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November 12, 2011

地中海美少年伝説 ルキーノ・ヴィスコンティ 『ベニスに死す』

Photo♪美しさは罪~(『パタリロ!』EDより) 本日は最近ニュープリント版が上映されたヴィスコンティの不朽の名作『ベニスに死す』をご紹介いたします。

静養のためにベニスを訪れた老作曲家アッシェンバッハは、滞在したホテルで美の化身のような少年を見かける。少年の名はタッジオ。その美しさに引き寄せられたアッシェンバッハは、以来絶えずタッジオの姿を視界に追い求めるようになる。だが彼が甘い夢におぼれているのをよそに、ベニスでは静かにコレラが蔓延しつつあった。

「名画100選」なんかがある度に決まって選ばれる本作品。初めて観てみて思ったのは、本当にストーリーらしいストーリーが「ね~~~~ッ!!」ってことでした。
主人公の老作曲家は見ていていじらしくなるほどにタッジオに恋焦がれるのですが、だからと言って具体的な行動は何一つ起こしません。部屋の窓から、遠く離れた席から、柱の物陰から、ただひたすらタッジオを見つめるだけ。「いい年こいて・・・ どんだけ乙女野郎なんだ!」と思わずにはいられません。まあ幾ら美しいとはいえ未成年(しかも男)を強引にくどいてモノにしてしまうというのもいかんとは思いますけど。
当のタッジオ少年もどうやらその熱い視線には気づいている様子で、時折意味ありげに見つめ返してくることすらあります。でも二人の接触といえるものは本当にそれくらいです。

なぜアッシェンバッハが夢中になったものが「美少女」ではなく「美少年」だったのか? 理由のひとつはこれが原作者トーマス・マンの実体験に基づいたものだからです。そしてもうひとつは監督のヴィスコンティがバリバリの両刀使いだったからshock もっとも劇中での描写を見る限り、アッシェンバッハ氏はもともとはノーマルな趣味だった模様。真に自分にとっての理想の美を備えた存在を見出したとき、人はそれが男か女かということはどうでもよくなってしまうのかもしれません。実際タッジオ演じる当時のビョルン・アンドレセンは、そっちの趣味が全くないわたしですら「これなら仕方がないかも」と思わせるほどの輝きを放っております。

以下はだんだんネタバレしていきますが・・・

基本的にずっとしかめっ面か当惑した表情のアッシェンバッハ氏。彼が笑顔を見せたのはわたしの記憶が確かならば全部で四回。
一度目は追憶で妻や娘と戯れているシーン。
二度目は一度は去ると決めたホテルに、意を翻して再び戻るところで。
三度目はこっけいな厚化粧をしてタッジオを追いかけるものの、急にへたりこんで力なくヘラヘラと笑う場面。
四度目はラストシーンで遠くにたたずむタッジオを見つめながら。
本当にハッピーな笑顔というのは最初のだけで、あとはいずれも死や老いの気配が濃厚ゆえに、物悲しさを感じずにはいられません。ただどの笑顔も微妙に表情や意味が異なっていて、その辺にもこの映画の奥深さというか、名画と言われる所以のひとつがあるような気がしました(わかったようなことを書いてるな・笑)

ベニスというと紀行番組でよく見る様な華やかなイメージがありますが、コレラの脅威がますにつれ次第にひっそりとしていく乾いた街の風景も不思議な余韻を残します。

Photo_2『ベニスに死す』ニュープリント版は引き続き都内を含め、全国の劇場でぼちぼちと公開されていくようです。たまにはそれこそ美術館で名画の美しさをゆっくりと堪能したい、という方におすすめします。
隣のイラストはどこかのサイトで見かけたおじさんになったアンドレセン氏。ちなみに彼はまったくそっちの気はなかったそうで、撮影中監督にホモのパーティーに連れて行かれて精神的に激しく消耗したとかcoldsweats01 

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Comments

私は、結構好きな作品なんですけど・・・・
タッジオくんは、このときがピークの美しさだったでしょうね〜。
私もなんかのサイトで成長した彼を見て
かなりがっかりした記憶があります・・・(~_~;)
死ぬ為に来たベニスで、アッシェンバッハ氏があれほど惹かれたのは
そんな儚さを持った美しさだったからかもしれませんね〜。
ラストの浜辺のシーンがとても好きでした。

随分古い記事ですが、TBさせていただきました!

Posted by: ルナ | November 15, 2011 at 12:22 AM

>ルナさん

おお、こちらにもコメントありがとうございます!

まあ欧米の俳優さんで十代のころ美少年だった人ってのは、オヤジになると大体劣化してますよねcoldsweats01 最近のいい例がエドワード・ファーロングとか。わたしとか(爆)
それに比べればアンドレセンさんはまだいい方かもしれませんが、やっぱりこの映画での輝きに比べると完全に別人ですね・・・

上の記事ではちょっと茶化してしまいましたが、やはり多くの人を魅了してきただけあって、一見の価値のある作品でした!

Posted by: SGA屋伍一 | November 15, 2011 at 10:35 PM

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