沼物語 福本伸行・佐藤東弥 『カイジ2 人生奪回ゲーム』
「おかえり、クズのみなさん」 ただいまー! 本日はあの大ヒットマンガ原作の第二作『カイジ2 ~人生奪回ゲーム』ご紹介いたします。ちなみに第一作のレビューはコチラ。
帝愛グループとの死闘から一年(くらい。たぶん)。孤高のギャンブラー(なのか?)、伊藤開司は再び身を持ち崩し、帝愛の奴隷となって地下奥深くの作業場で働かされていた。仲間たちの支援と持ち前の知略で、カイジはなんとか期間限定で地上に出る権利を得る。元手の百万円を膨らませて、なんとか仲間たちの借金を返そうと試みるカイジ。そんな彼の前にかつての仇敵、利根川が現れる。利根川はカイジをとある秘密カジノにある「沼」と呼ばれるパチンコ台に誘う。まるで怪物のようなその台の、一番底にある穴にひとつでも球を入れられれば、いままで「沼」が吸い込んできた10億円を手に入れられるという。果たしてカイジは自由と十億を勝ち取ることができるのか。
前作では全部で三種類のゲームというか勝負が行われましたが、今回は途中で「姫と奴隷」というゲームがあるほかはほぼず~っとパチンコの話です。ちっちゃな球の行方に大の大人たちが青筋立てている様子は、冷静に考えてみれば実にこっけいであります。それどころかそのために○○まで○けちゃったりする。でもこれもまた社会の縮図ってやつなのかもしれません。人はけっこうちっちゃいことやくだらないことに、それと気づかず血眼になっているものです。そして時にはそれがかっこよく見えることもあります。
第1作はひたすら勝利の快感を追い求めた作品だったと思います。ダメダメ人間のカイジが負けて泣いて、最後の最後で華麗に一発逆転を決めてみせる。社会の底辺に生きる者としては、これにカタルシスを覚えずにはいられません(笑)
しかし今回は気持ちいいだけでなく、青少年たちにちゃんと考えさせる内容になっていたと思います。カイジのライバルとなる一条は、かつて仲間を鉄骨から突き落として帝愛の上層部に成り上がった男。「生きるために押すのは当たり前」そううそぶく一条。それに対しカイジが大金を得ようとするのは、あくまで仲間を救い出すため。本当に大切なのは信じられる仲間か、それとも金か。もうすぐ四十郎であるわたしたちの年代からすると、こういうテーマは青臭く感じられることもありますが、10代20代の若者たちにとってはわかりやすくて楽しめるいい教材なのではないでしょうか。
そんなテーマに花を添えるのが、日本を代表するくどいおじさん俳優たち。お調子者がよく似合う生瀬勝久氏・・・は普通にサラリーマンNEOでしたが、香川照之氏(またか)演じる利根川は辛酸をなめたせいか、以前よりも面白みの増したキャラとなっていました。そして今回回想シーンのみでの登場である、光石研氏演じる「おっちゃん」。もう映画版『カイジ』で一番重要な人物はこの人なんじゃないかという気がします。どんなピンチに陥ってもカイジに戦い続けるモチベーションを与えているのは、もうこの世にいない彼にほかならないのですから。カイジが「おっちゃんの死は無駄じゃない!」と叫ぶたびに、年を食って涙もろくなったわたしなどは鼻水をつすーとたらしていましたよ。
そしてもう一人あげておきたいのが(出番はわずかですが)強制労働者を食い物にする松尾スズキさん。「カイジくん~ また会えて嬉しいよ~」とニコニコしながら金を巻き上げる姿は邪悪そのものなのに、なぜか強烈な愛着を感じます。『悪人』で悪人を演じてた時にははらわたがにえくりかえるような怒りを感じたものですが・・・ 人間の感覚って不思議ですね。
以下はラストを割っているのでご了承ください。
「本当に大切なのは信じられる仲間か、それとも金か」と書きましたが、ラストシーンがまた見事な対比となっております。有り金のほとんどを失って、それでも仲間たちとはしゃぎあって楽しそうなカイジ。そしてその金を見事にだましとったのに、「お前には仲間がいるからいいよな」とさびしげにつぶやく利根川。今年の邦画の中でも(そんなに観てないすけど)最も秀逸なENDのひとつだと思ってます。
そういえば今年は『GANTZ』『SP』『あしたのジョー』『電人ザボーガー』と、アニメを除くと見事に漫画原作か漫画っぽい邦画しか観てないなあ。映画通のみなさんにはあまり評価されないこれらの作品ですが、意外とどれも単純なハッピーエンドには終わっておらず、生きることには痛みが伴うこと、それでも前に進んでいかねばならないことを上手に教えていると思うんですがねえ。うん、やはりこれから大人になる青少年たちには、こういう映画も必要ですよ。そんなわけで年末公開の『ワイルド7』も楽しみにしております~
Comments
個人的に言わせて貰うと、この沼もいいんだけど、チンチロ勝負
の方をやって欲しいんだよね。
これはもう前作観た時からずーっとそう思ってる。松尾スズキが
あまりにもいいからw
まあそれでも伊勢谷君の壊れっぷりは最高で、「おれぇ?」が
もうけっさくでした。
Posted by: KLY | November 29, 2011 11:20 PM
>KLYさん
三作目があるとしたら、スタートはまた地下からだと思います(笑) 地獄チンチロはそのときじっくりやればいいんじゃないですかねえ
伊勢谷くんはいつでも一生懸命なのがおかしい・・・いわば天然系の俳優さんだと思ってましたが、今回は計算して笑いを取ることを覚えたな、と思いました
Posted by: SGA屋伍一 | November 30, 2011 09:17 PM
この数ヶ月、鬱が酷い状態です…………。
せっかくブログ閲覧出来ても、なかなかレス出来ずにすまんです。
カイジは可動フィギュアのfigmaになったそうな。売れ行きは「けいおん」よりは高く無いけど。
このカイジにしても、マンガの実写映画化があまりに増えたのは、芸能人の失業対策に写って仕方ありません。アイドルについては完全にデフレ確実で、秋元某は業界を破滅させる気なのかと…。
多分ご存知な伊豆急で開業当時の電車が復活したそうで、乗車ツアーの参加兼ねて、伊豆に行ってみたくなりました。
追伸
たまにはあのパンダ書いて下さいよ〜。
Posted by: まさとし@葛城 | December 01, 2011 07:14 PM
>まさとし@葛城さん
ご闘病お疲れ様です。観てくださってるだけで全然かまいませんですよ~
カイジのフィギュアあるんだ・・・ どんな人が買うんだろう(笑) 福本漫画にはもう一人「アカギ」という人気キャラがいますが、クールな天才のアカギよりも、ふだんは情けないカイジの方がやっぱりわたしには親しみがわきます
元気になられたらぜひ伊豆の方に足を伸ばしてください。実はわたしも自分の住んでるところ以外は良く知らないんですけどね
>パンダ漫画
わかりました・・・(目標:来年1月中までに)
Posted by: SGA屋伍一 | December 01, 2011 11:01 PM
伍一君、パチパチパチンコ~☆
カイジは本当に貧乏がお似合いだよね。
だってスーツすら似合わないもの!
スーツと言えば、ねえねの同級生は現在就職活動が解禁になって、必死なんだけど、全く他人事でスーツすら着るつもりなしのねえねでした~(笑)
それはともかく、本当に漫画原作ものが増えたよね。
ちゃんとしたオリジナル脚本を書ける人が減ったのかな?
伍一君、何か書きなよー
Posted by: ノルウェーまだ~む | December 02, 2011 12:12 AM
>ノルウェーまだ~むさん
チンチンジャラジャランスコ~
もうね、これ新たな『寅さん』みたいなシリーズにしちゃえばいいんじゃないかなって
カイジの恋・・・じゃなくてサクセスが今度こそ成就するかな~と思わせて、最後は結局騙し取られてEND、みたいな。ぜひ藤原君には生涯現役でこのシリーズに出演し続けてほしいです
ねえねちゃんはきっと大器晩成タイプだと思いますよ。就職といえばわたしもろくに活動せずに結局新聞配達とかやってたわけで。ああああ、痛い思い出がズルズルと~
>伍一君、何か書きなよー
実はお金はあったら『青春少年マガジン』という漫画をずっと映画化したいなあ、と願ってるんですがね。あ、それも漫画原作か
Posted by: SGA屋伍一 | December 02, 2011 05:09 PM