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August 21, 2011

かいじゅうたちがいるあたり ギャレス・エドワーズ 『モンスターズ/地球外生命体』

Scan11昨年暮れ、S・キングのベストや映画秘宝なんかで興味をひいた一本の映画がありました。宇宙人・怪獣もので超低予算ながら、独特の手法で注目をあびているという。なにやらあの『第9地区』と同じ匂いがぷんぷんするじゃありませんか! というわけで今回は先ごろから日本でも公開となったその『モンスターズ/地球外生命体』、ご紹介しましょうか。

数年前、宇宙より飛来し、メキシコに墜落したある物体があった。以来、メキシコでは巨大なクラゲのような怪物が徘徊するようになり、事態を重く見た米軍は空爆などで怪物を排除しようとやっきになっていた。
そんな中、現地に赴任してきたカメラマン・コールダーは雇い主からある依頼を受ける。それはメキシコに滞在している娘を、なんとかして無事合衆国まで連れ帰ってきてほしいというものだった。

ちょっと前に公開された『スカイライン』も低予算ということで話題になっていました。それでもまあ、『スカイライン』は一応8~9億円はかかってるんですよね。それに対しこの『モンスターズ』の予算はたったの130万円という! これならわたしでもがんばれば(たぶん)貯められそうな額です。しかしこんだけのお金で怪獣映画が撮れるものなのか?その答えは、「なるたけ怪獣を出さない」というものでした(笑) 
つまり、演出をおさえた「水曜スペシャル」のようなものでしょうか(これ、若い人にはわからんだろうな・・・)。カメラは現地の様子や怪物の残した痕跡をずっと追っていきますが、怪物の姿はなかなか映し出さない。そして時折それらしいものの影がよぎったりします。果たして探検隊は幻の生き物をカメラに捉えることができるのだろうか・・・・ 思わずなつかしのナレーションが脳裏によみがえってきます(笑)。これならさほどお金をかけずとも、「怪獣映画」を作ることができるというわけ。

この手法、演出がヘタクソだとただの「ごっこ遊び」にしか見えないわけですが、なるほど、各所で賞賛されてるだけあって、要所要所で上手に緊迫感を高めてくれます。そして主人公たちが通り過ぎる荒廃した街や、雄大な自然の風景がなんとも美しい。そんな風に一風変わった紀行番組のような楽しみ方もできます。

ただ、やはり怪物がバンバン暴れまわる様子を期待していた人にとっては、案の定評判が悪いようです(笑)。これはやっぱりタイトルがよくないんじゃないかなあ。『モンスターズ』っなんてタイトルだと、普通みんなそういうに期待しちゃいますよね。もっとこうあいまいな感じにして『THE THING』とか『IT』とか・・・ って両方もうありますね

怪物の恐怖がメインのようで、実際に強く伝わってくるのはUSAの横暴さや傲慢さだったりするところも普通のモンスター映画とは違うところです。以下はややネタばれなのでご了承ください。






お話が進むにつれだんだん怪物の生態が明らかになっていきます。そして彼ら?がそれほど凶暴な生き物でないことも判明していきます。そして最後は怪獣たちを通して「大切なのは愛だろ、愛」。ということを教えられます。この結論、上手に伏線も張ってあるのですが、人によっては大爆笑してしまうかも(笑) とりあえず単なる映画としても怪獣映画としてもめったにみられないもん見せてもろたわ・・・という感じで、感謝の気持ちでいっぱいになりました。

Scan10『モンスターズ/地球外生命体』は現在渋谷の名物劇場・シアターNを中心に公開中。その後ぼちぼちと全国を回っていくようです。怪獣映画ならどんなものでもチェックしておきたい、という方におすすめします。
ちなみにこの監督、この映画での手腕を買われてハリウッドでの新作『ゴジラ』新作を撮ることになったそうです。ゴジラがほとんど出てこないゴジラ映画・・・・ そんなのになったらどうしようと思いつつ、ダメでもともとくらいの気持ちで待っております。


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Comments

怪獣映画と見せかけて愛の映画なのだ!
というか単純にバンバンモンスター出すと金かかるからでないかな?しかも一杯出すならそれなりのクオリティにしないと、逆に「ショボッ!」って言われちゃうし。^^;

Posted by: KLY | August 22, 2011 01:08 AM

>KLYさん

そうか! タイトルは『愛と旅立ちの物体X』にすれば良かったんだ!
まあやはり130万ではこれが限界ですかね。しかし世の中にはこちらの想定を上回る才能が隠れているやも。そんな人たちに100万ずつわたして怪獣映画コンペとかやらせたら面白いかもしれませんね。ああ、わたしにありあまるお金があったら!

Posted by: SGA屋伍一 | August 23, 2011 04:06 PM

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