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July 28, 2011

引越しのお知らせ

突然ですがブログ引越しのお知らせです。このたび自分自身も引越しすることになったのですが、その辺の事情で現在のニフティさんを退会することになりました。で、ニフティを退会するとこのココログ・ベーシックも自動的に消滅してしまうのですね。というわけで新URLは
こちら http://blog.livedoor.jp/sga851/になります。
 
なぜライブドアさんかというと、そこが一番簡単だったからです(笑) ココログ・フリーであればニフティ会員でなくてもできるのですが、こちらはコメント・TBごと引越しができなかったりして。

数少ない常連の皆様、よろしかったら引き続きご愛顧のほど。

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July 23, 2011

カミナリ様のお通りだい ケネス・ブラナー 『マイティ・ソー』

110723_211018スパイダーマン、ハルク、アイアンマンと映画化著しいマーヴルヒーロー。そしてまた新たなるヒーローが銀幕に登場しました。『マイティ・ソー』、ご紹介します。

地球と次元を隔てた場所にある神々の世界、アスガルド。そこを治める王オーディンには、ソーとロキという二人の息子がいた。成長した二人はそれぞれ有能な武人となるが、血気さかんなソーは侵入者を送ってきたヨツンへイムに対し父王と意見が対立。ついにはオーディンの怒りを買い、はるか遠くの地球へ追放の身となる。だがその裏には三つの世界にまたがる巨大な陰謀が隠されていた。

洋の東西を問わずヒーローがうじゃうじゃいる昨今ですが、それらのヒーローの源流をたどっていくと、ヘラクレスやギルガメシュ、あるいはスサノオといった神話の英雄にいきつくと思うのです。
そこに目をつけたのがミスターマーヴルとも言うべきスタン・リー。彼は1962年に『Journey into Mystery』という雑誌で北欧神話のソー(Thor 日本ではトールと呼ばれることも)を、アメコミのヒーローとして新生させます。それ以後ソーは二度の休止期間を挟みつつもマーヴルの主要キャラクターとして活躍し続けています。

原作のソーは最初本来の記憶を失った足の悪い医師として登場するのですが、映画版ではその辺は割愛。神様世界からそのまんま北米の砂漠に落っこちてきます。それこそ江戸時代のサムライがまんま現代にタイムスリップするようなもので、地球文明に慣れずにボケまくる姿がなかなかにおかしい(笑) 日本のヒーローにもこんなのいたような気がするんだけど・・・ うーん、思い出せません。

映画の見所はまずアスガルドの描写でしょうか。未来世界とも古代都市とも違う一種独特のデザインで、目を惹くものがあります。特に異次元へと渡る際に使われる「ビフレスト」という虹の橋がなんとも美しい。スパイダーマンやアイアンマンの空中アクションと同様、CGが進歩した今だからこそ出来た映像と言えるでしょう。この虹の橋、1966年に作られたアニメのOPにも登場してますね。たった19秒ですので気になった方はご覧ください。

もうひとつの『ソー』の特長はこれまた神話にも出て来る「ムジョルニア」というハンマー。このごついトンカチをぶんぶん振り回すアクションが大変痛快です。とりあえずでかいトンカチが武器のヒーローといったら、他には勇者王ガオガイガーくらいしかいないんじゃないでしょうか(あ、仮面ライダーキバもいたか)。
ま、とにかくすんごい威力のトンカチでして、こいつのおかげでソーは怪獣とも互角に戦えたりします。さらに持ち主の意思で手元に戻ってきたり、すっとばした勢いで空まで飛べるという(これはちょっと笑えましたが)、まさに一家にひとつはほしいハンマーでございます。

で、どういうわけかこの映画のヒロインを今年のオスカーをかっさらったナタリー・ポートマンが演じております。まあ彼女『V・フォー・ヴェンデッタ』にも出てましたし、意外とアメコミ映画も嫌いじゃないのかもしれません。痛々しい役が多いナタポーですが、この映画では元気なインテリのお嬢さんをイキイキと演じておられて、とても可愛らしかったです。シリアスな演技の方がお偉方には評価されるんでしょうけど、やっぱり女の子は笑顔がいいな、と思うのでした。
キャラクターでは珍しく人格者のアンソニー・ホプキンスや、恐ろしいほどにひねくれてるんだけど、ちょっと同情したくなるロッキー君も印象的でした。

081026_183859さて、皆さんご存知のように、この映画『アイアンマン』『インクレディブル・ハルク』『アイアンマン2』と続く「アヴェンジャーズ」プロジェクトの一環を成しています。このあと秋公開の『キャプテン・アメリカ』を経てとうとうヒーロー大集合映画『アヴェンジャーズ』へとつながっていきます。すごいわ!すごいわ! そういえば三年前にこんな記事書いてたっけなあ。時の経つのは早いものよ・・・(こればっかし)


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July 20, 2011

ハチとの遭遇 J・J・エイブラムス 『SUPER8』

110719_224904『ゾンビ』が公開され、スリーマイル島の事件が起きた1979年。仲間たちと8ミリ映画を作っていたジョーは、撮影中大規模な列車事故に遭遇し、九死に一生を得る。おっかなびっくり現場のあとをさまよっていたジョーたちは、そこで不思議な形のキューブと何かにこじあけられたコンテナを発見する。そして翌日からジョーたちの町では奇妙な事件が頻発し始めたのだった・・・

約一年前から謎めいた予告で期待を煽っていた『SUPER8』、ご紹介いたします。監督は『LOST』などで知られるヒットメイカー、J・J・エイブラムズ。『クローバーフィールド』を思わせる宣伝の仕方からして、また怪物が暴れまわる絶望的なパニック・ムービーなのかな・・・と予想していましたが、それは半分当たって半分外れました(笑)
製作にはあのスティーブン・スピルバーグが名を連ねていますが、この映画、エイブラムズによるかつてのスピルバーグ作品へのオマージュなんだそうです。言われてみれば確かに田舎町にムニャムニャがやってくるあたりは、いかにも『未知との遭遇』や『E.T.』っぽい。得体の知れない怪物が断片的にしか姿を見せない手法は『激突!』や『ジョーズ』を思い出させます。これはもう、子供のころ『E.T.』が特別な映画だったわたしたち30代のために作られた映画といっていいでしょう(笑)
そう、今の若い人たちからすればスピルバーグって『ジュラシック・パーク』や『シンドラーのリスト』の人かもしれませんが、わたしらにとってはやっぱり『E.T.』や『ジョーズ』の人なんですよね。

しかしこの映画は単にスピルバーグのまねっこに終っているのではなく、独自の要素も盛り込んでいます。それは主人公たちが映画のロケ隊であるところ。そもそもタイトルの「スーパー8」とは、かつてコダックが発売していた8ミリフィルムの商標なんだとか。子供たちが映画作りをする、という点では昨年『リトル・ランボーズ』という作品もありました。『リトル・ランボーズ』も大変良かったけれど、わたしはどちらかといえば『SUPER8』の方が気に入りました。それはもっぱら二人で撮影している『リトル~』に比べて、こちらはチームものだから。
やる気まんまんのリーダーに、火薬に狂ってる効果係、大人の役ができるノッポくんに、演技力抜群の女の子・・・・ と、映画を作ってみたいと思ったことのある者としては、「こんな仲間がいたらいいなあ」と思わずにはいられませんでした。
特によかったのがチームのリーダーであり、主人公の親友でもある太っちょのチャールズくん。単なる映画バカかと思いきや、お話の途中で急にやる気をなくシーンがあります。その理由というのがなんとも涙なくしては聞けないものでしたcrying そう・・・ 映画オタクのみなさんはジョーよりも、むしろこのジャイアン君にどっぷり感情移入してしまうことでしょう。

キングの方のスティーブンを思わせるようなモダン・ホラー的な展開と並行して、映画では実に健康的なテーマが語られます。以下は中バレしてるので、ご了承ください。

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そのテーマとは「仲直り」。ジョーとヒロインのアリスは、それぞれシングルのお父さんとあまりうまくいっていません。そして二人のお父さん同士にもこれまたややこしい因縁があります。しかし町を見舞った災厄をきっかけに、みんな自分の本当の気持ちに気づいていきます。ついにはモルモット扱いされていた宇○人とも仲直りしてしまいます。
まあさっきまでバクバク食われてた人たちはかわいそうだな・・・とか、E.T.とはともかく、宇宙版ジョーズとはコミュニケーションできないんじゃないかな・・・・とも思うのですが、見逃します。それほどにあちこちツボな映画でしたcoldsweats01

この『SUPER8』ですが、やはりスピルバーグの名がものをいったのか、日本では『パイレーツ・オブ・カリビアン』を押しのけて三週連続のトップを記録。ただアメリカでは二週目2位→三週目4位と順調に下落しているので、こういうノスタルジーものというのは日本の方がウケがいいのかもしれません。

110719_225133すでに先週末からはあの『ハリポ』完結編が始まってるので、世間的には「あ」というまに忘れられてしまうかもしれませんが、『SUPER8』、今年を代表する一本として、覚えておきたいものです。はい。


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July 11, 2011

宇宙清掃 コリン・ストラウス グレッグ・ストラウス 『スカイライン 征服』

110708_200848ああっ これまたそろそろ公開が終ってしまいそう! 『AVP2』などで知られるストラウス兄弟が、低予算ながら他のSF映画と比べても遜色ない映像で魅せてくれる『スカイライン 征服』、ご紹介します。

イマイチ芽の出ない絵描きのジャレッドは、映画界で大成した親友テリーの誘いを受け、恋人と二人彼のマンションで行われる西海岸のパーティーへほいほいと出かける。どんちゃん騒ぎや恋人とのいさかいのあと、眠っていたジャレッドは異様な物音に起こされて窓の外を見る。その目に映ったのは空を覆わんばかりの巨大な宇宙船団と、それに向って吸い込まれていく人々の姿だった。そしてその光を凝視していたジャレッドの身にも異変が・・・

なんでか知りませんが、日本ではこれから宇宙人モノの映画の公開が続くようです。すでに封切られている『スーパーなんとか』、夏の目玉である『トランスフォーマー3』、小粒ながら話題を呼んでいる『モンスターズ』、さらに『ロサンゼルス:世界決戦』『カウボーイVSエイリアン』・・・・ その先陣を切る事になったのがこの『スカイライン 征服』であります。

宇宙人モノには大きく分けて二つのジャンルがあります。なんとかコミュニケーションが取れそうな「フレンドシップもの」と、ハナから交渉など期待できない「侵略モノ」です。上のあらすじ読んでいただければわかるように、『スカイライン』は極めてストレートな「侵略モノ」。で、どうやって人類を征服するのかというと、これがビームでもミサイルでもなく、シンプルに「吸う」という荒業を使ってきます。まるでクジラが海中のプランクトンをまとめてゴーッと吸い込んでいくように。普通それだけ強大な吸引力であれば人のほかにも車とかゴミとかもグングン吸い寄せていきそうなものですが、そこは宇宙の超科学力で、人間だけをちゃんとえりわけてバキュームできるようになっております。すごいですね。

ただこの超高性能な掃除機にもそれなりに弱点はあります。それは建物や物陰に隠れた人間は吸い込みづらいということ。そこで宇宙人さんたちがどうするかというと、掃除機のヘッドを取り替える・・・のではなく、子分の宇宙生物を使って建物から人間を追い立てるのです。まるでバルサンでゴキブリを燻し出すかのように。この追い立てかたというか、追い込みかたが非常にねちっこいというか、いやらしい。ゴキ・・・人間たちにしてみればたまったものではありません。

しかし宇宙人サイドから見てみれば、これはなかなか楽しい。使えるポケモンも吸う種類、じゃなくて数種類ありまして、イカっぽく(基本ですね)メカっぽいヤツやら、重量級のモンスターみたいなヤツやら。わたしなどは「おお、こんなのもあるんだ!」とはしゃぎながら観ておりました。規格的に統一されてないというか、かなりデザインにばらつきがあるのはご愛嬌であります。 

気になったのは主人公の風貌ですかね。かつてのジェフ・ゴールドブラムもかくや・・・というほどに濃い。というかくどい。オマケに両肩にびっしりとタトゥーが刻み込まれていて、なんだかヤバイ組織によくいる人みたいな感じなんです。実際は中身はごく平凡な青年で、見ている間に気にならなくなっていくんですが、序盤は彼のくどさが気になってあまり宇宙人に集中できませんでした。

もうひとつ気になるのは時間です。侵略モノの名作には『インデペンデンス・デイ』『宇宙戦争』などがあります。この二作でさえ宇宙人を撃退するくだりはかなり強引でした。それでもまだ二時間越えの尺のおかげでなんとかまとまっていたと思います。対してこの『スカイライン』は全部で90分ちょいしかありません。この長さで「ファーストコンタクト→侵略→反撃→撃退」と全部きっちり描けるものなのか!? しかも冒頭ではいらん人間ドラマや痴話ゲンカに時間取られちゃってるし・・・・

結論からいいますと
typhoon

typhoon

typhoon

typhoon

個人的には「まっ それもありか!」という感じでしたcoldsweats01 しかしこれは宇宙よりも心の広いわたしの基準であって、人によっては怒り出すかもしれません実際見た人たちは賛否両論まっぷたつに分かれているようですし。。うーん、大概ネタバレかもしれませんが、『ガメラ3』や『男組』が好きな人だったら大丈夫かも。

110708_200930でっかい宇宙人や怪物は、やっぱりでっかいスクリーンで観たほうがいいと思うんですよね。というわけで宇宙人が好きな方はぜひ劇場で! たぶん宇宙人に関しては『スー○ー8』よりもすごい!(と思う)


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July 06, 2011

明るくなるまで待てない ギリェム・モラレス 『ロスト・アイズ』

110705_211948スペインにて二週連続のヒットを飛ばしたホラー映画が、満を持しての日本上陸 ・・・つっても、もう三週くらい経ってますけどね。『パンズ・ラビリンス』『ヘルボーイ』のギレルモ・デル・トロ製作『ロスト・アイズ』ご紹介します。


夫とともに天文台に勤めるフリアは、ある日胸騒ぎに襲われて突然失神する。双子の姉の身に何か起きたのか?と思い、彼女の家に向ったフリアが見たものは、天井からぶら下がっていた姉の遺体だった。
深く傷ついたフリアだったが、姉の家を調べていくうちに、彼女の周りにいた何者かの存在に気づく。姉は彼に殺されたのでは?と考えたフリアは、その謎の人物の正体を追い求める。それが後に彼女を恐怖のどん底に陥れることになるとも知らず・・・・

で、この姉妹は「視力を失いやすい」という体質がありまして、お姉さんはすでに失明しておりました。周りの人は「それを気に病んで・・・」とフリアの考えを否定します。そして度重なるストレスにより、フリアの目もだんだんと弱ってきます。
ホラー映画の恐怖にもいろいろあると思いますが、「ものが見えなくなっていく」ということもなかなか怖いことのひとつであると思います。もし自分の目が急に見えなくなってしまったら?と考えてみてください。不安でたまらなくなるのではないでしょうか。
その恐怖をさらにあおるのがフリアの姉の周りにいた「謎の存在」です。彼がいたという証拠はあまりにあやふやで、序盤、わたしたちも観ていて「ヒロインの妄想では?」と疑りたくなります。そう思いかけた途端に突然シルエットや手だけヌッと出てきたりして、小心者のわたしをいたくびびらせてくれました。
果たして彼の正体は何なのか? 視力の弱い人だけに感じられる霊のようなものなのか? それとも忍者並みに気配を隠す事に長けた超人なのか?

お話がすすむにつれ、どんどん視力が弱っていくフリア。ただでさえ心細いのに、彼女は自分に気づいた謎の存在にも狙われ始めます。まるっきり無防備の状態に等しいフリアは、自分の身を守ることができるのでしょうか。

わたしもしかしてこのヒロインの状態に合わせて、画面もどんどんぼやけてくるのでは?なんて予想をしておりました。でもまあ、そんな試みをやったら、お客さんは「なんも見えんぞコラー!」と怒り出しますよねcoldsweats01 これから観ようという皆さん、そんなことはありませんのでどうぞご安心ください。ただこの設定を利用して、ちょっとずるうまい仕掛けが用いられていました。気になる方はご自分の目でお確かめください。

前に別の記事にも書きましたが、スペインの方は「目に見えない存在」というものを特に意識している気がします。やはりデルトロ氏製作で主演も同じ『永遠のこどもたち』、スペイン出身のアレハンドロ・アメナーバル監督による『アザーズ』、そして名作として親しまれているビクトル・エリセ監督の『ミツバチのささやき』。これらはみな目に見えない誰かさんをテーマとしております。ただ恐れるだけではなく、主人公たちが何とかして「それ」を理解しようといろいろチャレンジするところは、明らかにアメリカのホラーとは違うものが感じられます。

あとこれはスペインの、というかデルトロさんの特性ですが、どうしても作品で「愛」を語りたがるんですよね。この乙女野郎! 「ホラーに愛なんて余計なもんを持ち込むなあ!」という方もおられましょうが、軟弱者としてはこういうメロメロな作風にちょっと助けられます。ただ怖いだけの映画だと、夜中にトイレに行きたくなった時、思い出して布団から出られなくなったりしますからね・・・・

110705_212008『ロスト・アイズ』は現在渋谷と梅田で上映中なのですが、二館ともすでにレイト限定なうえに今週の金曜までというとっても不憫な扱いです。さらに追加上映館もいまのところたった三館。もうちょっと注目を浴びてもいい映画だと思うので、興味を持った方はぜひ。


 

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July 02, 2011

父を尋ねて四千キロ モハメド・アルダラジー 『バビロンの陽光』

090605_2106412003年、フセイン政権が崩壊した直後のイラク。果てしない荒野を旅する老婆と少年の姿があった。少年の名はアーメッド。祖母と二人、ようやく面会がかないそうな父の元へと旅を続けていたのだった。トラックの運転手、タバコ売りの少年、武装集団に所属していた男・・・ 様々な人たちとの出会いと別れを繰り返し、アフメッドは父を探し続ける。

これまでアメリカから中東を見た映画は、日本でも数多く公開されてきました。『キングダム』『ワールド・オブ・ライズ』『ハート・ロッカー』『グリーン・ゾーン』etc しかし中東、それも混乱の中にあるイラクの人たちが、祖国を自分たちの手で撮った映画というのはほとんどなかったのではないかと。だいたいイラクは現在も混乱のただ中にあり、各地で武装集団が小競り合いを繰り返しているという有様。そんな中をロケしながら映画を撮るというのはとても危険なことであります。実際幾つもの問題にぶつかり、撮影は困難を極めたとか。それでもなんとか完成にこぎつけたこの『バビロンの陽光』は、ひとつの奇跡であり非常に貴重な作品と言わざるをえません。

主人公の少年アーメッドはそんなに行儀のいい子ではなく、ヒマをもてあますとおばあちゃんをおいてどこかへ行ってしまったり、お父さんの置いていった笛をぴーひゃららと吹き出して周りを閉口させます。でもそんな「いい子」でないところが、リアルというか、その辺にいる子供とあまり変らず、親しみやすかった気がします。またよく困らせながらもその実とてもおばあちゃんのことを慕っていて、本当はいい子なんだな・・・と感じさせました(どっちなんだよ)。

距離的にも環境的にも我々から遠く離れているイラクの人たち。果たしてこの映画を観て、彼らの心情がわかるのか、不安もありました。時々ありませんか? なじみの薄い国の映画をたまたま観て、ちっともお話についていけなかったということが。
しかしこの『バビロンの陽光』はとてもわかりやすい。アーメッドとおばあちゃん、そしてイラクに生きる人々の感情がビンビンと伝わってきます。やはり人間、国や言語は違えど、根っこのところはあまり変らないのでは、と思わせられます。ニュースを見ると、いつ果てるともしれぬ同士討ちを続ける彼らは、あまりにも非人間的に思えるかもしれません。しかしイラクでも多くの人々が争いをやめたいと思っているであろうことは、この映画を観るとよくわかります。また、流血シーンや残酷シ-ンがほとんどないにも関わらず、イラクに残された戦争の爪あとを通して、その悲惨さが強く伝わってきます。

『イントゥ・ザ・ワイルド』もそうでしたが、アーメッドとすれ違う人々たちがいちいち人間くさく、深い印象を残していきます。最初はぼったくろうとしていたのに、いつか二人に同情してしまう運転手の親父さんや、かつて犯した罪のために深く苦しんでいるムサなど。そんな風に悲しいだけではなく、暖かい多くのものも込められています。

110702_202945モハメッド・アルダラジー監督は公式サイトでこのように語っておられます。「今日本は危険だから行かない方がいいと多くの人に言われました」「でも母だけは行ってきなさいと言いました」「人々が困難な時を過ごしている今こそ我々の支援の気持ちを見せるべきだと」
このような監督とお母さんの気持ちに応えたいと思った方は、ぜひ劇場で(難しければDVDでも)ご覧になってみてください。『バビロンの陽光』は現在東京はシネスイッチ銀座や大阪の梅田ガーデンシネマにて上映中。その他の地域でも順次公開される予定です。


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