« 燃える!お坊さん ベニー・チャン 『新少林寺』 | Main | モーゼはどこへ行った ウォルフガング・ムルンベルガー 『ミケランジェロの暗号』 »

December 20, 2011

ローマ字読みで読まないで エルジェ スティーブン・スピルバーグ 『タンタンの冒険』

111220_185802ウラウラタンタンウラウラタンタンウラアーッ!!(『ジャングル黒べえ』より)。いきなり失礼しました。ここんとこ製作に徹していた(笑)スピルバーグが、ベルギーで長年愛されているキャラクターを映像化。『タンタンの冒険』、ご紹介いたします。

タンタンはベルギーでは知らぬ者のいない有名な少年記者(学校は行っていないのか?)。ある日タンタンはノミの市でよく出来た帆船の模型を買う。するとその直後、別々の二人の男からその模型を大金でゆずってほしいと頼まれる。それが気にっていたタンタンは申し出を断るが、その夜彼が留守したすきに、模型は何者かによって盗まれてしまった。調査を進めるうちにタンタンは、模型の中に海賊の財宝のありかを示すヒントが隠されていたことに気づく・・・

タンタンが誕生したのは1929年。愛犬スノーウィーと世界中を飛び回る事件記者という設定。日本でいうと子供のくせに探偵事務所をかまえている金田正太郎君みたいなキャラでしょうか。その冒険はベルギーのみならず世界中の子供たちを夢中にさせ、多くのファンを獲得しました。
時代はくだって80年代初頭。『レイダース』を作ったスピルバーグは作品が『タンタン』に似てる、という指摘をうけます。タンタンを知らなかったスピルバーグ実際に読んでみて、その面白さに感嘆。以来30年に渡って映画化の機会を狙い続けてきて、2011年も末になってようやく実現したというわけ。

ただ最初に映画版のヴィジュアルを観たときはなんだかな~と思いましたね。最近宣伝の関係でごらんになった方もおられるでしょうけど、原作のタンタンって『サザエさん』に近いような絵柄なんですよ。サザエさんをリアルなモーションキャプチャーで表現したらなんか違うなって思うでしょ?
そんなわけで半ば別物と割り切って観ることにしましたが、いやいや、これがどうして。さすがファンだったというだけあって、色んなところで原作への愛情に込められていていい感じに仕上がっておりました。
重度のアル中のハドック船長、うっかり百連発のデュポン・デュボン、破壊的な歌声を持つカスタフィオーレ夫人、どなたもそうそう、こんなキャラだったとひざをうって喜んでおりました。ま、スノーウィーは本来はもっと役立たずな犬なんですけど。そしてなによりどんなにアクションが激しいときでも、どこかのんびりしたムードが漂っている。これこそが『タンタン』です。

そんでわたし思わず懐かしくなっちゃって、久しぶりにこの本の原作を引っ張り出したのですね(たまたま持ってた)。そしたら原作はもっともっとのんびりしてました(笑)。ちなみに今回のお話は1943年と1944年に相次いで刊行された『なぞのユニコーン号』『レッド・ラッカムの宝』を主に定本としております。原作にはユーモラスなサメの形をした「サメマリン」なる潜水艦が出てくるのですが、これ、映画にも出してほしかったなあ。

中盤の怒涛のごとくのチェイスシーンはどちらかといえばタンタンというよりインディ・ジョーンズなんですが、アニメならではのありえなさも手伝って大変見ごたえのある映像になっておりました。アクション好きはここだけでも観る価値があります。

111220_185910そんなわけで『タンタンの冒険』は現在全国で大々的に公開しておるのですが、思ったほどヒットしてないようで・・・ これがあたってくれれば『アステリックス』や『ビッケ』といったヨーロッパ系の漫画映画の公開に弾みがつくと思ったのになー 誰かなんとかしてよ、もう!


|

« 燃える!お坊さん ベニー・チャン 『新少林寺』 | Main | モーゼはどこへ行った ウォルフガング・ムルンベルガー 『ミケランジェロの暗号』 »

Comments

モーションキャプチャーで違うとなればやっぱ実写でしょう!既に日本では実写化されてるしね!w

それにしてもスピルバーグらしさ全開ですね。こりゃースピさんが駄目な人は駄目でしょう。私はこんなオーソドックスさが大好きなんですが^^

Posted by: KLY | December 20, 2011 11:31 PM

積みゾイド4体目としてシールドライガーバン仕様が手に入りました。

と言うのはともかく…。
今度はタンタンか!

こんな調子で「ウォーリーをさがせ」が映画になっても驚きません(笑)

なんか、世界中でマンガとかを実写化!大会な様相を見せて来た感じがしますが…………。日本の場合は明らかに「安直な理由」が多い(「家政婦ミタ」の脚本家が警鐘ならしてましたね)。個人的にはデフレぎみな芸能人失業対策と揶揄ってます(笑)。
スピルバーグが30年待ったと言う奥ゆかしさ(?)を日本のメディアは見習って猛省すべきでしょう。でも「怪物くん」が受けたのはイマイチわかりません……………。

Posted by: まさとし3055 | December 21, 2011 09:18 PM

>KLYさん

たしか一回暗礁に乗りあげる前にジェイミー・ベルがコスプレしてるスチールを観た気がするんですよね。とてもいい感じだったのでこのままいってくれれば・・・と思ったんですが。ま、でもこのバージョンも悪くはなかったですよ

スピさんも最近また娯楽志向に回帰してきた気がしますね。いいことです。ただ次回作『戦火の馬』はまた重厚系の作品のようで

Posted by: SGA屋伍一 | December 21, 2011 10:45 PM

>まさとし3055さん

こんばんは。ここらでまたゾイドも再販かかりませんかねえ。あれはガンプラと違って組み立てると箱にしまいにくいのが難点なのだけど。ていうかゾイドをCGアニメでバーンと映画化すればいいんじゃないか? 

そういえばわたしは今年邦画は漫画映画か漫画っぽい映画しか観てないなあ。実は今日から公開の『ワイルド7』もけっこう楽しみだったりします(笑) なぜ今の時代に突然『ワイルド』なのかはよくわからねど

『怪物くん』で思い出しましたがいまなぜか『妖怪人間ベム』もうけてるようで。とりあえずオープニングの再現度はなかなか大したものでした

Posted by: SGA屋伍一 | December 21, 2011 11:04 PM

こんばんは!(^_^)
最初原作のイラストと随分イメージが違うので
ちょっと違和感を感じましたが、スピード感のある展開に乗せられて
あまり気にならなくなりました。
しかし、何十年たっても古さを感じさせない原作の素晴らしさは
本当にすごいですよね〜。

Posted by: ルナ | December 31, 2011 12:43 AM

>ルナさん

こんちは。今頃帰省中でしょうか?
冒頭で原作の絵柄で似顔絵を描かせていたのはうまいアイデアだと思いました(笑) 
こないだツイッターで「漫画の背景」に関してちょいとした議論があったのですが、その中で江口寿司氏が「『タンタン』の線にワクワクする」とおっしゃっていて、現代日本の漫画・イラストにも少なからぬ影響を与えているんだな、と感じ入りました

Posted by: SGA屋伍一 | December 31, 2011 04:48 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference ローマ字読みで読まないで エルジェ スティーブン・スピルバーグ 『タンタンの冒険』:

» タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密(2D) [LOVE Cinemas 調布]
世界中で愛される漫画「タンタンの冒険」を3Dアニメーションにより映画化。巨匠スティーヴン・スピルバーグが惚れ込んで自ら監督・製作をした。共同製作には『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのピーター・ジャクソンが加わっている。原作の世界から飛び出したソックリのキャラクターは実写かと見まごう程の出来栄えだ。タンタン、愛犬スノーウィ、ハドック船長の冒険が今始まる。... [Read More]

Tracked on December 20, 2011 11:29 PM

» 映画「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」感想 [タナウツネット雑記ブログ]
映画「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」観に行ってきました。ベルギーの漫画家エルジェ原作の同名マンガを3Dアニメーションで映像化した、少年新聞記者タンタンとホワイト・... [Read More]

Tracked on December 24, 2011 12:01 PM

» タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密 [ルナのシネマ缶]
こちらは、宣伝バリバリで 2D版、3D版に吹替、字幕と てんこ盛りに上映されてます。 最初、原作のタンタンと 3D化されたタンタンが あまりにイメージが違うって 感じましたが、観ているうちに だんだん慣れてきました。 ある日タンタンは、ガラスケースに陳列されていた帆船の 模型に魅了され購入する。ところがその直後から、 彼は見知らぬ男たちに追いかけ回されるハメになる。 何とその船は17世紀に海賊の襲撃によって消息を絶った 伝説のユニコーン号で、模型のマストにはある暗号が ... [Read More]

Tracked on December 31, 2011 12:44 AM

» 映画:タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密 [よしなしごと]
 スティーヴン・スピルバーグが満を持して放つCGアニメ映画タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密を見てきました。2012年になってしまいましたが、見たのは昨年です。。。(汗) [Read More]

Tracked on January 28, 2012 01:42 PM

» タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密 [いやいやえん]
少年記者タンタンと愛犬スノーウィが、莫大な財宝を積んだまま忽然と姿を消したと噂される伝説の帆船、ユニコーン号の秘密に挑む。 実写アニメーションともいうべき映像美が凄い。お話は少年版インディ・ジョーンズという感じ。ベルギーのコミック「タンタンの冒険」シリーズを映画化したもの。オープニングのシルエットアニメはセンス抜群☆ 謎の男サッカリンを追い追われながら、陸海空と冒険の旅へ。ひとりひとりが愛すべきキャラクターになっていてなんだか皆味がある。私のお気に入りはやっぱりハドック船長かな♪ ファミ... [Read More]

Tracked on April 22, 2012 09:53 AM

« 燃える!お坊さん ベニー・チャン 『新少林寺』 | Main | モーゼはどこへ行った ウォルフガング・ムルンベルガー 『ミケランジェロの暗号』 »