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January 29, 2012

ブリキの仮面 矢口史靖 『ロボジー』

Photo『ウォーターボーイズ』『スウィングガールズ』で知られる矢口史靖監督の最新作はなんとロボットもの!・・・と思ったら、あれ? なんか微妙に違う? というわけで現在公開中の『ロボジー』、紹介します。

木村電気の窓際族の社員三人組は悩んでいた。社長から突如としてロボットを作れと言われ、なんとかそれなりにこしらえたものの、不慮の事故でロボットが大破してしまったからだ。展示会の期日まであとわずか。悩みぬいた末に三人が下した決断とは・・・
ところ変わって、しがない独居老人の鈴木重光は苛立っていた。老人会の芝居でいい役が回ってこなかったばかりか、腰までいためてしまったからだ。そんな鈴木の目に入ったのは「着ぐるみショーのスタッフ募集」という広告だった・・・

一言でいうと『ロボコップ』『アイアンマン』を日本で作るとこうなる、みたいな話。いやいやいやいや・・・ それはないか。
キャッチコピーが奮っています。「そのロボットは変形しない。戦わない。働きもしない」 そんなのは・・・ そんなのはロボじゃないよ!! とすさまじく理不尽な思いを感じはしましたが、タイトルに「ロボ」とついている以上、わたしが観に行かないわけにはいかないでしょう・・・

で、実際に観てみて思ったのは、けっこう三谷幸喜の作風を思わせるところがあるなあと。三谷作品もそうですけど、メインの登場人物が等身大の問題児ばっかり。木村電気の三人は保身のためにその場しのぎのウソをつきまくるし、鈴木さんは三人組をなかば脅迫して贅沢をしまくるし、ヒロインの女の子は周りがひくくらいロボジー(ニュー潮風)に愛情をアピールしまくりだし・・・ でもまあ、どなたも憎めないというか、愛すべき問題児なんですよね。そんな問題児たちが少しだけ成長して、いつの間にか思いを一つにして難局を乗り切っていくという。
三谷作品と違うのはあちらがとにかく騒々しいのに対し、こちらは全体的にまったりとしてシュールなところ。キャラクターがわかりやすく一致団結するのではなく、ささやかな思いやりが交差しながら実を結んでいくところもちょっと違いますね。
その乗り越えていく難局が「事実の隠蔽」(笑)ということにひっかかるの人もいるやもしれません。でも考えてみれば大半の映画も壮大なウソみたいなもんですし。みんなウソと知りつつ観ているわけですが、少なくとも鑑賞中は「これ、作り話だよね」ということを意識させちゃいけないわけですよね。そんな風に夢を与えてくれる罪のない「だまし」ならば、別にいいんじゃないかな~とわたしなどは思うわけですが。

あとこのロボジー、観ている側としては当然鈴木さんが中に入っているということを知ってるわけですが、あの格好でコキコキ動いていると本当にロボットというか別の生き物に見えてくるから不思議です。いわゆるひとつの「仮面の力」ってやつなんでしょうか。

それにしてもこんなばかばかしい企画よく思いつきましたよね~ しかも主演はおじいさんで、助演もさえないような連中ばかり。これであんな大々的な公開規模って、無謀にもほどがあるだろ・・・とせせら笑っていたのですが、驚くべきことに第一週の成績はあの『ミッション・インポッシブル』最新作を蹴落としての堂々第1位。・・・本当に世の中なにがヒットするのかさっぱりわかりません。

090815_114142ちなみに矢口監督はこの作品を思いついたきっかけを「二足歩行ロボットを見ていて、中に人が入ってるんじゃないか」と語っています。実は前からわたしもそう思ってたんですよ!!
現在の二足歩行ロボットがどこまで進んでるかについては、「アシモ」「PET MAN」で検索すると色々出てきますんでご覧ください。まあアシモのキモさについては直に見てみないとわからないかもしれませんが。

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January 24, 2012

財団Xの逆襲 『仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦MEGA MAX』

120123_190028あっ またモタモタしてるうちに大体公開終わってる! てへぺろbleah
それでは今年で三年目となりました平成ライダーのバトンタッチ映画『仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦MEGA MAX』ご紹介します。イヤミのように長いタイトルだ・・・ しかも最後の方はつい最近どっかで聞いたことあるぞ? ま、あらすじいきましょうか・・・

無限に広がる大宇宙・・・ 物語はその宇宙より謎の物体が飛来してきたところから始まる。
数ヶ月前、仮面ライダーオーズとしてすべてのグリードを封印した火野映司は、鴻上ファウンデーション会長の要請により日本に帰国する。鴻上は新たなメダルの開発中に、時空の扉を開いてしまい、戦闘本能の塊のような怪人「ポセイドン」を呼び寄せてしまったのだ。新たな敵に立ち向かう映司の前に現れる一人の男。それは決戦で消滅したかと思われた映司の相棒「アンク」だった。

一方天の川学園で学園祭を楽しんでいた仮面ライダーフォーゼ=如月弦太郎は、突如として空から落ちてきた謎の少女と遭遇する。生徒手帳から彼女の名は美咲 撫子(みさき なでしこ)と知れるが、やることなすこと調子はずれなことばかりで、弦太郎たちは振り回される。そんな中、学園に怪人ダスタードたちが乱入。撫子を狙っていると知った弦太郎は彼女をかばって戦うが、そのとき驚くべきことが起きる。

え~、もう今回はほぼ公開も終了しているということで、よかったと思ったところをバンバンネタバレしていきます。開き直ってどうもすいません。

wave 冒頭で世界各地で活躍している七人ライダー。これはもうどう考えても『仮面ライダーSPRITS』ですね。はるか昔の『ゴレンジャーVSジャッカー電撃隊』で、「ヒーローたちは各国で戦ってるんだ!」と世界地図に彼らの写真が貼られていましたが、それがようやっと映像で観られたと思うと感無量です。

nightそして今回ライダーたちの前に立ちはだかるのは「財団X」。この組織前々作の『仮面ライダーW』終盤に登場し、『オーズ』の世界にもちょっかいを出しているような描写があったのですが、結局その後どうなったのかはうやむやになっておりました。各ライダーの世界をつなげるのにすごく便利な存在なのにもったいないなあ、と思っていたら、本作品で復活。21世紀のショッカーとしてぜひ末永く暗躍してほしいものです。

wave脚本は『フォーゼ』メインの中島かずきさん。他の人が書いたものをきちんと観ていて、それを覚えているところがえらいなあと思いました。それがよく現れているのがW・オーズ・フォーゼが一同に会した場面のセリフ。「弦太郎くん、友達できた?」「お前最初に会ったとき言ったよな。ライダー同士は助け合いだって」 そんなんわたしも忘れてましたよ!

nightお父さんへのサービスか知りませんが、今回やけに女性のフトモモがまぶしゅうございました。『オーズ』ではおなじみの戦う秘書を演じる有末麻祐子さんが、『フォーゼ』では敵幹部を演じるスーツアクトレス人見早苗さんが、惜しげもなくその美脚をブンブン振り回す! すばらしいですね。人見さんは本作限定のキャピキャピライダー「なでしこ」の中にも入っていたというから驚きです。

wave子供たちへのサービス企画とはいえ、二大ライダーの共闘がいつもとってつけたような感じなのが、この『MOVIE大戦』シリーズへの不満でした。しかし今回は上手にインターミッションを挿入することで、フォーゼとオーズ、それぞれのストーリーが自然に絡み合っておりました。特にクライマックスのシャトル上でのタッグは、ちょっとCG臭かったけど(笑)、半端ない盛り上がりぶりでした。できれば次回もこんな感じでいってほしいものです。

120123_182135くりかえすようですが、『仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦MEGA MAX』は一部の劇場をのぞいてほぼ終了・・・ 代わりと言ってはなんですが、現在はこれまたヒーロー夢の共演である『海賊戦隊ゴーカイジャVS宇宙刑事ギャバン』が公開中。こちらもなかなか燃えます。
左画像は久しぶりに引っ張り出してきた『オーズ』のフィギュア。これらは頭部・胸部・下半身の三つに分解でき、色んな組み合わせを楽しむことができます。そういうのが五体あったとしたら、果たして幾通りの組み合わせができるでしょうか・・・ 数字に強い人、よろしくお願いします。


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January 18, 2012

床板の隙間、お埋めします ジュリオ・マンフレドニア 『人生、ここにあり!』

Jinsei2例によって首都圏から数ヶ月遅れての上映作。シネスイッチ銀座にて12週間というロングランを達成した実話に基づくイタリア映画『人生、ここにあり!』、ご紹介します。

1983年、労働組合に所属していた熱血漢ネッロはやりすぎたために部署の移動を命じられる。彼が飛ばされた場所は、精神病患者たちによって作られた名ばかりの労働組合だった。しかしここでもネッロはやり方を変えず、極めて単純な仕事しかしていなかった組合員たちに、もっと高度で儲かる商売を始めようと説き伏せる。個性的な面々を「市場に挑戦させる」のは容易ではなかったが、ネッロはあきらめない。やがてメンバーのジージョとルカに床張りに抜群のセンスがあることがわかり、それが注目を浴びたことにより組合にはたくさんの仕事がまい込んでくるのだが・・・

1978年、イタリアではバザーリア法により精神病院が徐々に閉鎖されていきました。彼らを病院に閉じ込めておくのは人権的に間違っているととなえた、精神病学者フランコ・バザーリア氏の提唱した運動でした。この運動が実を結び、現在イタリアでは精神病院というものが存在しないそうです。で、この映画はその運動が浸透し始めた時代を舞台としております。

真っ先に思い出したのは『レインマン』でしょうか。まるで様々なタイプのレインマンがたくさんいるようなお話。そりゃ大変だ・・・と誰もが思うことでしょう。しかしネッロはひるむことなく彼らをまとめ、ひっぱっていきます。映画ゆえに脚色はあるでしょうけど、まず患者たちをひっぱっていくネッロのキャラクターが心地いいですね。目標を見つけるとそこに向かってまっしぐらに突き進んでいくような男です。そんな性分ゆえに周りが見えなくなることもあるものの、接する人すべてに惜しみなく温かな愛情を注ぐ懐の広い人間でもあります。

組合員たちが見出した天職が、「廃材を利用した床板張り」というのがまたなんとも象徴的です。あまった木切れというのは多くの人にとっていらないもの、取るに足りないものなのかもしれません。しかしそれらを調和良く組み合わせることで、床面がまるで芸術品のように変わってしまう。一見さえないような人たちでも、力を合わせることで何かしら才能を発揮していく。そんな風に床板のアートと組合員たちが重なって見えてきます。

ただ楽しく仕事だけできていれば何も問題ないのでしょうけど、なかなかそうはいかないのが人生というもの。心をわずらっている人といえど、煩悩もあれば恋もするわけです。それがやがて哀しい事件へとつながっていきます。
門外漢のわたしが言うのも恐縮ですが、精神を病んでしまう人というのは、きっと人一倍心がデリケートな人なんだと思います。わたしたちだって若かりしころは心無い言葉・態度に海より深く傷ついたり、自分の情けなさに死にたくなったことが何度もあったはず。で、大抵の人はいつしか自分の心を鈍化させることによってそれらのショックを乗り越えていくわけですが、幾つになってもそうした衝撃に慣れないひとたちもいるわけで。美空ひばりの歌じゃありませんが、♪人生って哀しい~~~もので~~~すね~~~crying

とはいえ作品では一方で人生も捨てたものじゃない、ということも描かれております。繊細で傷つきやすい人たちはどうしたら生きていけるのか? それこそ寄木細工のように身を寄せ合って生きていけばいいのです。それは何も恥ずかしいことではありません。

原題は『Si può fare』。どうもイタリア語で「やればできる」という意味らしいです。おそらくこの邦題は『素晴らしき哉、人生!』とか『いまを生きる』とかを意識してつけたんではないかな~ 特に『いまを生きる』とはストーリー的にも色々重なるところがって、あの映画がオールタイム・ベストの一本であるわたしなどは終盤鼻水が駄々モレ状態でした。配給がエスパース・サロウさんということもあって先の『メアリー&マックス』にも通ずるものを感じました。心を薬やら治療やらで強引に変えようとするのではなく、その人のあるがままを受け入れてあげよう、という姿勢などにね。

Jinsei1『人生、ここにあり!』はジョイランド沼津であさってまで上映。また出たよ全然役に立たない映画情報。他の場所でも大体終わってしまったかな? ま、そのうちDVDも出ると思うのでご興味持たれた方はぜひご覧ください。


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January 16, 2012

十字架のシンメトリー レフ・マイフェスキ 『ブリューゲルの動く絵』

100906_1908542012年最初に観た映画。しょっぱなからずいぶん風変わりな作品を観てしまいました(笑) 巨匠の名画を人間を使って再現した『ブリューゲルの動く絵』、ご紹介します。

舞台は16世紀のベルギーっぽい世界。映画はブリューゲルがたくさんの人々を前に、キャンバスに向かって筆を動かしているところから始まります。巨大な風車で粉をひく老人。わんぱく盛りの子供たちとその母親。ロバを飼っている慎ましげな若夫婦。人々を虐げる異端審問官たち。彼らを苦々しく思う領主らしき男・・・
作品はそんな風に当時いたであろう人々の日常を淡々と描いていきます。
ところが中盤のあたりで突然キリストの受難劇が始まってしまうのでビックリします。16世紀ベルギー風の背景の中で(笑)

え~、実はこの映画、はっきりとした元ネタがありまして。それはブリューゲルさんが1564年に描いた『十字架を担うキリスト』という絵です。どういう絵かというとこういう↓絵。
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キリストは画面の中央あたりにちっちゃく描いてあります。なぜこんな風に目立たなく描いてあるのか? それににもちゃんとした理由があるのです。ピーデル・ブリューゲルさんは農民の生活風景をよく題材にしたことで知られております。またこの画家は大変信心深い人で、宗教的なメッセージを込めた作品を多く世に残しました。代表作『バベルの塔』もそのひとつかと。
映画は絵の中の人々に息吹を与えることで、ブリューゲル氏が当時の世の中をどのように思っていたのか、まったりと解き明かしていきます。ちなみに映画の原題は『The mill and the cross』。風車(mill)と十字架(cross)がこの絵を読み解くポイントになっているのですね。

まーですから世に多くある主人公がいてお話に起承転結があって・・・ というほとんどの映画とは趣を異にしております。しかしわけのわからん絵をこうやって再現することで意味を探っていこう、という試みはなかなかに独創的で面白いじゃあーりませんか。加えてばかでっかい風車がゴリゴリと動いている様子や、明らかに書割のような背景の中で動いている人々、時間も場所も遠く離れた16世紀ベルギーの生活のひとつひとつになにやら引かれるものを感じました。

ただ自分、ブリューゲルさんって農民画家であり宗教画家である以前に、「へんてこな生き物」を描く人というイメージがあったんですよね。どういう生き物かというとこんなの↓
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いやあ、吹っ切れてますね(笑) ブリューゲルを題材としているということで、このへんてこな生き物たちも出番があるのでは・・・と期待していたのですが、残念ながら今回は架空の生き物は出てきませんでした。
どなたかこれらの生き物を使って、不気味かわいいアニメーションを作ってくれませんかね~ 

多少人を選ぶきらいはあるものの、美術展などが好きな人はそれなりに楽しめるかと思います。『ブリュ-ゲルの動く絵』は現在渋谷はユーロスペースを中心に公開中。全国の他の劇場にも順次巡回していく予定だそうです。


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January 10, 2012

ドバイ大作戦 ブラッド・バード『ミッション・インポッシブル:ゴースト・プロトコル』

120109_181748近年はすっかりドラマ『スパイ大作戦』の映画化というより、トム・クルーズの看板シリーズとなってしまった『ミッション・インポッシブル』。本日は暮れより話題を呼んでいるその最新作をご紹介します。

どんな困難な作戦も可能にすると言われる諜報組織IMF。そのIMFにくだされた最新の指令は、狂気の科学者コバルトの手に、核ミサイルの発射コードが渡されるのを防げ、というものだった。だがIMFのメンバーはコバルトが雇った暗殺者に倒され、コードの記されたファイルはまんまと奪われてしまう。IMFは失地を回復するため最も優秀なエージェント、イーサン・ハントに出動を要請する。だがそのときイーサンのいた場所はロシアの刑務所の中だった。

監督は『アイアン・ジャイアント』や『Mr.インクレディブル』のブラッド・バード。『インクレディブル』も後半はなかばスパイものであったところから、バード監督がこの種のジャンルに愛着を抱いていることがうかがい知れます。そのバード監督の趣味ゆえか、今回はこれまでよりもドラえもんが出すような「秘密道具」がいろいろ目だってました。
以下、それらの秘密道具がどれくらい実際に使えそうか適当に検証してみました。完全ネタバレなんでご了承ください。

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・アバンタイトルで出て来た瞬間膨張クッション
これは普通に災害現場などで使えそうです。90点

・表ウラ両面使用可能上着 
コスプレパーティーや素人芝居などで便利そう。器用な人ならちゃっちゃと作れそうだし。80点

・ステルス機能着きスクリーン
トムとペッグがクレムリンで必死に動かしていたアレです。これは使いづらそうな上に、それこそ盗みに入るときくらいしか使えなさそうだなあ。技術としては見事だが。30点

・貨物列車内のブリーフィングルーム
こういうの、少年の冒険心が燃え上がるシチュエーションですよね。ただ時間を逃すとあっという間にどっかへ行ってしまいますし、線路に入るときにJRの職員に怒られるかもしれません。20点

・高性能ゴムマスク製造機
これもコスプレパーティーくらいでしか使い道がなさそう。そして劇中では結局役に立ってなかった。30点

・カベのぼりグローブ
これまでで一番実用性の高いアイテムではないでしょうか。高所での工事とか塗装でとても役に立ちそう。問題は故障が多そうなところ。80点

・プリンター機能付きコンタクトレンズ
便利には便利ですが・・・ うっかりよけいにまばたきすると、どうでもいいものがプリントされてしまいそう。60点

・磁石でプカプカ空中で浮かせる装置
狭いパイプの中で作業する時などに使えそうですね(つい自分の仕事に結び付けて考えてしまいますね・・・)。もろに電磁波を浴びそうなんですが体に悪影響とかないのでしょうか。70点


あとMI名物とも言える派手な飛び降りシーンもいくつかありましたね。こちらは難易度順にチェックしてみましょう。

・ベルトを使ってロープウェイ状に滑り降りるシーン
これはちょっと運動神経のいい人ならがんばればできそう。イーサン・ハントというよりジェイソン・ボーンがやりそうなアクション。難易度50点

・立体駐車場で車ごと落下するシーン
高さとエアバッグの性能と度胸次第というところでしょうか。難易度200点

・ブルジュ・ハリーファで上の階からジャンプ→おっと、ロープの長さが足りないぞ?→ナイフでブチッ
死ぬから。難易度10000点


さて、マイフェイバリット・ディレクターのブラッド・バード作品であり、実際に十分楽しませてもらった『MIGP』。ただ個人的にはやっぱり第一作の方が好きですかね。あの作品の、頼りなげな若者が絶対絶命の窮地に追い込まれ、起死回生のチャンスを必死でうかがう。その最中で奏でられるロマンスと傷心・・・ そういうところがツボでして。
まあ今回も相当なピンチなんですけど、それでも三作目まで観てますと、もうイーサン・ハントならどうにかするだろ、とどこか安心してる自分がいます(笑)
それにしても一作目で「やめる」って言ってたイーサンが二作目ではやる気まんまんだったり、二作目でアツアツだった恋人が三作目では影も形もなかったりと関連性の薄い本シリーズで、まさか前作の「結婚してた」という設定が生きていたとは思いませんでした。てっきり今回もスルーされるものとばかり(笑)。これはぶっちゃけプロデュースが三作目のJ・J・エイブラムズだからなんでしょうね。でもまあその辺の設定を使って、スパイならではの甘ズッパイお話にもっていったのはなかなかうまいな、と思いました。

20060527203835公開前はトムトムはこれをもって主役をジェレミー・レナーにバトンタッチするのでは・・・なんて噂も流れてましたが、やっぱりこれだけのヒットになるのはトムトムが主演だからこそ。イーサン・ハントの活躍はまだまだ続きそうです。だいたいレナーは次のボーンをやるみたいだしね(笑)


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January 07, 2012

けだものだもの 望月三起也・羽住英一郎 『ワイルド7』

120107_202925かつて日本中のガキんちょのハートを熱くさせた「あいつら」が、装いも新たに21世紀のスクリーンに帰ってきた・・・ 本日は望月三起也原作の名作コミックを、『海猿』シリーズの羽住英一郎が映画化した『ワイルド7』、ご紹介します。

現代日本。頻発する凶悪犯罪を解決するために、警視庁は特殊チーム「ワイルド7」を秘密裏に結成する。やはり元犯罪者たちで構成されたそのチームは、冷徹な司令官草波のもと、通常の警察では手に負えない無法者たちを次々と「退治」していく。だがある時、ワイルドの標的であった犯罪者を、彼らに先んじて射殺する者が現れた。リーダーの飛葉はそのハンターを追うが、正体は意外にも・・・

『ワイルド7』はいまは亡き(涙)『少年キング』誌上において1969年から1979年にかけて連載された大人気漫画。完結後も『新ワイルド7』『伝説の男 飛葉』といった続編がぽつぽつと描かれています。わたしが知ったのは中高生時代『新ワイルド7』がヒットして注目を集めていたころ。その豪快なアクションと爽快な逆転劇にすっかり夢中になり、新旧の単行本を足を棒にして探し回ったのはいい思い出です。

さて、今回の映画化ですが・・・よくも悪くも大味な印象でした(笑) マシンにしろ火薬の量にしろとにかくドカスカ派手に飛びまくるのですが、ま、ストーリーの方は特に意外性もなく勢いにまかせて進んでいく、といった具合。
原作も派手で強引なのがウリな話ではありましたが、飛葉が散々痛めつけられたり、逆転への伏線を丁寧に張ってあったりして、クライマックスにおけるカタルシスを極限まで高めるような工夫がなされていました。
あと原作では時々「四畳半のお茶の間」的なムードが流れたりして、それがアクションの合間の箸休めみたいになってたのですが、今回の映画ではほとんどユーモアらしいものがなかったのも残念です。

クサすのはこれくらいにして(笑)、いい点も。望月先生はこれまで映画化を許可しなかった理由について「バイクを七台そろえてこなかった」点をあげておられました。『ブルースブラザーズ』なんか数限りなく車をぶっこわしてたけど、やっぱほとんどの現場は資金的にタイトなものなのですね・・・ というわけでまずとりあえずバイク七台の併走を再現できたことはえらいです。トレーラーからビョーンと飛び出るシーンや、無茶とは思いつつもそのトレーラーで敵の本拠地につっこんでいくシーン、建物の中を縦横無尽に走っていくシーンなんかは迫力ありましたね。ラストカットも○○○○につっこんでいくというのは、いままでなかった絵じゃないでしょうか。

ラスボスと相対したときにモタモタとしゃべりだすのは、邦画の悪いくせだな・・・とも思いましたが、これはもしかしたら歌舞伎からの伝統なのかもしれません。いろいろ弱いところはありますが、ぜひこれを土台にして、次はアクションもストーリーもグレードアップしたものを作っていただきたいです。

120107_203027映画化を受けて、マンガの方も久々に『ワイルド7R(リターンズ)』が始まったとのこと。今回の最大の功績はこれかもしれません(笑)
望月先生の言葉をもうひとつ引用しますと「なかなかがんばってたがエロが足りなかった。次に期待!」とのことでした。そんな『ワイルド』が観たいという方はぜひ劇場へ足を運ばれてみてください。若干客入り厳しいようですので・・・


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January 05, 2012

あの鍵を回すのはあなた ジル・パケ=ブランネール 『サラの鍵』

120105_122959さてさて・・・ 新年あけましてのようやくの更新は、一昨年の東京国際映画祭で最優秀監督賞と観客賞のW受賞を果たしたこの作品。『サラの鍵』、ご紹介いたします。

1942年7月、ナチス占領下のパリで「ヴェルディブ事件」という惨事が起きた。市内にすむユダヤ人は同胞だったはずのフランス人の手で一斉検挙され、自転車競技場(ヴェルディブ)へと押し込められた。その中に幼い少女サラと家族の姿もあった。サラは警察が家に押しかけてきたとき、慌てて納戸に隠してきた弟ミシェルのことを案じていた。納戸を開けてミシェルを助け出せるのは、鍵を持っている自分だけ。早くアパートへ戻らなければ・・・ だがその思いとは裏腹に、サラは遠く離れた収容所へと連れて行かれる・・・ 時は移って現代。腕利きのジャーナリストとして働いているジュリアは、ヴェルディブ事件について調べているうちに、自分が越してきたアパートにかつてサラの一家が住んでいたことを知る。

年明け早々なんですが、重ための映画です。残酷なシーンはほとんどないのに、サラや家族たちを見舞う過酷な現実にキリキリと心が痛みます。交互にはさまれる平和な現代のパートに入ると、ほっと一息ついたりして。
『サラの鍵』はおそらく文芸作品に属する映画かと思われますが、同時にミステリーとしての一面も持っています。現代に生きるジュリアの眼を通し、サラとミシェルは果たしてどうなったのか、わたしたちは固唾を呑んでその謎が明かされていく様を見守り続けます。

以下は軽くネタバレしていくのでご了承ください。


わたしが特に強く記憶に残ったのは、次の二つの言葉でした。ひとつは資料保管所で働いている老人がジュリアに言う「わたしの仕事は、数字に光をあてることだ」という言葉。たくさんの犠牲者たち一人一人がどんな名前で、どんな人間だったのか、それを掘り起こしていく作業のことを彼はこう語っていました。
もうひとつは事件を聞いて嘆く同僚に対して、「あなたがその場にいたらどうした?」というジュリアの言葉。ジュリアが取材した老婦人は「当時はユダヤ人の悪い評判ばかりが立っていた」と答えます。加えてナチスに異を唱ええれば自分たちが罰せられるという恐怖もあります。
時代も遠く離れた今であれば、「許せないことだ」と怒りを燃やすのはごく簡単なことです。しかし果たして自分がそのときそこにいたら同じ態度でいられるでしょうか。

そんな疑問に対し慰めを与えてくれるのが、サラを助けてくれる兵士と農夫の夫婦。兵士は最初サラを乱暴にふみつけますし、夫婦は邪険に追い払おうとします。かばえば自分たちに危害が及ぶのですから、当然といえば当然の態度かもしれません。しかしその少女の名前を知ったとき、自分と同じ感情を持つ人間だとわかったとき、彼らはためらいながらも危険を冒してまで少女をかばいます。それでも見捨てる人もいるでしょうけど、自分はできればかばえる人間でありたいと思いました。

歴史を学ぶということは、きっとデータの羅列を暗記することではなく、縁もゆかりもなかった名前たちに意味を付し、彼らの生きた証を残していく。そういうことなのかな・・・なんてことも思いました。

120105_123131『サラの鍵』は現在新宿武蔵野館、銀座テアトルシネマを中心に公開中。全国の他の劇場でも順次公開予定とのこと。大好評につき、銀座テアトルではモーニングショーの追加が決定したとのこと。少し毛色は違いますが『ライフ・イズ・ビューティフル』などに感銘を受けた方におすすめかな・・・


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