ブラックさん達を訪ねてるんだが、僕はもう限界かもしれない スティーブン・ダルドリー 『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』
毎年この時期続々と公開されていくアカデミー賞ノミネート作品。その先陣を切ったのはこの映画。ブック・オブ・ザ・イヤーに輝いたジョナサン・サフラン・フォアの小説を、『リトル・ダンサー』『愛を読む人』のスティーブン・ダルドリーが映画化。『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』、をご紹介します。
2001年、世界を震撼させたNY貿易センタービル爆破事件。その影で父親を失った一人の少年、オスカーがいた。大好きだった父の部屋で、ある日オスカーは一つのカギを見つける。そのカギが開けるだろう何かに、父はメッセージを残していたかもしれない・・・ 彼はそう思い込む。手がかりは封筒に書かれていた「Black」「遺品セール」という文字。「Black」は人の姓だと判断したオスカーは、ニューヨークに住むたくさんのブラック姓の人々をしらみつぶしに訪ねて歩く。
予告編を観て思い出したのは、2000年(日本公開は2001年)の映画、『ペイ・フォワード 可能の王国』。一人の少年の行動が、見ず知らずの多くの人たちに深い影響を及ぼしていくという内容でした。そういう点ではこの『ものすごく~』も似てるといや似てるかも。
これは主に原作者の功績でしょうけど、同じ姓の人を片っ端から訪問していくというアイデアが独特で面白いですよね。オスカーが探す姓が浜松市の鈴木さんじゃなくて本当によかったです。鈴木さんにも隣の鈴木さんから世界の(鈴木)イチローまで千差万別の鈴木さんがいるわけですが、それはNYのブラックさんたちだって一緒。
男性もいれば女性もいる。おっかない人がいれば優しい人もいる(というか映画に出てくるブラックさんのほとんどは優しい人でした。それにはある理由があるのですが・・・)。「次はどんなブラックさんに会えるんだろう?」と、まるでオスカーと一緒にNY市を冒険しているような気持ちで観ていました。そしてそのカギが開けるものは一体何なのか。そこにお父さんのメッセージは残されているのか。ジャンルとしてはヒューマンドラマに分類されるのかもしれませんが、そんなミステリー的な筋立てにまず惹かれました。
もちろんヒューマンな部分も良かったです。見ず知らずの人々がふとしたきっかけでつかの間の間心を通わす、そういう話にわたくし弱いんです 少年がめぐり合う多くのブラックさんたちの優しさ。ベッタベタじゃなくてそんなさらっとした優しさがひねくれ者には心地よかったです。
主演のトーマス・ホーン君はこれが映画デビュー作。父を亡くした上にアスペルガー症候群という難しそうな役を非常に自然に演じていました。わたしが何よりも感心したのはびよ~んとしたそのまつげ。男の子なのにそんじょそこらの女の子よりもよっぽど長いまつげをしています。世の中にはわざわざ買ってまつげをつける人もいるというのに、なんだか不公平ですよね・・・ ただ子役美少年というのは長じて劣化する場合が少なくないので、ホーン君もくれぐれも油断しないよう。
オスカーを助けてくれる「謎の間借り人」は、この作品でオスカー助演(笑)男優賞にノミネートされたマックス・フォン・シドー。映画ではこの老人の過去に関してははっきりと明かされませんでしたが、原作小説ではじっくりページを割いているそうで。お話は第二次大戦時のドレスデン空爆に飛び、9.11とシンクロしていくとか。こちらもちょっと読んでみたいですね。
さて、この『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』という印象深い題に関して。わたくし映画を観ながらこの題は二つのものを表してるのでは、と思いました。
ひとつはオスカーが電話を通して聞く、貿易センタービル倒壊の音。そしてもう一つはオスカーの亡き父の声。劇中で「帰ってくるといつもバカでっかい声で言ってた」というセリフがあったのですが、例え姿は見えなくても、思い出そうと思えばお父さんの声はすぐ近くで大きく聞こえてくる・・・ そんな意味じゃなかろうかと。もっともこれは単なるあてずっぽうです。原作を読めばもっとはっきりわかるんでしょうかね~
『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』は現在全国で公開中。そんなに大ヒット、というわけでもないようなのでご興味おありの方は早めにご覧ください。
隣になんで仮面ライダーが貼ってあるのかに関しては、「南光太郎」もしくは「倉田てつを ライダー」でぐぐっていただければわかると思います。
Comments
どうやらこれは私の観るべき映画のようですな。
明日、行って来ます。
Posted by: かに | March 13, 2012 03:55 PM
>かにさん
どちらかといえば『ヒューゴ』のほうがかにさんのツボかもしれませんが、こちらもおすすめです。あと『戦火の馬』も良かったですよ~
Posted by: SGA屋伍一 | March 13, 2012 08:20 PM
やっぱり実際にあったあの9.11
のある家族の話ってことで10年経ってもまだまだ、いやずっとこれからもこういうのを映画にしたのをみるのは辛いものなんだよね。
だからこの映画の脚本がってことじゃなく、それだけで思いがどっときちゃって涙溢れちゃった。
頭のいい少年が多感でホントウに立ち直るまで辛いっていうのが伝わったなー。ペイフォワード懐かしい、
このオスカー役の天才子役くんはこれでデビューだけど役者として続くかな?
Posted by: mig | March 13, 2012 08:50 PM
伍一君☆
まつ毛長いって言ってたねぇ。(笑)
女の子も顔を近づけてよーく見たら、ホラまつ毛案外ながいんだよ。ほら、もうちょっと顔を・・・・(爆)
さて、ものすごくうるさくて近いのは「母」だとばかり思っていましたが、どうかな?
「うるさいけど近くて」安心と子供たちも思ってくれるといいんだけどなー
Posted by: ノルウェーまだ~む | March 13, 2012 11:05 PM
観てきました!
いやあ、良かった。やはりこれこそ私の観るべき映画でした!
『ヒューゴ』?前座としてよかったかな?
なんで『ヒューゴ』のほうがツボだと思ったのか
ちょっとお聞きしたい気がしないでないというか
まあ、分かります、多分(笑)。
いや『ヒューゴ』は2Dで観るべきだと思いました。
もう、疲れちゃって。
おっと違う映画の話になってしまった。
いずれここで書かれるんですよね?
そのときにでもまた。
とりあえず、いい映画を紹介していただきありがとうございました。
(ものすごく…はノーマークでした)
Posted by: かに | March 14, 2012 06:00 PM
>migちゃん
いやあ、さっきもけっこう揺れてびびったね・・・
日本でもこれから先、こんな風に311を題材にした映画が作られていくのかな。それこそ実際に体験した人にとっては十年経っても二十年経っても強烈な記憶となって残ってるんだろうね
オスカー君はわざとらしく泣き叫んだりしないところがかえって観ていて辛かったな。それを見守るお母さんも
演じてたボクはぜひ役者を続けてほしい。体重に気をつけながら(笑)
Posted by: SGA屋伍一 | March 14, 2012 09:46 PM
>まだ~むさん
こちらにもどうも~
どれどれどれ、じっくり見せてもらいましょうか・・・ ぶちゅ はう! すいません! ついはずみでうっかりと
>ものすごくうるさくて近いのは「母」だとばかり思っていましたが、
なるほど。そういう考え方もありですかね。結局オスカー君の近くにずっといたのはお母さんだったわけですから
まだ~むさんの怒り方なんてうるさいうちに入りませんよ。うちの怪獣の吠え声にくらべれば・・・
Posted by: SGA屋伍一 | March 14, 2012 10:05 PM
>かにさん
満足されたようでよかったです!
そうですよね、この映画、ポスターだけだとどんな映画なんだかわかりづらいですよね
わたしも最初に観たスチールでトム・ハンクスがアップになってたので、予告見るまでてっきり彼が主役かと思ってました(笑)
『ヒューゴ』のほうが気に入るんじゃないかな・・・と思ったのは、多分に児童文学っぽいところがあるのと、古い映画が好きな人は嬉しいポイントが多いと思ったからです
それにしても二作品ともお父さんを慕う少年の鍵穴探しの話とは思いもよらなかったでしょうね(笑)
Posted by: SGA屋伍一 | March 14, 2012 10:19 PM
ボクからのてがみ
.:*゚..:。*゚:.。*゚..:。*゚:.。*゚
パパがくれたボクの部屋、観た?
アイデンティティで溢れてるでしょ
ボクね「パパの鍵」を探して
いっぱいの事と出会ったよ
心の旅。これからのボク
色々と会って拾って来たよ
落とさないようにしていかなくちゃ
あ痛みは愛があるからだね
ねぇねぇパパは、あの鍵で
ママのハートも開けたのかな?
えへへ
ボクのママってすげーでしょ♪
大変だよ!ボクはこれから
沢山の「I love you」を
ママにプレゼントだっ
愛があるのは優しくて強い?
ボクは怖くってふかふか
だけどあたたかくて
しあわせって思うよ
.:*゚..:。*゚:.。*゚..:。*゚:.。*゚..:。
リアルに9.11で幼ダチ達を失くした私としては
辛いものもあったけど・・・
マックス・フォン・シドー やばい♪
すげぇツボ
Posted by: q や。ボクだよ | March 21, 2012 09:35 PM
>qちゃん
やう。。。 お手紙ありがとう。その後調子はいかがかな?
オスカー君のパパはすごいよね。オスカー君がぐずった時も一生懸命正面からむきあって。いつでも彼のいいところを見つけてほめて
わたしは二人が空手の組み手をやりながら「矛盾表現」ごっこをするところが好きだったなあ。qちゃんもやるかい?
えい! 「ださかっこいい」
えい! 「攻撃は最大の防御」
えい! 「果物は腐りかけが一番うまい」・・・はちょっと違うか
ママも包容力豊かなあったかい人だったね。きっとqちゃんのお父さんお母さんもそうなんだろうね。うちはお母さんは怪獣でお父さんは変人だよ。。。 ま、いるだけでもありがたいとおもわなけりゃだね!
9.11には辛い思いでもあったんだね。わたしはまだ親友や家族を事故で亡くしたことはないなあ。それってすごくありがたいことであります
Posted by: SGA屋伍一 | March 22, 2012 02:50 PM
爆弾低気圧の中、こんにちは〜
前職だったらSGAやん、てんてこ舞いしながら恐怖新聞を配ってたところでしたよね〜
本当、足を洗えて良かった良かった
そちらの天気はどーお?
あー確かに、どっか『ペイ・フォワード』思い出しますよね〜。これ私大好きだったの。
>見ず知らずの人々がふとしたきっかけでつかの間の間心を通わす、そういう話にわたくし弱いんです
私も全く同じ〜。そういう意味でもペイ・フォワードに似てますよね。
この作品は出来すぎって言われてるんだけど、でもこういうものを信じたい気持ちがどっかにあるんですよね。
Posted by: とらねこ | April 03, 2012 06:24 PM
TBがうまく飛ばないなー。風で飛ばされてるのかしら
Posted by: とらねこ | April 03, 2012 06:27 PM
>とらねこどん
こんばんばん。暴雨風の中ありがとうございました。TB、熱海湾におっこってたから泳いでとってきたよ。。。 現金書留も届いたようでなによりです
うん、本当にあんな天気の時は室内でできるお仕事っていいな~と心から思うよ。「負けるもんかおんどりゃー!」と叫びながらびしょぬれになって新聞配るのも、元気なときはそれなりに楽しくもあるけどね
『ペイ・フォワード』で共感してもらえて嬉しいなり。これもいい映画だと思うけどあんまり話題になることないからね。ミミ・レダー監督も最近あまり映画撮ってないようだけどどうしちゃったのかな
>この作品は出来すぎって言われてるんだけど
『戦火の馬』もそういう風に言われてるんだよね。わし、出来すぎの話に弱いのかもしれん
Posted by: SGA屋伍一 | April 04, 2012 06:44 PM
「ノルウェーまだむ」ブログでコメントしてて
『戦火の馬』の感想を書いてしまい、失敗しました
詳しくは、そちらをご覧ください
そのつながりで…
こちらを読ませていただきました
そして、発見しました
まだむの『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』のタイトルにつけられた「大判タオルハンカチ必須」
これ矛盾表現ではありませんか!
えい! 「大判タオルハンカチ」だーーー
私が気に入っているのは
「JUMBO SHRIMP」
ロンドンにいるとき「shrimp」がちっちゃい海老で、「prawm」が大きい海老だと勉強しました
習ったことをすぐ使いたがる小学5年生みたいだけど、いいんです
高2の息子がいるおばちゃんでも、心は若いんです
「生きる屍」も「しかばね」なんて日本語がいい雰囲気出してて、好きです
腐りかけの果物は食べたことはありませんが
腐りかけの牛肉のステーキはおいしかった記憶があります
もともとが高い値段の肉だったから、おいしかったのかも知れません
もちろん値段が高いので腐れかけでも食べました
『ものすごくうるさくて ありえないほど近い』の映画の話が高級ステーキの話になってしまいました
まずいぞ、話がそれてしまった
ではこれにて☆12月22日雪の広島より
Posted by: きゅうり | December 22, 2014 06:32 PM
>きゅうりさん
どもども。以前一度来てくださったかな? まだ~むさんの『戦火の馬』の記事、あとで探してみますね(^_^;
「大判タオルハンカチ」 インパクトのある表現でいいじゃないですか! そんなタオルがぐしゃぐしゃになるほど泣いたら脱水症状が心配ですが
シュリンプとプラウンの違い勉強になりました。ちなみに英語では尻尾のあるサルの事をmonkeyといい、尻尾のないサルのことをapeというんだとか
今の時期はものの腐るのが遅くてご飯的にはありがたいですね。といって油断してると痛い目を見そうですが
心はどうぞいつまでも少女のままで! また気が向いたらお立ち寄りください~
Posted by: SGA屋伍一 | December 24, 2014 11:11 PM