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October 13, 2012

セプテンバーだよ人生は エリック・トレダノ オリヴィエ・ナカシュ 『最強のふたり』

Sk21今日ご紹介するのは、昨年の東京国際映画祭で三冠を達成し、全世界で『アメリ』を抜いて「最もヒットしたフランス映画」となったこの作品。もうわたしがあれこれ言うまでもないんですけどね。『最強のふたり』、ご紹介いたします。

フィリップはある事故で首から下が動かなくなってしまった美術批評家。資産家ゆえ人を雇うことには不自由しなかったが、その気難しさや繊細さから、彼につく介護士は誰も長続きしなかった。そんな時、ドリスという黒人の青年が介護士の面接にやってくる。ドリスは失業手当が目的なので、雇ってくれなくてもいいとフィリップに言う。その率直さが気に入ったフィリップは彼を採用。初めは慣れない仕事に閉口していたドリスだったが、次第にスムーズにこなせるようになっていく。そしていつしか二人の間には立場を越えた友情が芽生えていく。

すんません。以降はストーリー半バレくらいで書いていきます。m(_ _;)m
この話、驚くべきことに実話がベースとなっているのですが、わたしが思い浮かべたのはファンタジーの『メリー・ポピンズ』でした。この場合ポピンズさんにあたるのはもちろんドリスくんです。
お金もちなんだけどぎこちないある家族のところへ風変わりなお手伝いさんがやってきて、不思議な力でみんなを幸せにして去っていく・・・ みたいなところがね。まあわたし『メリー・ポピンズ』、観たことないんですけど(おーい)。
もちろんこのお話のメインはドリス&フィリップなわけですが、フィリップの秘書やお家を取り仕切っているおばさん、反抗期に入っているフィリップの娘らとドリスのふれあいもまた痛快なものでした。
ドリスという青年は得がたい資質を持っています。それは「人を楽しくさせる」という才能。なかなかむずかしいですよね、人を楽しませるというのはw 気が進まないままやってるとそれが相手に伝わってしまって、結局どちらも白けてしまう。でもドリスは相手を楽しませると同じくらい、自分も楽しんでる。こういうのってやっぱり天から与えられた才能なのだと思います。
もっとも与えてるのはドリスだけでなく、彼もまたフィリップとの友情から色々なものを得ています。身の上を聞くと彼は「家族から必要とされてない」という思いに囚われていたようです。しかしフィリップや屋敷の人々から頼りにされるうちに、彼もまた寂しさを癒されていき、本当の家族との絆も取り戻していきます。屋敷を出て行く時の彼は明らかに門をくぐったときよりも成長しています。

この時のふたりの別れがさっぱりしているのがまたいいですね。フィリップは寂しいけれど「これは君の一生の仕事ではない」と言って彼を解雇する。ドリスは彼の自分を思う気持ちがわかっているから、「このままいい暮らしがしたいのに」とごねずに笑って出て行く。ただ馴れ合うよりも本当に潔い大人の友情と言えます。

そんなふたりの友情を彩るのが映画ではちょくちょく使われるアース・ウィンド・アンド・ファイヤーの名曲『September』。訳詩を調べたらコチラにありました。
「僕の気持ちは君と一緒さ 君の心と手をつないで君のことを考えている」
明らかにコレ男女間の恋の歌ではありますが、フィリップとドリスの絆と重なっているようにも思えます。そういえばこの映画の原題は『Intouchables(触れ合わざる者たち)』でありました。題名に偽りありじゃん!

Sk22少し前の『君を想って、海をゆく』などもありましたが、フランスでは有色人種に対して少なからず排他的なところもあるようです。その一方でこういう人種も立場も越えた友情の例を聞くとなんか嬉しくなっちゃいますね。
『最強のふたり』はそろそろ終了のところもありますが、評判を聞きつけてかこれから上映されるところも多くあるようです。もう十月も半ばですが、劇場に『セプテンバー』を聴きにいってみるのはいかがでしょう。

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Comments

伍一君☆
清々しいほどの二人の関係がとってもよかったよね。
天から与えられた才能と言うべきこのドリスの性格、見習う所がいっぱいありました。

ところで最初の絵は高倉健?

Posted by: ノルウェーまだ~む | October 14, 2012 06:01 PM

>ノルウェーまだ~むさん

このコンビ「最高の人生の見つけ方」を思い出したりもしましたが、こっちはなんといっても実話ですからすごいですよねえ
ドリスの才能、羨ましいですよね。とりあえずは「セプテンバー」を華麗なステップで踊れるようになりたいわ・・・

>ところで最初の絵は高倉健?

自分、不器用ですから・・・

Posted by: SGA屋伍一 | October 15, 2012 11:04 PM

おはようー。これは良かったよね〜。
今年の上位になるかも。
メリーポピンズとはぜんぜんちがうけどね!
(って観たことないのかーい!)

アース&ウィンドファイアーの曲が効果的に使われてたのも良かった★
ところで最初と最後の絵は誰??

Posted by: mig | October 19, 2012 08:05 AM

>migちゃん

おかえしありがとう~
メリーポピンズとは違うのか・・・(当たり前だ)
じゃあ『家政婦のミタ』みたいな感じかな! ちなみにこっちも観てないよ!
『セプテンバー』はいろんなとこでよく聞くよね。『ナイトミュージアム』の最後でもかかってたし。『バベル』でも使われてたみたいだけどどの辺でかかってたのか思い出せない・・・

>最初と最後の絵は誰??

高倉健とソフトバンクのCMの人です

Posted by: SGA屋伍一 | October 19, 2012 04:49 PM

2回観たけどもう1回くらい行ってもいいかなとかも思ったりするけど・・・。パンフどうしようかなと。
ドリスくんファンタジーでしたね。そういやEW&Fの曲にも「宇宙のファンタジー」ってあったねえ。

Posted by: rose_chocolat | November 04, 2012 03:27 PM

>rose_chocolatさん

どもー うちのまわりでもレイトオンリーになってしまいましたがまだ上映してます
身分違いの二人が親友になる、というストーリーもどこかファンタジーっぽかったですね。実際そんなフィクションたくさんあるし。『最高の人生の見つけ方』とか(笑)
EW&Fは実は『セプテンバー』しか知りません(爆)。一発屋ではないですよね・・・?

Posted by: SGA屋伍一 | November 04, 2012 09:26 PM

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