妖精は志村けん クリス・ルノー カイル・バルダ 『ロラックスおじさんの秘密の種』
ねえ、見てこの時計。ごっついでしょ~ 違うって! コピー商品じゃないよ! ・・・・ってそりゃあ「ロレックス」だ!
つまらぬボケですいません。『ロラックスおじさんの秘密の種』、ご紹介します。
何もかもが人工物で作られている町、スニードヴィル。そこでは木さえもプラスチックやガラスで出来ていて、人々は町を牛耳るオヘア社長から新鮮な空気を買って暮らしていた。スニードヴィルで暮らす少年テッドは、憧れの女性オードリーが「本物の木が見たい」と言っているのを聞き、自然の木を見つけるために街の外に出る。そこで木について知っているという男ワンスラーと出会ったテッドは、なぜ世界から木が消えたのか、えんえんと長い話を聞かされることに・・・
この作品全米ボックス・オフィスで二週連続のトップとなり、『塔の上のラプンツェル』以来の大ヒットを記録したというので、さぞかし子供たちにもわかりやすいシンプルな筋立てのアニメなんだろなーと予想しておりました。ところがこれがなかなか一筋縄ではいかないお話になっておりまして。
まずストーリーが現在パートと過去パートに分かれていて、それらが交互に同時進行で語られて行きます。こういうの一般作品ではちょくちょくある手法ですが、子供向けアニメでは珍しいと思うんですよね。
もうひとつ、これは一人の男の贖罪の物語でもありまして。若気の至りで野望の赴くまま突き進んだら、いつの間にか取り返しのつかないことになってしまった・・・という流れなんですが、この辺登場人物に感情移入してるとけっこう胸にズズーンと来て落ち込みます。そういうところは『ベルセルク』の「黄金時代編」と似ているかもしれない(ホンマか!?)。まあそういう哀しい部分があるからこそ、最後はしみじみ感動できるのですが。
本当に志村けんが声を演じているけったいな生き物からは想像もできない展開でした。ちなみにこの「ロラックスおじさん」、基本的には過去の話に出てくるだけで現代編のテッド君とは全然からまないんですよね。それなのにタイトルやポスターでは主人公みたくどどーんと目立ってます。
原作は1971年に出版されたドクター・スースの絵本。オレが生まれる前じゃねえか!! 読んでないのでどの程度脚色されてるのかは正直わからないのですが、このころから心ある人たちは自然を大切にすることや人工物の限界を訴えていたわけですよね。だのに40年経っても状況は悪くなるばっかりで・・・ はっ 暗くなってしまった そうですね。映画のセリフにあったように「まだ間に合う」という前向きな気持ちを忘れないようにしたいものです。
というわけでさすが米国で長年愛されてるだけあって、笑えるだけでない深いお話になっておりました。ただここんとこのCGアニメ、一昨年の『トイストーリー3』や『怪盗グルーの月泥棒』に比べると「何度でも観たい!」と思えるような突き抜けた勢いが足りないような。実は今回も本編よりも前座の『グルー』スピンオフの方が楽しかったりして そういう点では来年の『モンスターズ・インク』プリクエルや『怪盗グルー』続編には期待しております。
『ロラックスおじさんと秘密の種』は現在全国の劇場で上映中。今週で四週目なのですが、6位→5位→6位→6位と地味な位置をキープしつづけております。いつまで保てるかな?
Comments
物語の構成や脚本の掘り下げ具合は多少大雑把でしたけど、これもしかしたら『WALL・E』よりも胸に突き刺さりました。
テーマが深刻なので、確かに何度も見たいとは思いませんが(グルーは百回は見ましたw)、自分の子どもに見せたい映画でした。
環境保全をテーマにした作品は多々ありますが、自然はやり返さないってスタンスの映画は珍しくて、一本取られました。
Posted by: 田代剛大 | September 21, 2013 09:57 PM
>田代剛大さん
お返事遅れてすいません。わたしはそんなに突き刺さらなかったんですけど(笑)、やはり時代を超えて語り継がれているお話だけにそれなりのパワーを持ってるんでしょうね
「自然はやり返さない」か… 『寄生獣』にあった「地球に優しい、という言葉が嫌いだ。地球は泣きもしないし怒りもしないからな」という台詞と通ずるものがあるような
Posted by: SGA屋伍一 | September 24, 2013 09:18 PM