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December 19, 2011

燃える!お坊さん ベニー・チャン 『新少林寺』

Photo♪しょ~り~ん しょ~り~ん 1982年に公開されジャッキー・チェンと並んでカンフー・ブームを巻き起こしたあの映画が、装いも新たに帰ってまいりました。『新少林寺』ご紹介いたしましょう。1912年の中華大陸。辛亥革命はなったものの、国内は軍人たちの勢力争いが増すばかりで、いまだ混乱の只中にあった。その一人である侯杰(こうけつ)は、敵将を武術の誉れ高い少林寺に追い込む。僧侶たちが止めるのも聞かず侯杰は敵将を撃ち殺し、さらには「少林寺、恐れるに足りず」と嘲りながら寺を去っていった。だがおごれるものは久しからず。侯杰は信頼していた部下に裏切られ、命からがら居城を逃げ出すことになる。その道中、最愛の娘勝男(しょうなん)は重傷を負う。娘を救おうと侯杰が逃げ込んだところは、皮肉にもあの少林寺であった。

ちなみにわたし、三十年前の『少林寺』は観たことありません。どんな話か調べてみましたが、隋末の時代を舞台にしたオーソドックスな復讐劇のようです。隋末というと日本では大化の改心くらいの時代。今回の作品と実に1300年以上もの開きがあります。開きすぎだろ そんな時系列からもわかるように、無印とは直接の関係はないようです。共通してるのは少林寺が舞台ってことだけじゃないでしょうかね。
お話的にも最近の香港武侠映画って、一昔前とはちょっと変わってきてるような。そんなに詳しくはありませんが、かつてはわかりやすい勧善懲悪ものがほとんどで、悪いヤツはとことん悪く、ヒーローはどこまでも強く正しい。そんなカラーだったと思います。
それがなんとなく変わってきたのが『HERO』(2002)あたりからでしょうか。この作品では「悪と思えるものが必ずしも悪とは限らない。誰かを殺せばそれで解決するわけではない」という思想のもとに作られております。『墨攻』(2006)、『レッドクリフ』(2008ー2009)、『ウォーロード/男たちの誓い』(2009)、そして今年日本公開された『孫文の義士団』もそんな風に、よくいえばテーマ的に深い、悪く言えばスカッとしない作品に仕上がっております。

さて今回の『新少林寺』ですが、冒頭では誰が主人公なのか全然わかりません。観ているうちに「うーん、この人本当ににくったらしー!」と思ってた侯杰が実は主人公だったと知ってちょっとびっくりしました。この極悪非道にも思えた男に、だんだんと同情させ、感情移入させていくところがこの映画のうまいところです。高慢で不遜だった侯杰が、絶望の底に突き落とされ、ゼロからの状態で少しずつ人間として成長していく。個人的には『西遊記』や『宮本武蔵』の序盤などを思いだしました。その辺は名優アンディ・ラウの力もあるかもしれません。眉根にしわを寄せて険しい眼光を放っていた彼が、子供たちやお坊さんやジャッキー・チェンと触れ合っていくうちに本当に優しげで暖かな笑顔を見せるようになっていく。この過程がわたしがこの映画で一番好きだった部分です。特に雪の降りしきるお寺で「寒いから一緒に運動しよう」と、アンディと小坊主さんがカンフーの型を練習するシーンは本当によかったですねえ。

以下、結末までネタバレしてます。ご了承ください。

本来ならば悪者がぶっ殺されてめでたしめでたしとなる武侠映画ですが、この映画はクライマックスにおいても「許す」ことを訴えます(外国の将校は普通に刺し殺されてましたが・・・)。侯杰よりもさらに悪の限りを尽くした曹蛮(ニコラス・ツェー)をすら許そう・救おうというその姿勢は、いまだ争いのやまぬ世界に対しての監督の願いなのかもしれません。んで『孫文~』のときはさして美男子とも思わなかったニコラス君ですが、この映画ではお耽美風のヘアスタイルのせいもあってか美形オーラをムンムンと発しております。そんな彼がよよよと泣き崩れる姿は大変「絵」になっておりました。

Photo_2乱世の荒波にもまれてあえなく焼け落ちてしまった少林寺・・・というところでお話は幕となりますが、きっと生き延びたジャッキーや小坊主さんの手で再建されるのでしょうね。だっていま少林寺、ちゃんと現存してますもん。そしてその魂は『少林サッカー』へと受け継がれるのです。

レビューがもたくさしてるうちに大体公開終わってしまいましたorz まだやってるのはシネマート六本木くらいかしら。気になった方は名画座かDVDでどうぞ・・・


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Comments

クリリンはともかく「鉄拳チンミ」www
面白かったよねぇチンミ。成長型拳法漫画ではやったっけ。

30年前の少林寺観てないんだ。もうエポックメイキングすぎて…。マジで修行してましたから。棒術の動きとかできまっせ?
っという目から見ると、拳法ものとしてはすこーし物足りない。ま、人間ドラマメインだから仕方ないんですけどね。昔の作品のファンとしてはどうしても(笑)

Posted by: KLY | December 19, 2011 10:59 PM

伍一くん、クリリンスコ~☆
私は小坊主さんたちの活躍に、思わず涙出ちゃったわ。
勿論、雪の中の練習も凄くよかった~
大掛かりに作った立派な少林寺を、惜しげもなく燃やしてしまうって、これもすごいわー

Posted by: ノルウェーまだ^~む | December 20, 2011 12:15 AM

>KLYさん

ははは。『チンミ』ご存知でしたか。わたしゃアニメでしか観てないんですが、現在も『鉄拳チンミLegends』というタイトルで連載してるそうで

>マジで修行してましたから。棒術の動きとかできまっせ?

前から香港映画に出てきそうなタイプだとは思ってましたが・・・ ガチだったとは! ていうか今度ぜひ見せてくださいよ!

ま、たまには単純でスカッとするカンフー映画も観てみたい気もしますね。そこはやっぱりチャウ・シンチーに期待するしかない?

Posted by: SGA屋伍一 | December 20, 2011 10:29 PM

>ノルウェーまだ~むさん

マルコメンスコ~

銃も恐れず悪者たちに饅頭を届けるシーンもよかったですね。「こいつダメだ」とわかるやいなやタコ殴りにしてましたが

セットの建物を燃やすといえば、『仮面ライダークウガ』第一話でも教会を燃やして年間の予算の半分を吹っ飛ばした、なんつー伝説がありますw

Posted by: SGA屋伍一 | December 20, 2011 10:32 PM

きゃー!チンミ

>侯杰が実は主人公だった

アンディ・ラウが主演であることはうっすら知ってたのですが(ポスターでセンターだし)
悪役っぽく登場してびっくり。あれー?主役じゃないの?って・・・
あとで改心するけど、傲慢なアンディ・ラウもなかなかよかったです。
小坊主さんと型の練習をするシーンもほんとよかったし。
小坊主さんがぽっちゃりタイプなのがまた

ニコラス・ツェーもむちゃくちゃかっこよかったけど
やっぱりジャッキー・チェン!燃えました!

Posted by: kenko | January 16, 2012 08:17 PM

>kenkoさん

おお、kenkoさんもチンミご存知でしたか! 意外とメジャーだったんだなあ

わたしはアンディが出てることすら知らなくて(笑)、「この渋いおじさん見覚えあるけど誰だったっけ・・・ 塩見三省じゃないし・・・」なんて思ってました(でも彼、顔の骨格微妙に変わった気がしません?)

小坊主さん、きっと食いしん坊なんでしょうねえ。「動いてたほうが気がまぎれる」なんて言ってたし。「一休さん」の中にあんな体型の小坊主さんがいたような

ジャッキーは同時期『1911』にも出てましたね。あっちの方がかっこいい役柄だと思うんですけど、好評なのはこっちの方みたいですね~

Posted by: SGA屋伍一 | January 17, 2012 03:24 PM

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