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October 29, 2012

家庭人ポール トーマス・マッカーシー 『WINWIN ダメ男とダメ少年の最高の日々』

Ww1もう少し懐かしい話になってしまいましたが、今年の五輪でも女子アマレスの強さは際立っていましたね。そんなアマレス人気にあやかってか本国封切りから一年半も経って(静岡東部ではさらに三ヶ月遅れ)、こんな映画が公開されておりました。『WINWIN ダメ男とダメ少年の最高の日々』、ご紹介します。

マイクは連戦連敗のダメ弁護士。当然商売はあがったりで、事務所の修繕もままならない有様だった。ある裁判で痴呆の進んだ資産家を担当したマイクは、手当て目的で彼の後見人になることを決める。ところがそれがもとで、マイクは老人の孫のカイルを家に居候させることになってしまう。カイルはマイクがコーチを務めるアマレスチームでズバ抜けた才能を発揮。最初こそぎこちなかったものの、いつしか二人の間には親子のような絆が芽生え始める。

というわけでアマレスは主題(テーマ)というより素材(モチーフ)という感じでしょうか。監督・脚本は『扉をたたく人』のトーマス・マッカーシー(わたしこれ観損ねてるんですが・・・)。メインはあくまでカイルとマイクの心の交流。『扉をたたく人』で太鼓がはたしてた役割を、こちらではアマレスが務めているというわけ。
余談ですがわたくし長年の間アマレスのルールがよくわかりませんでした。そこで思い切って調べてみたら、基本的には「相手の両肩を地面に付けたら勝ち」ということのようです。そんな簡単なことだったのか・・・ 

話を元に戻して。これはちょっと邦題&予告編(公式サイト)がずれてると思うなあ。やたらと「ダメ」を強調してるけど、少なくともカイル君は「ダメ少年」ではないです。過去に不幸な境遇からちょっとした過ちを犯してしまったくらいで、アマレスを再開してからは一生懸命前向きに生きています。この辺の流れは『ベストキッド』などを思い出します。違うのはマイクはそんなにレスリングが強くなさそう・・・ということです。
マイクの場合もそんなに「ダメ」という印象はうけません。強いて言うならちょっとした出来心でズルをズルズルと続けていたりするところがダメかなあ。・・・あ、けっこうダメだわ(笑)。でもそういうことって誰にでもありうることで、それを「ダメ」というのは少々酷ではな気がします。

その他の登場人物もあたたかく愛すべき人たちばかりで、明らかにダメダメなのは元妻をストーカーしてるマイクの親友と、ドラッグばかりやってて息子を省みてこなかったカイルの母親くらいです。
クライマックスでマイクとカイルの絆には危機が訪れます。大好きだったからこそ、信じてたからこそ湧き上がる「許せない」という思い。そんな少年のヒリヒリした感情に胸を痛めつつも、「でも許してあげてほしい」。そう願わずにはいられませんでした。

マイクを演じるのはベテラン、ポール・ジアマッティ氏。これまで観た中では『交渉人』のお調子者、『幻影師、アイゼンハイム』の人情味溢れる警部、『レディ・イン・ザ・ウォーター』の傷ついた男やもめ、『シンデレラマン』の主人公を支えるセコンド役・・・ などなど。ひかえめで人間臭く、情が篤いそんな役が多い方です。脇で誰かを光らせるポジションが多かった彼ですが、今回ははれてご自分がメインの役どころです。やったね! これはジアマッティファンにはたまらないでしょう! ・・・と思っていたらわたしが知らなかっただけで、『サイドウェイ』とか『アメリカンスプレンダー』とか、主役で光っていた映画もそれなりにあったのね。いつかそれらも観てみたいものです。

ここ最近観た中ではもっとも小ぢんまりした、身近な世界を描いた作品でありました。だからこそしみじみと暖かさが伝わってくるような。まあわたしの本領は怪物映画とかヒーロー映画なんですが、そういう人がどんどん死んでいく映画ばかり続けてみてると最近は胃もたれを起こすのです。合間にこういう心のお野菜を取り入れることによって、怪物映画も健全に楽しめるというか(なんだそりゃ)

Ww2『WINWIN』はすでにDVDが発売中。うちの近所でもDVDが発売されてから上映されました・・・ 太っているのにこんな時間までグダグダビールを飲んでいる、そんなダメ人間なあなたにおすすめします。決してわたしのことではありま(略)

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Comments

こんばんすがやん。
>まあわたしの本領は怪物映画とかヒーロー映画なんですが
>合間にこういう心のお野菜を取り入れることによって、怪物映画も健全に楽しめるというか
おー、なるほどなるほど。すがやんも意外にこういう人情物好きですもんね。いや、私も結構好きですねん。
私もすがやん風に言うと、一番好きなのは文芸派映画なのですが、ホラー映画を見ることによってバランスをかろうじて保っているんですよね。
その間に溢れてしまった人情物を見ると、「ああ私って人間だったんだなあ…!」と思うことが出来ます。
スガやんも大体そんな感じなんでしょ、カッコつけてるけど。

Posted by: とらねこ | December 08, 2012 at 05:59 PM

>とらねこどん

こんばんばん。おかえしありがとー

>スガやんも大体そんな感じなんでしょ、カッコつけてるけど。

わ・・・ わたしはアート系一筋の意識高い映画ファファ・・フガッ(舌噛んだ)
やっぱり同じジャンルのものばっかり観てると普通飽きてきますよね。甘いもの食べた後には、しょっぱいものが食べたくなるのですよ
「このジャンル一筋!」ってんでひたすらそれだけしか観ない、というのもそれはそれで大した愛情だ・・・とは思いますが

ちなみに最近の人情ものでは『ル・アーヴルの靴みがき』もなかなかよかったですよん

>「ああ私って人間だったんだなあ…!」と思う

え、そうだったのか・・・ いや、なんでもないっす!

Posted by: SGA屋伍一 | December 09, 2012 at 08:37 PM

こんにちは。いつもTwitterではありがとうございます。
甘いものの後にはしょっぱいもの、わかります。私も「WIN WIN」みたいな作品の合間には、SFとか仮面ライダーとか観たくなってしまいます(^◇^;)

Posted by: uerei | February 14, 2013 at 01:02 PM

>ueireiさん

こちらこそいつもつぶやき拝見させてもらってます。突然TB失礼いたしました
SFはわかりますがueireiさんはライダーとか観てましたっけ? 意外ですねw
ホラーやアクションが好きでそれだけしか観ない!という人はすごい愛情だなーと思います

Posted by: SGA屋伍一 | February 14, 2013 at 10:32 PM

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’11年、アメリカ 監督・脚本:トム・マッカーシー 製作:トム・マッカーシー、メアリー・ジェーン・スカルスキー他 製作総指揮:ロリ・キース・ダグラス、トム・ヘラー 原案:ジョー・ティボーニ 撮影:オリバー・ボーケルバーグ 音楽:ライル・ワークマン キャスト:ポール・ジアマッティ、エイミー・ライアン、ボビー・カナベイル、ジェフリー・タンバー、バート・ヤング、メラニー・リンスキー、アレックス・シェイファー(カイル) 『扉をたたく人』のトム・マッカーシー監督作品。「地味なんだけど良作。」を地で行くタイプ。... [Read More]

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