« ライアンと、そのカーチェイス  ニコラス・ウィンディング・レフン 『ドライヴ』 | Main | 海にお船を沈ませて ピーター・バーグ 『バトルシップ』 »

May 04, 2012

芸術はブラック&ホワイトだ ミシェル・アザナヴィシウス 『アーティスト』

Artist2気がつけば約10日ぶりの更新です。はっはっは…
本日はフランス映画でモノクロサイレントにも関わらず、第84回アカデミー作品賞に輝いた『アーティスト』、ご紹介します。

サイレント映画華やかなりし1927年ハリウッド。ジョージ・ヴァレンティンは愛犬と共に数多くの映画に出演し、名声をほしいままにしていた。そんな折、ジョージはスターを夢見るぺピーという少女と出会う。ジョージのアドバイスと天性の魅力、そしてトーキーという新たな形式にマッチしたことにより、ぺピーは瞬く間に花形女優への階段を駆け上がっていく。一方サイレントにこだわりつづけるジョージの評判には次第にかげりが生じ始める・・・

やはり驚いたのは色つき・音つきが当たり前の今の時代にあえてモノクロ・サイレントをやろうという心意気ですね。単に白黒でやりたい、ということなら『シンシティ』『白いリボン』『動くな、氏ね、甦れ!』などが思い浮かびますが、声までシャットダウンしてしまったという例はちょっと記憶にありません。気をつけないと心地よい伴奏に乗せられて夢の国に行ってしまうことは必定。実際私の隣で観ていた老婦人は開始15分後にはいびきをかいておられました(後半復活してましたが)。
ただそのことは監督も覚悟していたようで、作品の隅々に「飽きさせまへんでー」という工夫がみなぎっておりました。例えば作中作、撮影現場、心象風景、妄想などを巧みに映像に盛り込んだり。サイレントとしては掟破りですがここぞというところで「声」を入れたり。そして犬。多くの方が絶賛していますがジョージの愛犬の名演技は紛れもなく映画史に伝説として記憶されることでしょう。

そういった演出・絵作りにはさすがオスカーと感心させられましたが、ストーリーの方はやや腑に落ちないところがありました。こっから先はだんだんネタバレになりますが

movie
movie
movie
movie
movie

売れっ子になったぺピーがいつまでもジョージを愛し続けているというのが、あまりにも都合がいいというか、「おじさんたちの夢」を映像化しているようでそれがひっかかったのですね。そりゃ駆け出しのころ世話になったとか昔憧れてたというのはあるでしょうけど、現実にはあんな上昇志向の強いタイプが落ち目の恩人をいつまでも想い続ける…というのはないんじゃないかなあと。まるで少年漫画で優しいだけがとりえの優柔不断な主人公が、理由もなく美少女達にモテモテになるような、そんなわかりやすさを感じてしまったのでした。
まあこういうみんなの夢(笑)をかなえてあげるのが古きよきサイレントの王道なのかもしれませんが、チャップリンやキートンはもっと愛のためにガムシャラに戦ってたからなあ。それに比べるとジョージさんはメソメソイジイジしてるとこばかりが目につきました。
だからこの映画で感動したのはやはり犬dog あといくら落ちぶれても主人を見捨てない執事さんとかね。女は見捨てても犬と老人は見捨てないというのは現実に十分ありえる気がするし(君は何か女性に恨みでもあるのか?)

とまあいろいろくさしてしまいましたが、やはり今の時代にサイレントをやろうというチャレンジ精神は素晴らしいです。お話はサイレントの凋落を描いていますが、決してその形式を否定するものではありません。大体サイレントへの深い愛情がなけりゃこんな映画作ろうとは思わないでしょうし。これを機に若い世代がチャップリンやキートンに興味を持ったり、音なし・色なしで絵作りだけで勝負を挑む作家が現れたらよいなあと思います。

Artist1『アーティスト』はたぶんまだ全国の劇場で上映中。とりあえず犬好きは必見です。わたしは猫派だけど。

|

« ライアンと、そのカーチェイス  ニコラス・ウィンディング・レフン 『ドライヴ』 | Main | 海にお船を沈ませて ピーター・バーグ 『バトルシップ』 »

Comments

伍一ん。

>売れっ子になったぺピーがいつまでもジョージを愛し続けているというのが、あまりにも都合がいいというか、「おじさんたちの夢」を映像化しているようでそれがひっかかったのですね。

あー、私はそれ
ずっと憧れてたサイレント界のスターだから、
実際あえて舞い上がりっぱなしになるのはわかるな。
だけど逆に 最後の方に落ちぶれた彼を救う為にこっそりしてた買い取りとか
単に優しさと感じるんだけど、それが深い愛故っていうのがそこまで想うのが伝わらなかったなぁ。

でもどちらにせよ、アカデミー賞の平均年齢高いひとたちが気に入りそうな作品だよね。

Posted by: mig | May 04, 2012 at 11:59 PM

こんばんわ伍一。母です。いつも見てますよ。。。

いつもよりイラストがおじょうずね。アーティストだからかしら?

あとお母さんはサイ好きですよ。サイレントだけに。。。

もうそろそろいいですかね。ボケがそんなに思いつかなかった。。。あ、バトルシップひどいじゃないか!! ウラヤマさんなら気に入るとかいってたから見ちゃったよ。感想かけよ!! ディスるから。。。

Posted by: お母さんより。。。 | May 05, 2012 at 01:07 AM

伍一くん☆
お疲れ様~~
朝からお疲れ気味だったけど、無事家に辿り着いたかな?
みんな今日はお休みだったけど、一人働いているmigちゃんが心配・・・

さて、きっと出待ちをするぐらいのファンだった事を考えると、ペピーにとって彼は永遠のスターだったんじゃないかな。
でもお互いに心を寄せ合う間柄になっているっていうところは、ちょっと伝わりにくかったよねぇ。

Posted by: ノルウェーまだ~む | May 06, 2012 at 09:58 AM

>migちゃん

昨日は一日お疲れ様&今日も労働お疲れ様
よく言われてるけど、アカデミーの選考委員って基本的におじいちゃんが多いからね(笑) 女優さんはそこそこ若くても主演女優賞もらったりするけれど、若いイケメン俳優が獲ることはまずないとか

まあわたしも今だから「それはおかしいよ」と言えるけど、じいさんの年齢になったら「こんなオナゴおったらええのうcrying」なんて夢を抱くようになるかもしれない(笑)

個人的アカデミー作品賞はやっぱり『戦火の馬』かな。同意する人少ないだろうな~

Posted by: SGA屋伍一 | May 06, 2012 at 09:11 PM

>お母さんより。。。

ぼくずっと会いたかったよ!てゆうかあなた(略)
居酒屋が嫌いならそう言ってくれたらよかったのに・・・ もう! 奥ゆかしいんだから!

そのことは水に流しますが、バトルシップへの悪口は見過ごせません! 宇宙人が出てくる映画は全て名作です! 許されねばならないのです! 次に感想書きます。。。 み~ん。。。

あといつか裏ママさんが漫研時代に描いたという少女マンガ見せてくださいね。。。

Posted by: SGA屋伍一 | May 06, 2012 at 09:17 PM

>ノルウェーまだ~むさん

昨日は山登りの傍らジャンプの講義につきあってくださりありがとうございました~
おかげさまで11時半ごろ無事帰宅しました。帰りの電車ではほぼ死体と化してましたが… migちゃんは夕方ごろ「足が棒になった…」とつぶやいてましたよcrying

まだ~むは情が深そうだからこういう一途な思いも理解できるんでしょうね。でも世の中そんな菩薩のような女性はそうそういないと思いまふ(笑)
そんでジョージが火事場でフィルムを抱え込むほどにぺピーのことを想っていた、というのも「いつの間に?」って感じなんですけど
こういう冷めたことばかり言ってるからわたしは女の子にもてないのでしょうか…

Posted by: SGA屋伍一 | May 06, 2012 at 09:27 PM

ハリウッド成功した人が、落ち目のスターの競売品を買い漁って返却したり、仕事を紹介するというのは、結構よくあることです。
『地獄の黙示録』で破産したコッポラの私物をルーカスが競売で買い取り、コッポラにプレゼントした話は有名です。

離婚でもしない限り(←これ、当時赤字会社だった、ピクサーの前身の会社を売らざるを得なかったルーカスのこと)、お金余ってますから(笑)

最近の傾向として、破産は明日は我が身とばかり、助け合い活動が実に盛んです。
そんな訳で、この映画は、アカデミー会員のツボを押さえた映画なんです。
最近は、スコセッシ監督+クルーニーとその仲間達ばかりが幅を効かせているので、アカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞、エミー賞共にあまり代わりばえしないので、面白くないです。

Posted by: サワ | May 09, 2012 at 06:23 PM

>サワさん

いつも解説ありがとうございますhappy01
ハリウッドではそういう美しき伝統があるのですね~ 映画監督も俳優も一発こけたら明日をも知れぬ身ですしね(笑) スピルバーグやルーカスレベルならばともかく
わたしもミッキー・ロークが昼飯のスパゲティ代も払えず往生してたところを、通りがかったスタローンが払ってくれたという話を聞いたことがあります。規模小さい(笑)

ただ男女間の愛情でそこまでやる人いるかというと、ちょっと疑問ですよね

>アカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞、エミー賞共にあまり代わりばえしないので、面白くないです

GG賞はアカデミー賞に比べて根回しがしやすいと聞きました。オスカーを逃したアバターがGG賞を取ったのもキャメロンの接待がものをいったとか…(笑)

Posted by: SGA屋伍一 | May 09, 2012 at 10:43 PM

アカデミーの御方達に闇討ちされたらどーしよー
とか思いつつ・・・
決定の「ど・ツボ涙涙ルイルイ 太川洋介」が無くて
展開は、あっそー で?ふーん まんまじゃぁぁぁ
若き女に奥殿と不仲だからって激いーイージー
と。感じても嬉しい映画だったのだ
眉の動き1つのニヒル♪
語る恋心は視線のクロス♪
魅せたるは哀愁の背中♪
細めのヒゲのオクチ♪
そっと愛しい人の服に・・・

私って映画が好きって言って良いのかなぁ
って ちょっと思ってる
だって!もっともっとすっげぇ映画愛する方達っているんだもん
qなんか、足元にも及ばないって何時も思ってる
shine.:*゚..:。*゚:.shine:。*゚:.。*゚..:。shine*゚..:。*゚:.。shine:。*゚..:shine
ハリウッドが作ったら
どんな感じで「アーティスト」が出来ただろーね


Posted by: q 闇討ちしないでね | May 12, 2012 at 05:45 PM

>qちゃん

各々方! 討ち入りでござる! 出会え出会え~!
…なんつって。太川洋介ってよく知ってるねえ(笑) 
そうだね。おじさんとか秘めた恋心にウルウルできる人だったらもっと楽しめるのだろうけど、大人の男女にはあんまし感情移入できないんだな、ということをいまさらのように悟ったでござるよw

qちゃんが映画が好きじゃなかったらいったい誰が映画好きだと言えるだろう(笑) 愛し方は人それぞれじゃないかな。浴びるようにいっぱい観てても文句ばっかり言ってる人って本当に映画を愛してるのかな、とも思うし

>ハリウッドが作ったら
どんな感じで「アーティスト」が出来ただろーね

うーん、むずかしいな… 普通にカラーで3Dで作るかもね~

Posted by: SGA屋伍一 | May 13, 2012 at 07:19 PM

こんばんは!(^_^)
私も、ステキな映画だったなぁ〜とは思いましたけど、
心に残る作品ではなかったです。
(アギーの名演技は別として・・・笑)
モノクロ・サイレントだからこそ、このストーリーで良かったで
カラーだったら、多分普通の作品になっていたような気がします。

Posted by: ルナ | June 12, 2012 at 11:48 PM

>ルナさん

こんばんは~
まあアカデミー作品賞ってそれなりに高レベルなんですが、胸にグサッと来るほど感動するものってそれほどないような… 少し前の『スラムドッグ$ミリオネア』くらいかな
この作品、当初は普通にカラーで撮られる予定だったそうです。あえてモノクロに変更した監督とそれを許可したプロデューサーに拍手

Posted by: SGA屋伍一 | June 13, 2012 at 11:07 PM

こんばんは!
お返事すっかり遅くなってごめんなさい
多忙すぎてほとんど死んでいたもんで・・・・。
今はちょっと蘇生していますが。

猫派の私もこの作品のワンちゃんにはメロメロでした。
女性はそんなにオジサンを想いつづけないけど
犬と執事は・・・ってくだり面白い~~
確かにそれはあるかもね。

モノクロで新鮮だったのは「シンドラーのリスト」以来かなぁ
私の中では・・・
そのうえ「無音」なんですから,はじめは私も
かなり身構えて鑑賞したのですが,さすがオスカー、
退屈させない演出や展開は見事でしたね。

Posted by: なな | June 26, 2012 at 09:56 PM

>ななさん

いえいえ、いろいろ大変だったようですね。お疲れ様でした。お仕事の関係でご旅行にでも行っておられたのでしょうか

>女性はそんなにオジサンを想いつづけないけど
犬と執事は・・・ってくだり面白い~~

まっ これはあんまし女性に親切にされたことのない、もてない男のひがみですな。あはははは・・・・

わたしは最近モノクロで印象に残ったものというと『シン・シティ』やリバイバルで見た『動くな、死ね、甦れ!』などでしょうか。
たまには無声の世界もいいですけど、数秒間伴奏もぴたっと止まった完全に「無音」のシーンありましたよね。あれで米国では「音が出ない! 金返せ!」と怒りだしたお客さんがけっこういたとか。本当に思い切ったことやりますね(笑)

Posted by: SGA屋伍一 | June 28, 2012 at 11:14 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/70832/54632115

Listed below are links to weblogs that reference 芸術はブラック&ホワイトだ ミシェル・アザナヴィシウス 『アーティスト』:

» アーティスト/The Artist [LOVE Cinemas 調布]
新しい時代に対応できないサイレント映画のスター俳優と、その彼に見出されトーキー映画のスターへと上り詰める女優、2人のロマンスをモノクロ映像で描いたサイレント映画だ。『OSS 117 私を愛したカフェオーレ』の監督ミシェル・アザナヴィシウスが脚本と編集も務め、主演の俳優も同作品のジャン・デュジャルダン、ヒロインをベレニス・ベジョが演じている。古きよき映画の時代が偲ばれる作品だ。... [Read More]

Tracked on May 04, 2012 at 10:51 PM

» アーティスト/ THE ARTIST [我想一個人映画美的女人blog]
ランキングクリックしてね larr;please click 第84回アカデミー賞にて作品賞、主演男優賞、衣装デザイン賞、作曲賞最多5部門受賞 試写にて鑑賞。 監督はミシェル・アザナヴィシウス サイレント映画時代のスター、ジョージを演じたフランスの俳...... [Read More]

Tracked on May 04, 2012 at 11:52 PM

» 「アーティスト」無声の声 [ノルウェー暮らし・イン・原宿]
モノクロで無声映画。 まさに今年アカデミー賞総なめで映画界を揺るがした映画は、古いのに斬新、昔のよき時代を蘇らせて、堂々と3Dの時代に打って出たその勇気にまず乾杯したい。 [Read More]

Tracked on May 06, 2012 at 10:06 AM

» アーティスト [Said the one winning]
サイレントからトーキーへと移り変わるころのハリウッドを舞台に、スター俳優の葛藤 (かっとう)と愛を美しいモノクロ映像でつづるサイレント映画。フランスのミシェル・アザナヴィシウス監督がメガホンを取り、ヨーロッパのみならずアメリ カの映画賞をも席巻。芸術家...... [Read More]

Tracked on May 10, 2012 at 08:35 PM

» 『アーティスト』 (2011) / フランス [Nice One!! @goo]
原題: THE ARTIST 監督: ミシェル・アザナヴィシウス 出演: ジャン・デュジャルダン 、ベレニス・ベジョ 、ジョン・グッドマン 試写会場: よみうりホール 公式サイトはこちら。 第84回アカデミー賞を席巻した本作。 当然観に行きます! 久々に自力で当選...... [Read More]

Tracked on May 17, 2012 at 04:04 PM

» アーティスト [ルナのシネマ缶]
本年度アカデミー作品賞を 獲得したサイレント映画です。 CG・3Dが氾濫する中で、 あえてモノクロのサイレントってところが、 フランス人監督だな〜って気がします。 ストーリーもシンプルで まあ、たまにはこんな作品もいいかなぁ〜って 思いました。 1927年のハリウッドで、サイレント映画のスターの ジョージ・ヴァレンティン(ジャン・デュジャルダン)は、 新作の舞台で新人女優ペピー(ベレニス・ベジョ)と出会う。 その後、ジョージの何げないアドバイスをきっかけに ヒロインを務め... [Read More]

Tracked on June 12, 2012 at 11:49 PM

» アーティスト [虎猫の気まぐれシネマ日記]
第84回アカデミー賞作品賞・監督賞・主演男優賞の3部門を受賞した作品。 とっても素敵!新鮮!そしてオシャレでハートウォーミングな作品。そして,なんといってもサイレント映画への敬愛に満ちた作品だ。たしかに従来の3Dやなにやらを駆使したハリウッド作品の中では,この作品はシンプルさと凝りようが「異色」なの... [Read More]

Tracked on June 26, 2012 at 09:59 PM

» 映画『アーティスト』を観て〜アカデミー賞受賞作品 [kintyres Diary 新館]
12-36.アーティスト■原題:The Artist■製作国・年:フランス、2011年■上映時間:101分■字幕:寺尾次郎■観賞日:5月12日、TOHOシネマズ六本木ヒルズ □監督・脚本・編集:ミシェル・アザナヴィシウス◆ジャン・デュジャルダン(ジョージ・ヴァレンティン)◆ベレニ...... [Read More]

Tracked on August 12, 2012 at 02:15 PM

» 映画:アーティスト [よしなしごと]
 84回アカデミー賞で最多5部門で受賞したサイレント白黒映画、アーティストの記事です。 [Read More]

Tracked on August 22, 2012 at 07:34 AM

« ライアンと、そのカーチェイス  ニコラス・ウィンディング・レフン 『ドライヴ』 | Main | 海にお船を沈ませて ピーター・バーグ 『バトルシップ』 »