本当は恐ろしいアニメ童話 マーク・アンドリュース ブレンダ・チャップマン 『メリダとおそろしの森』
第一作『トイストーリー』からピクサー作品はすべて映画館でチェックしてきたわたくし。当然今回も観てきました。『メリダとおそろしの森』、ご紹介します。
10世紀ごろのスコットランド。王女メリダは乗馬と弓が大好きなお転婆な女の子だったが、母はそれを快く思わず、厳しく礼儀作法を教え込んできた。やがてメリダが思春期を迎えると、王妃は王と計らって周囲の部族からふさわしいものを婿に迎えようとする。だがまだまだ結婚したくないメリダは、一計を案じてなんとかそれを逃れようとするのだが。
第一作からはや17年。ピクサーもいつの間にやら自分達独自のスタイルを確立してしまった感があります。そのスタイルとは、オモチャとか虫とか謎の物体とか、とにかくヘンテコリンでちっこい物体がうじゃうじゃ出てくるそういう作風のことであります。
で、それからすると今回の『メリダ』はかなり異端の作品であります。普通の人間の女の子が主人公で、ビックリドッキリメカみたいなものもほとんど出てこない(毛むくじゃらのオッサンはいっぱい出てきましたが)。どちらかといえばピクサーというより、ディズニーご本家かドリームワークスが作りそうなアニメ。でもまあ、作風云々はさほど重要じゃありません。問題は面白いか、こちらの胸に響くような何かを残していってくれるかということ。こっから先は徐々にネタバレしていきます・・・
わたしとしては、どうも主人公のメリダにひっかかりを感じざるを得ませんでした。親から無理やり結婚させられそうになる。そこは同情できます。しかし詳しい結果を知らなかったとはいえ、実の母親に一服盛って意見を変えさせようとするってずいぶんおっかなくないですか・・・ そのせいでお母さんがクマになってしまっても、「わたしは悪くない。悪いのは魔女」と反省しないメリダ。こりゃ相当の問題児だわ・・・と呆れ返りました。
ただ、そんな風にわたしが感じるのはこれまでジブリのアニメを一通り見てきたからだと思います。たとえば『千と千尋』の千などは自分のせいではないのに、豚に変えられてしまった親を元に戻そうと懸命に働きます。キキもサツキもシータもか弱い女の子でありながら、厳しい試練に健気に立ち向かっていきます。そうした宮崎アニメのヒロインと比較してしまうと、メリダちゃんがコマッタちゃんに見えてしまうのも致し方なきことでしょう。もしかしたら千尋やキキなどよりも、メリダの方がずっと実際の女の子たちに近いのかもしれません。
リアルといえばメリダと王妃のような親子は確かにそれなりにいそうです。娘のためと思い、厳しいしつけを施し、熱心にバレエやピアノを習わせる母。しかしそれがいきすぎると娘には大きなプレッシャーとなってしまい、まるで『キャリー』や『ブラックスワン』のようになってしまう・・・ ああ恐ろしい!
ま、そこはピクサーのアニメ映画なんでそこまでドロドロギスギスした話にはなりませんが、これがホラー映画として企画されたなら「ガオオオ!! どうしてわたしを怪物にしたのオオ!!」と怪物熊がヒロインを追い掛け回す相当怖い話になったことでしょう。自分は男なんでよくわかんないですけど、母と娘って場合によったらそういう一筋縄ではいかないような感情で結ばれてしまうこともあるのではないでしょうか。
かように考えようによってはなかなか深いお話ではあります。が、これまでのピクサー作品と同じくらいテンションが上がったかといえばちと微妙(笑) 最新のCGで描かれた自然の美しさや、中世スコットランドの風俗、ケルト風のサントラなんかは大変素晴らしかったんですけど。特に坂本美雨さんが歌われている「いにしえの子守り歌」は情感豊かで心に染み入る主題歌でした。
『メリダとおそろしの森』は一応現在全国で上映中ですが、日本ではかなりお客さん入ってないらしいです。こんなスレが立ってしまうほどに・・・ 『トイストーリー』や『ニモ』の十分の一しかもうかってないのか・・・ わたしは微妙にくさしてしまいましたが、アニメ好きなら一見の価値はある作品なのでご興味おありの方はぜひ映画館で観てください(急に応援モード)
Comments
伍一くん☆
応援されてもきっと観ないとおもうのだけど、母と娘はご想像の通り一筋縄ではいかないですわ。
思いが強くて過干渉になってしまったと反省して、自由にさせてあげているつもりが寂しく思っていたり?
今はねえねのコスプレ衣装を一緒に作っているところ。
夏休みの宿題なみの大変さ!!
Posted by: ノルウェーまだ~む | August 16, 2012 11:26 AM
こんばんは!(^_^)
プリンセスものは、ご本家がさんざんやっているので
ピクサーには、おもちゃとかムシとか魚とかロボットとかで
もっと楽しい作品を作ってほしいなぁ〜。
おそろしの森って、せめてもっといろんな怪人が出てくるとか
正直ちょっとガッカリでした。
そっかぁ、なんかメリダにイラついたのは
私もさんざんジブリを見てるせいだったのか・・・納得!(笑)
Posted by: ルナ | August 17, 2012 12:21 AM
>ノルウェーまだ~むさん
あら、ダメですか、こうゆうの・・・
そんなにまだ~む家の実情について知ってるわけではないけれど、ブログ読む限りではまだ~むさんはのびのびお子さん育ててるように思えるけどなあ
>今はねえねのコスプレ衣装を一緒に作っているところ
ほら、仲良しじゃないですか(笑)
あ~かいサラファン、縫っていても~ という歌ご存知?
Posted by: SGA屋伍一 | August 17, 2012 10:08 PM
>ルナさん
こんばんは
ディズニーご本家のお姫様ものと違うのは、かっこいい王子様が出てこないというとこですねw
次回はモンスターズ・インクの続編というか前日談なので、へんてこな生き物がゾロゾロと見られますよ!
そういえばおそろしの森はあんまりおそろしくなかったですね。素っ頓狂なおばあちゃんがいたくらいで
メリダですが、顔が横長でモジャモジャしてるところはチェブラーシカに似てるなって思いました(笑)
Posted by: SGA屋伍一 | August 17, 2012 10:16 PM
西宮のTOHOシネマズには、プレミアムスクリーンという、座席数が少なく、座席が豪華な劇場が有ります。
この劇場では、大抵「終わったな…」という映画がかかります。
「メリダ」は、なんと!上映1週目の水曜日に、8時台上映の回がこのプレミアムスクリーンでした。
水曜日の上映予定は、前週に出ますから、つまり上映初日前からダメと判断されたようです。
どうよ、これ!
Posted by: サワ | August 18, 2012 08:58 PM
>サワさん
こんばんは~
大阪の情報ありがとうございます!
そういえばわたしが観た時は客入りはどうだったかな~ 辛うじて十二三人くらいは入ってたような
そういえば小田原市のTOHOにもプレミアムスクリーンありますが、比較的マイナーな作品がよくかかりますね(笑)
最近の例でいうとたった十日で上映が終わってしまった『ザ・マペッツ』とか・・・
Posted by: SGA屋伍一 | August 19, 2012 10:05 PM