この木なんの木命の木 テレンス・マリック 『ツリー・オブ・ライフ』
寡作で知られるテレンス・マリック監督が、2011年度カンヌ国際映画祭でグランプリ(パルムドール)をかっさらった作品。前評判から「一筋縄ではいかない」と噂されていましたが、日本でもかなりの混乱を巻き起こしているようです(笑)。そんな『ツリー・オブ・ライフ』、ご紹介しましょう。
都会の大企業で重要なポストを務めているジャックは、かつての少年だった日々を思い返していた。美しかった母、穏やかなすぐ下の弟、子供のころすごした家、仲間たちと繰り返した悪戯、庭にそびえていた大木・・・ そしてとりわけ記憶に強く残っているのは、ことあるごとにジャックに厳しく当たった父のことだった。
こうやって書くとすんごいシンプルなんですが、皆さんをとりわけ混乱させているのは、冒頭で二十分くらい入る宇宙や恐竜の映像なんではないかと思います。
この映画では繰り返し「神は何を考えているのか? 本当にわたしたちを愛しているのか?」という問いかけがなされています。あまり日本人はそんなことを思わないかもしれませんが、欧米の大多数の人々にとって、神は存在して当然のものであり、もっと身近なものなのでしょう。
だからこそ、理不尽に思える悲しい出来事に遭遇した時、彼らは神に対し先のような疑問を抱くわけです。
子供を亡くしたオブライエン夫妻や、理由はわからないけど辛そうな表情を浮かべている現代のジャックのように。
冒頭の宇宙や自然の映像は、たぶん神がどんなものなのか知ろうとして、あちこちを探ったり思いを巡らしている部分なんだと思います。たしか聖書の一節に「神の力と性質は造られたものを通して認められる」とあったので。
そして自分の身の周りで、神に似た存在とは誰なのか。ジャックやマリックさんやその他多くの人にとって、それは子供のころの父親だったということなのでしょう。なんせゴッドファーザーなんて言葉もあるくらいだし(笑)
一応愛してくれてはいるようだけど、時々自分や家族をひどく悲しい目に逢わせたりする。強くて恐ろしくて、一体何を考えているのかわからない。ジャックは時としてそんな父に激しい怒りを覚えることすらあります。
そんな不信や疑念を抱きながらも、やはり父…神は自分を愛してくれていた、と確信するまでのお話だとわたしは思ってます。
大人になったジャックはなぜ悲しそうにしているのか。これについてはマイミクさんの受け売りで恐縮なんですが、どうやら9.11後のアメリカを象徴しているのだとか。繰り返し強調される高層ビルの映像や、マリックさんがこれまで「アメリカ」を素材にし続けてきたことを考えると、なるほどうなずけるような。
実はわたしが一番感動したのはスクリーンいっぱいに映し出されるガス状星雲や、意外と映画では出てこない首長竜だったりしたのですが(笑)、普通に親と子の葛藤のドラマとして、あるいは少年時代のノスタルジーとしても観られる・・・んじゃないかな・・・ かな・・・ かな・・・(エコー)
そんな『ツリー・オブ・ライフ』はもうぼちぼち興行が終りに向かいつつあります。ご興味おありでまだ観てない方はお早めに。
Comments
うん、少年時代のノスタルジーーとしても見られると
思います。というよりそのものかなと。
だからこそ哲学的・宗教的であっても馴染み安いんじゃない
かしらん。
Posted by: KLY | September 14, 2011 07:49 PM
>KLYさん
毎度ありがとうございます
難解難解言われてますけど、好きな子が前を歩いててドキドキしちゃったりとか、悪友とつるんで周りのものバキバキ壊しちゃったりと課、つい弟にひどい意地悪をしちゃったりとか、この辺男性だったら誰しも「あるある」って経験ですよね
お母さんが性の目覚めだった、というのはさすがに「そりゃねーよ」と思いましたが
Posted by: SGA屋伍一 | September 15, 2011 10:17 PM
かなーかなーキンスコー!!
見所はそれぞれ違うようだねー。私はどこに反応するのか、観てみないとなっ!!
イラスト、いつもより手かかってるー。星ひゅうまのお父さん風。
神様は応えてくれない、理不尽って嘆き?
遠藤周作の沈黙を思い出しました。
読んだ?よね?
Posted by: hino | September 16, 2011 09:02 PM
おはよ!
ごいちー的にはやっぱり恐竜や宇宙がみどころなんだ!?
賛否われてる作品だけど私はもう一度みたいくらいだな〜
翔はどうやらいまいち派だったみたい。ザンネン息子は三人いらないっていってた(笑)
あと意見一致はショーンの出番の少なさだな。。。
>不信や疑念を抱きながらも、やはり父…神は自分を愛してくれていた、と確信するまでのお話だとわたしは思ってます。
うん、そうだね☆
Posted by: mig | September 17, 2011 09:13 AM
>hinoさん
かなかなかな・・・ ひぐらしんすこー
これはhinoさん向きかも。お父さんと息子のやりとりにね、なかなか泣けるものがあるのですよ
ただ気をつけないと冒頭の方で寝てしまうかもしれません。hinoさんすぐ寝ちゃうからね(笑)
>遠藤周作
そりゃあもちろん!・・・読んでません(爆) おはずかしー
キリシタン弾圧にショックを受けて棄教した神父さんのはなしだったっけ・・・
Posted by: SGA屋伍一 | September 17, 2011 08:25 PM
>み~ぐ~ちゃん
こんばんばん(笑)
そうだね。もう二時間ずっと自然の映像でもよかったと思うくらい(←だったらただの『ライフ』を観ればいいだろ!)
やっぱりでっかいものはでっかいスクリーンで観てこそでっかさがわかると思うんだよね。完全にずれてる気がするけど
翔さんはなんとなく、もう少し起承転結というか、お話に起伏のある映画が好きなんじゃないかという気がする
ペンさんはマリック監督の『シン・レッド・ライン』にも出てたけど、そっちでもあまり出版多くなかったような(笑)
Posted by: SGA屋伍一 | September 17, 2011 08:33 PM
伍一くん、こんばんわんすこ☆
なるほど!父が敬虔なクリスチャンということから考えると、そういう風に考えるのが正解なのかもね。
私は昔の楽しかったり悲しかったりしたことも、今の不条理も、宇宙の営みの中ではほんの些細な事っていう意味と思ってました。
Posted by: ノルウェーまだ~む | September 18, 2011 06:30 PM
>ノルウェーまだ~むさん
ショーン・ぺんすこー
まあ、わたしの意見も適当な思いつきなもんでどこまでマリックさんの真意に迫れたかは怪しいものです
この映画ははっきりしたひとつの正解があるものではなく、観た人それぞれに多くの正解があるんじゃないでしょうかねー まだ~むさんのご意見もまたごもっともだと思うし
深い映画ってのはそういうものじゃないかしら。うふふ(なぜオカマ調)
Posted by: SGA屋伍一 | September 18, 2011 11:07 PM
伍一さん、こんばんは☆
すっかり遅レスでごめんなさい( ̄○ ̄;)
熱海で、ってあの時伍一さんまだ観てなかったのよね、
なのにわたしったらいろいろ先走って語っちゃったかしら〜(汗
でも一番感動したのがガス状星雲や首長竜ってことでよかった←
昨日ついつい4回目行きそうになったけど、ギリギリのことろで思いとどまりました(笑
次回はDVDかな〜
Posted by: tomoco | September 18, 2011 11:44 PM
>tomocoさん
こちらも遅レスでごめんなさい~ そしてコメントダブっててごめんなさい
あ~、大丈夫ですよ。そんなにネタバレなことは話してなかったし。てゆうか、この映画ネタバレしようがしまいがあんまし関係ないよね(笑)
>でも一番感動したのがガス状星雲や首長竜ってことでよかった
よかったんでしょうか・・・たぶんマリックさんにそう言ったら「えー」とか言われてしまいそう
わたしの周囲には評価してる方もけっこうおられますが、三回も観た人はtomocoさんのほかに知りません。本当にツボだったのですねー
>
Posted by: SGA屋伍一 | September 20, 2011 10:00 PM
SGAさん こんにちは!
すっかり秋らしくなり,体調もアップしてきましたが
いかがお過ごしですか?
>「神の力と性質は造られたものを通して認められる」
そうそう,よくご存じで・・・被造物のなかに神の栄光が宿るというか
そんな記述は聖書のあちこちに見られますが,
旧約聖書のヨブ記に神様が
「これも,これも,これもみーんな私が作ったんだよん♪」と
宇宙の森羅万象のことをつらつらと述べている箇所がありますが
(恐竜も出てきます)この映画のあの退屈シーンは
まさにその映像化を観ているようでした。
クリスチャンの私でもちょっと「長いな~」と思うくらい
しつこかったので一般受けしないのも納得の作品です。
古き良き時代の頑固オヤジに対して
懐かしさがこみ上げる作品でもありましたね。
Posted by: なな | October 08, 2011 10:10 AM
>ななさん
こんばんは! お返しありがとうございます
体調回復されたということで何より。わたしはいたって健康で天高く・・・じゃないですけどむくむく太る一方です
わたし実は聖書は一通り読んだことありまして、ヨブ記も一応覚えております。あの話はなかなかにキツイ話ですよね・・・ それはともかく、あの宇宙の映像やヨブ記のそのあたりの記述は、人間の小ささを感じさせられ厳粛な気分にさせられました
それにしてもアメリカにもやっぱりこういうお父さんいるんですね~ アメリカのお父さんって基本『大草原の小さな家』のマイケル・ランドンみたいな優しい優しいパパばっかりだと思ってました
Posted by: SGA屋伍一 | October 08, 2011 10:08 PM