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May 29, 2012

ディス・伊豆・ビルド  大町孝三 『つづく』

Photoこれももう~二週前の話なんですが、mixiで何度かご一緒に飲ませていただいた方が関わった作品が、なんと近場の駿東郡清水町で上映されるというので観てまいりました。株式会社トーイン初の製作映画となる『つづく』、ご紹介します。公式サイトはコチラ

東京で小さな設計会社を営む笠原は、若き日にそれなりに恋もあったのだが初老になっても未だ独身。そんな彼のもとに大手の帝都建設より、とあるプロジェクトの設計コンペの依頼が入る。なぜ自分のところに業界屈指の帝都建設が… 笠原はいぶかしむ。そのことを尋ねても担当の北村裕香はありきたりの回答ではぐらかすばかり。そして帝都建設内部でも笠原設計を参加させることに疑問の声が上がっていた。笠原は自分の意思に関わらず大企業の勢力争いに巻き込まれていく…

冒頭15分は正直なかなかの我慢タイムでした(笑) ふだん観ている映画と違ってあまりにも等身大の世界だったものですから。わたしも小ぢんまりした土木系の会社に勤めてるし… しかし笠原さんが大会社の派閥のさや当て(というか一方が勝手に攻撃してるだけなんだけど)に翻弄されるあたりがまるで『課長 島耕作』のようで、そのあたりから興が乗ってきました。
しかしお話はだんだん企業ドラマから、笠原さんの切ない過去やヒロイン北村佑香の秘められた心情にせまっていく方向へ向かいます。別にアリバイ殺人が起きるわけではないんですが、そういった謎が徐々に明かされていく展開は一種のミステリーと言っていいかもしれません。

あとわたくしタイトルなどからコテコテの人情ドラマを想像していたのですが、笠原さん演じる比賀健二さんの穏やかなムードや軽妙な脚本の力もあって、全体的にほっこりしたユーモアのあふれる作品となっておりました。
その比嘉健二さんは長年教職を務め、現在は伊豆で「セルフビルド」というプロジェクト(詳しくは公式サイトをご覧ください)に携わっておられる異色の経歴の方。たまたま監督がこのセルフビルドについて取材しているうちに映画の骨子が出来上がっていったとか。
この『つづく』、当初は六本木のシネマロサというとこで昨年秋にレイト限定で上映されたとのこと(連日盛況だったそうです)。それがどうしてこんな地方で上映されたかといえば、ぶっちゃけ伊豆が舞台だったからですね。そんなわけで時折うつる地元の風景も目を楽しませてくれました。
特に夕焼けの赤澤で子供のようにはしゃぐ比嘉さん=笠原さんが初老のおじさんなのにとても美しく見えました。この辺が映像の力というか映画の力だと思います。

またヒロイン裕香演じる栗原瞳さんはわたしにとっては『仮面ライダー龍騎』『仮面ライダー555』でなじみ深い方(笑) ライダーではいささかエキセントリックな演技が印象に残っておりましたが、こちらでは物静かな大人の女性を時に悪魔的に、時に凛として演じておられました。

上映終わって帰ろうとしたら舞台挨拶があったのはなかなかのサプライズでした。シネプラザサントムーンには出来たときからしょっちゅう通ってますが、ここで舞台挨拶に立ち会ったのは本当に初めてのことでしたよ… そんなわけでなかなか貴重な体験をさせていただきました。

Photo_2『つづく』はこれからも幾つかの地方で上映を計画中とのこと。となりのイラストは栗原さんが演じてた『仮面ライダー555』のスマートレディのつもり…

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May 23, 2012

クロノスじいさん大噴火 ジョナサン・リーベスマン  『タイタンの逆襲』

Photoギリシャ神話の世界を現代のCG技術で甦らせ、全世界でまあまあの、日本ではそれなりのヒットとなった『タイタンの戦い』(当ブログのくだらないレビューはコチラ)。その『タイタンの戦い』が二年ぶりに帰ってまいりました(はええ!) いかにもって感じな続編タイトルとなった『タイタンの逆襲』、ご紹介いたします。

神ゼウスを父に持つ英雄ペルセウスが、ジャック・スパロウもかなわなかった海の怪物コラーゲンを倒してからはや数年。ペルセウスは愛妻イオとの間に一子をもうけたが、妻は制作上の都合か還らぬ人となっていた。
一介のウミンチュとして穏やかな暮らしを続けていた親子のもとに、ある日折り合いの悪いゼウスじいさんが凶報を携えて訪ねてくる。かつてコラーゲンをさしむけた「名前を言ってもいい」ハデスおじさんが、さらに暴れん坊で健康にいい黒酢(クロノス)ひいじいさんと手を組んでまた悪巧みを練っているというのだ。「もう実家とは関わりありません」とつっぱねるペルペル。だがひいじいさん配下の怪獣軍団はすでにペルセウスたちの住む村へと向かっていたのだった…

前回のネタよりもさらにつまらない… しかも中途半端だ。でも書かずにはいられない。性ですね。
前作『タイタンの戦い』はギリシャ神話の有名なエピソードを(一応)忠実に映像化した作品でしたが、今回は映画オリジナルのお話を勝手に作っちゃっております。たしか元のギリシャ神話ではクロノスは一族と共に地下に封じ込められてそれっきりではなかったかな。ただ独自のストーリーを作ったはずなのに昨年秋に公開された『インモータルズ』とこんなに似てしまったのはどうしてなんでしょうね… まあハリウッドではよくあることです。

前回のレビューでわたしは「ギリシャ神話の神々は『自然』の象徴である」と書きました。今回も同じことが言えると思います。前作では「たとえ自然が人間にやさしくなくても、人は自然とうまくつきあっていかなければならない」ということが語られました。確かにいつの時代でも自然の力は強大です。しかし現代においては人間もまた自然・地球にとって脅威となっております。映画ではオリンポスの神々の衰退としてそれを表現しています。自然に敬意を払わず破壊を続けるならどうなるか。まるでこの映画のクロノス神の復活のように、人間にも地球にも取り返しのつかない災いが臨むことでしょう。それを回避するにはどうすればよいのか。やはり自然を敬い、それを守っていくしかない。作品ではそれがペルセウスとゼウスの和解として語られております。絶対監督も脚本家もそんなこと考えちゃいねーよ、というツッコミは甘んじてお受けいたしますcoldsweats01

ゼウスとペルセウスの親子関係、なんかに似てるなあ~と思ったら『美味しんぼ』の海原雄山と山岡士郎のそれにそっくりですね。そんなわけで彼らのぎこちないコミュニケーションを微笑ましく見守っておりました。
一方で完全に和解できそうもないのはクロノスのひいじいさん。なんつったって身の丈ウン十メートルはあろうかという怪獣のようなお方。ゼウスとペルセウスはまだ親子と言われれば「あー、そうかもね」とも思えますが、こちらのひいじいさんとゼウスじいさんはあまりにもルックスに隔たりがありすぎです。本当に血はつながっているのか? クロノスはどうやって子供をこさえたのか? 謎は深まるばかりです。

あとこれも忘れちゃいけない。当ブログ名物怪獣チェックです。
・キマイラ・・・この映画の中で一番よくできてた怪獣。ちゃんと「尻尾がヘビとして独立してる」というとこを再現してるのがポイント高いです。出番が冒頭だけというのがちと悲しい
・サイクロップス…もよくできてました。めったに映像化されることのない怪獣なので活躍シーンは大変貴重です
・クノッソス宮殿・・・ これ怪獣じゃないけど(笑) 『エイリアンVSプレデター』の構造が絶えず変形していく迷宮を、さらにバージョンアップさせた感じでナイスだったので書いておきます。それにひきかえ微妙だったのが
・ミノタウロス…『インモータルズ』よりはマシでしたがデザインが正直「やっつけ仕事」な感が否めません。
・終盤に出てきたインドのシバ神みたいなヤツ…たぶんこの映画のオリジナル。CGだけあってよく動いてました。『タイタンの戦い』オリジナルを手がけたレイ・ハリーハウゼンの映画に確かこんなん出てきたのでそのオマージュかも

Photo_2ちなみに今回は前作をてがけたルイ・レテリエ監督ではなく『世界侵略:ロサンゼルス決戦』が記憶に新しいジョナサン・リーベスマン氏がメガホンを取っております。そのせいか知らないけど一作目よりもなんだかあっさりしたタッチだったような… 売り上げも世界で三億儲けた『~戦い』の半分くらいしかいかないというさっぱり具合。レテリエ監督は「三部作にしたい」と言っていたけど、この分ではここで終りかもなcoldsweats01
一応きちんと終わってますが「いや、まだ続きが観たい!」という方は劇場に行って売り上げに貢献してください。そろそろラスト一週かも…

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May 16, 2012

お化けとポストに手紙を入れりゃ 沖浦啓之 『ももへの手紙』

Momo1瀬戸は 日暮れて 夕波小波♪ 本日はアニメ作家沖浦啓之氏の久々の監督作品となった『ももへの手紙』をご紹介します。

父親を亡くし、母と二人東京から瀬戸内へとやってきた少女もも。慣れない環境や父への想いから、気の晴れない日が続くもも。さらにおいうちをかけるように、彼女を仰天させる出来事が起きる。いつしかももたちの周りにはえたいのしれない影がうろつき始め、その影はとうとう妖怪となってももの前に姿を現す。
パニックに陥るもも。しかも三匹の妖怪たち… イワ・カワ・マメは畑の作物を荒らしたり、ファンシー系のグッズを盗んだりしてはももを悩ませる。しかし妖怪たちと格闘しているうちに、ももにはいつしか自然な笑顔がよみがえってくる…

いまをさること12年前、その芸術性の高さで海外でも話題を呼んだ『人狼』というアニメ映画がありました。押井守氏原案でパラレルワールドの日本を舞台とした、公安警察の苦闘を描いた作品。
どれほどのものかと思って鑑賞してみたら確かに見ごたえはあったんですが、あまりにも暗く救いがなさすぎる。わたしがこれまでに観た「落込む映画」のゆうにベスト(ワースト?)5に入ります。
そんな『人狼』のこともだいぶ忘れた今年初め、監督の沖浦氏の作品が再び公開されると聞きました。ところがこれが『人狼』とはうってかわったのほほ~んとしたムードでたまげましたよ。さすがに監督も「前作は暗すぎた」と反省したのでしょうか。

ざっと感想を観ましたところ「ジブリと似てる」という印象を持たれた方が多いようです。たしかにどこかしら似通ったところも多々あります。でもしかし、この作品独自のいいところもたくさんあります。それをこれからネチネチとあげていきましょう。
まず宮○駿御大はもうビッグになりすぎて、最近の作品なんか父親、あるいは地球の目線からしか物語を語れなくなってると思うんです。しかし沖浦監督はあくまで少女の感性になりきって、少女の目線でお話を語っていると思いました。そういう点ではむしろ御大のジュニアである吾○氏に近いかも。
ただ宮崎○朗氏の作風がとても生真面目であるのに比べると、『ももへの手紙』はすこーんといい具合に力が抜けております。そんな風に作品のガス抜きとなっているのがイワ・カワ・マメの妖怪三バカトリオ。この三匹、クライマックスぎりぎりまで本当に何の役にもたちゃあしません。それどころか次から次へと軽犯罪を繰り返す始末で、ももちゃんならずとも頭を抱えたくなります。まあなんとなく憎めないやつらではありますが。
こんなダメ人間の象徴みたいなやつらがイキイキと描かれてるところも、近年のジブリとはちょっと違います。
あともひとつよかったのは、直接エコロジー的なテーマを語ろうとしなかったこと。昔はよかった今はダメ、美しい自然を大切にしましょう!みたいなテーマが盛り込まれたアニメが多くありますが、そういうのってエンターテイメントで説教くさく語られるとかえってひくんですよね。その点『ももへの手紙』はあくまで絵だけで伝統の良さや自然の美しさを表現していたと思います。

沖浦監督と『ももへの手紙』に関しては現在webでこんな濃いいインタビューが続けられているのですが、そこでぶったまげたのがなんとこのアニメの元ネタとなったのは『不思議惑星キン・ザ・ザ』だということ。『キン・ザ・ザ』とは旧ソ連末期に作られた珍SF映画で、気難しいロシアのおじさんが宇宙に突然ワープしてしまい、そこであこぎなナニワ商人みたいな宇宙人に四苦八苦させられるというストーリー。わたしもこんなレビューを書いたりしてました。
インタビューで「『不思議惑星キン・ザ・ザ』という作品がありまして、それにとても感銘を受けたんです。あれは、地球人のおじさんと異星人のおじさんの話だったんですけど(笑)。それを女の子とおじさんたちという組み合わせで、舞台を変えてやれないかなと思って。だから、おじさんっぽいイメージの妖怪たちにしたいなと」と沖浦監督。ふんふん、なるほどね… と言いたいとこだけど全然わからねえ(笑) あの『キン・ザ・ザ』をどうひねくったらこんなさわやかなジュブナイル作品になるのか… ぜひ『もも』を観た方はそちらも観て頭をひねられてください。

Momo2『ももへの手紙』は現在全国の劇場で上映中。でもあんまし興行かんばしくないっぽいです。わたしが観た時はお子さんたちもよくケラケラと笑っていたので、もっとたくさんの子供たちにぜひ観てもらいたいものですが。


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May 13, 2012

超能力大作戦 堤幸彦 『SPEC 天』

Spec2本日は映画『SPEC 天』というよりドラマ版を含めた『SPEC』全体の紹介&感想を書かせていただきます。

2010年秋から年末にかけて『SPEC』というドラマが放映されておりました。実に『タイガー&ドラゴン』以来五年ぶりにわたしがはまったワンクールドラマでした。
ざっとあらすじを説明しますと、捜査一課が手に負えない特殊な事件を捜査するために警視庁公安部が設立した未詳事件特別対策係、通称“未詳(ミショウ)に配属された刑事達の戦いを描いたストーリー。
主人公はIQ201を誇りながら変人で常にニンニク臭い当麻紗綾(戸田恵梨香)と、特殊部隊のエースでありながらある疑惑のために未詳に飛ばされた瀬文焚流(加瀬亮)。この二人とあの『ケイゾク』の野々村係長(竜雷太)が毎回起きる難事件に挑むわけですが、その事件というのが決まって「SPEC」と言われる超能力がからんだものなのでシャレになりません。少年ジャ○プではよく能力者同士で派手なバトルが行われたりしますが、『SPEC』の主人公達はあくまで普通の?人間。そんな三人が時間を止めたりとか、心を読んだりとか、念道力を操ったりする化け物みたいな連中に知恵と根性で立ち向かっていくわけです。また敵は超能力者たちだけではなく、警視庁公安部を牛耳っている謎の組織も彼らを翻弄します。ぼそっと「わたしら、消されるかもしれませんなー」とつぶやく当麻。そんな明日の命さえわからぬ状況でありながら、己の信念のために戦い続ける当麻と瀬分。これが燃えずにいられましょうか。

ただそれが『SPEC』の全てというわけではありません(笑) 全編を彩る非常にしょうもないギャグもこのシリーズの特色です。これは特にTVSP『翔』と映画『天』に顕著でしたが、普通なら深刻になりそうな場面で「さとりんさといもにっこにこ」とか、全身の力が抜けそうなセリフ・アクションが連打されます。これはポン・ジュノやパク・チャヌクからの悪影響かな、とも思いましたが、そういえば堤幸彦氏は『ケイゾク』の時からそういう人でありました…
ちなみに劇場版で個人的に受けたネタは

・デカレッド!
・アイスラッガー!
・わざとらしくテーブルに積まれている『ジョジョの奇妙な冒険』
・楽しそうな元「たま」の石川浩司さん

でした。

あともうひとつの魅力はなんといっても竜雷太!(笑) 明らかに『ケイゾク』の時よりも目だっております。はるか年下の恋人にメロメロになったり、警視庁のお偉方にヘコへコしながらも、ここぞという時は別人のような気迫でびしっと決めます。劇場版『天』で一番スクリーンのどアップが様になっていたのは戸田恵梨香でも加瀬亮でもなく、もちろん我らが雷太様でございました(笑)

さて、最初は一風変わった刑事ドラマで始まった本作ですが、お話が進むにつれスケールはどんどん大きくなっていき、劇場版『天』では世界の破滅を予感させる「ファティマ第三の預言」まで引用されています。
例によっていろいろ謎をはらんだ形で『天』も終了するのですが、この絶望と希望がないまぜになったムードが非常に気に入ってしまったので、個人的にはここで終わっていいんじゃないかなあと。最近はなにもかもきっぱり決着をつけてしまう結末より、若干観客に創造の余地を残しておく終り方の方が好き・・・と言うか、そのほうが心に残りますよね。

Spec1ただスタッフもやる気まんまんで今回大ヒットしてしまったところをみると、「結」というか「欠」というか「尻」ができるのも時間の問題でしょうかね… 『SPEC 天』は現在全国の劇場で上映中。観たらギョウザが食べたくなること請け合い?


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May 09, 2012

火星の往生 E・R・バロウズ アンドリュー・スタントン 『ジョン・カーター』

101228_180340南北戦争で勇名を轟かせた冒険家ジョン・カーターは、黄金を求めて入った洞窟に温泉がわいているのを発見する。よいこらこれはいい気持ち、と湯につかるカーター。すると彼はたちまち現代日本のバスルームにタイムワープしてしまったのだ。恐るべし、平たい顔族・・・!!

はい! つまんないですね! 本当はカーターさんはバルスームという謎の惑星にワープします。温泉は出てきません。そして飛んだ先の火…バスルームではじょわじょわと気色悪い生き物が繁殖していて、カータンは彼らと仲良くなったりぶっ殺したりするのでした…

わたしの親というのは漫画やアニメに厳しい人でして。そんな環境でわたしはもっぱら学校の図書室で物語への飢えを満たしておりました。そこで出合った作品で、特に今でも印象に残ってるのは福島正美氏が編集した「SFこども図書館」。『宇宙少年ケムロ』『合成人間ビルケ』『逃げたロボット』etc… そんな名作群の中にこの『ジョン・カーター』原作、エドガー・ライズ・バロウズの『火星の王女』もあったのでした。
クライマックスのあたりとかすっぽり忘れてるんですが(笑)、突然火星にやってきたカーターが見知らぬ土地で異形の友を得て、スーパーマンのような活躍を見せる。そんなストーリーにドキドキワクワクしたものでした。その『火星の王女』をピクサーのエース、アンドリュー・スタントンが映画化するとなったら面白くないわけがない!…とかなり期待していたんですが… ええと、良かった点からいきましょうcoldsweats01

まず目を引くのは「重力が軽いから」ということでカーターが見せるジャンプ・アクション。このネタ、たぶん『スーパーマン』や『のび太の宇宙開拓史』にも利用されてると思うのですが、それこそスーパーマンのように高いビルでもひとッ飛び!ってくらいの大ジャンプを見せてくれます。そんで空中を飛んでる飛行機をぶっ壊してまた飛び降りたりする。ありえないけどこのアクションが実に爽快です。
バルスームの風変わりな景色も目を楽しませてくれます。。特にトンボのような形状でふわふわ漂ってる飛行機は優美かつ独創的。こんなのミクロマンのオモチャであったかな…

で、悪い点というかなんというか(笑) アンドリュー・スタントン監督がこれまで手がけた『ファインディング・ニモ』と『WALL・E』。「魚が大海で愛児を探す!」「人類のいない世界でロボが愛に目覚める!」そんな今までになかったようなコンセプトがまず偉大でした。それに比べると今回の『ジョン・カーター』はなんだかこないだの『ア○ター』の別バージョンのように見えて仕方ありませんでした。本当は『アバ○ー』の方がこっちの原作を意識してるようなんですけどね。偉大すぎるゆえに真似されまくって、新鮮味がなくなってしまったオリジナルの悲劇、とでも申しましょうか。
あと『ニモ』も『ウォーリー』も一途に愛を求める主人公たちを手に汗握って応援せずにはいられませんでした。ジョン・カーターさんにはその点ちょっとフラフラしてるように見えました。これは単にわたしの好みですが、恋の駆け引きを楽しんでるかのようなイケメンにはどうも感情移入しづらいです。

20071219182630そんな『ジョン・カーター』は本国で公開されるやいなや「ディズニー史上最大のぶっこけ作品」と評されてしまいました。実際はその後世界で少々持ち直し、制作費くらいは稼いでるんですが当初あった三部作構想は消滅したとみてよいでしょう。でもまあこれはこれでそれなりに終わってますし、続編は作らなくてもよいと思います。
スタントン監督はこれでもうアニメしか作らせてもらえないかも… ま、それはそれでいっか♪(しどい)


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May 07, 2012

海にお船を沈ませて ピーター・バーグ 『バトルシップ』

Bs2ユニバーサル100周年記念作品… が、これかよ!(笑) 本日はなんでか本国よりも一ヶ月も早く日本公開となったSFおバカ超大作『バトルシップ』をご紹介します。

世界14カ国の海軍将兵2万人が参集する環太平洋合同演習。その中に有能だが根っからお馬鹿の駆逐艦乗員アレックス・ホッパーもいた。上官でもある恋人の父親・シェーン提督にいいとこを見せようとはりきっていたホッパーだったが、サッカーで負けた自衛隊の士官ナガタと壮絶なケンカをしてしまい、ほぼクビが決定してしまう。そんな中、宇宙から謎の飛行物体が落下。やはり戦艦らしきその物体は、演習中の艦隊に牙をむきはじめる。それは数年前宇宙局がある惑星に向けて発したメッセージへの無慈悲な回答だった。

原作はハズブロ社が発売してるTVゲーム「海戦ゲーム」。うっひゃあ。みなさん「海戦ゲーム」って知ってます? ○×を少し複雑にして、軍人将棋を思い切り簡略化したような対戦ゲームで、詳しくはこちらをご覧ください。はっきり言って紙と鉛筆があればできるゲームなんですが、そいつをさらに進化させて、立派なゲームウォッチみたいにして売り出したのがスターウォーズのオモチャなどで知られるハズブロ社。しかしねえ。幾ら「進化させた」といってもしょせんは海戦ゲーム。原作とうたってはいても、本当に名前だけ貸したようなもんだろな、とたかをくくっていました。ところがどすこい、中盤で本当に海戦ゲームの画面が出てきてぶったまげました。どんな風に使われているのかは、ぜひご自分のお目目でお確かめください。

普通この手の地球侵略ものでは、「地球側の通常兵器がまったく利かない!」ということが多いのですが、この『バトルシップ』においてはミサイルも砲弾もわりかし普通に通用します。まあそういう風にしないと海戦ゲームが成り立たないので・・・
とにかく馬鹿でかい船とすさまじい兵器で攻めてくるので、地球側が圧倒的に不利なのはまちがいないんです。ですがどうも宇宙人さんたちはルールに囚われすぎなのか単にうっかり屋さんなのか、上手に反撃の糸口を残しておいてくれるんですよね。まるでゲームにおいてフェアプレイを重んじるように。そんな宇宙人たちの出してきた小難しい命題を、地球人たちが必死に知恵を絞って解決する、そのあたりがこの映画の醍醐味であると思います。
ゲームしに来ておっ死んでるんなんて君たちは馬鹿か?という人もおられましょうが、わたしはそんな宇宙人さん達の優しさ、もしくはドジっ子ぶりが大好きですよ!
ついでにわが心のうっかり宇宙人ベスト3(ワースト?)をあげるとするなら、1位 サイン 2位 宇宙戦争 3位 カウボーイ&エイリアン というとこでしょうか。1位・2位の連中はもちっと丁寧にリサーチしてから地球に攻めてこいやと。3位はうっかりがあまりに露骨すぎて、段取りをさぼったプロレスみたいになってました。

ちなみにこの映画、米国海軍だけでなく自衛隊もそれなりに活躍します。自衛隊の方々は列強の軍隊から「ションベンみたいな撃ち方しかできないくせに、メチャクチャ正確に的に当ててきて怖い」という評判を得ているそうです。この映画ではその辺も忠実に再現しててなかなかに笑えました。

正直『キングダム 見えざる敵』で民族間の争いを痛烈に批判したピーター・バーグ監督が、こういう能天気な好戦的映画を作ったことにひっかかりがないでもないです。でもまあ、相手は宇宙人だしなあ。実在しない宇宙人ならば映画の中で全滅させても別に支障はない・・・かしら。はてさて
Bs1ピップエレキバン、じゃなくて『バトルシップ』は、現在全国の劇場で上映中。映画はやっぱでかいもんぶっこわしてナンボやろー、という方に強く推奨します。
日本では同日公開初日を迎えた『ジョン・カーター』でも、この作品と同じく若手のテイラー・キッチュが主演を務めております。が、『バトルシップ』と比べると興行はいまひとつ芳しくない模様。そっちにも、渡辺謙あたり出しとけばよかったんじゃないかなあ。
次のレビューではその『ジョン・カーター』の方を取り上げます。たぶん。

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May 04, 2012

芸術はブラック&ホワイトだ ミシェル・アザナヴィシウス 『アーティスト』

Artist2気がつけば約10日ぶりの更新です。はっはっは…
本日はフランス映画でモノクロサイレントにも関わらず、第84回アカデミー作品賞に輝いた『アーティスト』、ご紹介します。

サイレント映画華やかなりし1927年ハリウッド。ジョージ・ヴァレンティンは愛犬と共に数多くの映画に出演し、名声をほしいままにしていた。そんな折、ジョージはスターを夢見るぺピーという少女と出会う。ジョージのアドバイスと天性の魅力、そしてトーキーという新たな形式にマッチしたことにより、ぺピーは瞬く間に花形女優への階段を駆け上がっていく。一方サイレントにこだわりつづけるジョージの評判には次第にかげりが生じ始める・・・

やはり驚いたのは色つき・音つきが当たり前の今の時代にあえてモノクロ・サイレントをやろうという心意気ですね。単に白黒でやりたい、ということなら『シンシティ』『白いリボン』『動くな、氏ね、甦れ!』などが思い浮かびますが、声までシャットダウンしてしまったという例はちょっと記憶にありません。気をつけないと心地よい伴奏に乗せられて夢の国に行ってしまうことは必定。実際私の隣で観ていた老婦人は開始15分後にはいびきをかいておられました(後半復活してましたが)。
ただそのことは監督も覚悟していたようで、作品の隅々に「飽きさせまへんでー」という工夫がみなぎっておりました。例えば作中作、撮影現場、心象風景、妄想などを巧みに映像に盛り込んだり。サイレントとしては掟破りですがここぞというところで「声」を入れたり。そして犬。多くの方が絶賛していますがジョージの愛犬の名演技は紛れもなく映画史に伝説として記憶されることでしょう。

そういった演出・絵作りにはさすがオスカーと感心させられましたが、ストーリーの方はやや腑に落ちないところがありました。こっから先はだんだんネタバレになりますが

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売れっ子になったぺピーがいつまでもジョージを愛し続けているというのが、あまりにも都合がいいというか、「おじさんたちの夢」を映像化しているようでそれがひっかかったのですね。そりゃ駆け出しのころ世話になったとか昔憧れてたというのはあるでしょうけど、現実にはあんな上昇志向の強いタイプが落ち目の恩人をいつまでも想い続ける…というのはないんじゃないかなあと。まるで少年漫画で優しいだけがとりえの優柔不断な主人公が、理由もなく美少女達にモテモテになるような、そんなわかりやすさを感じてしまったのでした。
まあこういうみんなの夢(笑)をかなえてあげるのが古きよきサイレントの王道なのかもしれませんが、チャップリンやキートンはもっと愛のためにガムシャラに戦ってたからなあ。それに比べるとジョージさんはメソメソイジイジしてるとこばかりが目につきました。
だからこの映画で感動したのはやはり犬dog あといくら落ちぶれても主人を見捨てない執事さんとかね。女は見捨てても犬と老人は見捨てないというのは現実に十分ありえる気がするし(君は何か女性に恨みでもあるのか?)

とまあいろいろくさしてしまいましたが、やはり今の時代にサイレントをやろうというチャレンジ精神は素晴らしいです。お話はサイレントの凋落を描いていますが、決してその形式を否定するものではありません。大体サイレントへの深い愛情がなけりゃこんな映画作ろうとは思わないでしょうし。これを機に若い世代がチャップリンやキートンに興味を持ったり、音なし・色なしで絵作りだけで勝負を挑む作家が現れたらよいなあと思います。

Artist1『アーティスト』はたぶんまだ全国の劇場で上映中。とりあえず犬好きは必見です。わたしは猫派だけど。

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