パラレルワールドのパラドックス ジャコ・ヴァン・ドルマル 『ミスター・ノーバディ』
時は遠未来。人類がテロメアの無期延長に成功し、「死」を克服した時代。最後の寿命を持つ男が臨終の時を迎えようとしていた。男の名はニモ・ノーバディ。医師や記者たちは彼からその人生の記録を聞きだそうと努めるが、男の話は無数に分岐していき、聞く者を混沌の中へと誘っていく・・・
『トト・ザ・ヒーロー』で名高いジャコ・ヴァン・ドルマルが、前作『八日目』から実に13年ぶりに作り上げた作品、『ミスター・ノーバディ』紹介いたします。
まあ一言で言えば「ゲームブック」のような映画ですね。・・・あ、ゲームブックっていままだあるのかしらん・・・ ・・・・
え~、つまりストーリーがまっすぐ一つのラインですすんでいくわけではなく、要所要所で分岐点があり、その選択に応じてストーリーの方向が変わっていくという。
例えば主人公、ニモはまず離婚することになった両親のどちらについていくか、選択を迫られます。また成長してからは、三人の魅力的な女性のだれと結婚するかによって人生が大きく変っていきます。わたしはダイアン・クルーガーの若いころが一番タイプでしたが・・・そんなことはさておき。
まあすごいのは分岐によって映画のジャンルまで変わってきてしまうということですね(笑)。等身大の家庭ドラマもあれば、波乱万丈のラブストーリーもあり、サスペンスチックな展開もあれば、はたまた宇宙SFにまで話が飛んだりする。何本かの全くタイプの違う映画を、ザッピングして観ているような感覚です。最初のうちは「いったいどれが真実なんだ?」なんて思ったりもしますが、そのうち「どれが真実でもよいさね・・・」なんて思えてきます。
わたしといえばSF的な部分は喜んで観ていましたが、後半暗い家庭ドラマが続いたりするパートには「もうちょっと編集で短くできんかったのか・・・」などと思ったりしてました でもまあ、美しく、かつ変ったビジュアルセンスがあちこちに多用されていて、なかなか飽きさせません。美しいといえば青春時代のニモや彼を取り囲む女の子たちが本当にキラキラと美しく、「若さって素晴らしいなあ」と腹の出た30男はつい感傷にふけってしまいました。
結局この夢のような映画で監督が何を言いたいのかと言えば、「人生は夢みたいなもんだよ」ということなのかもしれません。ここまで極端でないにせよ、年を重ねるにつれ過去の記憶はあいまいになっていくもの。時には事実とは微妙に違う形で記憶していることもままあります。この年でもうそんなことを言っている自分は、確実に早いうちに痴呆症になりそうです。んあ~~~ 歳を取るのが怖い・・・・ 若く美しいまま死にたい・・・・
「様々な形の未来を見せる」という点では、『時をかける少女』(アニメ版)や『タイムマシン』(最近版)などを思いしたりもしました。なぜかどれもちょっぴり切ないムードが漂っている作品。あと未見ですけど『ラン・ローラ・ラン』『スライディング・ドア』というのも選択によって分岐していくお話と聞きました。
『ミスター・ノーバディ』はすでに終了した劇場もありますが、関東でもその他の地方でもこれからかかるところも多いようです。ひも理論とかビッグバンなどのSF的ウンチクが味付け程度ですが入っておりますので、そういうのがお好きなひとはよければ。
Comments
12通りあるんですって、人生が。
家に帰ってきて整理したんだけど9通りしか解らず…。
DVDになったら一端停止を駆使して調べなおしたい、
そんな気持ちにさせられました。(笑)
Posted by: KLY | June 16, 2011 01:25 AM
>KLYさん
毎度どもー
わたしはいまざっとふりかえってみて、6,7通りくらいしか思い出せませんでした。半分かよ!
やっぱり映画感想の記事は観てからそんなに間を置かずに書かないといけませんねえ。ちなみにこれを観たのは大体一ヶ月前くらい
Posted by: SGA屋伍一 | June 16, 2011 10:53 PM
伍一さん、こんにちは〜♪
ジャレッドの美イラストありがと☆(*゚ー゚*)
いくつって、わたしはもう数えてすらいない、、
DVDが出たらゆっくり確認したいと思います(笑
えー、でもこれ賛否あったのかな。
伍一さんも長く感じちゃったのね、わたしはあっという間だったけど。
SF的ウンチクも詳しくないけど面白かったわ♪火星人カワユす♡
Posted by: tomoco | June 26, 2011 12:55 PM
>tomocoさん
こんばんは! ジャレッド・レト、実はこの映画で初めて知ったのですが、なかなか面白い俳優さんですね。今後チェックしておきます。
「長い」とか言ってるのはわたしくらいで、ほかの皆さんはもっぱら絶賛されてますよ。
ヒモ理論とかパラレル・ワールドのことに関しては昔背伸びしてその手の本をいろいろ読んだことがあったんですね。ホーキングとか。まあ用語を幾つか覚えただけで、ろくすっぽ理解できなかったんですけど
Posted by: SGA屋伍一 | June 26, 2011 11:14 PM