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October 22, 2012

戦争を知ってる子供たちから 大林宣彦 『この空の花 長岡花火物語』

100725_204454大林宣彦監督といえば、『時をかける少女』をはじめとする「尾道三部作」で有名な大ベテラン。その大林監督が相当ぶっとんだ映画を作ったというので下高井戸まで行って観てまいりました。『この空の花 長岡花火物語』、ご紹介いたします。

天草の新聞記者・玲子の元へ、はるか昔に別れた恋人・片山からの手紙が届く。新潟で教師を務める片山は、生徒と長岡花火の日に上演される劇を作っていて、その芝居をぜひ玲子に観て欲しいと手紙で訴えていた。
記者としてその地に惹かれるものもあった玲子は、意を決して長岡へ向かう。そこで玲子は戦前から現在に至るまでの長岡の壮大な歴史を追体験していくことになる。

いや~、期待に違わぬ実験精神てんこもりな作品でした。開始早々から登場人物が「第4の壁」である観客たちに向かって何度も語りかけるわ、日本映画なのにセリフと同時にひんぱんに下に字幕が出るわ。さらに戦前の人物が現代の長岡に普通に実体で登場し、なぜか一輪車の編隊を組んでクルクル回り続けます。
また基本的には太平洋戦争における長岡空襲と21世紀の「今」を、花火を通じてつないだ映画であるのですが、それに長崎の原爆や中越地震、東日本大震災のエピソードまでが挿入され、そのスケールの壮大さにはちょっと圧倒されました。

大林作品でわたしが観たものというと『転校生』『少年ケニヤ』『漂流教室』『青春デンデケデケデケ』・・・といったところ。どの作品にも多少実験的なお遊びのようなものはありましたが、『この空の花』と比べるとどれも技法的には普通の映画でした(笑) 老境の域に達して突然のこの破天荒ぶりには驚くばかりです。それまで普通にわかる話を作っていた宮崎駿監督が、『崖の上のポニョ』であっちの世界に突き抜けていってしまった時と同じ印象を受けました。あるいは昨年の東日本大震災が、監督のものづくりに多大な影響を与えるほどにショックだったということなのか。

そんな風にある意味「いっちゃってる」映画ではありながら、監督の訴えたいことはストレートに伝わってきます。劇中で繰り返し使われている「戦争にはまだ間に合いますか?」というフレーズ。これだけ聞くとちょっとわかりづらいですけど、映画をみていくと「戦争が起こる前にみんなに伝えて止めなければ」という意味であることがわかります。
この平和ボケした日本で戦争なんて・・・と思う方もおられるかもしれませんが、最近の領土問題や歴史の様々な例を考えると絶対にないとはいいきれません。ましてどこぞの都知事の「戦争も辞さず」なんて発言を聞きますとね・・・
他国から強く弾劾されれば腹も立つかもしれません。でもそこで思い出してほしい。毎年夏になるとなんであんなに戦争を振り返る番組が放送されるのか・・・ということを。ああいう悲劇を二度と繰り返さないためではないでしょうか。
特に最近の報道やネットでの発言を見聞きしていると、日本と周辺国家の仲を悪くしようとする何らかの「巨大な力」が働いてるような気がしてなりません。個人としてそういう「力」に負けたくないな、と思うのでした。

ツボだったのは山下清画伯を元「たま」の石川浩司さんが演じてらしたこと。昨年『たまの映画』を観て「こんなに面白い人だったのか!」と改めて感じたのですが、芦屋雁之助さんが亡くなった今、本当にこの方ほど裸の大将が似合う人はいないと思います(笑) また『たまの映画』で聞きほれた「パスカルズ」の演奏がちょこっと聴けたのも思いがけない耳福でした。

Pic0007b『この空の花 長岡花火物語』はさすがにほとんどの上映が終了しましたが、渋谷のアップリンクではいまだロングランが続いているようです。すごいな・・・ 七月からずっとかけてるんだ・・・ 個性的な映画、突き抜けてる映画、そして花火が好きな人には熱烈におすすめいたします。
ちなみに上下の画像は長岡の花火ではなく熱海のものです。そりゃ長岡とは比べるべくもありませんが、こちらだってそれなりに見ごたえあるんですよ・・・

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Comments

SGAやんこんにちは。今頃のUPになってしまいましたー。
途中の石原発言、私も思い出しました。「戦争にはまだ間に合う」のこの台詞、平和ボケした日本にもしっかり伝わるように描こうという気合が感じられて良かったな。
今年見た邦画の中でも、なかなか良い作品でした。
こういうものをロングランで掛けるところが、uplinkはさすがだな。

Posted by: とらねこ | December 03, 2012 at 09:00 AM

>とらねこどん

こんばんは。その節はお世話になりました
そういえば某知事やめちゃったねw これで影響力は弱くなったと思うけど油断は禁物ですな
邦画に限らず、今年観た全ての映画の中でも、特にインパクト抜群の作品でした。それでいて重苦しくなりすぎないところもよかったな

今年はこちらでもなぜかアップリンク中心で公開された映画が二本観られたんだよね。『ラ・ワン』というインド映画と『聴こえてる、ふりをしただけ』という自主映画。うん、両方ともエッジの利いた(笑)映画でした

Posted by: SGA屋伍一 | December 03, 2012 at 10:48 PM

東京8区から出馬予定の少年ケニヤです。

なんだ、熱海か。。。

ボクは大林監督本人の作品解説つきで見ましたよ。いっしょに壇上にいた入江悠監督に向かって、ボクが元祖インディーズですって言ってた。あと、その日は元AKBの前田敦子さんも来たんですよ。わーい。

そんなことより円谷浩って死んだのか。。。ショック。

Posted by: 少年ケニヤ。。。 | December 04, 2012 at 07:56 PM

>少年ケニヤ。。。さん

はじめまして。。。 とらねこどんのところでdisったのが見つかっちゃったのね。きゃは♪ ごめんなさ~い

>なんだ、熱海か。。。

なにその言い方。。。 あなた熱海大好きだったじゃない!
ナマ大林監督ご覧になったんですか。。。 ウラヤマさんにはぜひ彼の『漂流教室』を面白おかしく解説してほしいものです

円谷浩さんはもう亡くなってちょっとたちますね。まだお若かったのに。平成ウルトラセブンにもちょこっと出ておられましたね。。。

Posted by: SGA屋伍一 | December 04, 2012 at 09:48 PM

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» 104★この空の花 長岡花火物語 [レザボアCATs]
’11年、日本 監督:大林宣彦 脚本:長谷川孝治、大林宣彦 撮影:加藤雄大、三本木久城他 編集:大林宣彦、三本木久城 キャスト:松雪泰子、高嶋政宏、原田夏希、猪股南、笹野高史、富司純子 なんだか今年見た日本映画は、面白いものが多かったなあと思う。今回のこの作品も、それほど期待してはおらず、単に「長岡の花火が好きだから、ちょっと見てみようかな」程度の知識で観に行っただけ。 まさか、こんな作品が出てくるとは夢にも思わず、感激してしまった。 震災をテーマにした作品は、私にはなかなか納得が行かなそう。 震災... [Read More]

Tracked on December 04, 2012 at 12:11 AM

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