チッティ 踊るA.I シャンカール 『ロボット 完全版』
みなさん、覚えてますか? 98年の『ムトゥ 踊るマハラジャ』が巻き起こしたインド映画ブーム。あれから十ウン年、石立鉄男似のあのスーパースター、ラジニカーントが満を持して帰ってまいりました。『ロボット 完全版』、ご紹介いたします。
新進の科学者バシーガランは、長年の研究の末、ついに念願のスーパーロボット「チッティ」を発明する。瞬時にして膨大な情報を取り入れ、チンピラどもをなぎ倒すチッティはまさに完全無欠のヒーロー。バシーガランの恋人サナも、あっという間にその魅力の虜に。だがある事件をきっかけにバシーガランがチッティに「人の心」をインプットしたことから、事態は思わぬ方向に暴走し始める。
まず画面いっぱいにひろがる「スーパースター ラジニカーント」のロゴに度肝を抜かれます。もういい年だろうに、未だスーパースター現役かよ! にしきのあきら氏にもぜひがんばっていただきたいものです。
そんな壮大な?オープニングとは裏腹に、冒頭では博士とロボットのうっかりちゃっかりしたやりとりに爆笑させられます。ラジニの風貌も手伝って、『Dr.スランプ』を思い出さずにはいられません。あちらと違うのは作ったロボットがかわいらしい少女ではなく、博士そっくりのむさいおじさんであるということ。
以前インド映画についてこんな話を聞いたことがあります。「インドで作られる映画のほとんどは、低いカーストの人が実は高いカーストの出だったり、貧しい人が都会でサクセスするというものばかり。それはインドに生きる多くの人の願望を反映しているから」
で、この素っ頓狂な映画を観ていて「ああ、ようやくインドの人たちもカーストの呪縛から解放されつつあるのかな・・・」と思ったのです。ところが自我がめばえるにつれ、チッティは自分がロボットであるという現実をつきつけられ深く苦しむことになります。そんなチッティの心も知らず、彼を傷つける千兵衛博士とその恋人。そんなチッティがやっぱり低いカーストのゆえに、苦しめられる人の姿にしか見えなかったのでした。
話は変わりますが、これなぜ「完全版」と銘打ってるのかというと、当初日本で公開されたバージョンは本国のオリジナル版より約40分カットされたものだったから。そんなに削っていいものか?と思わないでもないですが、カットされたのはインド映画特有のPVのようなダンスシーンがほとんどなので、まあ一応話はわかるみたいです。
石立鉄男のようなラジニはともかく、女神のようなアイシュワリヤー・ラーイが大自然をバックに歌い踊る姿は確かに見ていてウキウキします。しかしそれも初めだけ。話が進んでいくとだんだんと身勝手な博士&ヒロインに憤りを覚えるようになっていきます。後半に入るマチュピチュで撮影されたミュージカルシーンも本当にすごいんだけど「お前らがそんなことをしている間にチッティはどんなことになってるのかわかってるのか!? もういいよ、お前ら、帰れよ!!」と、むなしい怒りを燃やしたりしていました。
いい加減ネタバレなんですけど、クライマックスで暴走してしまうチッティがまた悲しい。素直で純真だった教え子が不幸に負けて非行に走っていくのを、ただ見ていることしかできない・・・ そんな感覚と似ています。てっきり単なるバカ映画かとばかり思っていたのに、意外とキチンと悲劇系ロボットものの伝統を受け継いでるのですね。アシモフの『わたしはロボット』、手塚治虫の『メトロポリス』『鉄腕アトム』、石ノ森章太郎の『人造人間キカイダー』『ロボット刑事』・・・ そんな名作群が頭の中をよぎります。まあ途中蚊と普通に会話してたりするおバカなシーンもちゃんとありますが。
そんな風に理不尽な思いを感じたりもしますが、この『ロボット』、半端ないエネルギーをはらんだ作品ではあります。経済的にいろいろ行き詰ってる日本も、このつきぬけぶりを見習うべきではないでしょうか。
それにしてもあんなふうに絶世の美女とくっつけるラジニはやっぱり羨ましいなあ。今度生まれてくるときはラジニみたいな顔になろう!と心に固く誓うのでした。おやすみなさい。
Comments
伍一くん☆
完全版を観たのね。
私は短いものを観たので、マチュピチュで浮かれている間に~という憤りはあまり感じなかったわ。
だけど今度マチュピチュバージョン見る予定♪
伍一くんはラジニ顔キボンヌ?
日本人だから、石立鉄男になっちゃうよ?
Posted by: ノルウェーまだ~む | June 30, 2012 11:05 PM
マチュピチュのシーン、歌詞とシーンが全然合ってなくて、なんでこの歌で、わざわざお金かけてマチュピチュ!?って、頭の中でツッコミ入れてました(笑)
Posted by: サワ | June 30, 2012 11:34 PM
>ノルウェーまだ~むさん
こんばんばん。渋谷TOEIで観てきました。なかなかお客さんは言ってましたよ
マチュピチュはなくても、あの二人ひどいやつらだと思いません。まあ美人というのは大抵はひどいものなので、女子の方は許します
もてるんだったら石立鉄男だろうがパパイヤ鈴木だろうがなんだってOKです。ただこのルックスはインドに行かないと通用しないのでしょうね・・・
Posted by: SGA屋伍一 | July 01, 2012 10:07 PM
>サワさん
たしか歌詞が♪キリマンジャロ~ モヘンジョダロ~
で、踊ってるところがマチュピチュ
意味わかんねーーー!!
ラジニが個人的に世界遺産にはまってたのかもしれません
『マハラジャ』にもミュージカルシーンはたくさんありましたが、こっちよりは自然でしたね
Posted by: SGA屋伍一 | July 01, 2012 10:09 PM
やっとだ〜 笑
このむさいオッサンなのにインドでは神様なんだからね〜ラジニ様★
マチュピチュシーンのPV、あの曲好きだから通常版でもやって欲しかったなぁ。
むしろあの蚊のシーンとかいらないような 笑
着せ替えシーンとかもカットされてた部分。
話にカンケイなくても踊って歌ってがインド映画。
出来れば最初から完全版やってほしかったけどね、ムトゥは本格的インド映画だけど
こっちはハリウッドよりでした〜
Posted by: mig | July 02, 2012 12:20 PM
>migちゃん
おはよっす。おかえしありがと~
そういえば完全版でチッティがおばあちゃんたちに「神様だ!」と拝まれてるシーンあったね
マチュピチュのシーンはなくてもストーリーにまったく支障ないけど、確かにあんだけお金かけたシーンをカットしてしまうのはもったいない
あと蚊のシーンはわたしけっこう好きだよ(笑) こっちは通常版にも入ってたんだ。やっぱり重要なとこなんだよ、ここ!
チッティがカメオ出演してる『ラ・ワン』という映画ももうじき公開らしいけど、あれもなんかハリウッドSFっぽい感じだね。『ムトゥ』みたいなのもまた観てみたいな
Posted by: SGA屋伍一 | July 03, 2012 09:33 AM