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October 30, 2011

お米の国の旗の下 ジョー・ジョンストン 『キャプテン・アメリカ』

111028_202710ハルク、アイアンマン、ソーと続いた「アヴェンジャーズ・プロジェクト」も、ようやく最後の一人となりました。長い道のりだったなあ! おい! それでは満を持しての登場となった世界最初のアヴェンジャー『キャプテン・アメリカ』、ご紹介いたします。

第二次大戦もたけなわのころ。熱意あふれる青年スティーブン・ロジャースは、軍に入隊して国の役に立ちたいと願っていたが、生まれついての病弱な体質ゆえ、何度も試験に落とされていた。しかしそれでも諦めないロジャースを見て、一人の男が彼に近づく。男の名はアースキン博士。軍の依頼で「超人兵士」を開発するための被験者を探していたのだった。やがて正式にその被験者に選ばれたロジャースは、常人をはるかに越えた能力を持つヒーロー「キャプテン・アメリカ」として生まれ変わる。だが最初に彼に任された仕事は国民へのプロパガンダとして「国債を買おう!」と呼びかけることだった・・・

え~~~!? と驚かれた皆さん、ご安心ください。ちゃんとその後にはヒーローらしい活躍場面が準備されています。その前にまず「キャプテン・アメリカ(通称キャップ)」というキャラクターについてちょこっとだけ説明いたしましょう。

数あるマーベルコミックスのキャラクターの中でも、キャプテン・アメリカとサブマリナーは特別な存在と言えます。なぜかというと、この二人はマーベルが創設される(1967)以前に別の会社で作られたキャラだからです。つまりマーベルさんよりも年長というわけ。出自はほぼ映画と同じで、当初はあからさまに戦意高揚をウリにしたキャラでした。第一号の表紙では思い切りヒトラーにパンチを食らわていたりするんですが、そういうわかりやすい位置づけが映画の中では上手にパロディ化されておりました。しかし当然戦争が終わってしまうと人気は低下。出版が途絶えていたところをマーベルが権利を買い取り、アメリカの理想と現実に悩むキャラとして再生させ、現在にいたります。

そんなわけで今では見かけほど右翼なヒーローではないのですが、スタイルも名前も微妙だし、X-MENやスパイダーマンほど愛着のあるキャラではありませんでした。でもこの映画の「キャップ」のことはずいぶんと気に入ってしまいました。。
原作のキャップは歴戦の勇士ということもあり、不安定な(笑)ヒーローの多いマーベルの中では、群を抜いて大人であり人格者であります。そこが頼もしいっていや頼もしいんだけど、反面親しみにくかったりもして。
しかし映画版では改造前のスティーブン・ロジャースが、いかにもやしっ子であり非モテ系であったかということをこれでもかこれでもかというほど強調します。そんなスティーブン君に感情移入しないわけがないでしょう!!cryingcryingcrying そして彼の悩みは改造後も国の客寄せパンダとして利用されることでなおも続きます。

以下はさらにどんどんネタバレしていくのでご了承ください。

そういえばなぜスティーブンはあそこまで軍に入ることを志願したのでしょう。たぶんわたしは「家族のために何かしたかったから」ではないかと考えています。映画でははっきり語られませんでしたが、一応原作では彼は少年時代に両親と死に別れたことになっています。兄弟も親しい親族もいない天涯孤独の彼にとって、残った家族と言えるものは、親友のバッキーとアメリカ以外に何もなかったのでしょう。
そして持ち前のガッツでがんばり続けることによって、スティーブンの周りにはいつしか「家族」と呼べるような人々が集まり始めます。しかしそれは本当につかの間のことで。
ようやく得た家族が遠く過ぎ去った時代で、再び目覚めるキャプテン・アメリカ。そこには(少なくとも表向きは)清く正しかったころの「アメリカ」はもうありません。迷子のように見知らぬ土地に放り出されたキャップがあまりにもかわいそうで、わたしはただハラハラと涙を流したのでしたcrying

111028_202830はたして彼は七十年後の世界で新たな家族を得ることができるのか・・・ それについては来年いよいよ公開される『アヴェンジャーズ』で語られる・・・のかな? いやあ、これ本当に実現するんだなあ・・・ 来年までは何があっても死ねないでやんす。

『キャプテン・アメリカ』は現在全国の劇場で細々と公開中coldsweats01 近所ではもう一日一回になっちゃったよ! まだ観に行ってないひとは早く行ったほうがいいよ!
あと映画化記念で最近邦訳された『キャプテン・アメリカ:ウィンター・ソルジャー』という作品がすんごくいいです! 映画を観て興味を持たれた方はこちらもぜひ!

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October 26, 2011

わくわくお猿ランド ルパート・ワイアット 『猿の惑星 創世記』ほか

Saru1♪さる ごりら ちんぱんじー あの名作シリーズが演技派ジェームズ・フランコを迎えて再び登場。今回は第一作のさらに前を描く「エピソード1」的な位置づけ。『猿の惑星 創世記』、ご紹介します。

時はほぼ現代。若き科学者ウィルは、父のアルツハイマーの進行を止めるべく新薬の開発に血道をあげていた。だが開発の途中で実験体の猿が暴走。研究は中断に追い込まれる。ウィルは実験体が生んだ子猿をひきとり、ひそかに育てることにした。やがてシーザーと名づけられたそのチンパンジーは、人に肉薄するほどの知能を身に付けていく・・・

まずわたしのシリーズに対する印象などを。
第一作はだいぶ前に地上波で観ました。結末を含めてあまりにも有名なので、さほど感動もなかったというか。「惑星」とついてる割に狭い村の周辺をうろちょろしてるだけだったのもトーンダウンでした。
それに比べると二作目『続・猿の惑星』はまあまあ楽しめました。前作よりスケールアップしてましたし、先を予想させない展開でしたし。あと解説で竹中直人さんが「未来人がー 怖かったー」と言っていたのが無性におかしかたったです。
そして第三作『新・猿の惑星』。進化したお猿たちがタイムスリップして現代にやってくるという超強引な出だしなんですが、これがすごくよかったんですねえ。前二作と比べて明らかに予算がガクッと減ってるんですが、発想の転換でこれだけ面白いものになるという、奇跡のような作品です。

第四作『猿の惑星 征服』と第五作『最後の猿の惑星』は未見。たぶんこれらの作品、地上波では深夜で1、2回くらいしか放映してないんじゃないでしょうか。ちなみに1・2作目はゴールデンタイムにリアルで、3作目はテレ東で昼にやってたのを録画して観ました。

そして2001年のティム・バートン版は劇場で観ました。ところがこれがその年のワーストかってくらい印象がよくなくてw いや・・・ 今落ち着いて考えてみると、ラスト直前まではそれなりに楽しんで観てたかな。でもそれを全部忘れさせてくれるくらい、オチがひどかった。どうもわたしは「ごめ~ん。ふざけちった♪ てへぺろbleah」とか言ってるようなラストにカチンときやすいみたいです。

で、ようやく新作の話。よかったのは、あの色々と無理矢理だったシリーズを、かなり現実的なところまで近づけているということ。これだったら「ぶっとんだ話は苦手」という人もギリギリついていけるでしょう。
シーザー演じるアンディ・サーキスの演技もすばらしかった。彼は『ロード・オブ・ザ・リング』のゴラムや、『キングコング』のキングコングなどを演じた「モーションキャプチャーカリスマ」とも言える存在なのですが、本当に目ヂカラがすごい。「目は口ほどにものを言う」と言いますが、ほとんど言葉なしで様々な感情を表現していました。
あとそのCGやモーションキャプチャーで作られた猿たちのアクションが、目にもとまらぬほどに鮮やかです。おそらく『キングコング』を除けば、史上最高の猿アクションと言っていいでしょう。『海猿』も目じゃないと思います。

一方で苦手だったのは、これ、基本的にかわいそうな話なんですよね・・・ シーザーやウィルに感情移入すればするほど、こちらまでどんどん悲しい気分になってまいります。あとはまあ終盤の展開にいろいろと腑に落ちないところがあったりとか。

しかしまあ、日米でこんだけ大ヒットしてるということは、やっぱりそれだけの面白さがある作品、ということなのでしょう。この映画の話を最初に聞いたとき、「なぜ今頃『猿』?」と思いましたが、そんなにも両国にお猿好きがいらっしゃったとは。 わたしゃてっきりよくてトントンくらいのヒットだと思ってましたcoldsweats01

Saru2そんな『猿の惑星 創世記』は現在全国の劇場で大ヒット公開中。もし続編を作るのであれば、今度の副題は「創世記」に会わせて「黙示録(アポカリプス)」がよいのでは。原題(Rise of the Planet of the Apes)にはどこにも「創世記」とは書いてないんですがね~

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October 23, 2011

地面の底からこんにちは エミール・クストリッツァ 『アンダーグラウンド』

111021_211604ユーゴスラビア出身の個性派作家エミール・クストリッツァの代表作が、ニュープリントにあわせて再上映。「20世紀のベストに必ず入る」という『アンダーグラウンド』、ご紹介します。

第二次大戦たけなわのユーゴはベオグラード。レジスタンスの名コンビ、暴れん坊のクロと洒落男のマルコは、神出鬼没の攻撃でナチスを悩ませていた。しかし気の多い美人女優のナタリアが間に入ったことから、二人の友情はギクシャクし始める。やがてレジスタンスはナチスの猛攻から逃れるため、地下の広大な空間に避難する。ナタリアと共に地上に残ったマルコは、戦争が終わった後も彼らをだまして地下に閉じ込め、なおも大量の武器を作らせ続けるのだった・・・

作品は一応三部構成となっておりまして、ナチスとの戦いを描いた第一部「戦争」、チトー統治下の平和な時代を舞台とした第二部「冷戦」、そして再びユーゴが再び砲火に見舞われる第三部「戦争」となっております。
こう書くとなにやら重厚な歴史ドラマのような印象を受けるかもしれませんが、第二部までは「そんなんありえないやろー」と言いたくなるようなスラップスティックなムードに包まれています。「なんで手榴弾が間近で爆発してるのに死なないんだ!?」とか、「そんな長いこと地下に閉じ込められてて、いい加減誰か外に出ようとか思わんのか?」とつっこみたくなることうけあい(笑)。絶え間なくドンプカ流れている管楽器の調べがまたなんともにぎやか。対ナチス・レジスタンスってえと常に死ととなり合わせの悲壮な戦い、みたいなイメージがありますが、楽隊をひきつれて大行進してるクロとマルコには、そんなムードはかけらもありません。

ところが第三部に入ると一転、そうしたにぎやかさはなりを潜め、ただただ血なまぐさいユーゴ内戦の惨状に胸を締め付けられます。そう、いつのまにやら忘れてしまっていたけど、この映画が作られた90年代、ユーゴではいつ果てるとも知れぬ殺し合いが繰り広げられていたんですよね・・・ 遠い地のこととはいえ、しばらくの間思い出すことさえなかった自分を少し反省いたしました。
先日『キャプテン・アメリカ』を観たときにも思ったのですが、ここでわたしはマルコやクロ、そして映画にとってのナッチのありがたさというものを感じずにはいられませんでした。ありがたさ・・・というと少し語弊があるかもしれませんが。

つまりナチスほど、映画の中で悪役にしやすいものはないというか。彼らならばどんなに悪く描いても、派手にやっつけてもほとんどどこからも文句はこないでしょう。理由としてはヒトラーという余りにもわかりやすい象徴がいること、実際に人類史上最も恐るべき蛮行を犯したという史実、そしてさすがに五十年以上時を経た今となっては、若干フィクションの中の存在のようになってしまっていること。映画作家のみなさんもそんだけネタにしやすい存在だからこそ、次から次へとナッチ関連の作品を作り続けているのでしょう。

しかしナチスがいなくなったあとマルコはウソを重ね続けなければならなくなり、共通の敵を失ったユーゴは陰惨な内戦へと突入することになります。劇中ではナチスものの映画が作られるくだりがあるのですが(ややこしい・・・)そのお気楽さと、当時限りなくリアルだったユーゴ内戦の深刻さが見事な対比となっていました。

そうした歴史の皮肉さとは別に、二人の男と一人の女の笑える愛憎劇としても、十分面白いです。思い込んだら一直線で、恐れを知らないクロ。何事にも計算高いようで、その実心のどこかに良心のとがめを感じているマルコ。クロにもマルコにも愛嬌をふりまき、二人を迷わせるナタリア。エネルギッシュな三人がドタバタはしゃいだりいがみあったりしてるのが、本当に愉快でありました。
ちなみにわたしが特に感情移入してしまったのはマルコさん。なんかこう、ウソをつき続けてどんどん引っ込みがつかなくなってくあたりとか、そういうダメ男っぷりが自分に特に近いように感じられたので(笑)

111021_211823『アンダーグラウンド』ニュープリント版は、メイン劇場であるシアターNでは今週いっぱいで終了なのですがcoldsweats01、今後も横浜のジャック&べティ他全国主要都市で公開予定。そのうちDVDの新版も出ることでしょう。この予告編を観ていただければ、そのしっちゃかめっちゃかさが伝わるのではないかと。

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October 18, 2011

西太后の暗殺団 テディ・チャン 『孫文の義士団』

Sonnbunn2そういえば最近香港の映画って観てないっす。『レッドクリフ』以来かな? 第4回アジアン・フィルムアワードほか、数々の賞に輝いた『孫文の義士団』、ご紹介します。

時は1906年。腐敗した清王朝を倒すべく、孫文は仲間たちと各地で蜂起の計画を練っていた。このことを苦々しく思っていた時の支配者・西太后は、孫文が香港で同志たちと会談を開くという情報を入手。500人もの暗殺団をかの地にさしむける。孫文の支援者である豪商リー・ユータンは血気盛んな若者たちをつのり、会談の間なんとか彼を守り抜こうと決意するのだが・・・

で、この義士団の主なメンバーですが、まずユータンさんの人力夫。父を殺された劇団員のお嬢ちゃん。少林寺から逃げ出して豆腐屋をやっている大男。バクチ三昧で女房に逃げられた遊び人。そして身を持ち崩してホームレスに成り下がった若旦那・・・と強そうな人が一人もいない(まあ強いて言うなら豆腐屋さんくらい?)。ところがいざ本番となるとそれぞれが一騎当千の猛者ぶりを見せるから驚きです。まあその辺は「もともと潜在的に強かった」ということで流しましょう。本当にそんな強引さが気にならないくらい、アクションがすごい。とくにすごいのが今年なんでか出演作がどしどし公開されているドニー・イェン。彼が香港の町並みを豪快にジャンプしながら疾走するシーンは、見ていて目が回るほどでした。
もうひとつすごいのが当時の香港の町を再現したという巨大なセット。なんでも作るのに八年を要したとか(ひえー)。世界不況著しい中、まっことスケールのでかいことをやってのけたもんです。

ただそんだけ色々すごくはあるのですが、ストーリーの方はどうにもフラストレーションがたまりました(笑) 革命派の皆さんは「誰もが平等な社会を作るため」孫文を守ろうとするのですが、その孫文一人を守るために大勢の若者たちがばたばたと死んでいきます。それこそ不平等以外のなにものでもないような・・・ わたしはこれを「プライベート・ライアン・ジレンマ」と名づけました。さらにその矢面に立つ若者たちの多くが、革命の思想に共鳴したわけではなく、成り行きとか義理人情で命を散らしていくのがまたなんとも切ない。
監督はその辺の皮肉に気づいていないのか、あえて狙ってやってるのかはよくわかりません。ラストの孫文の微妙~な表情を見ていると、やっぱ狙ってやってるのかな・・・という気はしますが。暗殺団のリーダーがステレオタイプの悪役ではなく、彼なりに国を憂いて行動しているところも、単純な革命万歳ものにはなってはいません。

以下、だいぶネタバレしてます。

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わたしが特に鼻水がダダもれしたのは、人力夫アズーとユータン氏の息子チョングアンの友情や、チョングアンと孫文の母があいまみえるシーンなど。フィクションでありながら、こうした若者たちの己の身をかえりみない純粋さには本当に心打たれます。ああ、なんとか助かってほしい・・・! 心からそう願わずにはいられません。だのにそんなわたしのささやかな願いを踏みにじる、鬼のような脚本。あああもう! どうして中華の人たちってそうなのよ!!

Sonnbunn1ほめてんだかけなしてんだかさっぱりわからないレビューになってしまいました。『孫文の義士団』はさすがに全国のどの劇場でも公開が終わってしまったようです。あと残ってるのは群馬のシネマテーク高崎くらいですかね。ていうか来月にはもうDVDが出ます・・・


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October 15, 2011

わたしとおじさん イ・ジョンボム 『アジョシ』

111015_145116_2これ、わたしの住んでるとこではちょうど昨日で上映終わっちゃったんですけどね・・・ 『母なる証明』で演技派として成長しつつあるウォンビンが、また新たなる境地を見せたハードアクション映画『アジョシ』を紹介いたします。

うらぶれたアパートの一室で、質屋を営む陰気な男がいた。だが隣の部屋に住む少女ソミはなぜか彼になつき、「アジョシ(おじさん)」と呼んでしきりとそばによりたがるのだった。だがソミの母親が犯罪組織から麻薬を奪い去ったために、ソミの身に危険が迫る。報復としてさらわれた少女を探し、「アジョシ」は組織に敢然と戦いを挑む。その恐るべき戦闘力を前に、ならず者たちは戦慄する。彼は実は政府が作り上げた元凄腕の特殊工作員だったのだ・・・

ま、ストーリーとしては割とありがちかもしれません。ざっと思いつくのは『シェーン』とか『レオン』とか。ただ、この映画ですごいのはなんといってもウォンビンの気迫でございます。目にもとまらぬアクションや、こちらに突き刺さってくるような眼光。まるでその場一体の空気が彼に支配されているかのようです。年がら年中映画を観ているわたしですが、たった一人でこれほどまでにスクリーンを緊張感でみなぎらせられる俳優はちょっと記憶にありません。少し前兵役を終えたということですが、そこで凄絶なミッションでも経験したのでしょうか。

ウォンビンがすごいのはもうひとつありまして。前半と後半でアジョシはヘアスタイルが変わるのですが、髪を短くしただけでここまで見た目が変わってしまう人は初めて見ました。なんだか顔の輪郭や造作まで変わってしまったような錯覚を覚えました。「アジョシ」の性格や行動は変わってないんですけどね。

悪者たちに対してアジョシは微塵も哀れみを見せません。その徹底した非情ぶりには相手がとんでもない悪党であることも忘れて、「もうその辺で勘弁してあげてcrying」と懇願したくなるほどです。監督はこの作品を撮るにあたり韓国の元特殊工作員の方にインタビューしたそうですが、その際「あんたを骨だけ残して全部食べることだってできる」とか言われたそうですshock その取材で得た恐怖感が、この映画にも遺憾なく表れておりますね・・・
そこまでアジョシが非人間的なもんですから、かえってマフィアたちの方が人間的に見えてしまったりして。連中はちゃんと人間らしい感情を表すというか、喜怒哀楽がはっきりしてるもんですから。いや、こいつらだって子供を死ぬまでこきつかって内蔵売り飛ばすような、本当にひどいやつらなんですがね・・・

そんな血を血で洗うようなストーリーに一片の清涼感をもたらしているのが、少女ソニの存在。実はアジョシとこの子はそんなに長い付き合いでもなかったようで。途中でアジョシが「顔も思い出せない」と言ってるくらいなので(ほんとに元特殊工作員か!?) 誰からも敬遠される彼に久々にぬくもりを与えてくれたということ、そしてそんなソニがいじめられているところをつい見て見ぬフリをしてしまったこと。それだけでアジョシにとってソニは命を投げ出すに足る存在になったということなのでしょう。悪党たちにはナイフをグリグリつきたてても平然としてる彼なのに(笑) 叙情的ですね~

そんでこのソニちゃんを演じてる女の子がまた泣かせ上手なんですよ。つぶらな瞳で「それでもおじさんのことを嫌いにならないよ」なんて言われた日にゃあ、おじさんは鼻水がナイアガラ状態ですよ。本当に小さい子にいじらしいことを言わせて涙腺に訴えるのはいい加減反則だと思います。

この二人に加えてもう一人印象的なのが、組織に雇われている「ベトナム帰り」の殺し屋。周囲の悪党がギャアギャアわめいている中、彼だけがアジョシと同じクールな雰囲気を身にまとっております。そして終盤における彼の心情を思うと、またホロホロと涙がこぼれるのでした。

111015_145130_4で、この映画他ではやってんのかな・・・ 大都市では、まだたぶん(当て推量)。
やっぱりこのほとばしる情熱と血液が韓国映画の醍醐味ってやつですよね! 近く公開されるという『チェイサー』監督の第二作『哀しき獣』もとても楽しみです!

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October 12, 2011

かわいいベジビー 黒坂圭太 『緑子』

Midorikobお、未消化記事あと二本か。最近がんばってんじゃん、オレ・・・ などと余裕こいてたらあっという間に一週間経ってしまいましたよ!
『チェブラーシカ』に始まり『ファンタスティックMr.FOX』『イリュージョニスト』『メアリー&マックス』『サヴァイビング・ライフ』と、アート系アニメ華やかなりし2011年でしたが(もう回顧モードかよ!)、日本代表はこの作品でしょうか。鬼才黒坂圭太氏が13年の歳月をかけた力作ドローイングアニメ『緑子』、紹介いたします。

時はおそらく近未来。食料危機を憂う五人の科学者は、新種の食物を作り出すべく実験を繰り返していたが、開発は難航していた。そんなある日一万年に一度現れるという特殊な天体「マンテーニャ」の星が出現。その光をあびた実験体は、植物と人間の融合体として完成を見る。しかし直後に実験体は脱走。おんぼろアパートでやはり植物を研究している院生、緑に拾われ、「緑子」と名づけられるのだが・・・

・・・ということが公式サイトを見ると書いてあるのですが、劇中ではこうした説明が一切ありません。謎の生物が謎の物体の回りで踊り狂っていると思ったら、突然物体の方がすっとんでいき、緑ちゃんの部屋に乱入してくるという流れ。さらに半人半魚や八面六臂のような怪物が普通に人として扱われているので、脳みそをもずくなみにやわらかくしないととてもついていけません。たぶんつげ義春の『ねじ式』とか、吉田戦車の『伝染るんです』などが好きな方だったら、違和感なく入っていけるんではないかと。
あと上映館の近くで昨年展覧会をやっていたからってわけではありませんが、わたしとしてはブリューゲルの描く様々な異形を思い出したりして。確かあれらのヘンテコな生き物のいくつかは、人間の欲望を表したものであったような。この作品でもたくさんのユーモラスな怪物が、「緑子」を食べることに異常な執着を示します。
その対極にあるのが唯一緑子を「守りたい」と願う緑ちゃん(ややこしい)。多くのキャラクターがわけのわからんデザインなのに対し、彼女だけが普通の人間の形をしています。愛こそが人間を人間たらしめている、ということなんでしょうか。ただ正確に言うならば普通の人間は、他にもう一人だけ「山本さん」というキャラがいます。彼は彼でやっぱり欲望むき出しなんで、上の説はあんましあてにならないかもしれません。

あと作者の黒坂先生の談によれば、この物語はキリスト降誕のエピソードを基にしているのだとか。世を救うべく生まれた緑子ちゃんはキリストで、五人の科学者は東方の三博士だそうで。そうすっと緑ちゃんは聖母マリアということになるのかな? そういえば聖書にはキリストが自分の肉をパン(食物)になぞらえている一節もあったような。

まあそういった小理屈はさておいて、この作品の最大の魅力は、やはりその絵や動きから放たれる巨大なパワーですね。なんせ一人の人間の十三年分のエネルギーが、55分の中に凝縮されているわけですから。一切の手抜きを許さない緻密な線のゆらめきには見ていて圧倒されました。私が観た回では黒坂先生のトークショーが付いてたのですが、「途中で何分くらい破棄した」とか「スキャナーに取り込んだものとフィルムで撮ったものの差が気になる」というお話を聞いていて、「この人、骨の髄まで完全主義者なのね・・・」と感じ入りました。ちなみに上映されたものも後半はいろいろ気になるところがあるそうで、DVD化の際は修正されるとのことでした。

愛情と欲望がからみあい、カタストロフを迎えるクライマックスは一見凄惨でありながら、音楽も手伝ってか不思議と暗い印象を受けませんでした。むしろ一種の爽快感すらあるような。

Midorikoa『緑子』は現在渋谷はアップリンクXにて上映中。世界に浸透していると言われているジャパニメーションですが、こんな世界もあるんやで!ということでひとつ。


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October 05, 2011

水没スペシャル アリスター・グリアソン 『サンクタム』

Photo♪かーわぐっちーひろしがー どーくつにはーいるー これまた震災のあおりを食らって公開が延期されてた映画。ジェームズ・キャメロンが製作に加わった3D冒険映画『サンクタム』、ご紹介いたします。

洞窟・・・ それは人類最後の秘境。数々の洞窟を調査してきた冒険家のフランク・マクガイルは、パプワニューギニアの巨大な竪穴がどこにつながっているかを解明すべく、クルーたちと潜水を繰り返していた。その中には息子のジョシュもいたが、彼は家庭を顧みてこなかった父にわだかまりを感じていた。
アクシデントは突然やってきた。島の上空にハリケーン通過し、大量の雨水を洞窟に注いだのだ。入り口を濁流にふさがれたマクガイル親子たちは、いまだ正確にはわかっていない反対の入り口を目指し、洞窟のさらに奥へと進んでいくが・・・

冒頭でおなじみのあのテロップ「この物語は実話に基づいている」が入ります。なんでもこの作品はキャメロンの撮影クルー、アンドリュー・ワイトの経験が基になっているのだとか。ただその経験読んでみたけど映画と全然違うよ(笑)  というわけでより正確に言うならば、「実話をもとに作ったフィクション」といったところでしょうか。

映画のメインはもちろん洞窟探検、というかサバイバルなんですが、それと並行して親子の葛藤のドラマも語られます。なぜ親子の物語にしたのか・・・ もしかしたらジュール・ベルヌの名作『地底探検』へのオマージュなのかもしれません。こっちの親子はもっとほのぼのしてましたけどね。
なんでそんなに洞窟にこだわるのか? そうたずねる息子に父はこう答えます。洞窟は彼にとっての教会なのだと。洞窟に来ると迷いが消えると。だったらフツーに教会行ったほうが安全じゃない? と言いたくもありますが、人によって信じるものやフェチどころは違います。フランクの自己啓発の場所は洞穴しかなかったということなのでしょうね。わたしはどこだろう。布団かなあ。

お話としてはRPGに近いものを感じたりして。ひとつの難関を知恵と度胸でクリアしたら、また次の難関が立ちふさがって・・・という繰り返し。ただRPGではパーティーの人数はそれほど変わりませんが、こちらはどんどん数が減っていくから恐ろしい。永井一郎さんに「君は、生き延びることができるか?」と言ってほしいくらいです。怖いといえば水中でコパッと目を見開いて死んでいく描写もけっこうショッキングでしたshock 身の周りにフツーに酸素があることに、本当に感謝したくなります。

Photo_2ちなみに「サンクタム」ってえのは英語で「神聖な場所」という意味だそうで。あれ? それは「サンクチュアリ」じゃないの? ・・・まあいいや。そんなタイトルだけあって、水中の映像は本当に美しい。スキューバとかやってみたいけど、お金も時間もないという人は代わりにいかがでしょう。ただそろそろ上映終了しそう。ご興味おありの方はお早めにー


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October 03, 2011

退却しNe-Yo!!  ジョナサン・リーベスマン 『世界侵略:ロサンゼルス決戦』

110930_215520_2本当なら四月に公開される予定が、震災の時期で「ふさわしくない」ということになり、やっとこお目見えとなった『世界侵略:ロサンゼルス決戦』、ご紹介します。

陽光のどかな西海岸ロサンゼルス。駐留していた海兵隊の面々は、そこに住む人々と同じく平和を謳歌していた。だがある日突如として、宇宙から未知の物体が海面めがけて落下してくる。海から浮上したその物体は、陸地の人々に対し無差別攻撃を始めた。あまりの想定外の事態に、空軍はロスを見捨て空爆することを決定。ナンツ二等兵曹らはタイムリミットまでに取り残された民間人を救うため、敵地と化した都市へ決死の潜入を試みる。

「人類滅亡」をうたった映画も本当に飽きることなく作られ続けております。ただ今年は微妙にその内容に変化が生じてきていて、少し前までは自然災害やゾンビなどが主流だったのに対し、ここにきてかなり「宇宙人からの侵略」が多くなってきました。これはもしかして世相の一面を反映しているのでは・・・ そんな風に分析してみようかと思いましたが、面倒くさいのでやめます。
まあそんな乱発気味の宇宙人映画の中では、今回の『ロサンゼルス決戦』、特に「リアル感」を重視して作られていたと思います。ナンツ二曹率いる小隊の戦い方は、別に超兵器を使うわけでもなく、おそらく人間相手のそれと変わりないものです。また宇宙人のデザインも先の『スカイライン』などに比べて地味でありました。

ストーリーは「戦闘戦闘また戦闘。たまに脱出」みたいな感じで、のれる人は緊張が切れないかもしれませんが、のれない人は単調に感じるかも。わたしはやっぱり宇宙人好きですし、でっかいものが壊れるとついはしゃいでしまう性分ですので、なかなかに楽しませてもらいました。あとやっぱり身を挺して仲間を救う、みたいな話に弱いんですよね・・・ なんだかんだいって右翼的な血が心の底に流れているのかもしれません。

一点「おや」と思ったのは、主人公こそ白人のアーロン・エッカートであるものの、隊のメンバーに非常に黒人・メキシコ系が多いこと。「人種の壁を乗り越えて困難に立ち向かおうよ!」ということなのか、実際に海兵隊では彼らの割合が高いのか。冒頭でそんな陽気な小隊の面々を一通り紹介してくれるんですが、こちらの記憶容量では「少尉」「メガネ」「童貞」「アフリカ」「墓参り」と覚えるだけで精一杯でした。ちなみにメンバーの一人を演じているのがラッパーとして人気の高いNe-Yo 。まあ彼が誰を演じてたのか未だにちゃんとわかってないんですけど。

あと疑問なのは、なんで話の舞台がロサンゼルスなのかってことですよね。なぜアメリカの中心たるニューヨークでもワシントンでもないのか。ロスって日本で言えば大阪みたいなもんでしょ?(え? 違う?)
ま、この疑問に関してはウィキペディアを読んで解決できました。なんでもLAでは1942年に謎の飛行物体と戦闘したという記録が残ってるらしいんですよ。単にUFOや宇宙人とゆかりの深い土地だったということですね。なんか怖い町やわ・・・

110930_215551そんな『世界侵略:ロサンゼルス決戦』は現在まだ公開中。あと二週くらいはやってるでしょうか。今後の宇宙人映画は『カウボーイ&エイリアン』もありますが、個人的には年末に公開されるほのぼの系の作品『宇宙人ポール』がすごく楽しみです


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