ねらわれた団地 ジョー・コーニッシュ 『アタック・ザ・ブロック』
クエンティン・タランティーノが2011年の映画ベスト第7位に選んだ一風変わったジュブナイルSF。渋谷で四ヶ月前に公開されて、ようやくこちらにも流れてきました。『アタック・ザ・ブロック』、ご紹介します。
ロンドンの団地で不良少年をたばねているモーゼスは、ある晩隕石の墜落現場に出くわす。隕石の近くに寄ってみた彼らは不気味な謎の生物に襲われる。さして大きくもなかったためあっさりと怪物を退治できたモーゼスたちだったが、それは団地に降りかかる災厄のほんの手始めにすぎなかった。
極地、森林、ド田舎、ビル街・・・ と、これまで地球の様々な場所を襲ってきてくれたエイリアンさんですが、今回のターゲットは「団地(ブロック)」。ロンドン全体ではなく、あくまでピンポイントで団地を襲ってきます。いったいなんでそんなに団地にこだわるのか? アンドロイドが電気羊の夢を見るように、エイリアンは団地妻がお好きなのか? その答えは「○○○○」でございました。伏字部分が気になった方は本編を観てご確認ください。
わたくし一昨日の夜久しぶりに『E.T.』を観て宇宙を越えた友情物語にほんわかしてたんですけど、こっちの少年たちはひどいですよ。説得も試みずいきなりぶっ殺しですよ。まあこれにはエイリアンの外見がETと比べてあまりに不気味だ、というのもあると思うのですが、それにしてもひどい。
団地というと日本ではのんびりした印象もありますが、欧州の都市部では「非行の温床になりやすい」という問題もあるようで。その辺の描写はいま地道にヒットを伸ばし続けている『最強のふたり』でもありました。
非行にいたる理由というのは様々でしょうけど、すさんだ環境から仕方なく・・・という例は多いようです。この映画の主人公モーゼスもそうです。最初こそ突然か弱い女性に強盗を働いて「とんでもねえガキだ」と思いますが、お話が進むにつれ根は悪くない子であることがわかってきます。しかしなんとか更正させてあげたい・・・というこちらの願いなどおかまいなしに、モーゼスはギャングのボスや警察、そしてエイリアンたちによってさらなる悪の道にひきずりこまれていくのでした。
・・・おバカな映画の話をしていたのにしんみりムードになってしまいました。でも世間はいつだってテレビの子供番組のように「子供だから」ということで手加減はしてくれません。そんな風に十代の頃から過酷な現実にチャレンジされてる子供たちのことを思うと辛くなります。
「子供にも容赦しない」「それでも健気に戦う子供たち」というところはSFホラー的なムードとあいまって、楳図かずお先生の『漂流教室』やスティーブン・キングの『IT』に似たところがあります。正義のヒーローをあてにできない少年たちは、果たしてエイリアン相手に勝利をつかむことができるでしょうか。
『アタック・ザ・ブロック』は地方ではまだ公開を残しているところもありますが、さすがにおおむね上映終了しておりますね・・・ 年末にはもうDVDが出るようです。
唐突に思い出しましたが、そういえば『ウルトラセブン』でも宇宙人が一夜の内に団地をのっとる話がありました。宇宙人はやっぱり団地が好きなのかもしれません。
Comments
伍一くん☆
寒いッス・・・・
この前まで暑くてうだっていたのに、もう12月の寒さって、反則もいいよころよね(怒)
さて、いきなりアタック違いの絵で笑いましたが。
ものすごく貧しくなくても、ああやって小さい頃からギャングのような生活を目の当たりにして育つと、根は悪くなくてもそうなってしまう・・・・男の子を持つ身としては、やはり環境の大切さを身に染みて思うのでした。
なかなかの映画だったでしょぅ?
私は結構好きでした。
Posted by: ノルウェーまだ~む | November 19, 2012 09:15 AM
>ノルウェーまだ~むさん
北風小僧のカンタロンスコー
気温差激しいですよね。こたつももう出されたでしょうか
この映画、モーゼス君に同情できるかどうかで評価が別れると思うんですよね。たとえ環境が悪かろうとも犯罪行為は許せない、という人もいるだろうし
でもやっぱりわたしは「当たり前の環境」というものが与えられなかったモーゼス君に同情してしまうのでした。同情してもお金はあげられませんが・・・
Posted by: SGA屋伍一 | November 19, 2012 11:20 AM