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December 23, 2011

モーゼはどこへ行った ウォルフガング・ムルンベルガー 『ミケランジェロの暗号』

Photo年間ベストを決める前になるたけ未消化レビューを減らしておきたいので、いつになくハイペースで更新し続けておりますcoldsweats01 今日ご紹介するのはオーストリア発の異色ミステリー映画『ミケランジェロの暗号』。都内より数ヶ月遅れての公開でした。

1940年代の欧州。裕福なユダヤ人画商の御曹司ヴィクトル・カウフマンと、一家の使用人の息子・ルディは幼いころから兄弟のようにして育った。だがナチスドイツの台頭は、二人の友情に亀裂を生じさせる。出自にコンプレックスを感じていたルディはSSに入隊し、カウフマン家がひそかに隠し持っていたミケランジェロのスケッチを軍に引き渡せと迫ったのだ。一家は収容所送りとなり、スケッチは同盟の結束を強めるためにイタリアへ送られることになった。だがイタリアの鑑定家はその絵が贋作(フェイク)であると断言。顔色を失ったルディたちは本物のありかを知るためにヴィクトルを収容所から呼び出す・・・

今回は下にいくほどどんどんどんどんネタバレしていくのでご了承ください。
この映画、分類するならアート系というよりもサスペンス系だと思うのですが、ハリウッドのサスペンスとはちょこっとテンポとかムードが変わっています。たとえば劇中で二人の乗っている飛行機が墜落するのですが、普通なら墜落するまでを臨場感たっぷりに描くとこを、この映画では離陸した次のシーンでいきなり飛行機が落ちてたりします。
あと普通のサスペンスでは、最大のピンチはできるだけ一番最後にとっておくものですが、この映画では後半をちょっとすぎたあたりにあります。そのあとは急にお話が早足となり、主人公の境遇がコロコロ変わっていくあたりなどはもはや喜劇の様相を呈していきます。

ひとつ?と思ったのは、ユダヤ人のヴィクトルが無理矢理アーリア系のルディに成りすまそうとするくだりがあるのですが、向こうの人ってその辺の違いは見ただけではわからないのかな? まあわたしも未だに日本人・中国人・韓国人を見た目だけで判別できませんけど。ちなみにヴィクトル役のモーリッツ・ブライブトロイ氏は普通にドイツ人のようです。そんで疑いを抱いたSS将校たちがヴィクトルの人種を確かめようとするんですが、この方法がまたすごくシンプルですごく脱力しました(笑)

そんな風にたまにポカンとしちゃうところはありますが、メイン二人の造形が興味深くてあまり気になりませんでした。
まず悪役のルディ。恩人たちの愛情を仇で返す最低の男ですが、根っからの悪人ではありません。良心の呵責みたいなものも一応持っています。まあよくも悪くも小物なんですよね。小物ゆえにいじけ根性に拍車がかかると止まらなくなってしまう、そんなタイプ。
ついで主人公のヴィクトル。ここぞという時はなかなかのクソ度胸を見せますが、人並みの恐怖心も持っている極めて等身大のキャラクター。普通なら自分たちをひどい目にあわせたルディに対し激しい敵意を抱きそうなものなのに、通り一遍怒ったあとは、妙に親しげな態度を取ったりもします。おそらく懐が広いというよりは、あまり怒りが持続しないタイプなのでしょう。

で、この二人よりもさらに印象深かったのは、ヴィクトルの父である老カウフマン氏でした。はっきり言って出番はそれほど多くなく、死の場面すら出てこないのですが、ルディ、ひいてはナチス全体も言って見れば彼の手の平で踊らされたようなもの。その深慮遠謀には舌を巻きます。知恵深さだけでなく人格も大いに尊敬に値します。手ひどい裏切りにあっても決して取り乱したりはせず、ルディへの暖かい態度を変えません。
ラストシーンで彼の肖像画が心憎い形で使われるのですが、まるでその絵の中で「許してやるよ」と微笑んでいるかのようで、それに対してさわやかに微笑みを返すルディがしみじみ良かったです。本当ならとても許されないような男なのにね。Photo『ミケランジェロの暗号』は静岡東部ではジョイランド沼津で明日までやってます。・・・なんて役に立たない情報だろう・・・ これまたご興味おありの方はDVDが名画座でご覧ください。さて、あとは『リアル・スティール』の記事をあげれば久々にストック一掃。リアルの大掃除はするかどうかわかりませんが(おーい)

 


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Comments

うん、物凄くローカルに役立つ上映情報だ!(笑)
そうそう、最後のルディの表情がねぇ、いいんだわさ。私も許してると思う。だからこそ原題だと「最高の敵」なんだと。

Posted by: KLY | December 23, 2011 at 12:59 AM

>KLYさん

毎度どうも! これからも地方のホットな話題をお届けします! ていうかもう最終上映が終わったころだな・・・

>最高の敵

そういう原題なんだ。色々意味がありそうな深いタイトルですね。邦題は『ダヴィンチ・コード』を意識したのかしら

Posted by: SGA屋伍一 | December 23, 2011 at 09:45 PM

伍一くん、大掃除ンスコ~
ちゃんと大掃除もお手伝いしようね。実家にいるんだから・・・(母目線)

私ロンドンで住んでいた家のオーナーがユダヤ人だったけど、見分けは本当につかないよね。
ある意味ユダヤ人は人種ではなくて、ユダヤ教を信仰している人ってことだから・・・・
見た目に判るのは、黒いスーツに黒い帽子、編み下げのモミアゲっていうのが信仰心の厚いユダヤ人ですぐ判る。
軽い信仰だと丸い帽子を頭に載せているよね。
この戦時中はユダヤ人であることを隠していたから、その辺は勿論ないし、実際見分けるために星の印の腕章をさせていたくらいだものね。
この映画の見分ける方法は本当らしいよ。

Posted by: ノルウェーまだ~む | December 24, 2011 at 10:42 AM

この映画で最初にルディとヴィクトルの二人の顔が出てきたシーンで、「えっ、こっちがドイツ人?」と思ったくらい、ルディの外見はユダヤ寄りで、ヴィクトルは少しドイツ人寄りでしたから、コレは入れ替わると思いましたよ。

その後で、ヴィクトルの父親の顔を見たら、明らかにユダヤ人と分かる御面相でしたから、更に疑いました。
あれは、わざとボーダーラインの顔をキャスティングしています。

バーブラ・ストライザンドのような鼻を持っていたら誤魔化しようが有りませんけどね。

Posted by: サワ | December 24, 2011 at 08:24 PM

>ノルウェーまだ~むさん

雑巾フキフキンスコ~
はあ・・・ そうですね・・・ 大した面積もありませんしね・・・

>見分けは本当につかないよね。
ある意味ユダヤ人は人種ではなくて、ユダヤ教を信仰している人ってことだから・・・・

おうだったのか・・・ わたしはどことこなく天狗っぽい顔をイメージしてましたね。鼻が高くて目がギョロッとしてて、色がちょっと浅黒い。ほんで髪がチリチリ、みたいな。実は以前リアルで知ってたイスラエル人の人がそんな風貌でした。『ミュンヘン』に出てたエリック・パナもそんな感じだったし

しかし見た目でわからなかったということは、それなりにうまくやれば隠しおおせることもできたんだろうか・・・

>この映画の見分ける方法は本当らしいよ。

いや~ん(バカ)

Posted by: SGA屋伍一 | December 25, 2011 at 11:23 PM

>サワさん

>ルディの外見はユダヤ寄りで、ヴィクトルは少しドイツ人寄りでしたから、コレは入れ替わると思いましたよ

あら・・・ してみるとやっぱりそこはかとない人種特有の特徴みたいのがあるもんなんですかね

ためしに「ユダヤ系俳優」で検索したら「ローレン・バコール
 エリザベス・テーラー
 バーブラ・ストライザンド(やっぱり・笑)
 ウディ・アレン
 カーク・ダグラス
 ポール・ニューマン」と出てきました。全体的に昔の俳優さんばかりですが・・・

あと「ドイツ 俳優」で検索したら「ブルース・ウィリス ナスターシャ・キンスキー」など出てきました。えっ ブルースってそうだったんだ・・・

Posted by: SGA屋伍一 | December 25, 2011 at 11:37 PM

伍一さん、メリークリスマス!

全く関係ないんだけど、、、、以前、イギリスで、『ろしあんジュー』っていう響きに恐ろしさを感じる人と出会っています。

メリメリクリスマス!

Posted by: まみっし | December 26, 2011 at 01:22 AM

あ、その恐がってた人は、その辺のオバサンでしたが。(念のため)

Posted by: まみっし | December 26, 2011 at 01:26 AM

>まみっしさん

メリークリキントンスコー そちらでは盛り上がりましたか?

>以前、イギリスで、『ろしあんジュー』っていう響きに恐ろしさを感じる人と出会っています。

そんな人にはジョン・レノンの名曲を歌ってあげるといいと思います

♪Hey Jude(へい、ユダヤ人), don't be afraid(恐れるんじゃない)

自爆ボーン


Posted by: SGA屋伍一 | December 26, 2011 at 10:14 PM

こんばんは~
GW突入しましたがどこかに行くご予定はおありでしょうか?
私は人ごみに酔うのでもっぱらじっとしていますが
「アーティスト」くらいは観に行こうかと思っています。

この作品,SGAさんがご覧になったのはクリスマスだったのですね。なかなか面白い作品で,ナチもののわりには喜劇っぽい雰囲気もありましたね。そうそう,主役の二人が宿敵になりつつもやっぱり幼馴染の気安さや情を捨てきれないあたり,興味深かったです。一番のツワモノはやはりヴィクトルのパパですね。

Posted by: なな | April 28, 2012 at 09:11 PM

>ななさん

こんばんは~
わたしは例によって東京方面に二度出る予定ですcoldsweats01
明日死ぬほど込んでそうな渋谷と、終りくらいに高尾山に・・・
映画は今日『ジョン・カーター』と『SPEC』というのを観てきました
『アーティスト』は自分はちょっとあっさり風味だと感じましたが、ななさんはたのしめるかと思います

これはクリスマスではないですがその付近に観たんだったかな… オヤジが入院しててその見舞いに行った帰りだったのは覚えてます
わたしはこの映画、手塚治虫先生の『アドルフに告ぐ』を思い出したりしました。ナチスの時代に生きた二人の青年の愛憎劇ということでけっこう似てるところがあるんですよね。こちらよりももっと重苦しい雰囲気ですが…

ヴィクトルのお父さんには色々学ばされました。こんな風に懐が広い男になりたいものでふ

Posted by: SGA屋伍一 | April 28, 2012 at 11:38 PM

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