ネットで観られる猫目映画 片岡翔 『蹴缶-第5回全日本缶蹴グランプリ』『象煮』ほか
ひょんなことから追っかけ続けてきた自主映画作家の片岡翔氏。年末より公開される『missboys』二部作で脚本という形ではありますが、いよいよ商業デビューされることになりました。パチパチ
そこで本日はネットで観られる片岡作品を中心に、氏のこれまでの歩みを概観してみることにします。
まず氏の実質的なデビュー作と言える2006年の『蹴缶-第5回全日本缶蹴グランプリ』。いきなり記事タイトルに偽りありですが、これはネットでは観られません。TUTAYAディスカスでレンタルできます。
ストーリーは作品タイトルにあるように、全国から集まった缶蹴りの猛者たちが、日本一の座をめぐって死闘を繰り広げる(缶蹴りで)・・・というもの。この猛者たちというのがコナン君似の小学生、侍風の黒人、忍術?を使うオタッキー、その辺のおばちゃん、仮面をかぶった謎の男…と実に個性豊か。前半のうちは特にこれといった主人公がいないものの、参加者が減っていくに連れだんだん一人がクローズアップされていくという構成も面白い。
さすがに後の片岡作品から比べると、少々たどたどしい部分もありますが、それを補って余りあるエネルギーに満ち溢れています。ぜひ今の実力で続編なりリメイクなりを作っていただきたいところですが、いかがでしょう。
続けて紹介するのは2008年の作品『ニタンカサンソ』(タイトルをクリックすると動画ページに飛びます)。
毎年行われているショートショートフィルムフェスティバルの「STOP!温暖化部門」に応募された作品。氏の代表的なキャラクターである「コタロウ君」が登場いたします。地球温暖化をどうしたら防げるのか子供なりに必死に考えるコタロウ君とガールフレンドのお話。子供と世界、1対1で進んでいくストーリー、「なんとかしてあげたい」という思いなど、片岡作品の基本形がすでにもうできあがっております。
それに対しやや変化球的なのが次の二本。
一本目は山本周五郎の人情ものを彷彿とさせる『象煮』。病弱な女房を力づけたいと思った男は、「象の肉」だと言って怪しげな煮物を持ってくるが・・・
老人が主人公で時代劇、というところが氏のキャリアの中では珍しい作品。もっとも上にあげた「誰かを思いやる気持ち」があふれている点では後に続く作品と共通しています。「象の煮物」をめぐる夫婦のトンチンカンな会話がしみじみおかしかったです。
二本目はやはり2008年のショートショートフィルムフェスティバルに出品された『28』。蒸し暑い夜。女の子が冷房を強めに入れていたら、部屋に何者かの気配が・・・ これまた氏にしては珍しいホラー風味の一本。そんなに派手な演出があるわけではないものの、小心者としては十分怖い作品でした。まあ、オチはシュールというかなんというか(笑)
この時期はご自分の方向性を探ろうとして、いろんなものに挑戦されていたのかな~と憶測しております。
さらにネットで観られる片岡作品としてはシンガー「黒色すみれ」の楽曲『月光恋歌』PVや、これもどちらかといえばPVに近い人形アニメ『食卓』。そして以前こちらでも紹介した『Mr.バブルガム』(2009)や『SiRoKuMa』(2010)があります。特に『SiRoKuMa』は先のSSFFで三冠を達成しただけあって、演出・脚本ともにこの中では最も洗練された一本。いまそんなに時間がないという方は、とりあえずこれだけでもご覧ください。
それからすでに始まってしまったんですが、現在渋谷はユーロスペースで「NO NAME FILMS」という若手作家たちの特集上映が行われています。このうちのBプログラムで氏の『ぬくぬくの木』が上映されています。さらに30日には「片岡翔DAY」と銘打って、代表作『くらげくん』と新作『Party』『超スーパーギガゴーレムSVプラス超リーサルウエポンⅡアンドギガ』もあわせて上映。ああ・・・ 行きたい・・・ でも平日の上に終電行っちゃうから今回は行けないんだ・・・・ こういう時は地方在住の身の上が本当に恨めしいです。
片岡監督はジブリの信奉者だそうですが、ジブリで一番片岡作品に近いものというと・・・『火垂るの墓』かしら・・・
あとフランス映画の『赤い風船』『プチ・ニコラ』などが好きな方はきっと気に入られると思います。この機会にぜひ。
Comments
伍一くん、スーパーゴーレムギガッスコ~☆
さすがですね~
ジブリ作品から翔監督の作品と似ているものを持ってくるっていうところが、翔さんの凄さと、伍一君のセンスを感じるわ。
「28」は初めてみたのだけど、この私でさえ、「ドキっ」として震え上がっちゃったわ。
秀逸!!!
今回は私もちょっと行けないかも・・・
続々新作発表で、本当に楽しみね☆
Posted by: ノルウェーまだ~む | November 24, 2011 10:36 AM
>ノルウェーまだ~むさん
キャッツアインスコ~
その後お元気ですか~!!
いや~、たぶん翔さんは「『火垂るの墓』とは全然似てないよ」と言いたいと思います(笑) ジブリでは『ラピュタ』とか『魔女の宅急便』とか、もっと夢のある話が好きみたいですね
『28』は猫目映画にしてはちょっぴりお色気が漂っているところもドキドキでした(あほー)
『PARTY』はおそらく来年「1gramix」という企画で本格的な上映があるはず。そいつを狙ってます。『スーパーギガ・・・』もまた上映あるといいな・・・
Posted by: SGA屋伍一 | November 24, 2011 11:07 PM
伍一っちゃん、ありがとう!
『PARTY』は変わった作品みたいね〜
また企画どこかであったら宜しくネ。
猫目作品、ちゃくちゃくと鑑賞だね、この調子で制覇して!!
ps.ゆきえちゃん、今インド。
お父様、具合大丈夫かな。心配でしょう。お大事にしてあげてね。
Posted by: mig | December 07, 2011 01:53 AM
>migちゃん
おお、NYからありがと~
『PARTY』は下北沢の特集上映の後で翔監督が「たまには人のウケとか気にせずに作ってみようかな~と思って」と、悟りの境地のような顔で言ってたのを覚えてる。どんな作品なんだろね
ゆきえちゃんは相変わらずじっとしてないね~ 次に会えるのはいつのことやら
親父の心配もありがとう。ちょうどいま、胃をチョキチョキ切ってるところだと思う。でも命に別状とかはないので・・・たぶん大丈夫
Posted by: SGA屋伍一 | December 07, 2011 11:31 AM