わたしとおじさん イ・ジョンボム 『アジョシ』
これ、わたしの住んでるとこではちょうど昨日で上映終わっちゃったんですけどね・・・ 『母なる証明』で演技派として成長しつつあるウォンビンが、また新たなる境地を見せたハードアクション映画『アジョシ』を紹介いたします。
うらぶれたアパートの一室で、質屋を営む陰気な男がいた。だが隣の部屋に住む少女ソミはなぜか彼になつき、「アジョシ(おじさん)」と呼んでしきりとそばによりたがるのだった。だがソミの母親が犯罪組織から麻薬を奪い去ったために、ソミの身に危険が迫る。報復としてさらわれた少女を探し、「アジョシ」は組織に敢然と戦いを挑む。その恐るべき戦闘力を前に、ならず者たちは戦慄する。彼は実は政府が作り上げた元凄腕の特殊工作員だったのだ・・・
ま、ストーリーとしては割とありがちかもしれません。ざっと思いつくのは『シェーン』とか『レオン』とか。ただ、この映画ですごいのはなんといってもウォンビンの気迫でございます。目にもとまらぬアクションや、こちらに突き刺さってくるような眼光。まるでその場一体の空気が彼に支配されているかのようです。年がら年中映画を観ているわたしですが、たった一人でこれほどまでにスクリーンを緊張感でみなぎらせられる俳優はちょっと記憶にありません。少し前兵役を終えたということですが、そこで凄絶なミッションでも経験したのでしょうか。
ウォンビンがすごいのはもうひとつありまして。前半と後半でアジョシはヘアスタイルが変わるのですが、髪を短くしただけでここまで見た目が変わってしまう人は初めて見ました。なんだか顔の輪郭や造作まで変わってしまったような錯覚を覚えました。「アジョシ」の性格や行動は変わってないんですけどね。
悪者たちに対してアジョシは微塵も哀れみを見せません。その徹底した非情ぶりには相手がとんでもない悪党であることも忘れて、「もうその辺で勘弁してあげて」と懇願したくなるほどです。監督はこの作品を撮るにあたり韓国の元特殊工作員の方にインタビューしたそうですが、その際「あんたを骨だけ残して全部食べることだってできる」とか言われたそうです その取材で得た恐怖感が、この映画にも遺憾なく表れておりますね・・・
そこまでアジョシが非人間的なもんですから、かえってマフィアたちの方が人間的に見えてしまったりして。連中はちゃんと人間らしい感情を表すというか、喜怒哀楽がはっきりしてるもんですから。いや、こいつらだって子供を死ぬまでこきつかって内蔵売り飛ばすような、本当にひどいやつらなんですがね・・・
そんな血を血で洗うようなストーリーに一片の清涼感をもたらしているのが、少女ソニの存在。実はアジョシとこの子はそんなに長い付き合いでもなかったようで。途中でアジョシが「顔も思い出せない」と言ってるくらいなので(ほんとに元特殊工作員か!?) 誰からも敬遠される彼に久々にぬくもりを与えてくれたということ、そしてそんなソニがいじめられているところをつい見て見ぬフリをしてしまったこと。それだけでアジョシにとってソニは命を投げ出すに足る存在になったということなのでしょう。悪党たちにはナイフをグリグリつきたてても平然としてる彼なのに(笑) 叙情的ですね~
そんでこのソニちゃんを演じてる女の子がまた泣かせ上手なんですよ。つぶらな瞳で「それでもおじさんのことを嫌いにならないよ」なんて言われた日にゃあ、おじさんは鼻水がナイアガラ状態ですよ。本当に小さい子にいじらしいことを言わせて涙腺に訴えるのはいい加減反則だと思います。
この二人に加えてもう一人印象的なのが、組織に雇われている「ベトナム帰り」の殺し屋。周囲の悪党がギャアギャアわめいている中、彼だけがアジョシと同じクールな雰囲気を身にまとっております。そして終盤における彼の心情を思うと、またホロホロと涙がこぼれるのでした。
で、この映画他ではやってんのかな・・・ 大都市では、まだたぶん(当て推量)。
やっぱりこのほとばしる情熱と血液が韓国映画の醍醐味ってやつですよね! 近く公開されるという『チェイサー』監督の第二作『哀しき獣』もとても楽しみです!
Comments
ウォンビンホント素晴らしかった。
アイドル系だと思ってたんですけどね、ここまでできるとは。
そしてキム・セロンちゃん!伍一くんは『冬の小鳥』観てない
んだっけ?あれはもうボロボロに泣けたよ。
それにしても久しぶりに見応えある韓国映画だったなぁ。
Posted by: KLY | October 15, 2011 10:06 PM
>KLYさん
毎度ども~
わたしもいわゆる韓流四天王の一人くらいだという認識しかなかったのですが、『母なる証明』でその認識を改め、今作で「すげえヤツだ・・・」とシャッポを脱ぎました
『冬の小鳥』は実はこっちにも流れてきたんですけどね。沢木耕太郎氏が新聞で全部あらすじ紹介してくれた上に、それがあまりにもかわいそうな話だったのでスルーしてしまいました。あはは
Posted by: SGA屋伍一 | October 16, 2011 07:46 PM
ごいちーおはよー
アジョシ、世間的にすごく評判いいのよね〜
私はそこまでハマらなかったな。
他の韓国の猟奇もののほうがすき。
変に女の子との友情の感動作みたいにしてるとこがいまひとつ。。。
チェイサーの監督の作品そろそろなのかな。タノシミ♪
あ、翔のあれみた??
Posted by: mig | October 20, 2011 09:03 AM
>migちゃん
こんばんはー・・・になってしまった 今日もお仕事お疲れ様
実はわたしも『オールドボーイ』や『チェイサー』、『トンマッコルへようこそ』ほどではないな、と思った。・・・と言いつつ幾つかの場面ではデロデロないてたんだけどね(笑) 年を食うと涙もろくなっていかんよ
『哀しき獣』は確かTIFFで先行上映して、来年の一月か二月に一般公開だと思った。こっちでもやってくれますように~
で、翔さんのはまだ観てなかったりして。ここんとこ忙しくてごめん~ 今週中には観る予定!
Posted by: SGA屋伍一 | October 20, 2011 11:10 PM
骨だけ残して全部食べることもできる・・・って
なにそれ!怖すぎる・・・・・・
最初はそれこそ「アジョシ」と呼ぶにふさわしい、ガンホくらいのオジサン俳優を想定していたと聞きましたがウォンビンでよかった。
なんせかっこよすぎる、ウォンビン!完全に見る目かわりました。
女の子にはもちろん私も泣かされて、てか劇場内わりとみんな泣いてましたが
特に私の隣りの隣りの女性が、身を乗り出してハンカチ握りしめて
泣きじゃくっていました。
ほんと反則ぎりぎりの泣かせだったなーと思うのですが
ソミ役の子が絶妙に上手くて、わざとらしい感じがしないところがよかったです。
へぇー、『チェイサー』の監督、2作目は『哀しみの獣』かぁ。
こっちへ来るのは当分先でしょうが・・・たのしみです。
Posted by: kenko | October 25, 2011 08:26 PM
>kenkoさん
こんばんは。おかえしども♪
そうですね・・・ きっとあちらの工作員さんは「人体をおいしく食べる調理法」みたいなの習うんですよ・・・ 怖えええ
たしかに「おじさん」といったら普通はガンホさんみたいな俳優の方がしっくりきますよね。ただガンさまだったらあそこまでの眼光やアクションの鋭さは出せないかな。「人の良さ」みたいなものが見え隠れしてしまって
あまり「泣ける!」という触れ込みではありませんでしたが、場内そんなに号泣の嵐でしたか(笑) ソミちゃんは瞳のキラキラした美少女ではなくて、いかにもその辺にいそうな普通っぽさがよかったです
『哀しき獣』公式サイトはこちら
http://kanashiki-kemono.com/
まだTOP絵くらいしかないけど。こちらには来てくれるかな・・・
Posted by: SGA屋伍一 | October 25, 2011 10:57 PM
こんばんは~
こちら,やっとリリースされたので観ました。
ウォンビンってかねがね「キ●タク」に似てると思ってたんですが
いやはや,俳優としての器も美形度も彼とは桁違いに凄いですね。
私は基本,彼は童顔だと思ってるのですが
今回はきっと減量して臨んだんでしょう,とても精悍に引き締まって
それにあのワイルドな眼光・・・一昔前,韓ドラで出ていたころの
せいぜい愛すべき「悪ガキ」にしか見えなかった彼と大違いで
確かに彼は兵役に行ってから一皮むけたと言えましょう。
それにしても,こういう「レオン」系のお話…私も好きですね。
Posted by: なな | February 09, 2012 12:05 AM
こんばんは~
キムタクかあ(笑) いや、彼も『武士の一分』などではなかなかいい演技してましたが、こういうギラギラした熱さはないですよね。それはキムタクに限らず今の日本の若手俳優全員に言えることで。それだけ日本は平和ってことなんでしょうね
童顔といえば『母なる証明』での彼はほんとかわいらしかったですよね。役柄のせいもあったかもしれませんが。もしこの作品をポン・ジュノが撮ったならば、もっと情け容赦ない結末になったような気がします
Posted by: SGA屋伍一 | February 10, 2012 11:41 PM