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September 18, 2011

スパナのヒーロー、略して ジェームズ・ガン 『スーパー!』

Photoおそらくかつてないほどにアメコミ映画ラッシュとなっている2011年。その中でも最も異色作と言えるのがこの『スーパー!』(正確には原作なしのオリジナルだけど)。それではあらすじから参りましょう。

食堂でコックとして働いているフランクは、顔も性格もパッとしない中年男。彼には不釣合いなほどに美しい妻・サラがいたが、ある時そのサラが家から姿を消してしまう。街の顔役ジョックといい仲になってしまい、彼の元に身を寄せたのだ。納得のいかないフランクは妻が誘拐されたと思い込み、正義の自作ヒーロー「クリムゾン・ボルト」となって犯罪と戦うことを誓う。

この映画の不幸なのは、昨年暮れに公開された『キック・アス』と発想が似通ってしまったこと。超能力も超頭脳も莫大な財産もない平々凡々の人間が、スーパーヒーローになろうとしたらどうなるか? それをリアルに追求したのがこの2作品なわけですが、そのせいで「『キック・アス』の二番煎じ」と思ってしまった人は多いかも。『スーパー!』は『キック・アス』よりもさらに現実的な内容なんですけどね。
あと『キック・アス』では主人公が若者だったので「中二病だよねw」と微笑ましく観ることもできましたが、こちらはいい年こいたおっさんが同じことをやっているので、ただひたすら痛々しく、ほろ苦いです(笑えるところもありますが・・・)
もう一点、この映画の独特な点をあげるとするなら、『スーパー!』はアメコミ映画のようでいて、芯の部分は信仰を描いた映画であるということ。フランクはもともとアメコミが好きだったわけではなく、偶然神の啓示(のような夢)と、アメコミドラマを続けて見てしまったために、なりきりヒーローとなる道を選びます。

ただその辺の特殊な訓練を積んでるわけでもない男が、ギャングや悪漢に立ち向かうには武器が必要です。で、とりあえずフランクが選んだ武器がでかいスパナ。ヤクの売人やひったくりや変態、果ては行列に割りこんだ男まで、そのスパナで脳天をカチーンとカチ割ります。その描写のなんともえぐいこと。フランクもあとで押しかけ相棒の「ボルティー」が同じようなことをやっているのを見て、自分の残酷さに気づきますが、本当に一瞬だけでしたw

そんなフランク=クリムゾン・ボルトですが、我々からしてみれば正義の味方には程遠く見えます。だって彼は他の誰かのために戦っているのではなく、妻が出て行ってしまった悔しさをむかついたヤツにぶつけているだけなのですから。一方で彼のあまりにも不幸な人生を思うと、「無理もないか…」と同情的になってしまったりして。さえない人生を送ってるという点では、わたしもどっこいどっこいですからね(笑)

フランクも色々あってクライマックスではようやく「誰かを救う」ための戦いに身を投じます。するとあんだけ野暮ったかった彼が、なんだか本物のヒーローのように見えてくるから不思議です。ま、やってることは同じ残虐行為なんですけどね。というかむしろ前よりスゴイことやってる・・・

フランクを見ていると「信仰の恐ろしさ」というものを思わずにはいられません。信仰の力によって人は幾らでも強くなれるし、勇敢にもなれる。そして幾らでも残酷になれる。信仰にもいろいろな形があり、フランクレベルまでいってしまう人は本当にごくごく一握りだとは思いますが。

以下、ネタバレまじり


ついつい『キック・アス』と比べてしまいますが、あの映画は異色なりにヒーローものらしいカタルシスが十二分にありました。しかしこの『スーパー!』は観終わったあと、私たちの胸にいろいろもやもやしたものを残していきます。果たしてこれでよかったのか? フランクがあまりにも気の毒ではないか? いや、それとも彼はもっと罰せられるべきなのだろうか? 頭の中でそういった疑問がぐるぐるぐる、洗濯機のように回り続けます。おバカ映画のようでいて、『スーパー!』はわたしたちにそんな宿題を残していってくれます。

Photo_2低予算・インデぺンデント系ながら、ケビン・ベーコン、リブ・タイラー、エレン・ペイジとメジャーどころも出ている本作品。しかしエレンはこんな役よくやったな・・・ 将来彼女の黒歴史になったりして
まだこれからのところもちょっとありますが、ほとんどの劇場で公開終わってしまったようです。ま、最近はすぐDVDが出ますから・・・


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Comments

スパナのヒーロー、略して・・・だったのか(笑)

まさしくキックアスの二番煎じと思って、じゃっかんなめてかかってただけに
ハマっちゃいましたー
この監督の他の作品、まったく観たことないので、観てみたいです。

エレン・ペイジは黒歴史というより、彼女の華々しい経歴にますます
ハクがついたと言えるかも(笑)スゴかったですよね

明日こそは『グリーンランタン』観ますよ!

Posted by: kenko | September 20, 2011 11:48 PM

おはよ☆

そうそうこれ「キックアス」に似てるけど後だからちょっとソンな感じよね〜。
でも私、ケヴィン>ニコ だからこっちに軍配!

ホラー的要素も好きだし。
さすがホラー×コメディ撮った「スリザー」の監督って感じ。

Posted by: mig | September 21, 2011 09:15 AM

伍一くん☆台風キンスコ
静岡直撃ですが、大丈夫ですか?
このアメコミヒーローおやじと同じくらい暴れまくっているってかんじでしょうか。

「キックアス」に比べて痛い映画っていうと、相当なもんですな。
エレンにとって黒歴史に残るってことからいっても、DVDを待つのが順当かな。

Posted by: ノルウェーまだ~む | September 21, 2011 11:45 AM

>kenkoさん

でしたねー 予告やチラシの感じからいっておおよそ深いテーマのある作品とは思えなかったのですが、意外や意外

この監督の前作が『スリザー』というスライムがのたのた動き回るホラーだと聞いていてので、なおさらだまされました

ペイジはね、『インセプション』できっとこのまま華々しいハリウッド女優の道を歩んでいくんだろうな・・・と思ってただけに、えらいですよね(笑) すばらしい!

Posted by: SGA屋伍一 | September 21, 2011 04:51 PM

>migさん

おっ migさんも「スーパー!」派なんだ。わたしは『キック・アス』も好きだしなー どちらも甲乙つけがたい・・・

『スリザー』、検索してあらすじ読んでみたけど、エイリアンが脳みそに寄生する話らしいね。そんなに脳みそが好きか!とw

Posted by: SGA屋伍一 | September 21, 2011 04:59 PM

>ノルウェーまだ~むさん

こんにちは。暴風域ンスコ~
静岡、いままさに直撃してます! シャレになりません!w
あ、この映画の主人公ですけど、パワーはともかくインパクトは台風クラスでしたよ!(マジか!?)
けっこうまだ~む向きだと思うんだけどな。脳みそがじくじくはみだしてるシーンさえ乗り切れれば・・・

DVDで出たらぜひ。エレンすごくがんばってますから。そんなところでがんばらなくてもいいのに・・・

Posted by: SGA屋伍一 | September 21, 2011 05:03 PM

台風気つけてんすこー。
こちらは通過しか感がありますので、きっとそちらも過ぎ去ったかしら。

アメコミはどうもよくわからんのですが、、なにせ寝てしまって。

脳みそじくじくに反応いたしましたい。


Posted by: hino | September 21, 2011 07:21 PM

>hinoさん

hinoさんも気をつけてんすこー ってもう行っちゃったか…
そちらは被害なかったといいのだけど

それはともかくhinoさん、また寝てしまったんですか! こんなかわいそうな映画で! また鑑賞の前に一杯ひっかけてたんでしょう!

やっぱり脳みそとか人間社会というのはあんまりはみだしたらまずいと思うのですよね。はみだすにしてもほどほどにしたいと思いまふ

Posted by: SGA屋伍一 | September 22, 2011 11:23 AM

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