9人いれば世界は救える? 石ノ森章太郎 神山健治 『009:RE CYBORG』
巨星石ノ森章太郎先生の作品で、最も愛されていると言っても過言ではない『サイボーグ009』。これまでにも三回ずつ映画化・TVアニメ化されてきましたが、この度新たに『攻殻機動隊SAC』『東のエデン』などで知られる神山健治氏の手によってスクリーンに甦りました。『009:RE CYBORG』、ご紹介します。
世界各地で高層ビルを狙った自爆テロが頻発。犯人たちに明確なつながりはなかったが、彼らのうちの何人かは「神の声を聞いて」犯行に及んだと口走る。かつて歴史の影で世界の危機を救ったサイボーグ戦士たちは、この件について調査を始めるが、それからまもなく007と008は行方不明になってしまう。そのころ彼らのリーダーである009=ジョーは、記憶を失った状態でファッションセンター「しまむら」を経営していた・・・
最後の一文だけウソです。
わたしが『009』で最もなじみ深いのは80年代に作られたTVアニメ版。そのときも009たちは「神」という不可解なものと戦っていました。彼らの当初の敵は兵器商人たちの世界規模組織「ブラックゴースト団」だったのですが、石ノ森先生が考えていた「最終回」で彼らを壊滅させてしまった(読者の熱烈な要望で実際は終われなかったのですね)ため、さらなる強敵と戦わねばならなくなったのでした。その「強敵」というのが神と人類全体の「悪意」だったりします。今回のリメイクでもそうした点が踏襲されています。
・・・しかし普通に考えて倒しようがないですよね。神や人類の潜在意識なんて。特に今回の『009』における「神」は一層とらえどころがなく、何が目的なのか、そもそも存在しているのかどうかですら曖昧であります。とりあえず009たちは眼前で行われようとしている大量殺戮をとめようと奔走しますが、相手がそんな「全てが謎」の存在であるゆえ苦闘を強いられます。
と、いうわけで単純に起承転結を楽しむ・・・とは言いがたいお話でした。一応かつての009は子供たちのための漫画でしたが、今回年少の観客はほぼ切り捨てられてしまった感があります。神山監督は今の子供たちではなく、かつて子供だった大人たちに訴えたかったのかもしれません。
ただ石ノ森漫画も体裁は「少年マンガ」でありましたが、子供たちをワクワクさせつつも隙をついて社会風刺やトラウマ描写が盛り込んであったりしました。『009』でいうと004がベルリンの壁を越えようとして恋人を死なせてしまったりとか、008がアフリカの逃亡奴隷だったりとか。キカイダーや仮面ライダーとて例外ではありません たぶん神山先生も少年時代にそういう石ノ森マンガの洗礼を浴びてオトナになったのでしょうね。
そういった全体的に小難しいアニメではありましたが、最新の技術を用いたCG効果は理屈抜きで目を見張るものがありました。まあ一番すごかったのが009が核爆発から全力で逃げるシーンだったというのが、ちとアレでしたが。
原作よりもややリアルにアレンジされたサイボーグたちの特殊能力も見ていて楽しかったです。特に002、ジェット・リンクの脚部がカパッと開いてロケット噴射するあたりは良かったです。
逆に気の毒だったのはただ一人能力の見せ場がなかった008・・・ 彼の活躍はパート2に期待しましょう。
『009:RE CYBORG』はまだやってるところではやってるかな・・・ うちの近所ではすでに終わってしまいました。やっぱ『エヴァQ』と時期がかぶってしまったのが痛かったかも。がんばれ009! あと007も今週末から公開です!
Comments
さすがに、神山健治って感じで、映像的には素晴らしかったですが
あの終わり方は、なんとなくモヤッと感が残ってしまいました。
まあ、子供の頃見ていたキャラとは随分違うし、
ある意味別物としては、それなりに楽しめましたけど・・・
ただ、やっぱりあの衣装で、全員揃うシーンはほしかったかな〜。
Posted by: ルナ | December 05, 2012 09:43 PM
>ルナさん
こちらにもどうもー
わらしは神山作品、『攻殻機動隊SAC』は観てなかったんですが、『東のエデン』というのはずっとおっかけてました
TVシリーズの方は面白かったんですが完結編となった劇場版がちと・・・ 微妙だったような・・・
まあ石ノ森作品は「もやっ」として終わってしまう漫画が多かった気がします。そんな中、実に見事なエンドだったのが009の「地下帝国ヨミ編」。先生としては本当はそこで終わらせたかったとか
Posted by: SGA屋伍一 | December 05, 2012 11:28 PM