電光石火抜刀斎 和月伸宏・大友啓史 『るろうに剣心』
原作もアニメ版も観てなかったのですが、やっぱ幕末もの好きだし、「力入ってますよ!」的なアピールを猛烈に感じたので観てまいりました。『るろうに剣心』、紹介いたします。
時は幕末。暗殺剣を振るい、人々から恐れられていた「人斬り抜刀斎」という男がいた。しかし幕府の敗北が決定的となった鳥羽伏見の戦いを境に、抜刀斎は歴史から忽然とその姿を消す。
時代は移って明治。江戸であの抜刀斎が辻斬りを繰り返しているという噂が流れる。同じ流派で「活人剣」を唱える神谷道場の道場主・薫は、流派の汚名をすすぐべく抜刀斎を探していた。そんな折、薫は抜刀斎の人相書きをしげしげと眺めるひょうひょうとした「緋村剣心」という流浪人と出会う・・・
原作は1990年代に週刊少年ジャンプで連載され、人気を博したコミック。「少年にはうけにくい」と言われた時代劇、しかもマイナーな明治時代もので大ヒットを飛ばした、孤高の(笑)作品であります。
それがなぜ完結から十年以上経った今になって実写映画化されることになったのか? スタッフ・キャストに大河ドラマ『龍馬伝』に関わった名前が何人か並んでいるところを見ると、「『龍馬伝』のメンバー・カラーで一発派手な時代劇を作ってみようよ!」という企画だったのかもしれません。実際佐藤健くん演じる緋村剣心は『龍馬伝』で彼が演じた「人斬り以蔵」と通ずるところがあります。
で、作品の出来ですが、脚本的には色々苦しいところがありました(笑)。例をあげてみると逃亡した女を追って警察で殺戮の限りをつくした偽抜刀斎が、すぐ近くにその女がいるのにろくに探しもしないで帰っちゃったりとか、はたまた仲間であったはずの愚連隊はいったいなんで偽抜刀斎に斬られちゃったのかとか・・・ そういう細かいところが気になりだすとキリがない映画です。
しかしこの映画にはそういう細かいアラを補ってあまりあるものを感じました。「多少のキズはパワーと情熱でごまか・・・振り切れ!」 そんな製作陣の想いがよく伝わってきました特に佐藤君を初めとした若い役者さんたちの熱演ぶりは見ていて清々しいものがありましたね。
剣心というキャラは幾つもの「顔」をもっています。ふだんのぼけっとした顔、剣を取った時の凛とした顔、過去の罪を悔い打ちしおれている顔、そしてそれらのさらに奥底に潜んでいる悪魔の顔・・・など。
これらを演じ分けるのはやはりそれなりの演技力が要求されますが、『仮面ライダー電王』で様々な人格を演じた経験が生きたのでしょう。みごとに剣心になりきっていました。特にクライマックスで「人斬り」の顔に戻ったときなどはぞわぞわっと背筋が冷たくなりましたよ。
さらに特に後半冴え渡る殺陣もひきつけられるものがありました。香港風の派手な立ち回りもある一方で、日本独自の「静と動」を意識したチャンバラが見られたのは嬉しかったです。じっと動かず、ためてためて、一瞬のうちに決着がつく・・・ 新感覚もけっこうですが、こういう黒澤明や山田洋次が築いてきた伝統を絶やさないようにしてほしいものです。
あと個人的にツボだったのは神谷道場をはじめとする日本家屋の風景とかね。こういう屋敷にセピア調の色彩や夕暮れの光が差し込む映像がわけもなく好きなもので。
明治というと明るくほんわかしたイメージがありますが、その裏面にスポットをあててたところもよかったですね。平和な時代のために戦ってきた武士たちですが、本当に平和になってしまったら用なしになってしまったという皮肉。そんな「負け組」の武士にも様々な群像があるところは山田風太郎の「明治もの」を思い出しました。恐らく原作の和月先生は山風に影響を受けていると思うのですがどうでしょう。
そういえば剣心のモデルは岡田以蔵というよりやはり人斬りと称された河上彦斎なんだとか。山風はその彦斎を主人公とした「おれは不知火」という短篇も書いてますので、ご興味おありの方はご一読のほど。ちくま文庫から出ている『地の果ての獄』下巻に収録されています。
左は佐藤くんのイメージで書いてみたんですが、やはり似ないね~
Comments
私も、原作もアニメも観ていなかったし、
映画も観るつもりではなかったけど、
意外に評判がいいようなので、ちょっと観たくなってしまった感じでした。
正統派とは言えないでしょうけど
殺陣のシーンは、ホントにスピードと迫力があって
なかなか見応えがありました。
佐藤健くんのイラスト、普通にイケメンって特徴ないから
難しいよねぇ〜(笑)
Posted by: ルナ | September 29, 2012 01:34 AM
>ルナさん
これ、わたしの周りでもなぜかそんなに「読んでた」という人いません。この映画観て読み始めた、という人ならいますが・・・
殺陣のシーンは佐藤君のほかにも綾野剛くん、青木崇高くん、須藤元気さんそれぞれがんばってましたね。特に綾野くんは『カーネーション』での優男ぶりを返上するほどの大活躍だったと思います。最近腰を痛めたそうですが・・・
>イラスト
佐藤くんはもうちょっと細面でふにゅっとした感じですかね~ 精進精進
Posted by: SGA屋伍一 | September 29, 2012 08:39 PM
伍一君☆
に・似てない・・・・
さて、今回の文章はちょっと伍一くんっぽく無かったような?ま、それはいいとして。
健くんに見とれすぎて、あまり突っ込みどころなど感じなかった私ですが、色々と殺陣もすごくて楽しめちゃいました♪
やっぱり?電王が役に立ったのね。
Posted by: ノルウェーまだ~む | September 30, 2012 12:07 AM
>ノルウェーまだ~むさん
こんばんばん。おいうちサンクス
まだ~むさんも健くんがお気に入りですか。彼、あまりにも線が細くてわたしの脂肪をわけてやりたい衝動に駆られるんですが、女性ファンはそういうところに母性愛を掻き立てられるんでしょうかね
>やっぱり?電王が役に立ったのね。
もちろんです! わたしにとっては彼は一生「電王」ですよ!(イヤかもしれないが!)
Posted by: SGA屋伍一 | September 30, 2012 08:04 PM
>原作もアニメ版も観てなかったのですが
あれ、伍一殿見て無い????・・・・・・・・・・!
意外すぎで驚かねぇ・・・・(え
私は逆にアニメ&原作はしっかり見ていましたよ。
ちょうど東京でアニメばかり見ていた頃だし(笑)。
アニメは中盤の京都編あたりが面白かった。
剣心の師匠の中の人が某赤い彗星だったりと
結構楽しめました。
アニメ(TV版)は終盤、完結章真っ只中な原作に
追いついたので最後のほうはオリジナルに
なりましたが・・・・・・・・
水7時半からフジテレビでアニメなんて今じゃ
考えられないくらい、ヘンテコナ状況ですなTV。
で、実写版についてはセブンイレブンの垂れ幕見て
香川さんまた判りやすい役やってるなぁ
という感想ぐらいしか・・・・・・(笑)。
いつもスマナイ。
>電王
「クレヨンしんちゃん」とのコラボ「しん王」が
やたら気に入ってますが(あれ?
Posted by: まさとし | September 30, 2012 10:13 PM
>まさとしさん
レス遅れてすみませぬ~
本当になんで読んでなかったのだろう?たぶん気がついた時には相当な巻数になっててつい腰がひけてしまったのだと思います。あのころは毎月たくさん漫画買ってたからな~ 『風雲児たち』も含めて(笑)
>アニメ(TV版)は終盤、完結章真っ只中な原作に
追いついたので最後のほうはオリジナルに
なりましたが・・・・・・・・
ジャンプの漫画・・・に限らず少年漫画のアニメ化にありがちなパターンですな少し前のハガレンなんかは理想的な形でしたが、あれだって1回追いついてオリジナルエンドになったしねい
香川さんは確かにわかりやすーい役どころでしたが、いまやっている『鍵泥棒のメソッド』は名優の面目躍如といったところでしたよ
>「クレヨンしんちゃん」とのコラボ「しん王」
ありましたね・・・ 白鳥百合子ちゃんの声がめっちゃ棒読みだったのは慣れてなかったからかあの時点で限界だったのか
Posted by: SGA屋伍一 | October 04, 2012 10:47 PM