ化してたシリーズをここにきてまた再活性化させたのはすごいですね
以後はベン・ウィショーやレイフ・ファインズが活躍していきそうな雰囲気でしたが、肝心のクレイグさんはまだやってくれるのかしらん

Posted by: SGA屋伍一 | December 23, 2012 at 09:28 PM

伍一さん、

レビューに魅せられました。
M を基準とした作品でしたね。Mはただし、女ではありません。チームの中では、モラルのある母親に似た役割です。ですから、多分、最高司令官ですね。

Posted by: まみっし | December 24, 2012 at 06:16 AM

>まみっしさん

こんにちは~
「Mは女ではない」ですか・・・ 確かにお色気は皆無ですね・・・
Mというのが何の頭文字なのか時々考えたりします。やはりMASTERなのかな

Posted by: SGA屋伍一 | December 25, 2012 at 10:12 AM

SGAさんこんばんわ♪

そういえば『ミッション・インポッシブル:ゴースト・プロトコル』も異色なブラッド・バード監督が担当しましたが、結果的には成功を収めてましたよね。案外シリーズモノの成功の秘訣は畑違いの監督さんが握ってるのかもしれませんねぇ?^^

でも今回のボンドは新旧の対比のようなものも明確で面白かったです。シルヴァはハイテク、かたやボンドはアナログ。武装もシルヴァは小銃、かたやボンドはホームアローンばりのトラップにナイフ。古いものもまた良いんだよって事でしょうかな?^^;

Posted by: メビウス | December 27, 2012 at 02:14 AM

>メビウスさん

すみません・・・ (_ _; こちらからうかがおうと思いつつ最近自分とこの記事を上げるのでいっぱいいっぱいで・・・ どうぞお見捨てなきよう

で、長期シリーズはやっぱり途中でイメチェンというか「新しい風」を入れることが必要ですよね。平成ライダーもあんだけ長続きそてるのは実験作と保守系の作品を交互にやってるからだと思います
スターウォーズも次は『キックアス』『X-MEN:FG』のマシュー・ボーンが監督を務めるという噂ですが吉と出るか凶と出るか

今回の話、自分は『マスターキートン』みたいだな、と思いながら観てました。そしたらこないだの『キートン』新作が『スカイフォール』をコンパクトにまとめたような話になってて面白い偶然だなあと

Posted by: SGA屋伍一 | December 27, 2012 at 10:32 PM

こんばんは! (*^^*) 
私はダニエルボンド、結構好きですよー。
いままでのような、スタイリッシュな感じではなく
なんか無骨な感じが新鮮で・・・・・。
それにしても、今回はホントお色気要素がなかったですよね〜。
なにせ、ボンドガールがMさんですから・・・・(笑)
Mさんの引退は、ちょっとさみしいけど、次回作の新体制に期待したいです。

Mさん、ホントに良く似てる!!!(^_^)

Posted by: ルナ | December 30, 2012 at 12:17 AM

>ルナさん

わたしもダニエルさんのボンドが一番思い入れが深いかな。最初からリアルタイムで観ているだけに
基本無骨なんだけど乱闘のさなかにささっと袖口をなおすあたりはオシャレですよね
先日知ったのですが、デンチさんはやはり網膜の病気で台本が読めなくなってしまったそうです。さびしいですけど長年のお働き本当にお疲れ様でしたと言いたいです
おほめの言葉感謝!

Posted by: SGA屋伍一 | December 30, 2012 at 06:32 PM

正月疲れ(遊び過ぎた)で寝込んでいる三連休ですが
いかがお過ごしでしょうか?

>こんなにもお色気要素の乏しい007が、かつてあったでしょうか。
言えてる~~というか,今回のボンドガールは実はMでしたね。
最後はボンドの腕の中で・・・というのも心憎い終わり方でした。
サム・メンデスの地味さや暗さがいい具合に作用した…確かに!
私にはとっても分かりやすい作品で最後まで寝ることもなくついていけました。
ダニエル・クレイグも年取ったなぁ…50過ぎかな?としみじみしてたら
後で彼がまだ44だと知り仰天しました。まだまだボンド役張れそうですね。
彼のボンドは好きなのでもっともっと見たいです。

Posted by: なな | January 13, 2013 at 03:30 PM

>ななさん

こんばんはー
正月はめいっこ(2歳)の世話に明け暮れてました。かわいいんだけどへとへとになりました・・・
お色気シーンがさらに減ってさらに地味な007になりましたね。旧ファンは「これじゃものたりない!」と憤りそうですが、世界興行収入はシリーズ最高を記録したそうで、この路線で正解だったということかな
正直「ボンドががんばらなくても結果は同じだったんじゃないかな」とも思ったんですが、ななさん言うように「ボンドの腕の中で・・・」というのが大事だったんでしょうね
ダニエルさんはちょい音をあげているようですがまだまだがんばってほしいものです!

Posted by: SGA屋伍一 | January 13, 2013 at 09:16 PM

ジュディ・デンチ降板はもったいないすよね。
・・・レイフ・ファインズの遺伝子に秘かにジュディ・デンチの遺伝子を夜な夜な少しずつ・・・キシャー。何がどう少しずつやねん、俺。

・・・いっそ、ジュディ・デンチの代役として樹木希林とか市原悦子とか・・・21世紀ではないな。昭和、大正、明治あたりっぽい。

え、ええと、ボンド役者ではダニエルが一番、殻を破った分、好きかもしれない。

Posted by: ふじき78 | January 14, 2013 at 10:48 AM

>ふじき78さん

えっ ジュディ・デンチもありですか・・・
ふじきさんのストライクゾーンも本当に広大ですなあ
デンチさんはとりあえずアカデミー賞ノミネートされた『マリーゴールドホテルで会いましょう』で見られますが、Mとしてはこれで見納めと思うとやはりさびしいですね。これが医学薬学は世界一イイイ!のドイツだったらひょっこり復活もあるんでしょうけど
わたしも一作目から劇場でおっかけてるのはダニエルさんなので、一番思い入れがありますよ

Posted by: SGA屋伍一 | January 14, 2013 at 09:42 PM

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