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March 05, 2012

オレたち朝鮮族 ナ・ホンジン 『哀しき獣』

Kk1『チェイサー』で多くの映画人を瞠目せしめた韓国の新生ナ・ホンジン。その待望の第二作が、満を持して公開・・・って、都市部ではもうとっくにやっちゃってるんですけどね 『哀しき獣』、紹介いたします。

中国の辺境でタクシー運転手として働いている「朝鮮族」のグナムは、バクチで借金を増やし続ける鬱々とした日々を送っていた。韓国に出稼ぎに行った美しい妻が消息を絶ったことも彼の苛立ちを募らせていた。そんなグナムの前にミョンという怪しい男が近寄る。ソウルに行ってある男を殺せば、借金を帳消しにしてくれるというのだ。妻を探し出したいという思いも手伝って、グナムはミョンの申し出を受け入れる。

今回はどんどんネタバレしていくんでどうぞご了承ください

この映画は大きく四部に分かれています。第一部「タクシー運転手」・第二部「殺人者」・第三部「朝鮮族」・第四部「黄海」という具合に。それぞれのパートにあわせてグナムのテンションも変化していきます。
あらすじでも書いたように、第一部では常にイライラしている彼ですが、第二部に入ると妙に調子よさげになってきます。普通人を殺すとなったら、もっと緊張したり悩んだりするものではないでしょうか。といって、もちろんウキウキしているというわけでもない。入念に決行のための下調べをしているその姿は、必要な仕事を淡々とこなしていく職人に近いものがあります。
同じことはグナムの雇い主であるミョンにも言えます。こちらはもう本当に殺しのプロフェッショナルで、お話が進むごとにバカスカ死体を量産し続けます。といって、それに喜びを感じている風でもない。仕事だからとりあえず全力でやる、そんな感じです。アマチュア、プロの差はありますが、グナムもミョンも一種のハンターであります。問題はその狩る対象が人間だということ。この二人に絡むもう一人のキーマンとして、韓国のインテリヤクザみたいなテウォンという男が登場するのですが、文明化してしまった彼はグナムとミョンに一方的に振り回されるだけで、引き立て役以外の何物でもなかったです。

そんな三人の思惑が複雑に絡んだ結果、事態は予想だにしない方向へ進んでいきます。第三部で警察、ミョン、テウォンの三者から追われることになるグナム。皮肉なことに全身全霊をかけて逃げ延びようとするこの時の彼が、一番生き生きとして見えました。しかしこれほどまでに生きることに必死になっていた彼が、あるショックな事実?を知ってしまったために、第四部では抜け殻のようになってしまいます。あるいは彼は中国の辺境でずっと命を燃やすに足る何かを求め続けていたのかもしれません。そして妻を取り戻すために、自ら修羅場の中に身を投じていきます。ですが、祭りはいつかは終わるものです。踊り狂ったあとに彼が行き着く先とは、果たして・・・

グナムを演じるは『チェイサー』で不気味な異常殺人犯役が印象的だったハ・ジョンウ。『国家代表!?』では一転して母への思いをひたかくしにした純朴な青年を演じていました。本作ではまたガラリとちがったキャラクターを見せてくれます。さほど大仰な演技をするわけでもないのに、どの役もぴたっとこなしてしまうのは見事としかいいようがありません。
一方彼を翻弄することになるミョンは、やはり『チェイサー』でハ・ジョンウと対決していたキム・ユンソクが二周りくらい大きくなったお腹で演じています。今回は群がる敵を無骨な大鉈でバッタバッタとなぎ倒していく凶悪ぶり 鉄砲を使ったほうがよっぽど効率的だろうに・・・ そういえばこの映画では発砲するのはおまわりさんだけで、他はみんなもっぱら刃物だけで立ち回りを演じます。これでもかというくらい刺したりえぐたっり切断したり撲殺したりするシーンが出てきてさすがに悪酔いしそうになりました
監督の悪趣味と言ってしまえばそれまでですけど、過酷な環境で生まれ育ち、そこに身を置く者たちは、血を流し、流させたりしなければ生き続けることができないのかもしれません。そんな彼らの生き様が冒頭で語られる「狂犬」の話とシンクロしていきます。

『チェイサー』と同様、全編に渡ってヒリヒリと焼け付くような痛みがみなぎった本作。しかし映画秘宝のインタビューによりますとホンジン監督は意外と茶目っ気豊かな方のようで。たとえばミンスク氏に「役作りのために歯を抜いてくださいよ」なんてメールを送ったら「ぶっ殺す」と返ってきたとか。当たり前だ。そんなサド的というか人を食ったようなユーモアが、作品の中にもチラチラッと見え隠れしておりました。

Kk2『哀しき獣』はもう公開終わっちゃったところもありますがシネマート六本木など一部の劇場で公開中・公開予定です。東北ではこれからかかるところも多いみたい。
そういや『チェイサー』のハリウッドリメイクってどうなったんでしょね? その後聞きませんが・・・


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Comments

正直難しすぎて最後の方は良く解らなくなっちゃったってのが本当のところ。オフ会で5人で見てみた後に飲みに行っても結局誰一人正解に辿り着いていなかったという…。
チェイサーどうなったんでしょうね?ここはやっぱりマーティン・スコセッシ監督にリメイクしてもらってオスカーを獲得し、偉大なるリメイクオスカー監督として名を残してもらうってのはどうでしょう?w

Posted by: KLY | March 05, 2012 10:59 PM

伍一つぁんこれupしてたのね、
私すごく期待してみたんだけどぜんぜんだったなぁ。
後半の暴力描写多すぎで映画楽しむって感じじゃないんだもん、
韓国映画はそういう描写すごすぎるけど、ホラーならいいけどただ痛めつける為のヤクザやチンピラたちのそういう行為がみててダメ。
パートを分けるのもカッコ付けてるだけでぜんぜん意味ないよね?
これ内容も忘れちゃったなー(笑

チェイサー、リメイクしなくていいのに。
そろそろ韓国映画のハリウッドリメイクもやめてほしいな
と厳しい意見デシタ

Posted by: mig | March 06, 2012 11:43 AM

>KLYさん

こんばんは~ 
実はわたしもこの記事書くにあたり、gooの紹介サイト見て初めて「ああ・・・ そういう相関図だったのか」と初めて理解しました

>ここはやっぱりマーティン・スコセッシ監督にリメイクしてもらって

そんな幾ら元祖『タクシードライバー』だからってw でもリメイク権を獲得したのはスコさんお気に入りのディカプリオなんで、可能性としては十分ありそうですね・・・

Posted by: SGA屋伍一 | March 06, 2012 10:18 PM

>migちゃん

こんばんは~ うん、昨日UPしてそのまま力尽きたw
わたしはTLでえらい不評だったので期待値低めでいったら、意外と面白いじゃないか!と

>ホラーならいいけどただ痛めつける為のヤクザやチンピラたちのそういう行為がみててダメ

その辺の微妙な違いがよくわからないw わたしが苦手なのは皮をはがすとかそういうじくじくした痛描写・・・ 
まあ韓国の人はやっぱりキムチ食べすぎだよね。そういう激辛ものになれちゃってるから痛覚も麻痺してるんだよ、きっと

ハリウッドリメイクといえば『オールドボーイ』もスパイク・リーがやるとのことだったけど、その後聞かないねい。あれも舌をちょん切るシーンとか痛すぎだったなあ

Posted by: SGA屋伍一 | March 06, 2012 10:27 PM

ユンスク氏のイラストかわいい(笑)

上のコメント見ると・・・これあまり評判よくなかったのかなー?
『チェイサー』同様、とても楽しめた(というと語弊があるかな)のですが。
そういやちょうどこの映画観たとき、地元で凶悪犯が脱走してたのでした。

韓国映画観てるとよくこんな味のあるイイ顔した役者さん見つけてくるなーと思うけど
先日韓国行ってみたら、道行く人みんなイイ顔してました。
韓国ドラマに出てくるような見目麗しき人はなかなか。

Posted by: kenko | March 09, 2012 08:33 PM

>kenkoさん

こんばんは~ 今回のユンスク氏、パパイヤ鈴木に似ていたような気がします。
映画好きにはイマイチだった人が多かったみたいですね。相関図がわかりづらい上にラストも意味不明だし
でもわたしは何より必死こいてにげるハ・ジョンウの姿が気持ちよかったので十分満足でした

そういやありましたね、凶悪犯脱走事件! 結局「おなかが空いたから帰る」ということで解決をみたんでしたっけ。この映画に比べるとずいぶんかわいらしい?事件ですね

本場にはイイ顔の人が多いのか・・・ イイ顔というのはイケメンとはまた違うんですよね。独特というか味のある顔ってことかなあ。とりあえずこの映画の二人もイイ顔というかイカツイ顔してました

Posted by: SGA屋伍一 | March 09, 2012 11:32 PM

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