ヴァーチャル鬼嫁日記 レン・ワイズマン 『トータル・リコール』
サイバーパンク、P・K・ディック好きなら誰でも知ってるあの映画が、なぜか今頃になって帰ってキター!! 1966年に原作が発表され、1990年にポール・バーホーベンが映画化し、そして2012年リメイク公開の『トータル・リコール』ご紹介します。
近未来、化学兵器の使用により地球で人類が生存可能な場所は、富裕層が住むヨーロッパのブリテン連邦と、下層階級が暮らすオーストラリアの「コロニー」のみとなっていた。コロニーの住民達は暮らしの糧を得るために、日々地球の中心を貫く巨大なエレベーターでブリテン連邦まで通勤していた。労働者の一人ダグラスは、不満を抱えながらも愛する妻を支えにロボットの製造に励んでいたが、夜毎同じ夢を見てしまうという悩みを抱えていた。その夢でダグラスは腕利きのスパイとして活躍していて、決まって最後は当局に捕まってしまう。夢について考え続けていたダグラスは、ふと「望みどおりの『夢』を見せる」という「リコール社」の門を叩くのだが・・・
今回は芸がないですけど、半ばネタバレ気味で1990年のオリジナル版と比較しながら語っていきたいと思います。
まず一番の変更は「火星にいかない」というとこでしょうか。主人公が行き来するのはあくまで地球の両側。この地球に穴を開けて反対側に移動するというアイデアは「んな無茶な」とは思いますが、なかなか他所では見られない面白いものでした。ちょっと前に地底版『アルマゲドン』といった趣の『ザ・コア』という作品があったくらいでしょうか。
二つ目に目立った点としては「偽嫁が大活躍!」というところですね。旧作ではあっさり退場となってしまった主人公の偽嫁ですが、今回は監督夫人のケイト・ベッキンセールが勤めているせいかネチネチとクライマックスまで暴れまくります。外人の顔が見分けづらいわたしとしては、真ヒロインのジェシカ・ビールと「黒髪のロングの白人」というとこが丸っきりかぶってしまったのが少々いただけませんでしたけど。それにしても旧作ではあっさり退場した偽嫁のシャロン・ストーンが後にあんなに大ブレイクしたのに、真嫁はその後どこかへ消えてしまったのが不思議です。
当たり前ですが主人公の風貌もかなり違いますね。当時スタローンと並ぶ世界二大筋肉だったシュワルツネッガーと比べると、演技派のコリン・ファレルはそれなりに鍛えてはあるもののなんとも弱弱しく、メンタル的にも不安定に感じられました。ただその分旧作よりもサバイバルの緊迫感は増してました。シュワちゃんなら相手が宇宙人だろうと怪獣だろうとまず大丈夫だろう・・・みたいな安心感がありますが、コリン・ファレルとなると突然ころっと死んでもおかしくないですし(しどい)、健気にがんばってれば応援してあげよう、という気もわいてきます。
あと全体的な監督の作風。趣味の悪いバーホーベン氏は『トータル』に限らずムチムチネトネトした描写が多いです。こちらで言うとシュワちゃんの変装解除シーンとか、酸素が足りなくなって目ん玉が飛び出しそうになるあたりとかね。
それに対してリメイク版は未来都市やメカデザインからしてスッキリしたシャレオツなイメージ。監督が『アンダーワールド』のレン・ワイズマン、脚本が『リベリオン』のカート・ウィマーと聞いて「ああ、なるほどね」と納得しちゃいました。
さて、わたしこういうサイバーパンクもしくは仮想現実ものは、一応大団円でまとめておいて、ちょろっとだけ「もしかしたら全部夢かもよ?」と匂わせて終わるのがベストだと思うのです。そういう意味で旧『トータル』は実に理想的でした。サイバーパンクの名作は大概そうですよね。『インセプション』しかり、『マトリックス』しかり。ただ『マトリックス』は変な続編作っちゃったのでその辺の美学がパーになっちゃいましたけど。
で、新『トータル』もそういうのを匂わせてる・・・ような気もするんですけど、かなり曖昧でした。薄味になってしまったのはその前に無理やりなどんでん返しをねじ込んでるせいもあると思います。きっとなんとかして観客をビックリさせようとしてこういうオチを付けたんでしょうけど、レンレンもカータンも、誰も君たちにそんなこと期待してないから! 君たちは普通にシャレオツな映像作ってればいいんだよ!
とまあそんな風に若干着地に失敗してはいましたが、全体的には近未来のスタイリッシュなおっかけっこを楽しませてもらえました。
(新)『トータル・リコール』はまだ全国の劇場で公開中。20年前と比べると、「仮想現実から帰ってこれない」という話は一層現実的になっていると思うのですがどうでしょう。
Comments
伍一君☆
夏休みもあと1日。
毎日朝早く起きてお弁当を作るのと、毎日息子が家に居て昼ごはんを作るのとどっちがいいかと言われるとどっちもどっちですが、彼はとにかく宿題に追われています(爆)
そんなわけで観たかった「トータル・リコール」もまだ観れてないのだけど、それにしても最後の絵、どんな人がそんな被り物を・・・(汗)
そしてトップの絵の二人の似てない事!!
超笑える~~ん?笑えねー!のほうが正しいかな。
Posted by: ノルウェーまだ~む | August 30, 2012 06:12 PM
>ノルウェーまだ~むさん
そっか、夏休みもぼちぼち終わりか・・・ とっくに関係ない年なのになんでか気分がブルーになりがちなのはなぜでしょう。まだ~むは息子さんの宿題手伝ってあげないの? えらいなあw
一応断っておきますけど今度のトータル・リコールにこんなかぶりものをした人は出てきません。例の変装解除シーンももっとスッキリした感じになってます
>そしてトップの絵の二人の似てない事!!
ええ! こんなにクリソツなのに!
まだ~む、さてはわたしの才能をねたんでますね!?
Posted by: SGA屋伍一 | August 30, 2012 10:26 PM
おはよ!
今月映画へのコメありがと!
お返事にも書いたけど 最強のふたりは
わざわざ観に来る価値ありよー
10月末だなんてDVD出る間際じゃもったいない(?)から
みにきちゃえば?
ところでまだーむにも言われてるけど
上のふたり、にてなーい!!
※妬んでません
トータルリコールは当時、三人ではしごして観たの、
昔から私変わってない
ツイッターでもいったけど
今思えばそのときみた「ステラ」「ゴースト」と最強な3本だったわ♪
というわけでコリン版は観ないから全部読ませてもらっちゃった☆
Posted by: mig | August 31, 2012 09:57 AM
>migちゃん
こんばんばん。こっちにも来てくれてありがとう
いやー、さすがにまだそんなに早くは出ないんじゃないの?DVD
でもそうだねえ。そろそろ皆さんの顔もまた見たくなって来たし、ちょうどいい機会でもあればな~
>上のふたり、にてなーい!!
まあ似てる似てないというのは個人の主観の問題であってね(あくまで下手さを認めないw)
トータル・リコールの90年ごろは本当に洋画全盛の時代だったよねえ。わたしも男友達だけで(・・・)『ゴースト』と『48時間part2』の同時上映とか、『ダイハード2』を観にいった覚えがあるよ。あとこの頃はシュワちゃんの全盛期でもあったなあ(しみじみ)
Posted by: SGA屋伍一 | August 31, 2012 11:00 PM
伍一さん、
一番上の絵、コリンの方はやや似ていると思いました
伍一さん御指摘の通り、シュワちゃんの鉄顔と比べて、コリンはヨワッチイ感じありましたね。
Posted by: まみっし | September 04, 2012 12:08 AM
>まみっしさん
ありがとうございます! まみっしさんは優しいなあ。上の手厳しい二人と違って・・・(あはは)
わたし今まで観てきたコリンさんの映画が『アレキサンダー』『デアデビル』『Drパルナサスの鏡』とかなんでどうも彼は「いつもテンパッてる人」というイメージがぬぐえず。こないだテレビでやってた『SWAT』ではまともそうでしたが
Posted by: SGA屋伍一 | September 04, 2012 11:10 PM
こんにちは!(*^^*)
なんで今頃リメークなのか、よくわかりませんが、
ひょとしたら、鬼嫁をやらせたかっただけなのかもしれません・・・(~_~;)
(どういうプレイなんだか・・・笑)
さすがに映像的には、オリジナルよりずっと洗練されていたけど
あの巨大エレベータ以外は、どっかで見たような映像で
ちょっと残念ですねー。
イラスト似ていないけど、味わいはありますよ!!!(笑)
Posted by: ルナ | September 09, 2012 03:12 PM
>ルナさん
こんばんは~ 毎度ありがとうございます。
アンダーソン&ジョボビッチとか、バートン&ヘレナ・ボナムとか、嫁に痛い役をやらせるのが最近のハリウッドの風潮なんでしょうか
ワイズマン監督は発想にしても映像にしても一から自分で産み出すというよりかはアレンジャーみたいなところがありますよね。このままアレンジャーの道を究めるというのもありかもしれません
>イラスト似ていないけど、味わいはありますよ!!!(笑)
ありがとうございます! えーと、下のウンコの方じゃないですよね?
Posted by: SGA屋伍一 | September 10, 2012 09:53 PM
火星に行かないって知らなかったから
途中(三つおっぱい出てきたあたり)で気付いて
ちょっとがっかりでした・・・
でも地球の真ん中を通るというアイデアはぶっ飛んでてよかったですー
シュワ人気全盛期だった当時、劇場で公開されたものは
大体観に行ってたけど、『トータルリコール』の他には
『バトルランナー』が印象深いです。
あと今ちょうどこちらで『コナン・ザ・バーバリアン』やってるので観に行かなくちゃ。
そうそう、昔のはブロンドとブルネットで分かりやすかったのに
今回は髪の色どっちも同じでしたね
Posted by: kenko | September 12, 2012 11:54 PM
>kenkoさん
いらっしゃ~い
そうですね。三つおっぱいはもっとクライマックスの重大なところで出してほしかったですね!
地球の真ん中に穴を開けてモノを運ぶというアイデアは実際に検討されたことがあったようですが、あまりにも難題が多すぎたために廃案になったとか(当たり前だーなー)
『バトルランナー』はわたし原作があまりにもツボにはまりすぎてシュワちゃん版はどうしても否定的になってしまうんですよね・・・ すいません
わたしが劇場で観たシュワちゃん映画といえばちょっと盛りを過ぎたころのものが多いです。『エンド・オブ・デイズ』『シックス・デイ』『バットマン&ロビン』あと『ターミネーター3』(笑)
『エクスペンタブルズ2』はどうかなー 『1』よりは出番があるようですが・・・
Posted by: SGA屋伍一 | September 14, 2012 09:27 PM
伍一くん☆再び
私観てもないのに書いているねー偉いねぇ。
確かにオリジナルのキモさにくらべて、今回はとってもスタイリッシュに仕上がっていたね!
オリジナルとの比較も全部同感~~
とくにコリン・ファレルはタレ眉がどうしても笑えちゃって・・・
なつかしのシュワちゃん、映画に完全復帰なのかな?
明日シュワちゃんの新作試写会観に行きます!
Posted by: ノルウェーまだ~む | February 07, 2013 12:46 AM
>ノルウェーまだ~むさん
再度来訪ありがとうございます(笑) こちらのスタイリッシュ・バージョンも悪くなかったんですが、バーホーベンのキモキモ演出がちょっと恋しくなっちゃいましたよ。彼、いまなにやってんのかな
>とくにコリン・ファレルはタレ眉がどうしても笑えちゃって・・・
まだ~む、ルーパーでも眉毛気にしてたよねw そんなに眉毛が気になりますか! わたしも思い切って個性的な眉毛にしちゃおっかなー
シュワちゃんの新作はあんまし売り上げ芳しくないようですが、とりあえずターミネーターの新作のためにがんばってほしいものです!
Posted by: SGA屋伍一 | February 07, 2013 11:02 PM