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March 19, 2012

瀬戸際の花嫁 ラース・フォン・トリアー 『メランコリア』

Photo_2本日は第64回カンヌ国際映画祭でキルスティン・ダンストが主演女優賞に輝いたのに、そのあととんでもな発言をして顰蹙をかったラース・フォン・トリアー最新作『メランコリア』ご紹介します。

西暦201X年、人類は宇宙より迫りくる小惑星「メランコリア」により滅亡の危機を迎えていた。そんな騒ぎをよそに、美人コピーライターのジャスティンはいままさに恋人のマイケルと結婚の誓いを交わそうとしていた。だが式が進むにつれ、ジャスティンの胸には言い知れようのない不安が去来し始める。その不安は式にぎこちないムードをかもしだし、やがてジャスティンとマイケルの間には埋めようのない亀裂が生じてしまうのだった。

世界でも国民の幸福度が高い点で有数と言われるデンマーク。そのデンマークにあって「観ると気分が暗くなる」と言われる映画を作り続け、自信もうつ病を患っているトリアー監督(笑) 『ダンサー・イン・ザ・ダーク』『奇跡の海』『ドッグヴィル』『アンチクライスト』などわたしもタイトルはいろいろ知ってますが、あらすじを読んだだけで「もう十分です!」と言いたくなるような映画ばっかり。だのに今回思い切って挑戦してみたのは ①SFみたいだから ②予告で観たスローモーション映像がきれいだったから という理由によるものでした。
だのにスローモーション映像は冒頭の数分くらいで終わってしまうわ、そのあとはえんえんときまずいムードの結婚式が続くわで、「オレはいったいなにを観に来たんだ・・・」という気分になりました。でもまあ後半は一応SFになりましたし、いろいろ考えさせられるところもあったのでよしといたしましょう。体が大きければ大きいほど流れる時間の長さはゆっくりになる、という説があるそうですが、冒頭のスロー映像は地球の身になって時間を感じてみるとこんな感じ、ということなのかもしれません(にしては若干早めかしら・・・)

マリッジブルー(なのか?)に沈む妹ジャスティンと、世界の終末に怯える姉クレア。あくまで個人の中での苦悩と全人類の存亡が同列に対比されてるのがなんとも大胆な構成です。しょせん自分が消滅してしまえば周りの世界を感じることはできなくなってしまうわけですから、そう考えれば自分個人の消滅も世界の消滅も大差ないのかもしれません。
結婚式をぶちこわしにしてすでに「終わって」しまったジャスティンはメランコリアが近づくにつれ逆にウキウキとしてきます。メランコリアが来てくれれば、自分も苦しみから解放されるわけですから。そこで印象に残ったのはこんなシーン。世界が終わる前に毒をあおって楽に死のう、というクレアをジャスティンは「卑怯だ」といってなじります。受けるべき罰をズルして逃げることだとでも言うかのように。
ほかにも劇中で「人類は滅ぶべき存在」みたいなセリフがあったような。トリアー監督がカンヌで「ナチに共感してる」とか言ってしまったのは、要するに「人類の大半は滅んでいい存在」みたいなことを考えてたんじゃないですかねえ。ただメランコリアが人類に対する罰だとしたら、まきぞえくって滅ぼされるほかの動物さんに申し訳なくてなりません。
あともう一つ特に強く思ったのは、世界の終末を描いた作品にしてはやけに静かで淡々としてるな~ということ。劇場版『デビルマン』でも思いましたが(よりによってそれを出すか)この世の最後というのはよくあるディザスタームービーのようにドッカンドッカン騒がしいものではなく、ひっそりとしのびよるようにやって来るものなのかもしれません。

最初に書きましたが主演女優はキルスティン・ダンスト。この人も『ジュマンジ』や『スモール・ソルジャーズ』のころは本当にかわいかったなあ(わたくし、人の美醜をどうこう言えるツラではございませんが)。そういや彼女、『スパイダーマン』でも二度ほど婚約破棄とかしてませんでしたっけ。

Photo_3上映終了後、場内に観客達の「おれたち、最後までがんばってよく観たよな?」的な空気がどわっと流れた本作品。いささかヤケになっている人におすすめします。これまたぼちぼち公開終わりそうなんで、ご興味おありの方はお早めに。

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Comments

伍一くん☆
今回かなりナイスな文章(パチパチ)
絵はキルツティンの○ッ○○を描かなかったのね。(爆)

今まで何人かレビューを読んだけど、判ったような判らなかったようなが、伍一くんのですっきりしたよ。
監督のとんでも発言はともかく、きっとうつを患っている監督の願望なのかもね。
何もかもなくなってしまえっ!と、思う気持ちを代弁させたのかな。
うつの人は死にたいと思う気持ちと常に戦っているから、簡単に恐怖から逃れて、一足先に楽になろうとする姉を責めたんだね。

Posted by: ノルウェーまだ~む | March 21, 2012 at 10:14 AM

>ノルウェーまだ~むさん

おほめ頂きありがとうございます。若干よっぱらいながら書いてたんだけど…(バキpunch
○ッ○○ってなんだろう・・・? バッテラ?(白々しく)
うつ病の人も日本では15人に1人だそうで。本当に誰でもいつかかってもおかしくないんだとか。恐ろしい病気であります・・・

なにもかもなくなってしまえっ!と思いながらもこうやってカンヌで評価されるような映画を作ってしまうところはすごいですね(そのあとがあまりにもアレでしたが)
うつの人たちも「死にたい」という思いを抱えながら、必死にその衝動と戦ってるんでしょうね。「がんばれ」と言いたいところですがうつの人には「がんばれ」って言ってはいけないそうで。難しいなあ

Posted by: SGA屋伍一 | March 22, 2012 at 02:39 PM

こんにちは♪
なんかわからないけどハマった作品なのでした。
静かに世界の終末を向かえるところが気に入ったのかもしれません。ドッカンドッカンを観すぎ^^;
キルスティンについてはあまり関心がなかったんですけど、この作品はすごく良かった!!

Posted by: yukarin | April 09, 2012 at 03:51 PM

>yukarinさん

こんばんは~ お返しありがとうございます
最近あんまし正統派の?ディザスタームービーって少ないですよね。さびしいなあ、夏冬の風物詩だったのになあ
「宇宙人が攻めてくる」というのはやたらありますが

本作品の演技は見事でしたが、わたしにとってはやっぱりキルスティンはスパイダーマンの人ですcoldsweats01

Posted by: SGA屋伍一 | April 09, 2012 at 10:28 PM

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