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December 13, 2011

三人のサンタ バリー・クック サラ・スミス 『アーサー・クリスマスの大冒険』

Acd2今年もこの時期がやってきましたね・・・ 毎年12月後半になると独り身のさびしさに「クリスマスなんてなくなっちまえバーロー!!」と呪詛を撒き散らしているわたしですが、『ウォレスとグルミット』のアードマンがてがけたCGアニメと来たらおさえておかねばなりますまい。『アーサー・クリスマスの大冒険』。ご紹介します。ちなみにタイトルはアーサーがクリスマスに冒険するという意味ではなく(してるんだが・・・)、アーサー・クリスマスという名の青年が大冒険するという意味です。

人口爆発時代に突入した21世紀。当然子供たちの数も奥の単位で増加していた。それらすべての子供たちにクリスマス・プレゼントを配るため、サンタ・クロースは超科学で作られた飛行船S-1と、スパイ並みの訓練を積んだ妖精部隊を配備してことにあたっていた。サンタとその長男スティーブが張り切って作戦に臨んでいる間、さえない次男のアーサーは妖精たちの仕事をひっかきまわして迷惑がられていた。幾多のトラブルを乗り越えてすべてのプレゼントが配り終えられたと思われた矢先、アーサーはささやかな異常に気がつく。配り忘れられてポツンと取り残されたひとつのプレゼントがあったのだ・・・

まあみなさんご存知だと思いますが、サンタなんてこの世に実在しません。とうちゃんとかあちゃんが夜中にこっそり置いてってるんですよ。しかしそうした公然の秘密を堂々とスルーし、強引に「本当にいるんだよ!」ということで押し切るアードマン。さすがですね。本当に月がチーズでできていた『ウォレスとグルミット チーズ・ホリデー』を思い出します。

たった一つのプレゼントも届けねばと、怖いのもガマンして旧式の空とぶソリを駆るアーサー。いまや世の中、すべてがデジタル化・オンライン化・オートメーション化しているといっても過言ではありません。企業もお役所もそうすることで効率よく人々のニーズに応えています。しかしそうした能率化の裏で個々のケアがおざなりになることも少なくありません。古きよきものが粗末にされることも珍しくありません。この映画はそんな現代社会へのアンチテーゼなのかもしれません。科学が幅を利かすにつれ、だんだん肩身が狭くなっていくファンタジー。でも子供たちには夢を持つことを忘れてほしくない。どの子供たちも一人一人大切な存在なのだ・・・という思いを夜空をかけるソリの姿に感じとりました。

とまあ、とってもまっすぐなメッセージが込められていて好感の持てる本作品ですが、新鮮味という点ではちょっといまひとつだったかな・・・ 秘密基地みたいなとこにちっこい連中がうじゃうじゃいるとこはまるで『Mr.グルーの月泥棒』みたいだし、じいちゃんと子供がヘンテコな乗り物で空を行くアイデアは『カールじいさんの空とぶ家』を思い出させます。そしてなによりアーサーのルックスが『レミーのおいしいレストラン』のリングイニにそっくり。『ヒックとドラゴン』のヒックにも似てるかな。CGアニメのへなちょこ君はダンゴっぱなのナスビ顔が望ましい・・・という不文律でもあるのでしょうか。
たぶんアードマンがこれらのアイデアをぱくったのではなく、たまたまかぶってしまったということだと思うのですが。

あとやっぱりアードマンにはCGものよりクレイアニメを作ってほしいという思いもあります。まあ、クレイアニメってのも恐ろしく効率の悪い作業なんで、合間にCGアニメを作って資金を稼いでおこうという考えなんでしょうかね。でもまだ三週目くらいの公開とはいえ、製作費 $100,000,000に対し 興行収入 $11,400,000ってもろ裏目に出てやせんか。大丈夫ですか、アードマン!

Acd1アードマンがつぶれないためにも、気の向いた方はどうぞこのアニメを観に行ってやってください。わたしはちょっと微妙な評価になってしまいましたが、玄人筋で大絶賛してる方々もけっこうおられます。ただいま全国のTOHOシネマズを中心に公開中。もうだいぶ上映回数減ってます・・・

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Comments

>CGアニメのへなちょこ君はダンゴっぱなのナスビ顔が望ましい・

多分これで人気でてませんな(笑)
どうせ子供用のCGあにめだろってなもんです。実際観てみると
あにはからんや、私はことしのCGアニメの中では抜きん出て
良作だと思ってるんですけどね。
多分クリスマスまでもたないな…

Posted by: KLY | December 13, 2011 11:00 PM

この作品は未見ですが・・・
クリスマスは私も嫌いかなぁ~
教会行事で忙しいだけだし
サンタのクリスマスプレゼントなんて
子供のいない家には全く意味ないですよね~~。
ちなみに私は4年生くらいまではサンタを信じていたのですが
SGAさんはいくつまでですか?

私は自分がお祈りしたプレゼントと
サンタがくれるプレゼントがあまりにもかけ離れていたので
気がつきましたが…4年生ってのはオクテなんですかね。

Posted by: なな | December 14, 2011 12:02 AM

>KLYさん

毎度ども~
やはりここは主人公を動物にすべきだったのかもしれません。青い鼻でみんなからバカにされてるトナカイだったらよかったんじゃないかなあ ・・・集○社から確実に訴えられるでしょうけどね
この作品も『ヒック~』と同じく、一般よりも映画ファンの方々にウケがいいようで。今回ダメでも(あわわ)後々語り継がれていくといいのですが。今でさえ大人気のトトロだって当時の興行はしょぼーんだったそうですし

Posted by: SGA屋伍一 | December 14, 2011 10:39 AM

>ななさん

そうそう、ななさんはこれから忙しい時期でしたよね。お疲れ様です
クリスマスというのはやはり子供がメインだと思うのですが、いつの間にか大人がいちゃつくための口実になっていてけしからんと思います。けっしてひがんで言ってるわけではあります

わたしは早かったですね。小学校一年生くらいのころだったかな。そのあたりからウチはクリスマスを祝わなくなってしまったので。みんなプレゼントもらえるのにウチはスルーか・・・という悲しい思いでも手伝ってクリスマスはあまり好きではないのです(笑)

>私は自分がお祈りしたプレゼントと
サンタがくれるプレゼントがあまりにもかけ離れていたので
気がつきましたが…4年生ってのはオクテなんですかね

きっとさぞかしささやかなモノをお祈りしたら意外と豪華なものが来て「?」と思ったのでしょうね。それはそれでいい話だ!

Posted by: SGA屋伍一 | December 14, 2011 10:47 AM

またまたこんばんは~

ほんとだ,プレゼントをあげる子供も
いちゃつく相手もいないので余計に寂しいクリスマスです,私も。

>きっとさぞかしささやかなモノをお祈りしたら意外と豪華なものが来て「?」・・・
いえいえ,おもちゃ系をお願いしてたのに
文房具や参考書など親の願いバリバリのものが来たので
鈍感な私でも気がつきました。
ちなみにもっと小さいころはサンタへのお祈りを
親の前でしていたので親もそれを無視できず
お願いした通りのものが来てたわけです。

Posted by: なな | December 14, 2011 10:48 PM

>ななさん

またまたおいでませ
大丈夫です。僕たちには・・・猫がいる!(ひゅうううう)

>文房具や参考書など親の願いバリバリのものが来たので

それはガッカリだ(笑) でもそんだけご両親が教育熱心だったから、ななさんも先生を志すようになったのかもしれませんね~
ちなみにわたしが頂いた数少ないプレゼントは宇宙戦艦ヤマトのプラモデルでした。が、なにぶん不器用な子供だったのでちゃんと組み立てられなかったような

Posted by: SGA屋伍一 | December 15, 2011 11:22 PM

こんばんは!(^_^)
私は、結構好きでしたよ、この作品。
なんか、これぞアニメーション!って感じで、映像きれいだったし。
残念ながらクリスマス前に終わってしまいそうですが・・・(^^;)

そいうえば、家は小学生の頃には、もうサンタとか信じてなかったなぁー。
だって、親にクリスマスには○○を買ってね!って頼んでたし・・・(笑)
○○は高いから、○○にしなさい!とかよく言われてたなぁ〜。

Posted by: ルナ | December 16, 2011 12:54 AM

>ルナさん

わたしも面白く観たんですけどね~ 今までのアードマンやピクサーの傑作群とくらべるとちょっと印象が薄いかなあ

日本の子たちは真相に気がつくのが割りと早いかもしれませんね。煙突のある家なんてないに等しいし。まあ欧米でも今時分煙突付きの家はだいぶ減っただろうな(劇中でもそんなセリフありましたね)

Posted by: SGA屋伍一 | December 16, 2011 09:43 PM

何故?!?!ってぐらいの映画館の空き
私達家族揃って「期待作品」
サンタの世界にもハイテク化
「世代交代」
「家族の変化」
も描いてる現代ご時勢問題も描いてる
っていうのにガラ空き
サンタの声にジム・ブロードベント
こりゃまたイカすメンバーなのにね~
でも・・・邦題がねぇ
「アーサー・クリスマス」なんだけど
どうして「アーサーのクリスマス大冒険」
なんだよっ

Posted by: q  3匹のモフモフ猫達♪ | December 23, 2011 10:02 PM

>qちゃん

こんばんは。すっかり寒くなったねえ
これ、いつの間にか近所では公開終わってた・・・ もっとプッシュしておけばよかった・・・ これぞ「公開先に立たず」!(自爆)

ちなみに私のときはお客さん五人くらいだったなあ。ジャスティン・ビーバー目当ての子とか来そうなものだけど、あいつも日本ではまだまだ知名度が低いということか(笑)

qちゃんちは家族そろって映画観に行って微笑ましいねえ。うちは親父が出不精でお袋は途中で寝てしまう人・・・

Posted by: SGA屋伍一 | December 23, 2011 10:29 PM

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