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July 31, 2012

地球人ウィル バリー・ゾネンフェルド 『メン・イン・ブラック3』

Mib3心の隙間、お埋めします! ド――――ン!! ・・・とそっちの黒服さんの話ではなく、今回は十年ぶりにかえってきた地球を守るエージェントのお話。『メン・イン・ブラック3』、ご紹介いたします。

地球は狙われている・・・のかは知らないが、実はこの星には巧妙に姿を隠して観光や労働に来ている宇宙人が無数にいる。その秘密を守るために日夜飛び回っているのが我らが「黒服の男」=メン・イン・ブラック。若手No.1のJと数々の伝説を持つKは、今日も仲良く?パトロールに精を出していた。ところがKに恨みを持つ凶悪脱獄囚アニマル・ボリスが歴史改変を企んだために、Kは突如としてこの世からそっくり消滅してしまう。彼の存在を唯一覚えているJは、自らもタイムスリップしてKを復活させようと試みる。

まずこのシリーズに関する個人的な思い出をば。第一作『メン・イン・ブラック』は実は非常に思い入れの深い映画です。なんでかっつーとわたしが映画館に通い始めた1997年の作品だから。もし私達の周りに宇宙人が潜伏していたら?というアホらしい(でも意外に深い)設定と、地球の危機だというのに連発されるゆる~いシモネタは映画ファンに成り立ての自分に強い印象を残したのです。
で、それから五年後の『2』。こちらも一応楽しんで観たはずなんですけど、どういうわけほとんど記憶がない(笑)。前作のゆるかったギャグセンスがさらにゆるゆるになってたような・・・ こんなに忘れちゃってるので批判のしようもないのですが、監督バリー・ゾネンフェルドはこないだ「『2』のことは忘れてくれ」とおっしゃってたので、パンチの弱さは作り手も認めているようです。

そして2012年、突然思い出したように作られた『3』。前回の反省をふまえてか、今回は宇宙SFにさらに時間旅行という要素まで盛り込みました。これはいわばカツ丼と牛丼をミックスさせるようなもの。上手にいけば二つの素材が絶妙なハーモニーを奏でるわけですが、下手をするとお互いの良さを打ち消しあってひたすらくどい印象しか残らない。いったいどうなってしまうんだ!? と地球のピンチより作品の出来の方にハラハラしたりして(^^;

まあ結論からいえばさすがはベテラン監督だけあって、脂っこい料理を実にさわやかな風味で仕上げてありました。これはタイムスリップものだからって調子に乗ってあちこち飛び回らず、1969年だけにスポットをあてたからいいんでしょうね。1969年といえば某アンディ・ウォホールが活躍し、アポロ11号が打ち上げられようとしていた年。Jと一緒に古きよき?アメリカを観光旅行しているようでとても楽しかったです。

あとこのシリーズの特徴といえるのが「視点の逆転」みたいなもの。一作目では「もし私たちの日常の裏側に秘められた真実があったら」とか「私たちが宇宙と信じているものも実は小さなまとまりに過ぎないとしたら」みたいな「もし」が提起されましたが、今回は「未来には幾つかの可能性があり、そのうちのひとつが現実となる」というややこしい理論が展開されます。要するに量子論における「シュレーディンガーの猫」みたいなもんかな・・・(ってお前は本当にわかって言ってんのか?) もちろんこの映画はそんな小難しいこと考えなくても、十分に楽しむことができます。

ここんとこ『バトルシップ』とか『ロサンゼルス決戦』とか「宇宙人は問答無用の侵略者!」みたいな映画が続いてましたけど、そういう決め付けはよくないと思います。地球人にもいいひとと問題児がいるように、宇宙人だっていいヤツもいれば凶状持ちもいる。そしてどっちでもないのんびりしたヤツもいる。来るべき?ファーストコンタクトの時のために、それくらいの常識はもっておきましょう。

Mib2観賞が滑り込みだったためにもうほとんどの劇場で公開が終わってしまった『メン・イン・ブラック3』。宇宙開発に興味がありながら見逃してしまったひとはDVDが出たらぜひごらんください。

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July 25, 2012

クモ男VSハゲゴジラ マーク・ウェブ 『アメイジング・スパイダーマン』

Photo_2ダークナイトが終結し、アヴェンジャーズが集結するかつてないアメコミ映画盛り上がりまくりの夏。その先陣を切るのは新鋭マーク・ウェブの手により生まれ変わった「あなたの親愛なる隣人」。『アメイジング・スパイダーマン』ご紹介します。

大企業オズ・コープに勤める科学者リチャード・パーカーは息子ピーターの成長を愛でながら平穏な生活を送っていた。だが自身のプロジェクトに関わる陰謀に巻き込まれ、妻ともども不遇の死を迎える。それから約十年後成長したピーターは父の遺品から謎めいたメモを見つける。父を慕う気持ちも手伝って、ピーターはリチャードの研究仲間だったコナーズ博士を尋ねる。二人はいつしか意気投合し、遺伝子工学について熱心に語り合うようになる。そんな中、ピーターは実験用に遺伝子を操作された特殊なクモにさされてしまうのだが・・・

あとはもうおわかりですね。クモにかまれてクモ人間になってしまったピーターは、育ての親であるおじさんとの哀しい経験を経て、弱きものの味方スパイダーマンへと変貌を遂げます。
日本でも大ヒットとなったサム・ライミの三部作からもう五年・・・ 時の経つのは早いものです。当初は前作と同じスタッフで「『4』を作ろう」という予定だったそうですが、ライミ監督と映画会社が決裂してしまったため全てを一新して新たに作り直そう!ということになったようです。区別をつけるために頭に「アメイジング」とつきましたが、実はこれ原作第1シリーズのタイトルです。こういうの、最近はリブートというそうですが。

ただ、ちいさなお子様ならともかく、一作目からスクリーンで観てる身としてはどうしてもライミ版と比較してしまいます。ウェブ監督は青春ドラマ『500日のサマー』で好評を得た人。そのせいかライミ版よりも恋や反抗期といった思春期の葛藤に熱が入っている印象でした。たぶんウェブ監督はライミ版ピーターみたいなオタク君ではなく、青春時代普通に恋愛してリア充な学生生活を送っていたんだろうなあ・・・ あれ? どうしてだろう? 目から汁が・・・
あと旧作ではスパダマを叩くのは我らが(笑)J・ジョナ・ジェイムスン編集長でしたが、今回は「オレたちのシマを荒らしやがって!」ということかわかりませんが、警察組織から犯罪者として追いかけられます。この辺は『ウォッチメン』か『ダークナイト』の影響でしょうか。

で、そんなやや地味よりなアレンジになってしまったせいか、スパイディの相手となる怪人まで地味になってしまったのはちょっと残念でした。その怪人の名は「リザード」。まんま「トカゲ」という意味です。ルックスも明らかにグリーンゴブリンやベノムよりも見劣りがします。はっきりいって少し立派なショッカー怪人といった趣き。どうせなら頭もトカゲになっちゃえばよかったのに、そこだけ妙に人間っぽいのもなんだかなあ、という感じでした。


まあそんな風に怪人に関しては大変残念でしたが、実はわたくしこの映画で四回も泣いてしまいました(笑)。なんかウェブ監督の演出ってわたしの泣きツボをいちいち刺激するようで・・・
以下はネタバレになりますがどの辺で泣いてしまったのか思い出してみます。

1・ベンおじさんとの別れのシーン。これはもうお約束というかね・・・ もしかしたら今回おじさん死なないんじゃないか、なんつー淡い期待もあったのですが

2・新米スパイディが「怖い」といって車を這い上がれない少年にマスクを渡し、「それをかぶるんだ・・・ そしたら強くなれる」というシーン。『ダークナイト』でも子供がらみのシーンでハラハラと泣いておりましたが、こういう「必死なヒーローと子ども」という構図にどうにも弱いようで

3.タイムリミットが迫っているのに負傷して思うように動けないスパイディ。「遠いな・・・」とため息をついたとき工事用のクレーンが一斉に動き出して・・・ 「出来すぎだよな~」というひとは帰ってください!

4・ステーシー警部との和解の場面。ひたむきにがんばればいつか誤解も解けるのですね・・・ ただわかりあえた途端に・・・というのがなんとも辛うございます。

120720_120431『アメイジング・スパイダーマン』は現在全国の劇場で上映中。ただ、それぞれ約70億をたたき出した前3作と比べると勢いが弱いようで・・・ まあライミ版がすごすぎただけで今回だって十分にヒットしてるんですがね。というか、いまとなってはどうして『スパイダーマン』第1作がそんなにヒットしたのかナゾです。
米国でも一応合格水準には達したようで、はやくも2014年には『2』が予定されてるそうです。もしかしたら『アベンジャーズ』とも共闘するかも、という噂も。ライミ版を超えるにはそれしかない?

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July 19, 2012

ノルウェイのオリ マリウス・ホルスト 『孤島の王』

Kto1『Dr.コトー収容所』という題も考えました・・・ 某まだ~むさんから時々お話を聞くものの、イマイチ縁遠いというイメージをぬぐえない極北の国・ノルウェー。そのノルウェーから今年は二本の映画がやってまいりました。一本は『トロール・ハンター』(見逃した・・・)。そしてもう一本が本日ご紹介する『孤島の王』です。

首都オスロの南方75キロに位置する孤島・バストイ。1900年から70年にかけて、そこには非行少年たちを矯正するための施設があった。人を殺した罪でそこに送られてきた少年、エーリング。彼はいかめしい教官たちを前にしても一向におじけることがない。バストイから脱走することしか頭になかった彼だったが、同日に入所した少年の身に起きた事件をきっかけに、大人たちの「支配」に不満を爆発させるようになる。そんなエーリングを、もうじき出所することになる優等生オーラヴは複雑な思いで見ていた・・・

いわゆるひとつの「実話に基づく物語」。わたしが「少年院」と聞いて思い出すのはエグ系格闘漫画『軍鶏』の冒頭。もしくは『あしたのジョー』のやはり序盤。さぞかし執拗で残酷なリンチの描写がえんえんと続くんだろうなあ~・・・と思っていたら、意外にも?さわやかなところも多い作品でした。
若いに似合わずすでにいっぱしの「無頼」の空気をまとっているエーリング。そんなエーリングにも気さくに手をさしのべ、力になろうとする心優しきオーラヴ。そんな二人が時に激しくぶつかりあいながら、次第に心を通わせていく。こ-ゆーのにあたし弱いんです。
あと若く純粋であるがゆえに、自分を守ることも考えず理不尽なことに対して全力でぶつかってしまう。そんな姿がくたびれた大人から見るととても清々しく、痛々しかったりして。

大人といえばタイトルにある「王」である院長についてもいろいろ考えさせられます。演じるは今年四本もの公開作に出演しているステラン・ステルスガルド。「同級生によるいじめ」と「大人からの虐待」という違いこそあるものの、この映画にはいま騒がれている事件をどうにも連想させるところがあります。
院長とて一応それなりの理想を持った人物であったことにはまちがいありません。刑務所送りになるとこだったエーリングをひっぱってきたことや、部下に対して「彼らを愛で導かねば」と言ってることからもそれはうかがえます。
ただ彼の理想には自己満足的・独善的なところがわずかとはいえ「なかった」と言えるでしょうか。そして部下の犯した罪を保身のために見逃そうとしたことにより、彼の理想はガラガラと崩れ落ちていきます。
彼を責めることは簡単です。しかし果たして自分が同じ立場に立たされたときに、見て見ぬフリをしないと断言できるでしょうか。「しない」とはっきり言える人間でありたいものです。

先にも述べたように実話を基にした作品。どの程度事実なのかいささか気になるところです。ちらっと紹介記事などを見てみましたら、実際はもっと悲惨な結末だったようです。ただ主人公二人に関してはなんとなく創作なんじゃないかな・・・と思うのですが。

Kto『孤島の王』はまだぽつぽつこれから上映のところもありますが、東日本では大体終わってしまったかな・・・ 10月にはDVDが出るようです。
左のイラストは吉岡秀隆氏が熱演してた某お医者さんのつもりです。全然似てないけどねー!

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July 14, 2012

間食なくして何の人生 伊坂幸太郎・中村義洋 『ポテチ』

120710_221018小説にしろ漫画にしろ、実写映画化されると大抵原作ファンからは不満の声があがるものですが、その数少ない例外と言えるのが「伊坂幸太郎原作・中村義洋監督」作品。本日は『アヒルと鴨のコインロッカー』『フィッシュストーリー』『ゴールデンスランバー』に続くこのコンビの第4作、『ポテチ』をご紹介します。

今村は仙台で活動している泥棒。ある晩今村は恋人の若葉とともに憧れの野球選手、尾崎のマンションに忍び入る。そこへかかってくる一本の電話。今村は「過去のある経験」もあってついその電話を取ってしまう。電話の主は以前尾崎にストーカーから助けてもらった一人の少女だった。またそのストーカーから呼び出しを受けたので、尾崎に力になってほしいと言う。かげながら尾崎のサポートがしたいと願う今村は、若葉とともにその少女に会ってみることにする。

この冒頭のシーンが面白いですね~ 人のマンションで自分の部屋のようにくつろぐ今村君。しかも女連れ。自分はやったことないのでわかりませんが、泥棒ってのはもっとこそこそ緊張感をもってやるもんではないでしょうか。そして間違ってもかかってきた電話を取ったりはしないのでは・・・ まあこれにはそれなりの理由があるんですけど。泥棒さんがアパート借りて我々と同じように日常生活を営んでる情景も、不思議といえば不思議でありました。

この今村を演じているのが今年『ロボジー』や『宇宙兄弟』でも出演している濱田岳くん。最初に「コンビ」と書きましたが、正確には「トリオ」かも。濱田君は伊坂原作&中村監督の4作品に全て出演しているので。しかも今回は堂々の主人公であります。
わたくし濱田君は『フィッシュストーリー』や『ロボジー』での印象が強く、「気の弱いその辺の青年の役が似合う俳優」と思っていたのですが、この映画では実に色々な顔を見せてくれます。今村というキャラは前述のようなヘタレ君の時もあれば、突然予測不能の行動に出る天然君でもあり、何を考えているかわからない不気味な面も持ち合わせています。でも心の一番根底にあるのは、他人のことを心から「かわいそう」と思える心優しい性質であったりします。

あともう一人強い印象を残すのが、黒澤というやはり泥棒。演じるのは先ごろ婚約された大森南朋さん。彼も『アヒルと鴨』を除く全ての伊坂×中村映画に出演してますね。
今村が「こんなヤツいるか?」と思えるようなファンタジー系の泥棒だとすれば、黒澤は頼もしくクールでプロフェッショナルなムードに溢れたリアル系の泥棒です。面白いのはそんな今村とはまったく違った気質の黒澤が、彼に頼まれるとほいほいと力になってやってること。そういった黒澤や今村の心情をあれこれ推し量りながら観ると、この映画を一層楽しめるのではないかと思います。
実は黒澤は『重力ピエロ』や『ラッシュライフ』といった他の伊坂作品にも顔を出しています。わたしのイメージとはちょっと違ったけど、大森さんの黒澤はダンディでなかなかようございました。
そして原作版『重力ピエロ』を読んでいると「その知り合いって○○じゃないかーっ!!」と盛り上がれるところがありますので、余裕があったらそちらもおすすめしておきます。

もうひとつこの映画で注目しておきたいのは尺が1時間ちょいと実に短めなこと。その分安めに劇場では料金を1,300円に設定してあるようです。じゃあどんどん映画を短めにしてほしい、というわけではありませんが、作品の内容がコンパクトなものなら、無理にひきのばさずにこういう低料金一時間の映画にしてほしいと思います。

Ptc『ポテチ』は東日本での上映はだいたい終わってしまった模様。ていうか昨日までのところが多いようですね(・・・)。ただ西日本はこれから&まだのところが幾つかあります。ま、DVDもそのうち出るでしょう。どうでもいいことですが、わたくしポテチはコンソメパンチとピザポテトが好きです。


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July 10, 2012

サイコなヴァンサン ドミニク・モル 『マンク ~破戒僧~』

Mhk1昨年『ブラックスワン』でセクハラの限りを尽くした名優ヴァンサン・カッセル。そのヴァンサンがまたしてもブラックな世界に挑戦!(てゆうかこの人そんなんばっかし・・・) 『マンク ~破戒僧~』、ご紹介します。

17世紀スペインはマドリッド。郊外の修道院に、ある晩一人の赤ん坊が捨てられていた。赤ん坊はアンブロシオと名づけられ、修道士として育てられる。やがてアンブロシオは周囲からその説教を聴きに大勢の人が集まるほどに、高徳の僧として名声を集める。だが彼にはある悩みがあった。夜毎夢の中に出てくる一人の女性。顔を見ようとすると決まって夢はそこで醒めてしまう。その夢はやがて彼を煩悩の地獄へと導くことになる。

原作は18世紀に英国で書かれたゴシック小説。舞台はスペイン。製作国は主にフランス。多国籍ですね。
原作は当時あまりにも過激な描写が物議を醸して、その後160年禁書扱いだったとか。映画の宣伝文を見ると「彼は悪の化身となった」とか「悪の限りをつくした」と書かれていて、「どんだけ悪人なのやら」と思います。
ただ実際に作品を観てみるとだいぶ違う印象を受けます。確かに結果的には犯罪者に堕してしまうわけですが、そんな「究極の悪人」と言えるほど悪人ではないです。むしろ可哀相な境遇にもめげず一生懸命やってきた優等生が、悪魔の蟻地獄のようなわなにからめとられて、気がついたらどうにもならなくなってしまった・・・そんなお話。
それゆえ映画を観ていると「ああ~もう~ そこで思いとどまりなよ~」と必死で願うわけですが、哀しいかなこちらは観客の身。スクリーンの中に入っていくことはかなわず、ヴァンサンが色ボケの道に堕ちていくのを見守ることしかできません。やっぱりいままで色んな作品でセクハラとバイオレンスの限りを尽くしてきたヴァンサンが、潔癖な聖人を演じ続けるということに無理があったのでしょうか。

そんなやるせねえお話をなぜわたしが観にいったかというと、単純に「古めかしい修道院ってなんかワクワクするよな~」というただそれだけの動機。修道院ものの映画といえば『クリムゾン・リバー』などもありましたが、そういやあれにもヴァンサン出てましたね・・・
ともかく荒涼とした風景にどっしりとたたずむゴシック建築と、そこに施されたいかめしい装飾は期待通りなかなかに趣味の世界でございました。そこで深く憂い苦しむヴァンサンの姿と、仮面をつけた謎の修道士がこれまた絵になります。

そんなアートな背景を楽しみながらも、クライマックスのあたりでは「あー、どうしてこんな救いようのない映画観にきちゃったんだろ」と嘆いておりました。でも不思議なもんで最後までがんばって観たら、なぜか不思議と心やすらぐものがあったりして。いや、でもそういう印象を持つ人は少数派かもしれない。よってあんまり他の皆さんには勧めづらい作品です。
Mhk2『マンク ~破戒僧~』は現在全国の劇場を細々と巡回中。あんまり上映館も多くないのですが、なぜかわが静岡東部が全国でも三番目くらいの公開にあずかりました。別にキリスト教にゆかりの深い土地でもないんですけどね・・・ 観られない地域の人は9月にDVDが出ますので、ヴァンサンや修道院や暗い話が好きな方だけごらんください。


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July 08, 2012

秘密の悪女さん ルパート・サンダース 『スノーホワイト』

Swt1それは鏡、鏡の中からえっへっへ♪ 『アリス・イン・ワンダーランド』のスタッフが今度は白雪姫をたたかわせます。『スノーホワイト』、ご紹介しましょう。

たぶん中世ヨーロッパの架空の国。その国の王は慈悲深き治世で民から慕われていた。だが一人の怪しげな美女を后に迎えたことこら、王国は悲劇に見舞われる。その女は王国の乗っ取りを企む魔女だったのだ。王の暗殺に成功した魔女は、先の后の娘「スノーホワイト」を捕らえ、城の塔に幽閉する。それから数年後。囚われの身だったスノーホワイトに、ついに脱走のチャンスがやってくる。

映画は時代をうつす鏡と申します。ウソです。いまわたしが考えました(さすがオレ!)。というわけで誰もが知ってる名作童話「白雪姫」にもかなり現代的なアレンジがほどこされております。大きな変更点は次の三つ。

①白雪姫がかなりアクティブ。状況によっては剣をとってチャンバラもしたりする
②本来王子様が務めるヒーロー役を、毛深いバツイチの山男が担当している
③悪の権化だった継母の女王さまにも、それなりに可哀相な過去があったりする。

まず①ですが、やっぱし今はただ流されるだけのなよなよしてるヒロインってのは受けがよくないんですかねー 女性もバリバリ社会に進出してる時代ですし。そういえば日本でも最近の魔法少女ものは悪者をやっつける話が多いようですね。
続けて②。これが一番たまげますわな。女心がわからないことでは自身があるわたしですが、今は金持ちで見てくれのすっきりしたボンボンよりも、たくましくて生活力のあるモジャモジャな男の方がもてるってことなのかな・・・? よっしゃ! おいらも毛と筋肉を蓄えなきゃ!
最後に③。これは世相にあわせたというより、ちょっとドラマ的な深みももたせよう、というとこでしょうか。単なる勧善懲悪ものだったら白ける人も、これだったらついてこれるだろう、という狙いか。

その狙いが当たったのかどうか、この『スノーホワイト』、日本でもアメリカでも公開一週目は売り上げトップの成績をおさめました。いやあ、てっきりわたしはずすと思ったんだけどな(笑) だって普通思うでしょ? なんで今の時代に「白雪姫」なんだろう?って。
しかしまあ落ち着いて考えてみれば、子供は楽しめるし、カップルでも見られるし。一応名作ということでお年寄りのお客さんも多いということ。こういう「幅広い層が楽しめる」というのもヒットの大事な要因のひとつですよね。ユニバーサル・ピクチャーさん、どうもすみませんでした。

ストーリーで意外な部分は上の三点くらいで、あとは大体予想通り進んでいきます。そもそもみんな子供のころに聞いたお話ですしね。わたしはだから物語よりも映像の小ネタみたいなものを楽しんでました。鏡の中からデロデロっと出てくる妖精とか、景気良くバラバラに吹っ飛ぶ魔法の騎士とかね。スノーホワイトが迷い込む森の中にも、妖怪好きなら「うほっ」となる色んなものがうじゃうじゃおりました。

で、なんでかいまハリウッドでは白雪姫がブームらしく、9月にもターセム・シン監督の『白雪姫と鏡の魔女』が待機中。またご本家のディズニーも舞台を香港に移した白雪姫を企画中でしたが、こちらはいろいろな事情で製作中止になったとのこと。一本はぽしゃりましたけど、ちょうど少し前「はやぶさ」で起こっていたことが『白雪姫』でも起こっていたんですねー 偶然とはいえ面白い現象です。

Swt2そんなわけで『スノーホワイト』は現在絶賛公開中です。左の画像は「しらゆき」のイメージということで。ちょっと違うような気もしますが・・・


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July 03, 2012

機動歩兵チャンタム ローズマリー・サトクリフ ケヴィン・マクドナルド 『第九軍団のワシ』

D9g1燃え上がれ! 燃え上がれ! 燃え上がれ! (チャニング)テイタム! 本日は少し前ユーロスペースで公開され、現在全国を巡回中のローマ史劇『第九軍団のワシ』をご紹介します。

西暦二世紀、ローマ五賢帝三代目にあたるハドリアヌスの時代。ブリタニアに遠征に向かった第9軍団は帝国のシンボルであるワシの彫像と共に、忽然と姿を消した。この出来事は世界最強を自負していたローマの面目を丸つぶれにするものだった。それからしばらく後。第9軍団の長の息子、マーカス・フラヴィアス・アクィラは勇猛果敢なローマの戦士として成長していた。なき父の汚名をはらすべく、マーカスはブリタニア国境への防備に自ら志願する。だがかの地の戦士たちは恐れを知らぬ猛者ぞろいで、マーカスたちは苦戦を強いられる。

ま、そのあといろいろありまして。マーカスは奴隷として囚われていたブリタニアの族長の息子エスカとともに、失われた「ワシ」の探索へと向かうことになります。
わたしも『グラディエイター』とか『スパルタカス』とか好きなもんですから、こういうサンダルはいたおっさんたちが剣を振り回す話には目がありません。この映画が他のローマものと違っているところは当時はど田舎だったブリタニア(イギリス)方面を主な舞台としているところでしょうか。
後に世界で文化の中心となるイギリスですが、この時はまだアングロサクソンさんたちが引越しする前で、もっぱらケルト民族がその地を支配していたようです。ケルトといえばまず思い出すのはエンヤさんの歌う美しい楽曲でありますが、この民族には敵の生首を玄関にぶら下げておくなんつう上品な習慣もあったようで。そんな連中の本拠地へお宝を探しに行くというストーリーは、なんだかローマ史劇というよりアフリカ探検ものに近いような気もします。
探検行と共にお話の柱となっているのは、マーカスとエスカと微妙な絆。エスカは偶然マーカスに命を救われたことから、彼に忠誠を捧げることになります。しかし彼は家族をローマ軍に殺され、奴隷とされた身。当然ローマに深い恨みを抱いています。エスカを信頼しきっているマーカスですが、果たしてエスカの忠誠は本物なのか・・・ そんな二人の関係がお話にさらにスリルを加えております。

原作は1954年に発表された児童文学。古い! 日本ではそれほど知られていませんが、向こうでは二度ほどテレビドラマ化されているとのこと。そっちの児童文学に造詣の深い宮崎駿監督もファンらしく、自らの手で映像化したいと考えていたこともあったようです。
監督はフォレスト・ウィテカが主演男優賞に輝いた『ラストキング・オブ・スコットランド』(通称キンスコ)で知られるケヴィン・マクドナルド。わたくし彼の作品とは知らずにこちらを観にいったんですが、そういや脱出行の際のおっかなさや、生々しい痛描写などは確かに『キンスコ』と通ずるものがありました。

さて、こっから先はちょっとネタバレ。
微妙な二人の冒険のくだりは観ていてなかなか楽しめたのですが、クライマックスが近づくにつれ、わたくしどうにも複雑な気分になってきたのですね。というのは、エスカも言ってるとおり、もともと第9軍団が滅んだ原因はローマが他国の尊厳を踏みにじってズカズカと侵略を続けていったことにあるわけですよ。マーカスが途中でその辺に気づいてくれればな・・・と思ったのですが、結局彼は「ワシ」へのこだわりを捨てられなかったようで。そのことが原因でさらに多くの血が流れたりして、さらにむなしい気持ちが募ったのでした。

ともあれ、知らなかった名作文学を映像を通して味わうことができたのはよかったです。この『第9軍団のワシ』はさらに七作続く一大歴史叙事詩の第1作でもあるそうで。他の作品にもなんだか興味がわいてきました。

ついでにオマケとして、「映画で学べるローマ史の流れ」を貼っておきます。

『スパルタカス』(紀元前70年ごろ 共和制ローマの時代)

『クレオパトラ』(紀元前40年~紀元前30年ごろ ユリウス・カエサル、アウグストゥス帝の時代)

『ベン・ハー』(西暦33年ごろ ティベリウス帝の時代)

『カリギュラ』(西暦30~40年ごろ カリギュラ帝の時代)

『クォ・ヴァディス』(西暦50~60年ごろ ネロ帝の時代)

『テルマエ・ロマエ』『第9軍団のワシ』(西暦130年ごろ ハドリアヌス帝の時代)

『グラディエイター』(西暦180~190年ごろ マルクス・アウレリウス、コンモドゥス帝の時代)

はい! これで世界史のテストはバッチリですね!

Photoさて、冒頭で「巡回中」と書きましたが、現時点で観られる所はもう山形と大分くらいしかないみたいcoldsweats01 ただタイトルにふさわしく9月にはDVDが出るようです。ローマかぶれ、じゃなくてローマ好きの人はぜひ!


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