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September 28, 2011

輝く太陽の下も、漆黒の闇の中も マーティン・キャンベル 『グリーン・ランタン』

110928_175712輝くネオンの下も、暗闇の裏路地の中も、いかなる飲み屋も見逃さぬ… ってそりゃうちのオヤジのことじゃん!
スーパーマン・バットマンを擁するDCコミックスが、新たに銀幕に送り出したヒーロー『グリーン・ランタン』について今日はご紹介します。

幼いころに死んだ父の後をつぎ、飛行機のパイロットとなったハル・ジョーダンは、ある夜墜落してきた謎の飛行物体と、その乗組員らしきエイリアンと遭遇する。エイリアンはハルに指輪を託し、ハルに誓いを立てるよう言い残して息を引き取った。
頭に響く言葉に従い誓いを述べたハルは、スーパーヒーロー「グリーン・ランタン」の力を得た。思うとおりの形をとる緑の光の力を用い、宇宙を脅威から救う務めを与えられたのだ。あまりのことに動揺するハル。だが彼が迷っている間にも、宇宙のかなたから恐怖を糧とするおそるべきエネルギー体、「パララックス」の影が迫ってきていた。

グリーン・ランタンがこの世に出でたのは一応1940年・・・なんですが、この初代は「ランプの魔人」みたいなファンタジックなヒーローでして、二代目以降とは直接の関係はないことになってます(まったくないわけでもないんだけど)
で、映画にあるような「宇宙警察の一員」という設定になったのは1960年に復活してから。グリーンランタンは銀河に3600人いてそれぞれの区域を受け持っているのですが、人間に近いものからゴリラや半魚人やら果てはリスのぬいぐるみみたいな宇宙人までいるのが面白いところ。また用いるリングのパワーが「想像した形になる」というのが、実に漫画向きというかヴィジュアル向きのキャラであります。

原作では一時期ハルが悪の帝王になってしまったり、後を継いだ五代目カイルの恋人が惨殺されてしまったりと、シャレにならないくらい深刻な展開が多いのですが、映画ではうってかわって明朗快活なストーリーになっておりました。主人公のハルも原作ではそれなりに人格者なんですけど、こちらではおバカで無鉄砲な青年として描かれてます。でもそんな未熟ながらもあがいている姿が、ライミ版スパイダーマンのように親しみやすいキャラになっていました。
対してハルと同じように父へのコンプレックスを抱きながら、ダークサイドに落ちていくのがピーター・サースガード演じるへクター。わたしゃどっちかというと彼のようなへなちょこタイプの人間なので、こちらにも感情移入しまくりでした。このハルとヘクターが親友だったという設定を、もうちょい深く掘り下げてくれればよかったんだけど・・・ ま、それはおいといて。

ハルくんが変わってるのは無鉄砲なところがある反面、恐怖心も非常に強いというとこです。ジャパニメーションならともかく、アメコミヒーローでこんなに「怖い怖い」を連発してる主人公はちょっとめずらしい。そしてこのハルくんの性格、実はランタンにはとっても不向きなものだったりして。というのは、ランタンたちのパワーが意志=理性を源にしているのに対し、宿敵パララックスは周囲の恐怖=衝動から力を得ているので。

じゃあとても勝ち目はないじゃん・・・と思いきや、そこはアメコミヒーロー。自分の戦う目的を悟ると、恐怖心を克服してゴジラの十倍以上はあろうかという敵に立ち向かっていきます。サイズやキャリアにいくら差があろうが、結局は気合が入ってる方が勝つ、という番長漫画のような世界観がヒジョーに気持ちいい。そしてクライマックスでつぶやかれる「輝く太陽の下も、暗黒の闇の中も…」という大時代的なキメ台詞がやたらとかっこい! 勢いあまってだいぶネタバレしてしまったような・・・ どうかご勘弁のほどwobbly

110928_175824とまあ、個人的には大満足だった『グリーン・ランタン』なんですが、興行的には本国でも日本でもだいぶ苦しいようで… 一応続編が予定されているようですが、この分ではお流れになる可能性は大です。そうなると他のDCヒーローの映画化も、これはちょっと厳しくなるかもwobbly
焼け石に水かもしれませんが(おーい)、映画でフラッシュやワンダーウーマンの活躍も観たいという方はどうぞ足を運ばれてください。映画『グリーン・ランタン』はたぶんまだ十日くらいはやってる・・・はず・・・

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September 23, 2011

うさぎ・エロネタ・木の根っこ ヤン・シュバンクマイエル 『悦楽共犯者』『アリス』『オテサーネク』

Photoシュールで突き抜けた作風で、多くのファンを持つチェコの映画作家ヤン・シュバンクマイエル。今年は新作が公開されるということで展示会なども開かれ、ちょっとしたヤンシュバブームとなっております。
その一環として先日新宿はケイズシネマにおいて特集上映が行われておりました。興味はあったもののあまり彼の作品を観る機会がなかったので、これ幸いとばかりに半日行って長編三本鑑賞してきました。順番にご紹介しましょう。


☆『悦楽共犯者』

エロ本で鶏の頭を作る男、毛皮の感触に執着する中年オヤジ、ニュースキャスターに妄想する雑貨屋、パンの団子を鼻につめる女・・・ 異常な性癖を持つ六人の男女。彼らは自分の趣味にひたすら邁進する。やがてその道が徐々に交差し始め・・・

最初に一番わけのわからん話を観てしまいました(笑)。
人間誰しもひとつくらい性に関するこだわりがあるもの。まあ太ももが好きとか、ちょっとMっ気があるとかそんなことです。しかしこの映画に出てくる皆さんはあまりにも行き過ぎというか、突飛というか。前半では何かに興奮してるらしきことはわかるのですが、一般人のそれとかけはなれているせいか、彼らが一体何をやりたいのかさっぱりわかりませんw
シュバンクマイエル氏の手による「エロ」はかようにややこしく、まわりくどい。だからこそ「芸術」になるのかもしれません。
そんなシュールな作品ではありますが、鳥の仮装をしたおじさんがパタパタ跳ね回るシーンは、わけわからないなりに奇妙な感動がありました。そして妄想が現実に侵入してくるクライマックスは、観る者に形容しがたい恐怖を感じさせます。


☆『アリス』

幼い少女アリスが物置の中でうたた寝していると、突然剥製のウサギが動き出した。ウサギが姿を消した机の引き出しに入っていくと、そこは人形やぬいぐるみが動き回る奇妙な世界だった・・・
誰もが知ってる『不思議の国のアリス』を、シュバンクマイエルが映像化した作品。昨年ティム・バートンも映画化してましたが、みんなが抱いている『アリス』のイメージというのは、ああいうやかましくてかわいらしいメルヘンな世界だと思うのですよね。それがアレンジのしようによってはどうしてこう、物静かで薄ら寒くなるのか(笑) これまた奇妙な怖さ・不気味さにあふれていて、小さなお子さんが観たらトラウマになるのではないかと。
一方で引き出しの中にはまた別の引き出しがあったり、小さな扉をくぐるのにアイテムを使って人形になったり・・・という展開は、まるでロールプレイングゲームのようでワクワクさせられました。
無人の家の中で大冒険をするという設定には、一昨年のチェコアニメ『屋根裏のポムネンカ』も思い出したり。というか、『ポムネンカ』がこちらに影響を受けているのかもしれません。


☆『オテサーネク』

子供が出来ず悩んでいるある一組の夫婦。ある時夫は別荘の庭で赤ん坊に似た切り株を掘り出してしまう。すると妻はそれを本物の赤ん坊のように可愛がり始め、自分の子供として育てようとする。夫の困惑をよそに、彼女の愛情は恐ろしい奇跡を呼び、アパートの住人たちを巻き込んでいく。
チェコの民話を現代風にアレンジした作品。作中でオリジナルの民話も絵アニメで語られるのですが、チェコの人って昔っから冷笑的だったんだなあ、ということがよくわかりました(笑)
ストーリーは奥さんの狂気をコメディチックに描いた前半と、ファンタジー・ホラーの様相を呈してくる後半に分かれています。喜劇的なんだけど、奥さんと世間体の板ばさみになって苦しむダンナさんがあまりに気の毒で笑えませんでしたdespair また隣に住む大人びた少女が二人の秘密を知ってしまったことにより、お話はどんどん混線していきます。
特に印象に残ったのは、やはり表題ともなってるオテサーネクことオティークでしょうか。恐ろしい怪物でありながら、その無垢さゆえにそばにいる者の母性愛をかきたてる、なんとも不思議な存在。コマ撮り独特のぎこちない動きもキモかわいさを引き立てています。


さて、シュバンクマイエル氏、「チェコアニメの巨匠」と聞いていたのですが、鑑賞した三本、いずれも「実写作品に一部アニメを取り入れた作品」でした。まあチェコアニメのあのコマ撮り技法は恐ろしく時間のかかるものなので、長編にはむかないのかもしれませんcoldsweats01
しかし実写とアニメのハイブリッドであるせいか、妄想と現実の混じり具合がよく伝わってきて、こちらの脳みそまでグルグルするしてくるような錯覚にとらわれました。たぶんいま頻繁に用いられているCGでは、この不気味さと言うか奇妙なリアルさは出せないと思うのですよね。その辺がファンをとりこにする一因であるのかもしれません。

Photo理解しきれなかったところもあるものの、とても見ごたえのあった特集上映でございました。またどこかでこういったチェコアニメの特集を組んでくださると嬉しいです。
この特集上映はさすがに終わってしまいましたが、冒頭でも述べましたように現在イメージフォーラムにて新作『サヴァイビング・ライフ 夢は第二の人生』が公開中であります。またシュバ氏が絶賛したというドローイング・アニメ『緑子』がアップリンクXにて今週末より上映。アートアニメ祭りはまだまだ続くのです。


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September 18, 2011

スパナのヒーロー、略して ジェームズ・ガン 『スーパー!』

Photoおそらくかつてないほどにアメコミ映画ラッシュとなっている2011年。その中でも最も異色作と言えるのがこの『スーパー!』(正確には原作なしのオリジナルだけど)。それではあらすじから参りましょう。

食堂でコックとして働いているフランクは、顔も性格もパッとしない中年男。彼には不釣合いなほどに美しい妻・サラがいたが、ある時そのサラが家から姿を消してしまう。街の顔役ジョックといい仲になってしまい、彼の元に身を寄せたのだ。納得のいかないフランクは妻が誘拐されたと思い込み、正義の自作ヒーロー「クリムゾン・ボルト」となって犯罪と戦うことを誓う。

この映画の不幸なのは、昨年暮れに公開された『キック・アス』と発想が似通ってしまったこと。超能力も超頭脳も莫大な財産もない平々凡々の人間が、スーパーヒーローになろうとしたらどうなるか? それをリアルに追求したのがこの2作品なわけですが、そのせいで「『キック・アス』の二番煎じ」と思ってしまった人は多いかも。『スーパー!』は『キック・アス』よりもさらに現実的な内容なんですけどね。
あと『キック・アス』では主人公が若者だったので「中二病だよねw」と微笑ましく観ることもできましたが、こちらはいい年こいたおっさんが同じことをやっているので、ただひたすら痛々しく、ほろ苦いです(笑えるところもありますが・・・)
もう一点、この映画の独特な点をあげるとするなら、『スーパー!』はアメコミ映画のようでいて、芯の部分は信仰を描いた映画であるということ。フランクはもともとアメコミが好きだったわけではなく、偶然神の啓示(のような夢)と、アメコミドラマを続けて見てしまったために、なりきりヒーローとなる道を選びます。

ただその辺の特殊な訓練を積んでるわけでもない男が、ギャングや悪漢に立ち向かうには武器が必要です。で、とりあえずフランクが選んだ武器がでかいスパナ。ヤクの売人やひったくりや変態、果ては行列に割りこんだ男まで、そのスパナで脳天をカチーンとカチ割ります。その描写のなんともえぐいこと。フランクもあとで押しかけ相棒の「ボルティー」が同じようなことをやっているのを見て、自分の残酷さに気づきますが、本当に一瞬だけでしたw

そんなフランク=クリムゾン・ボルトですが、我々からしてみれば正義の味方には程遠く見えます。だって彼は他の誰かのために戦っているのではなく、妻が出て行ってしまった悔しさをむかついたヤツにぶつけているだけなのですから。一方で彼のあまりにも不幸な人生を思うと、「無理もないか…」と同情的になってしまったりして。さえない人生を送ってるという点では、わたしもどっこいどっこいですからね(笑)

フランクも色々あってクライマックスではようやく「誰かを救う」ための戦いに身を投じます。するとあんだけ野暮ったかった彼が、なんだか本物のヒーローのように見えてくるから不思議です。ま、やってることは同じ残虐行為なんですけどね。というかむしろ前よりスゴイことやってる・・・coldsweats01

フランクを見ていると「信仰の恐ろしさ」というものを思わずにはいられません。信仰の力によって人は幾らでも強くなれるし、勇敢にもなれる。そして幾らでも残酷になれる。信仰にもいろいろな形があり、フランクレベルまでいってしまう人は本当にごくごく一握りだとは思いますが。

以下、ネタバレまじり

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ついつい『キック・アス』と比べてしまいますが、あの映画は異色なりにヒーローものらしいカタルシスが十二分にありました。しかしこの『スーパー!』は観終わったあと、私たちの胸にいろいろもやもやしたものを残していきます。果たしてこれでよかったのか? フランクがあまりにも気の毒ではないか? いや、それとも彼はもっと罰せられるべきなのだろうか? 頭の中でそういった疑問がぐるぐるぐる、洗濯機のように回り続けます。おバカ映画のようでいて、『スーパー!』はわたしたちにそんな宿題を残していってくれます。

Photo_2低予算・インデぺンデント系ながら、ケビン・ベーコン、リブ・タイラー、エレン・ペイジとメジャーどころも出ている本作品。しかしエレンはこんな役よくやったな・・・ 将来彼女の黒歴史になったりしてcoldsweats01
まだこれからのところもちょっとありますが、ほとんどの劇場で公開終わってしまったようです。ま、最近はすぐDVDが出ますから・・・


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September 14, 2011

この木なんの木命の木 テレンス・マリック 『ツリー・オブ・ライフ』

090606_120616寡作で知られるテレンス・マリック監督が、2011年度カンヌ国際映画祭でグランプリ(パルムドール)をかっさらった作品。前評判から「一筋縄ではいかない」と噂されていましたが、日本でもかなりの混乱を巻き起こしているようです(笑)。そんな『ツリー・オブ・ライフ』、ご紹介しましょう。

都会の大企業で重要なポストを務めているジャックは、かつての少年だった日々を思い返していた。美しかった母、穏やかなすぐ下の弟、子供のころすごした家、仲間たちと繰り返した悪戯、庭にそびえていた大木・・・ そしてとりわけ記憶に強く残っているのは、ことあるごとにジャックに厳しく当たった父のことだった。

こうやって書くとすんごいシンプルなんですが、皆さんをとりわけ混乱させているのは、冒頭で二十分くらい入る宇宙や恐竜の映像なんではないかと思います。

この映画では繰り返し「神は何を考えているのか? 本当にわたしたちを愛しているのか?」という問いかけがなされています。あまり日本人はそんなことを思わないかもしれませんが、欧米の大多数の人々にとって、神は存在して当然のものであり、もっと身近なものなのでしょう。
だからこそ、理不尽に思える悲しい出来事に遭遇した時、彼らは神に対し先のような疑問を抱くわけです。
子供を亡くしたオブライエン夫妻や、理由はわからないけど辛そうな表情を浮かべている現代のジャックのように。

冒頭の宇宙や自然の映像は、たぶん神がどんなものなのか知ろうとして、あちこちを探ったり思いを巡らしている部分なんだと思います。たしか聖書の一節に「神の力と性質は造られたものを通して認められる」とあったので。

そして自分の身の周りで、神に似た存在とは誰なのか。ジャックやマリックさんやその他多くの人にとって、それは子供のころの父親だったということなのでしょう。なんせゴッドファーザーなんて言葉もあるくらいだし(笑)
一応愛してくれてはいるようだけど、時々自分や家族をひどく悲しい目に逢わせたりする。強くて恐ろしくて、一体何を考えているのかわからない。ジャックは時としてそんな父に激しい怒りを覚えることすらあります。

そんな不信や疑念を抱きながらも、やはり父…神は自分を愛してくれていた、と確信するまでのお話だとわたしは思ってます。


大人になったジャックはなぜ悲しそうにしているのか。これについてはマイミクさんの受け売りで恐縮なんですがcoldsweats01、どうやら9.11後のアメリカを象徴しているのだとか。繰り返し強調される高層ビルの映像や、マリックさんがこれまで「アメリカ」を素材にし続けてきたことを考えると、なるほどうなずけるような。

Scan実はわたしが一番感動したのはスクリーンいっぱいに映し出されるガス状星雲や、意外と映画では出てこない首長竜だったりしたのですが(笑)、普通に親と子の葛藤のドラマとして、あるいは少年時代のノスタルジーとしても観られる・・・んじゃないかな・・・ かな・・・ かな・・・(エコー)
そんな『ツリー・オブ・ライフ』はもうぼちぼち興行が終りに向かいつつあります。ご興味おありでまだ観てない方はお早めに。


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September 13, 2011

嵐が来たりて船沈む ジュリー・テイモア 『テンペスト』

Scan3『タイタス』や『アクロス・ザ・ユニバース』など、独特の衣装センスで知られるジュリー・テイモアが、シェイクスピアの(単独では)最後の作品を映像化。首都圏から数ヶ月遅れて公開の『テンペスト』、ご紹介します。

かつてミラノ大公であったプロスペラーは、弟アントーニオの奸計に陥り、一人娘とともに文明から遠く離れた孤島へと漂着する。それから十数年。アントーニオ一行を乗せた船が近くを通りかかることを知ったプロスペラーは、魔術を用いてその船を難破させる。アントーニオ一行は命からがら島へたどり着く。彼らを静かに見下ろすプロスペラーは、果たして何を企むのか・・・

今年もそれなりに映画を観ていますが、まだそんなに「失敗した…」という思いは味わっておりません(強いて言うなら最初に観たMOVIE大戦COREか)。結論から申しますと、この『テンペスト』、久々に「うーん、やっちまったw」って感じでしたcoldsweats01 「最悪!」とか「激怒!」というほどでもありませんが。
今回は反省会気味に「なんであんましノレなかったのか」ということをダラダラと考えてみました。

まずこの作品、冒頭でも述べたようにかの有名なウィリアム・シェイクスピア原作です。シェイクスピアといえば思い浮かぶのは四大悲劇に『ロミオとジュリエット』。ちょっと「こいつら思い込みが激しすぎじゃね?」という感こそあるものの、人間の業や情念といったドロドロしたものを鋭く描いております。『テンペスト』でも多くのキャラが復讐心や醜い欲望を抱えていて、そういった愛憎劇が華麗に物語られるのかな…と思いきや、すげーアッサリ終わってしまう。思わず「え? それでもういいの?」と確認したくなるほどでした。
しかしまあ、この点に関してはジュリーさんは悪くありません。原作がそういう話だから仕方ないんです。シィエクスピアもたまにはさわやかな話が書きたかったのかもしれません… って何気にわたしネタバレしちゃってる?

・・・・・

あの、その、ひとつ世界的に有名な作品だということで勘弁してくださいwobbly

で、さらにノレなかったもうひとつの点は、この映画がすごくこぢんまりしてるように感じられたことでした。狭い島の中を、数人の男女たちがずっとウロウロしてる話なもんですから。んでその内の半分以上が暗いくたびれたオヤジたち。背景は大体同じような原っぱか荒野。ストーリー上大きな起伏があるわけでもなく、中盤ごろには誰がどうなるか大体予想がついてしまいます。度々眠気に襲われましたが、ケチンボのこの私が「ま、ここら辺は寝てていいか・・・」と思ったくらいです。

テイモア監督の前作、『アクロス・ザ・ユニバ-ス』はとっちらかってるところこそあったものの、けっこう楽しめたんですよね。ほどよくまとまっちゃうより、いっそ散らかってた方が本領を発揮できる人なんではないでしょうか。

そんな風にいまひとつ冴えない中、ひとつ印象に残ったのがベン・ウィショー演じる空気の精「エアリアル」。ヘレン・ミレン演じるプロスペラーの手足となってなかなか芸達者な暴れっぷりを見せてくれます。変身あり、巨大化あり、分身の術あり。しかも全裸で。
エアリアルに比べるといささか影が薄いのがいま一人の怪物、キャリバン。周りはこぞって「見たこともない奇妙な化け物」と言いますが、画面に映っているのは普通にパンダメイクを施しただけのジャイモン・フンスーですし。ただモデル出身なのにパンツ一丁でお笑い演技をがんばっていたのは評価してあげたいところです。

Scan2とまあ、あれこれダメだししてしまいましたが、本作品、第83回アカデミー衣装デザイン賞にノミネートされたりしてます。ファッションに興味のある人はその辺に注目して観てもいいんじゃないかなー 『テンペスト』は9、10月もまだ日本のあちこちの劇場でかかるようです。あとこの作品からタイトルを取ったNHKのドラマ『テンペスト』も、近々映画化されるそうで。紛らわしいのでお間違えのないよう!


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September 08, 2011

トラック大将 月夜の大激闘 マイケル・ベイ 『トランスフォーマー ダークサイド・ムーン』

19780全米を巻き込んだあの抗争から二年・・・(またですか) 正義の走り屋軍団「追徒暴斗(おーとぼっと)」の名誉メンバーだったサムは、族からきっぱり足をあらい、しがないサラリーマンとしての毎日を送っていた。そんな彼のもとに、かつての仲間たちがピンチに陥ってるという報せが入る。先代メンバーの裏切りによってチームが機動隊と敵組織「泥背腐体魂(でぃせぷてぃこん)」の両方から追われているというのだ。その裏には地球と宇宙を巻き込む巨大な陰謀が隠されていた。男の仁義を守るため、サムは上司に休暇願いをたたきつけて再び抗争に身を投じる。

久々に嘘あらすじ書いてみましたが・・・ つまんね~~~wobbly 
はい、それではハリポと並ぶ今夏の目玉映画であった『トランスフォーマー ダークサイド・ムーン』、ご紹介・・・というかネタバレ気味で感想書きます。あとついでに第一作と第二作の記事のリンクも張っておきます。
『トラック大将 夜明けの一番星』
『トラック大将 復讐の流れ星』 

序盤のキモは「アポロ計画は実は月に飛来したトランスフォーマーを調査するために立案されたものだった・・・」というMMR的な流れですね。アホくさ~とは思いますが、これがなかなかアホなりに史実に上手に組み込んでありまして。マイケル・ベイとしてはこれまでで一番頭のいい脚本だったのではないでしょうか。序盤に限っては
続いてTFシリーズおなじみのサムくんのへたれエピソードがえんえんと続きます。まあわたしはこういう定番の流れも嫌いじゃないですが、興味ない人はぶっちゃけ寝てても支障ないでしょう。3D効果も一番意味ない部分だし。
ただ下着モデル出身のヒロインのでっぱり具合に関しては一見の価値があるかもしれません。

で、ようやく本題の部分に入ります。今回ビックリしたのは、コンボイたち・・・(すいません、面倒くさいのでオプティマスはこの名で呼ばせてください)のボス敵となるのがディセプティコンではなく、自分たちの身内であったセンチネル・プライムであったということです。この『トランスフォーマー』、単純な勧善懲悪もののように思われがちなようですが、この辺ちょっぴり深いものがあります。本当に単純な勧善懲悪ストーリーでは、見た目でどちらがイイ者かワル者かが決まります。すなわちかっこよく丸っこいオートボットは善玉、とげとげしくグロっぽいディセプティコンは悪玉、という具合に。ところがかっこいい善玉であったはずのオートボットから悪者が出てしまう(まあセンちゃんって微妙に悪者よりのデザインではありますが)。
ここから子供たちに、善悪は見てくれや生まれではなく、個々のそれぞれの決断・行動で決まるということを教えられるのではないでしょうか。この映画でいうならば、異なるものと和解し、共存していこうと考えるコンボイたちが善。力ずくで弱い者たちをおしのけようとするセンチネルたちが悪、ということです。アメリカ建国の歴史と正反対なのが辛いところではありますが。ちなみにセンチネルの声を演じてるのは元祖スタトレでおなじみのレナード・ニモイ。冒頭でスタトレを観ていたチビフォーマーが、「スポックがおかしくなる回だ」とつぶやいていたのは心憎い伏線でした。

それはともかく、そんな手を差し伸べようとしてくれてるコンボイたちを、米国政府は悪者の脅しに屈して追い払おうとします。それでも苦情ひとつ言わず強制送還用のロケットに乗るコンボイ。このあたりは涙流しては観られません。普通だったら「今までよくしてやったのにずいんなおもてなしですね! もうお前らのことなんか知んね! ぺっ!!」とか言いたくなるのが人情というかロボ情です。まあコンボイたちは「自分たちは不法入国者だから・・・」という引け目を感じているのかもしれませんが。

しかしアホな人類が案の定ピンチに陥ると、どこからともなく現れて、イヤミも言わず助けてくれるオートボットたち。滝のようにあふれ出る鼻水が止まりません。そして彼らを信じていた庶民や現場の人間とガッチリと握手を交わします(比喩表現です)。わたしにとってはこの辺がクライマックスでした。このあとは何も考えず、3Dの最新技術によって産み出された映像サーカスを楽しめばいいと思います。

そんなわけで十二分に楽しませてもらった『トランスフォーマー ダークサイド・ムーン』ですが野暮を承知で三つだけつっこませてください。

・3D効果映像、確かにすごかったけど、一番すごかったのがロボじゃなくて人がかっとんでる映像だったのはいかがなものかと
・敵のアイテムを破壊しようとしてビルに上るものの、あっさりあきらめて撤退していくサムたち。お前らいったい何がしたかったのかと(「ビルを滑り台にする映像が撮りたかったんだよ」←?)
・絶体絶命のピンチを(結果的に)助けてもらったのに、一寸もためらわずメガトロンにとどめをさすコンボイ。せめてお礼の一言くらい言おうや(言えばいいという問題だろうか・・・)

ま、このガードが甘いというか脇がガラ空きなところがベイやんの持ち味でもあるんですけどね。

19789一応今回を持って終了という予定だった『トランスフォーマー』ですが、あまりに大ヒットとなったためにあっさり継続が決定したようです。ただしベイやんと主演のシャイア・ラブーフ君は続投せずとのこと。次はおそらく設定を一新した形での『トランスフォーマー』が観られることでしょう。この際ずっと未来というか宇宙へ飛んでいってしまうのもいいかもしれません。『ビーストウォーズ』でもいいしね。『ビースト』を知らない人はこの動画をご覧ください。

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September 06, 2011

フランコなんか大嫌い エミリオ・アラゴン 『ペーパーバード 幸せは翼にのって』

091118_185501これは前から観たかったというよりは、たまたま東京へ出る用事があって、「なんかこっちでしかやってない映画ないかな~」ということでなんとなく鑑賞した作品。同じ時期に『ヒマラヤ 運命の山』もかかっていることに気づいていたらそっちにしたかもしれません。モントリオール映画祭で観客賞を受賞したスペイン映画、『ペーパーバード 幸せは翼に乗って』、ご紹介します。

スペインが内戦で砲火に包まれていた時代。喜劇役者のホルヘはフランコ軍の空襲により妻子を失い、悲しみの余り一座の下を離れる。それから一年後。内戦は終り、フランコの支配はゆるぎないものとなっていた。統制が厳しさを増す中、ホルヘは突然仲間の前に姿を現す。かつての相方と、一座に身を寄せる少年との三人で再び喜劇を始めた彼だったが、その背後にはフランコ軍の監視の目が光っていた。

さて、なんでこの映画に決めたのかと申しますと、ひとつには「スペイン内戦をモチーフにしている」という話を聞いたから。『パンズ・ラビリンス』などでたびたびその名前は聞いていましたが、そういえば実際にどんな流れだったのかはほとんど知らない。そこでお勉強を兼ねて鑑賞してみることにしたわけです。

これまでわたしが観たスペインの作品というと、先にあげた『パンズ~』や『永遠のこどもたち』などのギレルモ・デル・トロ関連作品。あるいは『アレクサンドリア』『ミツバチのささやき』『アラトリステ』など。またアメリカと共同製作ですが『宮廷画家ゴヤは見た』というのもありました。たまたまそういうのが重なってしまったからかもしれませんが、フラメンコや闘牛などのイメージとは裏腹に「実はスペインの人って根暗なのかな・・・」という思いが募っておりましたw 
ただ今回の『ペーパーバード』、これまた悲劇的な題材を扱ってはいるんですが、喜劇の一座が舞台ということもあり、あまり暗い印象はなかったです。むしろこの悲しい中にもお笑いや人情を忘れないという作風は、『ライフ・イズ・ビューティフル』や『ニューシネマ・パラダイス』といったイタリアのヒューマンドラマに近いものを感じます。親のない子と子のない親の交流・・・というあたりは日本の浪花節や山本周五郎を思わせるところもあり。ただホルヘさんは不幸が原因ですっかり気難しくなっている上に、子代わりのミゲルくんもちょっとこずるい部分があるゆえか、すんなりと「本当の親子のよう・・・」にとはいきません。

お勉強目的で観たわたしですが、一番興がひかれたのは一座の公演の様子とか、巡業であちこちを回るくだりだったりして。一輪車の芸人が本番直前にメガネを忘れたりとかね(笑) あと公演の合間に新ネタを練習する部分とか、スペインの田舎の風景などにも心安らぐものがありました。

そんな風にほのぼのとしたお話がずっと続けばよいのですが、一座に「反政府側のスパイが紛れ込んでいる」という疑いがかけられたため、ホルヘたちは当局からネチネチとした嫌がらせを受けることになります。果たしてそれは真実なのか、もしかするとそのスパイとはホルヘ自身なのか・・・?

終盤における展開には「憎しみ・圧制に勝てるものは愛であり、自由であり、お笑いである」というメッセージが強く感じられました。生まれてからろくな苦労も不幸も経験していないわたしですが、その主張には強く賛同いたします。

結局フランコ政権の顛末に関してはあんましよくわからず(笑) 家に帰ってからウィキペディアで調べてみました。フランコさんは安泰のままその生涯を終えられるわけですが、後継者の皇太子様が非常に出来た方だったために、おだやかに専制国家から民主国家へと移行していったようです。ってこれネタバレだったかしら・・・

110905_074333_2『ペーパーバード ~幸せは翼にのって』は現在銀座テアトルシネマほかで公開中。近場の沼津でもさくっと年末に公開が決まりました・・・ 『ALWAYS』なんかが好きな方なども、肩肘はらずに楽しめるのでは・・・と思います。


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September 04, 2011

なんちゃって観光ガイド 天城・伊東編

いや~~~ 映画以外の記事を書くのは久しぶりだなあ。今年初か!?
思い起こせば一月ほど前。懇意にさせていただいてるブロガーさんたちが、「熱海にでも旅行に行こうか」という話をしておられまして。上京の際何度もお世話になってるわたしとしては、こりゃあご恩返しをせねばなるまいと思い、はりきってガイドを申し出たのでした。実はここに三十年以上住んでいながら、近所の観光スポットとかあんまし知らなかったんですけどねcoldsweats01 ちなみにおいでくださったのは我想一個人映画美的女人blogのmigさん、LOVE Cinemas 調布のKLYさん、ノルウェー暮らし・イン・原宿(最近「~ロンドン」から改題というか帰国されました)のノルウェーまだ~むさん、そしてBauhausのhinoさん。
親父のぼっこのカローラを借りて、二日間天城・伊東をめぐった様子について今回はご報告します。

お客様が見えられたのは午前一時すぎほど。まずは駅ビルの「まぐろや」というところで腹ごしらえ。お昼時ということで若干混んでおりました。
110829_151517110829_152152一日目のメインは滝めぐり。伊豆・天城周辺には五つの滝があり、うち三つくらい回れればな、と。
最初に回ったのが「伊豆最高の高さをひっそりと誇る」という旭滝。本当にひっそりしたところで、みやげ物屋も他の観光客も誰もおらずw でもなかなか見事でした。ちなみに向かって左の写真は滝の手前にあった神社で撮ったもの。はるか下方で手を振っておられる皆さんがお客様たちです。みなさんまぶしい笑顔ですね!(わかんねーっつの)

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二番目に回ったのがもっともメジャーといわれる浄蓮の滝。そう、石川さゆりの『天城越え』で有名ですね。なるほど、豊かな水量と激しい水しぶきは、さゆりに歌われるだけのことはあります。こちらにはみやげ物やもちゃんとあり。ただ「わさびアイス」「わさビール」「わさびカレー」となんでもわさびを付けるのはいかがなものかと…

このほかにもうひとつ「萬城の滝」というのも見たかったんですが、ガイドがなんちゃってのためたどり着けず。次回の課題としておきましょう。

110829_214620その晩は熱海のKKRというホテルに宿泊。熱海の中では比較的最近できたホテルだけに、館内はとってもきれい。わたくし熱海在住のため熱海のホテルに泊まるということはほとんどないんですが(当たり前だ)、たまにはこういうのもいいもんだなと。画像は近くの海岸でやった花火。うるさいヤンキーたちに負けずにがんばりましたw
そのあとmigさん推薦のジェームズ・マンゴールド監督作品『アイデンティティー』をみなで鑑賞。途中意見が割れて険悪な雰囲気に(冗談ですw)。ご自分のバッテリーが切れて船をこいでた人もいたな・・・

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日があけて二日目のメインは伊東の城ヶ崎海岸。二時間サスペンスや仮面ライダーなどのロケで有名なところです。二時間では片平なぎさが犯人をおいつめて、船越英二郎が「話は全部聞かせてもらった」とか言ってるそんなシチュエーション。特撮では強敵怪人がライダーをがけから突き落とすシーンでよく使われます。そこで勝手に死んだものと思いスタスタ帰っちゃったりするので、あとでピンピンしてたライダーに返り討ちにされたりします。
ここでもガイドがなんちゃってのために、猛暑の中みなさんを往復四十分ばかり余計に歩かせたりしました。どーもすいませんwobbly ま、次回への課題と(略)

その後付近の「海女屋」という回転寿司で昼ごはん。最近の百円均一に慣れた身にはちょびっと高かったかな・・・ わたしが推薦したんだけど
そして最後のチェックポイントでほとんど東伊豆にあるDHC 赤沢日帰り温泉館へ。ここはわたしもはじめてだったのですが、本当に海が一望できる雄大な眺望がすばらしい。でもついうっかり写真を撮り忘れw 公式HPかmigさんのブログでご覧ください・・・
DHCの施設なせいか、シャンプーが黒糖とかはちみつとかおしゃれなものが置いてあったりして。髪の毛が甘くなったりするかもしれません。

その後4時半くらいに皆さんを熱海駅に送り届け、なんちゃってガイドも無事終了。いやあ、この年になってまた修学旅行のような楽しさを味わえるとは思いませんでした。しかも地元で。
予定と報酬次第では、またなんちゃってガイド喜んでお引き受けいたします。皆さんお疲れ様でした~

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September 02, 2011

痛快! 魂食堂!! ファティ・アキン 『ソウル・キッチン』

Scan2ご存知の方はご存知でしょうが、わたしの住んでる地域はミニシアター系の作品はだいたい数ヶ月遅れてかかるんです(それも一部だけ)。で、これもそんな遅れ単館系の映画。・・・って都心じゃ1月に公開されてるのになんぼなんでも遅れすぎでしょー! そんなわけで先週もうDVDも発売されてしまった『ソウル・キッチン』、ご紹介します。

ドイツはハンブルグの場末で食堂を営む青年のジノスは、中国へ行くことになった恋人を追いかけるため、店を誰かに譲渡することを決意する。しかし自分が心血を注いできた店だけに、なかなか納得のいくゆずり相手が見つからない。そんな折、ジノスはついはりきってしまったことが原因で激しい腰痛に見舞われる。さらに仮出所になったややこしい兄や、税務署や衛生局のお堅い役人までやってきて、ジノスはますます八方塞がりに・・・

ファティ・アキン氏の作品は初めて観ました。噂によると氏は移民を題材にしたメロウなお話をよく手がけておられたそうで。しかしこの『ソウル・キッチン』は極めて明るく軽快なノリで、氏のこれまでの作風とはやや異なる映画のようです。主人公ジノスにしてみれば実に悲惨で泣きたくなるような状況なんでしょうけど、傍から見てる立場としては彼の不幸がいちいちおかしい(笑) まあそんな風に笑って観てられるのは、たぶん最後はハッピーに終わるだろうという、根拠のない確信があったればこそなんですが。

舞台がぱっとしないレストランというところは、もはや懐かしいドラマとなってしまった三谷幸喜の『王様のレストラン』を思い出させます。従業員たちがくせものぞろいだったり、勝負好きの兄貴に足を引っ張られるところも似てます。
あと個人的には主人公を襲う災難のひとつが「腰痛」というのが親しみやすかったです。わたし自身は幸いまだ経験ありませんが、父と弟がヘルニアで相当苦しんでいたのを目の当たりにしてたので。しかし映画が始まってすぐからクライマックスにいたるまで、ずっと腰痛で苦しんでいる主人公、というのもそうはいませんよねw
そんな地獄の苦しみにさいなまれながら、途中あるエピソードで、ジノスは酔いつぶれたウェイトレスをかつぎあげて部屋まで運んであげたりします。なんていいやつなんでしょうcrying
そう、ジノス君って、さえなくてドジばっかりでスケベエで太り気味で空気が読めなくて腰痛もちで食べ物商売なのに長髪で欠点だらけなんですが、根はすげえいいやつなんですよね。そんなあったかみがビンビン伝わってくるから、こちらも笑い転げながらも彼を応援せずにはいられません。

以下、どんどんネタばれしていきますのでご了承のほど。

ジノスがさまざまな災難に見舞われた理由。わたしにはそれは彼が店を手放そうとしたことと無縁ではないように思えました。まあ心の底から愛している彼女とどちらをとらねばならないとしたら、彼女を選んだとしても仕方がないかもしれません。しかしジノスにとって魂の置き場所は、やはりひとりの女よりも、情熱を注いできたお店だったということではないでしょうかねえ。彼がそのことに気づいた時、山のようだった難題は少しずつ解決していきます。
そしてラスト、「何もかも元通り」というのではなくて、ようやく新たなスタート地点に立ったところで幕となるのがとてもいい。これからも色々問題は出てくるでしょうが、彼が魂の置き所を見失わない限り、きっと大丈夫・・・ そんな風に思わせられました。

Scanそんな『ソウル・キッチン』は冒頭でも述べたようにすでにDVDが発売中。公開はほぼ終了・・・と思いきや、これからかかる劇場もまだまだあるのね~(笑) もう最近の公開事情、よくわかりません! フンガー!


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September 01, 2011

メーターは名探偵 ジョン・ラセター 『カーズ2』

110826_203117夏休みももう終りですね。よいこのみんな、宿題は終わったかな? そんなわけでこの映画もそろそろ終わりそう。百発百中のアニメスタジオ・ピクサーが贈る最新作『カーズ2』、ご紹介します。

そこは車が人であり動物である世界。ラジエータースプリングに高速の貴公子、ライトニング・マックイーンが舞い降りてから数年の月日が経っていた。そして彼とおんぼろのレッカー車・メーターとの友情はますます固いものになっていた。
そんなある日、マックイーンはいけすかないフォーミュラカーのフランチェスコから世界最速の座をかけて、挑戦状をたたきつけられる。そのワールドツアーにスタッフとしてメーターを連れて行ったマックイーンだったが、メーターは
変わらぬ天然ぶりで周囲を閉口させる。さらには国際間の陰謀に巻き込まれてスパイとして活躍することに!?

あの『カーズ』の続編ということで普通に前作をスケールアップさせたお話となるのかな・・・と予想してましたが、さすがはピクサー。余裕でこちらの斜め上をいきます。
まず主役がマックイーンよりもメーターであることがうれしい驚きでした。わたしはスポーツーカーや乗用車よりも、ああいうクレーンやドリルのついたビーグルが好きなので、この路線変更には俄然力が入ろうというもの。さらにジェットエンジンやらマシンガンやらありえないオプションパーツががんがん後付されていくのが、最高に楽しい。

そして今度こそ王道のレースものになるかと思いきや、物語はずんずんとスパイアクションの方向へ傾いていきます。スパイ映画におなじみのシーンや細かい小道具が次から次へと出てきて興奮させてくれます。
メーターを陰謀の世界に引きずり込んでいくスパイカー、フィン・マックミサイルはいかにもダンディな英国紳士といった趣。たぶん007=ショーン・コネリーあたりを意識しているのでしょう。

過剰なまでにエンタメサービスを追及しながらも、芯のお話がしっかりしているのがピクサー魂。今回のテーマのひとつは「外見」ということ。
メーターはサビサビでおんぼろの見てくれのため、あちこちで失笑をかいますが、本人(車)はいっこうにそのことを気にしていません。それどころか、凹みを直そうとされると、「凹みは大切な思い出だから」といって拒否します。
寺島しのぶさんが言うには欧州の女優さんたちは「シワもまた自分の歴史であるから」ととらえ、それほど隠そうとはしないのだとか。メーターも途中笑われてたことに気づきズーンと落ち込んだりはしますが、それでも「ほかの姿になりたい」などと思ったりはしません。それはたぶん、これまでの自分の歩みと、共に過ごしてきた仲間たちを心から愛しているからではないでしょうか。

また前作でうたわれた「勝利・栄光よりも大切なものがある」というテーマも健在です。正直前作は言ってることには共感できるけど、エンタメとしては物足りないな・・・という思いがありました。今回はその点、前作よりもスカッとするつくりになってました。
またしても大事なレースをおっぽり出して、友の方へ駆け出していくマックイーン。しかしこのマックイーンとメーターの友情はちょっと行き過ぎですね(笑) 自分からクレーンをひっかけて、「もう君とは絶対に離れないぞ!」ですと。たぶん遠からずマッキーは恋人(車)と別れる事になると思います。

Scan『カーズ2』はまだ一応全国で大ヒット上映中。前座には『トイ・ストーリー』の短編も上映されてお得な一本となっております。
そしてピクサーの次回作は魔術の関係したお姫様ストーリー『メリダとおそろしの森』。ぱっと見ピクサーにしてはすごい普通っぽい作品でしたが、彼らならきっとこちらの予想を上回ってくれることでしょう。


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