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July 03, 2012

機動歩兵チャンタム ローズマリー・サトクリフ ケヴィン・マクドナルド 『第九軍団のワシ』

D9g1燃え上がれ! 燃え上がれ! 燃え上がれ! (チャニング)テイタム! 本日は少し前ユーロスペースで公開され、現在全国を巡回中のローマ史劇『第九軍団のワシ』をご紹介します。

西暦二世紀、ローマ五賢帝三代目にあたるハドリアヌスの時代。ブリタニアに遠征に向かった第9軍団は帝国のシンボルであるワシの彫像と共に、忽然と姿を消した。この出来事は世界最強を自負していたローマの面目を丸つぶれにするものだった。それからしばらく後。第9軍団の長の息子、マーカス・フラヴィアス・アクィラは勇猛果敢なローマの戦士として成長していた。なき父の汚名をはらすべく、マーカスはブリタニア国境への防備に自ら志願する。だがかの地の戦士たちは恐れを知らぬ猛者ぞろいで、マーカスたちは苦戦を強いられる。

ま、そのあといろいろありまして。マーカスは奴隷として囚われていたブリタニアの族長の息子エスカとともに、失われた「ワシ」の探索へと向かうことになります。
わたしも『グラディエイター』とか『スパルタカス』とか好きなもんですから、こういうサンダルはいたおっさんたちが剣を振り回す話には目がありません。この映画が他のローマものと違っているところは当時はど田舎だったブリタニア(イギリス)方面を主な舞台としているところでしょうか。
後に世界で文化の中心となるイギリスですが、この時はまだアングロサクソンさんたちが引越しする前で、もっぱらケルト民族がその地を支配していたようです。ケルトといえばまず思い出すのはエンヤさんの歌う美しい楽曲でありますが、この民族には敵の生首を玄関にぶら下げておくなんつう上品な習慣もあったようで。そんな連中の本拠地へお宝を探しに行くというストーリーは、なんだかローマ史劇というよりアフリカ探検ものに近いような気もします。
探検行と共にお話の柱となっているのは、マーカスとエスカと微妙な絆。エスカは偶然マーカスに命を救われたことから、彼に忠誠を捧げることになります。しかし彼は家族をローマ軍に殺され、奴隷とされた身。当然ローマに深い恨みを抱いています。エスカを信頼しきっているマーカスですが、果たしてエスカの忠誠は本物なのか・・・ そんな二人の関係がお話にさらにスリルを加えております。

原作は1954年に発表された児童文学。古い! 日本ではそれほど知られていませんが、向こうでは二度ほどテレビドラマ化されているとのこと。そっちの児童文学に造詣の深い宮崎駿監督もファンらしく、自らの手で映像化したいと考えていたこともあったようです。
監督はフォレスト・ウィテカが主演男優賞に輝いた『ラストキング・オブ・スコットランド』(通称キンスコ)で知られるケヴィン・マクドナルド。わたくし彼の作品とは知らずにこちらを観にいったんですが、そういや脱出行の際のおっかなさや、生々しい痛描写などは確かに『キンスコ』と通ずるものがありました。

さて、こっから先はちょっとネタバレ。
微妙な二人の冒険のくだりは観ていてなかなか楽しめたのですが、クライマックスが近づくにつれ、わたくしどうにも複雑な気分になってきたのですね。というのは、エスカも言ってるとおり、もともと第9軍団が滅んだ原因はローマが他国の尊厳を踏みにじってズカズカと侵略を続けていったことにあるわけですよ。マーカスが途中でその辺に気づいてくれればな・・・と思ったのですが、結局彼は「ワシ」へのこだわりを捨てられなかったようで。そのことが原因でさらに多くの血が流れたりして、さらにむなしい気持ちが募ったのでした。

ともあれ、知らなかった名作文学を映像を通して味わうことができたのはよかったです。この『第9軍団のワシ』はさらに七作続く一大歴史叙事詩の第1作でもあるそうで。他の作品にもなんだか興味がわいてきました。

ついでにオマケとして、「映画で学べるローマ史の流れ」を貼っておきます。

『スパルタカス』(紀元前70年ごろ 共和制ローマの時代)

『クレオパトラ』(紀元前40年~紀元前30年ごろ ユリウス・カエサル、アウグストゥス帝の時代)

『ベン・ハー』(西暦33年ごろ ティベリウス帝の時代)

『カリギュラ』(西暦30~40年ごろ カリギュラ帝の時代)

『クォ・ヴァディス』(西暦50~60年ごろ ネロ帝の時代)

『テルマエ・ロマエ』『第9軍団のワシ』(西暦130年ごろ ハドリアヌス帝の時代)

『グラディエイター』(西暦180~190年ごろ マルクス・アウレリウス、コンモドゥス帝の時代)

はい! これで世界史のテストはバッチリですね!

Photoさて、冒頭で「巡回中」と書きましたが、現時点で観られる所はもう山形と大分くらいしかないみたい ただタイトルにふさわしく9月にはDVDが出るようです。ローマかぶれ、じゃなくてローマ好きの人はぜひ!


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Comments

伍一くん☆
へー!キンスコの監督だったのね。
それにしては、結構大人しい映画だったような?

歴史のお勉強~♪
テルマエまで入っているし!
「300」は何処に入るの?(自分で考えない私)

Posted by: ノルウェーまだ~む | July 06, 2012 01:03 AM

>まだ~むさん

こんばんばん~ そうです。あのキンスコの(笑) ほかにも『消されたヘッドライン』とか撮ってるようですがわたしは未見
痛いシーンもありましたが(麻酔なし手術とか)キンスコのクライマックスに比べればまだマシなほうですかね

「300」はアレクサンダー大王よりもまだ前の時代の話なので、紀元前600~500年ごろ? けっこう古いです

Posted by: SGA屋伍一 | July 07, 2012 12:01 AM

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ローズマリー・サトクリフの同名小説を映画化。ローマ帝国時代のブリテン島スコットランドを舞台に、ローマ人の青年とブリタニア人の奴隷が、青年の父の名誉を回復すべく第九軍団の象徴であるワシの紋章を探す旅にでる。主演は『G.I.ジョー』のチャニング・テイタムと『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』のジェイミー・ベル。監督は『消されたヘッドライン』のケヴィン・マクドナルド。... [Read More]

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ローズマリー・サトクリフの原作(児童書)は小学生時代に読んだっきりですが、従者エスカとの関係やラストにおいて、大きく異なった設定になっていました。でも、これはこれで良かったですよ。 主演のマーカス役にはチャニング・テイタムさん。真っ直ぐな正義感溢れる役にぴったり。従者エスカにジェイミー・ベルさん。この二人の友情がメインに描かれているところがよかったのだけれど、映画ではあまり心情が描かれてなかった印象がありますね。 ローマ・ハドリアヌス帝の治世(「テルマエ・ロマエ」での帝でしたね)。当... [Read More]

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