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August 06, 2012

影は生きている ミッシェル・オスロ 『夜のとばりの物語』

『チェブラーシカ』『動物農場』『イリュージョニスト』など、新旧のアート性高いアニメを次々と配給してくれている三鷹の森ジブリ美術館ライブラリー。『キリクと魔女』『アズールとアスマール』に引き続き、異才ミッシェル・オスロの新作をまたもや持ってきてくれました。『夜のとばりの物語』、ご紹介します。

そこはとあるアニメーションスタジオ(なのか?)。若い二人の男女と学識豊かな一人の老人が、世界の様々な民話を掘り起こし、六つの影絵として再現していく・・・ という話なのかと思っていたら、公式によると「夜な夜な好奇心旺盛な少年と少女が、古いお映画館で映写技師と共にお話を紡ぎ、6つの世界の主人公となります」となっていました。ギャフン。
と、とりあえず予告編の動画をごらんください。

オスロ監督の作品は『アズールとアスマール』を観たことがあります。あれも非常に独特な技法のアニメでしたが、今回もまた新たなチャレンジを試みています。それは「影絵」。人間にしろ動物にしろ妖怪にしろ、基本的に動くものは全て真っ黒なシルエットで表現されています。対照的に背景はパステル調で色彩豊かに描かれています。一歩間違えれば「手抜き」とも受け取られかねない極めて大胆な手法。しかしオスロ監督の卓抜したセンスゆえか、この真っ黒なキャラたちがくにゃくにゃと動く画風が美しく、かつ面白い。わたしが思い出したのは『ヘルボーイ』原作で知られるマイク・ミニョーラ氏のスタイル。こんな感じ。
120806_082158漫画とアニメの違いこそあれ、影で覆われた世界というのは、操る人によってはこんなにも魅力的なものになるのですねえ。

それでは全六話の感想を手短に書いていきます。

狼男
恐らくトルコかペルシアあたりが舞台。実は狼男だった貴族の青年と、彼を一途に慕う少女のお話。ストーリーの先が読めたせいか六話の中では少々印象が薄かったです。
萌え所:青年が狼に変身するシーン。いま日本でも似たようなのやってますね・・・

ティ・ジャンと瓜二つ姫
ポリネシアの島々の民話。とある島を訪れたティ・ジャンはその島の王様が娘婿を探していると知り、ひょいひょいと宮殿に訪ねにいくが・・・ お調子者で行き当たりばったりで、でも心優しいティ・ジャンの冒険が楽しいお話。南洋のほんわかしたムードも手伝って、六篇の中で一番人を食った話でした
萌え所:ティ・ジャンになつくバカでかい蜂

黄金の都と選ばれし者
南米インカ・アステカあたりを意識したお話。噂に高い黄金の都を訪れた青年は悲しげな美女に会う。彼女は都の反映と引き換えにこの地の神に捧げられるのだという
日本のヤマタノオロチ退治やギリシャのアリアドネの物語を彷彿とさせるストーリー。最初は「都のために仕方ないこと」と諦めていた人々が、青年の情熱で心を動かされていくところは音楽とあいまって感動的でした
萌え所:ダイナミックに動く大怪獣(笑)

タムタム少年
アフリカの民話。太鼓の大好きなタムタム少年はいつも何かをポムポム叩いているが、そのたびにみんなから「うるさいからあっちに行け」と煙たがられる。それでも叩くことをやめないタムタム少年は、ある日太鼓の達人らしき老人とめぐりあう。「黄金の~」と並んで最も気に入った一編。「戦いに勝るのは平和と音楽とダンス」というテーマが実にオスロ監督らしい
萌え所:乳首の形まではっきりわかるお姫様。アフリカが舞台だからなんでしょうけど・・・

嘘をつかなかった若者
チベットに材を取った、少年と少女と喋る馬の三角関係(!?)を描いたお話。とにかくこのヒロインがむかつきます。冒頭でレギュラーの女の子が嫌がっているのも大納得。そして「お前はそれでいいのか!?」と拳を握りたくなる結末には大疑問
萌え所:「あかぬけ一番!」のヒカリキンみたいな喋り馬

鹿になった娘と建築家の息子
これは普通にヨーロッパのおとぎ話だったかな。邪悪な魔術師と結婚させられる娘を、その恋人の青年が助け出そうとするお話。ストーリーや青年がお城をひょいひょいと渡っていくあたりは宮崎駿氏の某名作を思い出させます。また後半出てくる「妖精の家」に入っていくくだりは「アズールと~」にも似ておりました
萌え所:カリオストロの城(違)

Photo『夜のとばりの物語』はもうレイトオンリーになっちゃいましたが、まだメインの新宿バルトでかかっているようです。わたしこれ3Dで観たかったんだけど、行ったらもう完売で時間的に2Dしか観られなかったのよね・・・ しかも5時間も待って。
許すまじ、新宿バ○ト(逆恨み)


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Comments

このテのロマンチックな絵柄に弱いので見に行きました。

でもストーリーは、結構ギャフン(死語)なモノが多かったですよね(笑)

私は好んで2Dで見ましたが、これは3Dで良かったかもと思いました。

5時間待ちの新宿○ルトですか!
関西はブルク7での単館上映で、ほぼ満席ではありましたが、前方席で良ければ、待つことは無かったようです。

Posted by: サワ | August 14, 2012 03:38 PM

>サワさん

ども。そういえば『アズール~』もかなり深刻な出だしだったわりには最後はえらくあっけなかったような。ギャフン!というほどではありませんでしたが。それよりギャフンだったのは五時間待ちの方(笑)この影絵が3Dでどんな風に見えるのかかなり興味あったんですがねえ・・・
休日は日本で一番混むであろう映画館をなめておりました。地元ではそんなことはまずないんですけど

Posted by: SGA屋伍一 | August 15, 2012 05:13 PM

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