« 清貧フィンラン道 アキ・カウリスマキ 『ル・アーヴルの靴みがき』 | Main | サイコロジー青春期 デビッド・クローネンバーグ 『危険なメソッド』 »

November 15, 2012

ねらわれた団地 ジョー・コーニッシュ 『アタック・ザ・ブロック』

Atb1クエンティン・タランティーノが2011年の映画ベスト第7位に選んだ一風変わったジュブナイルSF。渋谷で四ヶ月前に公開されて、ようやくこちらにも流れてきました。『アタック・ザ・ブロック』、ご紹介します。

ロンドンの団地で不良少年をたばねているモーゼスは、ある晩隕石の墜落現場に出くわす。隕石の近くに寄ってみた彼らは不気味な謎の生物に襲われる。さして大きくもなかったためあっさりと怪物を退治できたモーゼスたちだったが、それは団地に降りかかる災厄のほんの手始めにすぎなかった。

極地、森林、ド田舎、ビル街・・・ と、これまで地球の様々な場所を襲ってきてくれたエイリアンさんですが、今回のターゲットは「団地(ブロック)」。ロンドン全体ではなく、あくまでピンポイントで団地を襲ってきます。いったいなんでそんなに団地にこだわるのか? アンドロイドが電気羊の夢を見るように、エイリアンは団地妻がお好きなのか? その答えは「○○○○」でございました。伏字部分が気になった方は本編を観てご確認ください。

わたくし一昨日の夜久しぶりに『E.T.』を観て宇宙を越えた友情物語にほんわかしてたんですけど、こっちの少年たちはひどいですよ。説得も試みずいきなりぶっ殺しですよ。まあこれにはエイリアンの外見がETと比べてあまりに不気味だ、というのもあると思うのですが、それにしてもひどい。
団地というと日本ではのんびりした印象もありますが、欧州の都市部では「非行の温床になりやすい」という問題もあるようで。その辺の描写はいま地道にヒットを伸ばし続けている『最強のふたり』でもありました。
非行にいたる理由というのは様々でしょうけど、すさんだ環境から仕方なく・・・という例は多いようです。この映画の主人公モーゼスもそうです。最初こそ突然か弱い女性に強盗を働いて「とんでもねえガキだ」と思いますが、お話が進むにつれ根は悪くない子であることがわかってきます。しかしなんとか更正させてあげたい・・・というこちらの願いなどおかまいなしに、モーゼスはギャングのボスや警察、そしてエイリアンたちによってさらなる悪の道にひきずりこまれていくのでした。

・・・おバカな映画の話をしていたのにしんみりムードになってしまいました。でも世間はいつだってテレビの子供番組のように「子供だから」ということで手加減はしてくれません。そんな風に十代の頃から過酷な現実にチャレンジされてる子供たちのことを思うと辛くなります。
「子供にも容赦しない」「それでも健気に戦う子供たち」というところはSFホラー的なムードとあいまって、楳図かずお先生の『漂流教室』やスティーブン・キングの『IT』に似たところがあります。正義のヒーローをあてにできない少年たちは、果たしてエイリアン相手に勝利をつかむことができるでしょうか。

Atb2『アタック・ザ・ブロック』は地方ではまだ公開を残しているところもありますが、さすがにおおむね上映終了しておりますね・・・ 年末にはもうDVDが出るようです。
唐突に思い出しましたが、そういえば『ウルトラセブン』でも宇宙人が一夜の内に団地をのっとる話がありました。宇宙人はやっぱり団地が好きなのかもしれません。

|

« 清貧フィンラン道 アキ・カウリスマキ 『ル・アーヴルの靴みがき』 | Main | サイコロジー青春期 デビッド・クローネンバーグ 『危険なメソッド』 »

Comments

伍一くん☆
寒いッス・・・・
この前まで暑くてうだっていたのに、もう12月の寒さって、反則もいいよころよね(怒)

さて、いきなりアタック違いの絵で笑いましたが。
ものすごく貧しくなくても、ああやって小さい頃からギャングのような生活を目の当たりにして育つと、根は悪くなくてもそうなってしまう・・・・男の子を持つ身としては、やはり環境の大切さを身に染みて思うのでした。
なかなかの映画だったでしょぅ?
私は結構好きでした。

Posted by: ノルウェーまだ~む | November 19, 2012 09:15 AM

>ノルウェーまだ~むさん

北風小僧のカンタロンスコー
気温差激しいですよね。こたつももう出されたでしょうか

この映画、モーゼス君に同情できるかどうかで評価が別れると思うんですよね。たとえ環境が悪かろうとも犯罪行為は許せない、という人もいるだろうし
でもやっぱりわたしは「当たり前の環境」というものが与えられなかったモーゼス君に同情してしまうのでした。同情してもお金はあげられませんが・・・

Posted by: SGA屋伍一 | November 19, 2012 11:20 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference ねらわれた団地 ジョー・コーニッシュ 『アタック・ザ・ブロック』:

» 「アタック・ザ・ブロック」少年が男に変わる時 [ノルウェー暮らし・イン・原宿]
タランティーノ監督が年間ベストの7位に挙げていた映画。 新人監督と映画初出演の子どもたちが見せる、新しい形の少年ギャングヒーロー☆ 「団地に住む少年たちが襲ってきたエイリアンをやっつける話」と聞いて、ポケモンやドラえもんみたいな話と思った人は、『今すぐ家に帰ってNARUTOでも見てな』... [Read More]

Tracked on November 19, 2012 09:16 AM

» アタック・ザ・ブロック/ Attack the Block [我想一個人映画美的女人blog]
ランキングクリックしてね larr;please click タランティーノ選出、去年のベスト7位 「ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!」のエドガー・ライト製作総指揮 初監督のジョー・コーニッシュによるSFパニック・アクション。 ちょっとどうかな...... [Read More]

Tracked on November 19, 2012 11:39 PM

» アタック・ザ・ブロック [いやいやえん]
エドガー・ライト製作総指揮によるSFパニック・アクション。 ガイ・フォークスの夜、団地の悪ガキたちがはからずもエイリアンと戦うというのが面白い作品なんですが、悪ガキたちはカツアゲしたり薬を売ったりとほんとに悪い子たちなのでなんとなく居心地は悪いが、花火と爆竹やそれぞれが持っていた武器など、まだ子供らしい面も残っているのは一安心するところ。スクーターと自転車ってところがいいよね。それに本当は、まだスパイダーマンの布団をもってたり、指輪を返し謝る素直さも持っていたりもする。 肝心のエイリ... [Read More]

Tracked on December 28, 2012 08:58 AM

» アタック・ザ・ブロック [銀幕大帝α]
ATTACK THE BLOCK 2011年 イギリス 88分 SF/アクション/青春 PG12 劇場公開(2012/06/23) 監督:ジョー・コーニッシュ 製作総指揮:エドガー・ライト 脚本:ジョー・コーニッシュ 出演: ジョディ・ウィッテカー:サム ジョン・ボイエガ:モーゼス アレック...... [Read More]

Tracked on July 18, 2013 03:42 AM

« 清貧フィンラン道 アキ・カウリスマキ 『ル・アーヴルの靴みがき』 | Main | サイコロジー青春期 デビッド・クローネンバーグ 『危険なメソッド』 »