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January 18, 2012

床板の隙間、お埋めします ジュリオ・マンフレドニア 『人生、ここにあり!』

Jinsei2例によって首都圏から数ヶ月遅れての上映作。シネスイッチ銀座にて12週間というロングランを達成した実話に基づくイタリア映画『人生、ここにあり!』、ご紹介します。

1983年、労働組合に所属していた熱血漢ネッロはやりすぎたために部署の移動を命じられる。彼が飛ばされた場所は、精神病患者たちによって作られた名ばかりの労働組合だった。しかしここでもネッロはやり方を変えず、極めて単純な仕事しかしていなかった組合員たちに、もっと高度で儲かる商売を始めようと説き伏せる。個性的な面々を「市場に挑戦させる」のは容易ではなかったが、ネッロはあきらめない。やがてメンバーのジージョとルカに床張りに抜群のセンスがあることがわかり、それが注目を浴びたことにより組合にはたくさんの仕事がまい込んでくるのだが・・・

1978年、イタリアではバザーリア法により精神病院が徐々に閉鎖されていきました。彼らを病院に閉じ込めておくのは人権的に間違っているととなえた、精神病学者フランコ・バザーリア氏の提唱した運動でした。この運動が実を結び、現在イタリアでは精神病院というものが存在しないそうです。で、この映画はその運動が浸透し始めた時代を舞台としております。

真っ先に思い出したのは『レインマン』でしょうか。まるで様々なタイプのレインマンがたくさんいるようなお話。そりゃ大変だ・・・と誰もが思うことでしょう。しかしネッロはひるむことなく彼らをまとめ、ひっぱっていきます。映画ゆえに脚色はあるでしょうけど、まず患者たちをひっぱっていくネッロのキャラクターが心地いいですね。目標を見つけるとそこに向かってまっしぐらに突き進んでいくような男です。そんな性分ゆえに周りが見えなくなることもあるものの、接する人すべてに惜しみなく温かな愛情を注ぐ懐の広い人間でもあります。

組合員たちが見出した天職が、「廃材を利用した床板張り」というのがまたなんとも象徴的です。あまった木切れというのは多くの人にとっていらないもの、取るに足りないものなのかもしれません。しかしそれらを調和良く組み合わせることで、床面がまるで芸術品のように変わってしまう。一見さえないような人たちでも、力を合わせることで何かしら才能を発揮していく。そんな風に床板のアートと組合員たちが重なって見えてきます。

ただ楽しく仕事だけできていれば何も問題ないのでしょうけど、なかなかそうはいかないのが人生というもの。心をわずらっている人といえど、煩悩もあれば恋もするわけです。それがやがて哀しい事件へとつながっていきます。
門外漢のわたしが言うのも恐縮ですが、精神を病んでしまう人というのは、きっと人一倍心がデリケートな人なんだと思います。わたしたちだって若かりしころは心無い言葉・態度に海より深く傷ついたり、自分の情けなさに死にたくなったことが何度もあったはず。で、大抵の人はいつしか自分の心を鈍化させることによってそれらのショックを乗り越えていくわけですが、幾つになってもそうした衝撃に慣れないひとたちもいるわけで。美空ひばりの歌じゃありませんが、♪人生って哀しい~~~もので~~~すね~~~crying

とはいえ作品では一方で人生も捨てたものじゃない、ということも描かれております。繊細で傷つきやすい人たちはどうしたら生きていけるのか? それこそ寄木細工のように身を寄せ合って生きていけばいいのです。それは何も恥ずかしいことではありません。

原題は『Si può fare』。どうもイタリア語で「やればできる」という意味らしいです。おそらくこの邦題は『素晴らしき哉、人生!』とか『いまを生きる』とかを意識してつけたんではないかな~ 特に『いまを生きる』とはストーリー的にも色々重なるところがって、あの映画がオールタイム・ベストの一本であるわたしなどは終盤鼻水が駄々モレ状態でした。配給がエスパース・サロウさんということもあって先の『メアリー&マックス』にも通ずるものを感じました。心を薬やら治療やらで強引に変えようとするのではなく、その人のあるがままを受け入れてあげよう、という姿勢などにね。

Jinsei1『人生、ここにあり!』はジョイランド沼津であさってまで上映。また出たよ全然役に立たない映画情報。他の場所でも大体終わってしまったかな? ま、そのうちDVDも出ると思うのでご興味持たれた方はぜひご覧ください。


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Comments

バザーリア法も日本で同じことは出来ないだろうねぇ。イタリア人らしい大らかさや、アバウトさがあって成立する気がするよ。
日本じゃ1分遅れても許されないもん(苦笑)
『今を生きる』私もオールタイムベストの一本だなー。ロビン・ウィリアムスかぁ…久々にもう一回みようかしらん。

Posted by: KLY | January 18, 2012 at 11:17 PM

>KLYさん

こんばんはー
イタリア人、おおらかですよね。残念ながら例の客船の事故はそのおおらかさが裏目に出てしまった感じですが・・・
ま。こういう方面のおおらかさは日本ももっと見習ってほしいところ
KLYさんも『いまを生きる』、お好きだったのですね。あれももうかれこれ20年以上前の映画ですわなあ(笑)
若かりしころのイーサン・ホークなんかも出てるんですよね

Posted by: SGA屋伍一 | January 19, 2012 at 11:05 PM

SGAさん、こんばんは。
『いまを生きる』か〜、懐かしいですね。私そう言えば、ここで初めてイーサン・ホークを見たのでした。これ、すごく映画の評判が良くて、思わず先に原作を買って読んだりしました。

この作品、すごく思いきりが良くて清々しい物語でしたよね。変に同情することも甘くすることも一切無くて。ものすごい感動した、素敵な物語でした。こういう作品に一つでも多く会えるのが、映画好きとしての楽しみです。

Posted by: とらねこ | January 23, 2012 at 12:58 AM

>とらねこさん

こんばんばん。おかえしありがとうございまする
『いまを生きる』、リアルで観た時はロビン・ウィリアムスしかわからなかったな~ というか、ロビンさんもこの映画で覚えたんだったかな?
そちらへのコメントで『レナードの朝』をひきあいに出したけど、そういえばあれもロビン映画だったね
原作は映画から少し経ってわたしも買いました。確かそこそこロングセラーだった気がする

>変に同情することも甘くすることも一切無くて。

そうですね。ネッロさんは彼らをしごく当たり前に普通の人間として扱い、接しているのだけど、それは実はなかなか難しいことで
彼を通して監督のそんなまっすぐな人となりが感じられました
といって四角四面になるわけでもなく、随所にユーモアがあふれているところもいいですね

Posted by: SGA屋伍一 | January 24, 2012 at 12:19 AM

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Tracked on January 18, 2012 at 10:59 PM

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’08年、イタリア 原題:Si Puo Fare 監督・脚本:ジュリオ・マンフレドニア 製作:アンジェロ・リッツォーリ 原案・脚本:ファビオ・ボニファッチ 撮影:ロベルト・フォルツァ 音楽:ビビオ・デ・スカルツィ、アルド・デ・スカルツィ キャスト:クラウディオ・ビジオ、アニータ・カプリオーリ、アンドレア・ボスカ、ジョバンニ・カルカーニョ、ミケーレ・デ・ビルジリオ、カルロ・ジュセッペ・ガバルディーニ はみ出し材木たちの底力。 最高に素敵な人生賛歌でした!甘いばかりでない苦味を持たせたとこ... [Read More]

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